性病の症状について詳しく解説!性病の検査方法も紹介
性感染症はたった一度の性行為であっても、感染する機会はあると思っておいてください。また、発症しても、症状が出なかったり、気づかなかったりするケースも多く、知らず知らずのうちにパートナーに感染させてしまっていることもあります。性感染症という病気の特性上、受診をためらうこともあるかと思いますが、正しい知識をもって早期に発見、治療をしていきましょう。
監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)
目次 -INDEX-
性病とは
性病とは、性行為が原因で感染する病気、すなわち、性感染症(STI)のことを指します。ウイルスや細菌などが性器や泌尿器・肛門・口腔などの器官に接触し、感染することから発病するのです。 ここでは病気の概要と感染経路について説明をします。
性病の基本事項
感染症とは、病原体(細菌・ウイルス・真菌・寄生虫など)が体に入ることにより感染し発症する病気のことですが、性行為を介して感染する感染症のことを性病といいます。原因の発端に関わっている性行為のなかには、キスやオーラルセックス、アナルセックス、素股なども含まれます。
性病の感染経路
感染者の精液、膣分泌液、血液に触れると粘膜や傷口から病原体は体内に侵入します。このように感染者との性行為により、相手が変われば次から次へと感染は蔓延していくのです。また、感染している母親からお腹の赤ちゃんにうつることを母子感染といいます。母子感染では、産まれた赤ちゃんに先天性の障害が見られたり、流産や死産になったりするケースも稀ではありません。
主な性病の症状
性病に感染すると、病原体により多くの病気を引き起こします。病気には、軽症ですむものから重篤なものまで多くの種類がありますが、自覚症状がないものも多く、発見が遅れると命取りにもなりかねません。また不妊症の原因になることもありますので、正確な知識が必要です。
以下に代表的な性病で知っておいてほしいものを個別に説明します。
クラミジア
性感染症のなかでも、罹患者の割合が最も多いとされている病気です。病原体であるクラミジアは偏性細胞内寄生細菌といって、免疫が成立しにくい特徴があるので何度も繰り返し発症します。 潜伏期間は、1~4週間で男女ともに無症状のことが多く、気づかずに重症化することもあります。
分泌物(尿道や膣からの)検査で簡単に診断できますので、おりものや、尿道のかゆみなどの症状を放置せず、速やかに検査を受けるようにしましょう。 治療には抗菌薬が有効ですので、早期発見、治療で重症化を防ぐことができ、決められた期間に服薬することで再発防止にもなるでしょう。また、ワクチンの開発にも期待がかかっています。
梅毒
近年患者数が増加しており、流行が懸念されている性病の一つです。病原体は梅毒トレポネーマという細菌で、潜伏期は約1ヶ月と長い間症状が出ない場合もあります。
症状は、一般的には感染から1ヶ月くらいで、性器や肛門、口などに赤色の硬いしこりやただれができ、リンパ節が腫れます。これが、第1期といわれていますが、この段階で放置しても症状は一度消えてしまうので要注意です。その後、3ヶ月くらいの間に、発熱・倦怠感などの全身症状が見られ、皮膚にさまざまな発疹が出てくるのが第2期です。さらには、長期間かけてゆっくり進行し、心臓や血管、脳までも侵される第3期、4期と症状は続きます。
診断には、顕微鏡での梅毒トレポネーマの検出や血液検査で抗体を調べますが、感染機会から4週間以上経過してから検査を受ける必要があります。
治療には抗菌薬が有効です。症状が消えたからと初期の段階で受診しないでいると、病気は徐々に重症化し命をおとすこともあります。心当たりがある場合は速やかに受診しましょう。
淋病
淋菌が引き起こす淋菌感染症です。男性には非常に激しい排尿時の痛みがあります。性器全体が腫れあがるほどのつらい症状が特徴的です。初期には尿道のかゆみや、熱っぽさ、粘液や黄色の膿が出ることがありますので、気づいたらすぐの受診をおすすめします。潜伏期も2日~7日と短く、検査も尿や分泌物の培養検査でわかりますので、手軽に受けられます。反対に女性の場合は無症状のこともありますので、パートナーの感染がわかったら躊躇せず検査を受けるようにしましょう。 治療も抗菌薬が有効ですので、医師の指示に従い服薬を続け再発しないよう治療していくことが必要です。
HIV
HIVとは、ヒト免疫不全ウイルスというウイルスの名前のことを指します。このウイルスに感染し、免疫機能が低下すると、指標疾患である23の合併症のいずれかを発症し、エイズ(AIDS)という病気になるのです。 ここでは、エイズという病気についての症状と治療について説明します。 HIVに感染後2~4週間で発熱・偏頭痛・筋肉痛などインフルエンザに似た症状が出ますが、症状は自然になくなります。その後、数年は症状のない時期がありますが、治療をしないでいると、免疫力が極端に低下し感染症や悪性腫瘍の症状があらわれるようになるのです。
