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尿による性病検査 | 尿検査でわかる性感染症の種類と検査のポイントを解説

 公開日:2024/07/12
尿による性病検査 | 尿検査でわかる性感染症の種類と検査のポイントを解説

性感染症は、性的接触によってウイルスや細菌が性器や口腔などに感染する病気のことです。症状の程度は、性感染症の種類や個人によって異なります。

自覚症状が乏しいため、気付いた際には進行しているケースもあります。自分が性感染症か知りたいときには、性病検査を行いましょう。

性病検査は、性感染症の種類や特徴によって検査の方法が異なります。本記事では、尿による性病検査や尿検査でわかる性感染症の種類、各検査のポイントを紹介しています。

性病検査を受けようか迷っている人の参考になれば幸いです。

村上 知彦

監修医師
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)

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長崎大学医学部医学科 卒業 / 九州大学 泌尿器科 臨床助教を経て現在は医療法人 薬院ひ尿器科医院 勤務 / 専門は泌尿器科

性感染症は尿検査で判明する?

性病検査
性感染症によって検査方法は異なり、尿検査で判明するものもあります。以下で、性病検査の種類や尿検査の流れを紹介します。

性病検査の種類

性感染症に対する検査は次のとおりです。

  • 問診や視診
  • 血液検査
  • 尿や性器の分泌物を培養する検査

性器ヘルペスや尖圭コンジローマなどは性器や性器周辺に特徴的な病変が現れるため、視診で判断が可能です。
梅毒・HIV・骨盤内クラミジア感染では、血液検査を行い、各疾患の抗体の有無を確認します。
例えば、HIVでは体内で抗体が作られるまでに6〜8週間かかります。抗体が作られる前に検査を行うと陰性になるため、潜伏期間を考慮して検査を受けるようにしましょう。
クラミジア・淋菌・トリコモナスでは、尿や膣の分泌物を採取して調べます。
尿道炎では、尿検査よりも詳しく調べられる尿沈渣で、尿中の白血球や細菌の特定が行われるでしょう。性感染症によって症状の現れ方が異なり、行う検査も変わります。

尿検査の流れ

尿検査をする人
まずは、尿検査で尿を採取して尿中に細菌や白血球が存在していないかを確認します。
これらが存在している場合には、何らかの感染症にかかっている可能性があるため、病原体の遺伝子や抗原などを検出する必要がでてくるでしょう。
病原体の遺伝子の検出には、PCR法やSDA法などが使われます。PCR法は、微量の遺伝子を増やすことでウイルスが検出しやすく、感度が高い方法です。
抗原検査は、酵素抗体法や蛍光抗体法などの免疫染色法で検査します。免疫染色法は、組織や細胞内の抗原を検出する方法です。
検査の結果が出るまでに数日〜1週間程かかるでしょう。近年では、性感染症の検査キットをインターネットなどで購入できるため、気軽に性感染症かどうかを検査できます。
検査する性感染症の潜伏期間や内容によって検査結果が出るまでの時間は異なりますが、4〜5日程で検査結果がわかるようです。

尿検査でわかる主な性感染症の種類

股間にハートを置く女性
尿検査でわかる性感染症や症状は次の5つです。

  • クラミジア
  • 淋菌
  • トリコモナス
  • マイコプラズマ・ウレアプラズマ
  • 尿道炎

特徴を以下で紹介します。

クラミジア

クラミジア・トラコマチスによる性感染症です。男性では、尿道炎・精巣上体炎・排尿痛・尿道の不快感などの症状が現れます。
潜伏期間は2〜3週間と淋菌性尿道炎よりも長く、症状も軽いのが特徴です。女性では、子宮頚管炎・子宮内膜炎・卵管炎・骨盤内炎症性疾患・肝周囲炎などがおこります。
卵管炎の後遺症により卵管妊娠や不妊症の原因にもなります。妊婦でクラミジアに感染すると、流早産の原因にもなるでしょう。
また、分娩時にクラミジア感染がある場合には、参道感染により新生児肺炎や結膜炎の発症にもつながります。
淋菌と重複感染している場合も多く、淋菌の治療を行っても尿道炎が続いている際にはクラミジアが疑われるでしょう。
男女ともに症状が軽いため自覚がないことが多く、知らない間にパートナーに感染させてしまうことにもなります。