エイズを完全に治す治療薬はまだ開発されていませんが、複数の薬を組み合わせて、継続的に治療をすることで、エイズの発症を制御し生活することも可能となりました。HIVは血液・精液・膣分泌液に多く含まれているといわれ、粘膜や傷口からウイルスは侵入します。主な感染経路は性行為、母子感染など、血液を介しての感染ですので、せきやくしゃみ、トイレや食器の共用、握手などでは感染しません。
B型肝炎
B型肝炎ウイルスが病原体となる感染症です。急性と慢性があり、急性の場合は、微熱、食欲不振、だるさ、吐き気などの症状で黄疸が出ることが特徴です。急性肝炎は劇症化することがあるので、早期発見、治療が重要となります。 慢性の場合は、はっきりした症状が出ないまま、肝硬変や肝がんに進行することがあるので、健康診断の血液検査など、定期的な検診が大切です。
感染経路としては、性行為や母子感染により粘膜や傷口から血液を介して感染します。治療には抗ウイルス薬やインターフェロンなどが使われ、肝障害の進行を抑えることができます。また、ワクチンがあるので予防には有効です。
性器ヘルペス
単純ヘルペスウイルスにより、性器ヘルペスウイルス感染症は発症します。一度感染すると、ヘルペスウイルスは体内に潜み、免疫力が低下したときに再発を繰り返すのです。
感染経路は、性器、口唇などからの感染で、自覚症状は出ないことが多いようですが、性器や口唇に小さな水ぶくれやただれができて気づくことがあります。
治療には抗ウイルス剤の内服や軟膏などが使われます。症状に応じて抗炎症剤や鎮痛剤などの処方もあるようです。
性器カンジダ症
病原体は真菌(カビ)のカンジタ属で、性行為で感染しますが、健康な体内でも存在している菌です。抵抗力が低下した場合に発症し、繰り返し発症します。
症状としては、女性は陰部の強いかゆみや、白いおりものでヨーグルト状やかたまりが出ることもあります。男性は無症状の場合もありますが、性器のかゆみや水疱などがあらわれることもあるようです。
治療には抗真菌剤を使ったクリームや膣剤が使われます。
性病の検査方法
早期診断、治療をするためには、速やかに検査を受けることが重要です。しかし、病気の特性上、医療機関での受診をためらうこともあるかと思います。そこで、秘匿性に配慮された三つの検査方法について具体的に説明します。
保健所での検査
全国の保健所では、匿名・無料でHIV感染症の検査を受けられます。また、東京都では希望によっては梅毒、クラミジア感染症や淋菌感染症の検査を受けることも可能です。 具体的には、HIV検査のカウンセリング時にほかの性感染症の検査も併せて希望をすれば受けられますが、HIVとセットでの検査になり、単独での検査はできません。 詳しくは保健所へ電話での確認が必要ですが、すべて匿名で受けられます。
クリニックでの検査
女性の場合は、婦人科の病院や医院、ウイメンズクリニックなどで検査や治療を受けられます。自由診療を行っている医療施設では、名前や保険証も必要なく、誰にも知られず受診することも可能です。男性の場合は、皮膚科、泌尿器科、性病科などが対象の医療施設です。女性同様、秘匿性に優れた自由診療のクリニックでは、オンラインで受診可能なところもあります。
性病検査キット
病院に行く時間がない場合や、受診をためらっている方には、自宅で病院と同等精度の検査ができる検査キットの活用も有効な手段といえます。検査キットは誰にも気づかれないようなパッケージで 自宅に送付されてきますので、自分で採取、返送し、結果はインターネットから確認するだけという手軽さです。
性病検査キットのメリット・デメリット
検査キットは手軽に自宅で検査できる良さもありますが、精度や陽性判定が出た場合はどうしたら良いか、悩ましい方もいるかと思います。メリットとデメリットの観点から見てみましょう。
メリット
性病検査を身近なものとして、検査率を高め蔓延を防止する役割は大きいと思われます。完全な匿名検査で、プライバシーを重視し、早期発見、治療ができることは大きなメリットといえるでしょう。また、採取キットは医療機器として承認されているので、医療機器である承認文書が同封されている安全な製品を選ぶようにしましょう。
デメリット
検査の精度については、病院での検査とほとんど変わらないといわれています。キット自体は病院で使うものと同じだからです。ただ、同じキットを使っても、病院では医師や看護師などの医療従事者が行うのに対し、送られてきた検査キットで検査するのは、検査する本人です。採取の仕方を間違えると正確な判定結果が出ないこともあります。また、陽性判定になった場合は治療が必要となり、どちらにしても医療機関での受診は必要となります。
編集部まとめ
性病には、多くの種類があることをおわかりいただけたでしょうか。ほとんどの場合、傷口や血液、粘膜を介して病原菌が体内に侵入していきます。
安全な性行為を行うことが、パートナーに対しての愛情であることはいうまでもありません。また、そうした配慮が病気を蔓延させないことにもつながります。そして、感染が疑われる場合は速やかに検査を受け、治療を行う勇気をもってください。そのためにも正しい知識は必要となります。