淋菌

股間を抑える人
淋菌による性感染症で、クラミジアと並んで頻度が高いのが特徴です。
淋菌は、宿主の粘膜から離れると数時間で感染力を失う程の弱い菌で、日光・温度変化・消毒剤などで死んでしまいます。
そのため、性行為以外で感染するのは稀で、人から人への感染が主な感染経路です。
淋菌に感染すると男性では、尿道炎を発症し、放置すると前立腺炎や精巣上体炎となるでしょう。尿道狭窄がおきる場合もあります。
女性では、子宮頚管炎や尿道炎を併発するケースが少なくありません。重症化すると、卵管炎や骨盤内炎症性疾患を生じます。
感染部位によって症状の程度は異なり、尿道炎や結膜炎では症状が顕著に現れることがあります。しかし、子宮頚管炎のみのケースでは無症状のこともあるため注意が必要です。

トリコモナス

膣トリコモナス原虫が女性の膣や男性の尿道・前立腺などに寄生しておきる性感染症です。男性でおきる症状は、尿道炎で無症状の場合も少なくありません。
女性感染者の20〜50%は無症状ですが、3分の1は半年以内に症状が現れるといわれています。症状は、泡状で悪臭の強いおりものの増加・外陰や膣の搔痒感などです。
男性よりも女性に出る症状の方が強い傾向にあります。
膣トリコモナスは、膣以外にも子宮頸管やパートナーの尿路、前立腺などにも侵入するため、カップル間でうつしたりうつされたりがおきがちです。
再発を繰り返すケースでは、原虫の残存・他臓器からの自己感染・パートナーからの再感染などが挙げられます。
また、ほかの性感染症に比べて感染する年齢層が幅広いことも特徴で、幼児や中高年の方でも罹患されることがあります。
考えられるのは、下着やタオル、便器や浴槽などを通じた感染です。無症状のパートナーからの感染も考えられます。

マイコプラズマ・ウレアプラズマ

お腹を抑える女性
尿道炎や子宮頸管など淋菌やクラミジアと似た症状が現れるため、診察で鑑別するのは困難でしょう。
検査にてクラミジアや淋菌でないとわかった際にマイコプラズマやウレアプラズマの感染が疑われます。
マイコプラズマは、マイコプラズマ肺炎のイメージがある方もいると思いますが、肺炎の菌とは異なる細菌です。
ウレアプラズマのウレアは、英語で尿素を意味し、尿素からエネルギーを得ています。マイコプラズマとウレアプラズマは細菌学では同じ種類に分類されます。
感染しても無症状や軽症です。男性の場合、放置しておくと精巣へも感染し、男性の不妊の原因にもなります。症状は次のとおりです。

  • 排尿時の痛み・違和感・かゆみ
  • 尿道から白い膿が出る
  • 睾丸の痛み・腫れ

女性では以下のような症状が現れます。

  • おりものの増加
  • 性交時の痛み
  • 排尿時の痛み・違和感・かゆみ
  • 発熱・下腹部痛、吐き気、嘔吐

女性でも卵管や卵巣にも感染が広がり、卵管癒着での不妊症につながります。また、子宮外妊娠などの合併症につながるケースもあるため、感染に注意しましょう。

尿道炎

尿道に細菌が感染しておきる炎症です。尿道炎の多くが性行為による症状とされています。尿道炎には大きく2つあります。
淋菌が原因でおきる淋菌性尿道炎と淋菌以外の細菌が原因でおきる非淋菌性尿道炎です。
淋菌性尿道炎は、感染したと思われる日から2〜6日経つと排尿時の激しい痛みや黄色い膿性の分泌物が排出されます。
非淋菌性尿道炎では、40%程でクラミジアが原因とされています。期間や症状が淋菌性尿道炎と少し異なるのも特徴的です。
潜伏期間は14〜30日程で分泌物が透明や白色で粘り気があり、痛みも不快感程度と淋菌性尿道炎に比べて症状は軽いでしょう。

尿による性病検査の結果が出るまでの期間

尿検査
性病検査の結果が出るまでの期間は種類や検査機関によって異なります。早い方法では、即日で結果がわかるものがあります。

対象の性病によって異なる

クラミジア梅毒の場合は、1〜2週間程で結果がわかります。
クラミジアは尿検査、梅毒は血液検査です。検査のタイミングによっては、検査では感染がわからない時期があります。
クラミジアで行う尿検査では、感染したと思われる機会から1〜2日と初期で感染している場合でも陰性の結果になる可能性があります。
そのため、検査を受けるタイミングも重要です。また、自治体の検査ではご本人様に直接知らせるため、電話や郵便での検査結果の通知は行っていません。
検査会場によって検査対象の性感染症や検査方法、行っているタイミングなどが異なります。自治体のホームページなどで事前に調べてから足を運ぶようにしましょう。

即日検査が可能な性病もある

検査中
東京都の性病検査では、HIVや梅毒で当日に検査結果がわかるHIV即日検査を実施しています。
通常では結果が出るまでに1〜2週間程かかりますが、検査当日に結果がわかる便利な検査です。
ただし、感染が疑われる機会から90日以上経っていなければ正確な結果がでない場合もあるため、注意が必要です。
また、即日検査で陰性か陽性か判断がつかない場合は判定保留となり、すぐには結果が出ないこともあります。
その場合も通常検査と同じように1〜2週間後に結果がわかるでしょう。保健所以外にも即日検査を行っている病院やクリニックはあります。
自治体での検査は匿名かつ無償で受けられますが、医療機関での検査は自由診療での検査となります。医療機関で検査を受ける際には、検査費用を事前に確認しておきましょう。

正確な結果を出すための性病尿検査のポイント

カウンセリング中
性病の尿検査では、尿を採取するタイミングと尿量が正確な結果を出すうえで重要です。

出始めの尿を採取する

尿道や膀胱の状態を尿検査で把握したいため、なるべく出始めの尿をとるようにしましょう。
健康診断などでの尿検査では、誤診断を防ぐために出始めの尿ではなく中間尿をとることが少なくありません。
膀胱内はもともと無菌状態ですが、外尿道口周辺の尿道には常在菌などが存在しています。
出始めの尿には細菌や尿道内の汚染物などが混じることがあるため、一般的な尿検査では出始めの尿を取らないようにしています。
健康診断などで行う方法とは少し異なるため、間違えないように注意してください。

検査の1時間前からは排尿を控える

尿量が少ない場合に検査できない可能性もあるため、検査の1時間前から排尿を控えるようにしましょう。
成人で

正常な1回の排尿量は200〜400ml程です。尿量は1時間で60ml程貯まります。再検査にならないよう1時間でも排尿を控えるようにしましょう。

尿による性病検査の受け方

尿検査の袋
尿による性病検査は自治体や医療機関で受けられます。受け方は、自治体の検査室や医療機関に実際に足を運ぶ方法と郵送での方法があります。
自治体の会場に実際に足を運んで検査を受ける方法では、事前に予約が必要なところがあるため、日程を調整して臨むようにしましょう。
対応している検査や結果の出る早さ、行う時間帯なども自治体で異なるため注意が必要です。
医療機関で行う場合は、対応している検査が幅広く、即日で結果が知れる検査も少なくないのが特徴です。通常検査は4〜5日で結果がわかります。
郵送での検査は、インターネットや電話で申し込みを行うと検査キットが届きます。届いたら血液や尿を自分で採取して返送し、結果を待ちましょう。
結果は、インターネットの個人の専用ページで知れるため、周囲の方に気付かれる心配も少なくてすみます。

編集部まとめ

元気よさそうな女性
本記事では、尿検査でわかる性感染症の種類や各検査のポイント、尿による性病検査の受け方を紹介しました。

主な性病検査は、視診と血液検査と尿検査です。尿道炎をおこしやすいクラミジアや淋菌、トリコモナスなどは尿検査で診断を行います。

通常の尿検査では、細菌や白血球が入りやすいため中間尿を採取していました。しかし、性病検査では出始めの尿での検査が推奨されています。

性感染症によっては自治体の保健所や病院などで検査が可能です。保健所は匿名かつ無償で検査を行ってくれますが、対応している検査が限定的です。

病院などは、選択肢が豊富で多くの性感染症の検査に対応していますが、自由診療のためお金がかかります。

放置しておくと感染拡大や症状悪化につながるため、それぞれの利点を理解して、性感染症の早期発見・早期治療につなげましょう。

この記事の監修医師