性病検査は血液でできる?種類・血液で行うメリット・デメリット・方法も合わせて解説
性病は自覚症状が乏しく、発見が遅れがちな疾患の一つです。早期治療を行えば抗菌薬治療で改善しますが、治療が遅れると心臓や神経などに後遺症を残してしまう可能性もあります。
また、治療を行ううえでどの種類の性病かを判別するための検査は必須です。検査の方法は帯下などの分泌物を培養する検査から血液検査までさまざまです。
そのなかで、今回は血液検査で判別できる性病について、メリットとデメリットを交えながら解説します。
監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)
目次 -INDEX-
性病検査は血液でできる?
性病の検査方法は3種類あります。
- 膣や子宮の入り口の帯下を採取し培養する
- 血液検査
- 問診や視診などの診察
それぞれの検査方法によって、判別できるものが異なります。そのため、血液検査のみで性病の原因を特定することは難しいでしょう。
性病の原因を特定するためには、いくつかの検査を組み合わせ網羅的に検査する必要があります。
性病は自覚症状に乏しく、感染に気付いたときにはすでに進行していたということも珍しくありません。
性病は性行為によって感染するため、いつの間にかパートナーにも感染してしまう可能性があります。
このようなことを防ぐために、予防のための定期検査を行うことが大切です。妊活を考えている方は特に定期検査を受けることをおすすめします。
血液で性病検査ができる性病の種類
血液検査で感染の有無を判断できる性病は以下の3種類です。
血液検査では、それぞれの原因に対する抗体を産生しているかどうかで確認します。
そのため、感染していても抗体が産生されていない時期に血液検査を受けると、陰性と診断されてしまうことがあります。
さらに、性病の種類によって抗体が産生されるまでの期間も異なるため注意が必要です。各自治体や医療機関のホームページに抗体が産生されるおおよその期間が記載されています。
受診を考えている方は一度ホームページを確認するか、電話で確認をとってみましょう。
ただし、不正出血や発疹など具体的な症状が出現している場合は、早めに受診して医師に相談してください。
受診の際はいつ頃に性行為を行ったのかを問われるので、事前に準備して受診するようにしましょう。
検査を受けた後は、結果が出るまで4~5日程かかるため、少し時間が必要です。
HIV
HIVはウイルスで人の免疫に関わるCD4リンパ球という細胞に感染します。
HIVに感染してからの初期段階ではほとんど症状がないため、初期段階で発見することは難しいでしょう。
HIVが進行し、厚生労働省が定める23種類の合併症に罹患すると免疫不全症候群(エイズ)と診断されます。
HIVの血液検査では、体内にHIVに対する抗体が産生されているかどうかを確認します。
しかし、ここで一つ注意しておきたいのがHIV抗体はHIVに感染してから6~8週間程かかってしまうという点です。
そのため、感染を疑う性行為があってから3ヵ月以上は期間を空ける必要があります。
HIV検査は、どこの医療機関でも行えるものではありません。HIV検査を実施している医療機関は各自治体のホームページに掲載されているので、検査を受けたい方は調べておきましょう。
梅毒
梅毒は性行為だけでなくキスをしただけでも感染する危険があります。梅毒の症状はさまざまで、病期として4つに分類されています。
第一期では感染した場所からできもの・しこり・ただれが出現するため、発見しやすい症状だと思われるでしょう。
しかし、このような症状が出現してもいったん消失してしまうため、治ったと勘違いしてしまい受診が遅れてしまう可能性があります。
できものやしこりがいったん消失した後は、第二期に移行します。第二期では四肢や体幹など全身に発疹が出現するでしょう。
しかし、第二期の発疹症状も時間の経過とともに消失していきます。このまま潜伏梅毒に移行しますが、この時期はほとんど症状はありません。
そのまま数年単位でなにもない状態が続きますが、この間にも梅毒は徐々に進行を進めています。
そして、最後の病期である神経梅毒にまで進んでしまうと、心臓や神経などに異常が出現し死に至ることもあるでしょう。
梅毒は母子感染を起こしてしまうため、感染した状態で妊娠してしまうと、赤ちゃんにも感染してしまうとされています。
そのような梅毒の血液検査では、HIVと同様に血液中に梅毒の抗体が産生されているかを確認します。
ここで一つ注意しておきたいことが、梅毒に感染してから4週間以上経過してから検査を受けなければならないということです。
骨盤内クラミジア
骨盤内クラミジアはクラミジアの感染により、骨盤内にまで炎症が広がってしまった状態のことをいいます。
クラミジアに感染してから1~3週間で症状が出現するとされていますが、無症状で経過することもあり発見しにくい疾患といえるでしょう。
そのようなクラミジアの検査は、血液中にクラミジアに対する抗体が産生されているかどうかを確認します。
抗体は感染してから1ヵ月以上経過してから産生されるため、検査も感染してから1ヵ月以上経過してから受ける必要があるでしょう。
性病検査を血液で行うメリット・デメリット
血液検査はどこの医療機関でも行うことができる簡易な検査です。
また、一度の採血で複数の性病に罹患しているかどうかを確認できるのは、患者さんの負担が少ないというメリットがあるでしょう。
一方で、原因となる性病によっては特定の医療機関でしか検査できないなどのデメリットもあります。
今回は、そのような血液検査のメリットとデメリットについて解説します。
メリット:妊娠中でも検査が受けられる
血液検査は妊娠中であっても行うことができます。妊娠してから医療機関で受ける妊婦検診にて、梅毒やHIVなどの性病に罹患していないかを血液検査などで確認します。
妊娠初期~妊娠12週頃では、梅毒やHIVについて検査で確認するでしょう。また、妊娠中期くらいになると、クラミジアの検査も行います。
妊娠してから性病の検査を行うのは切迫早産や産道感染のリスクについて確認するためです。
産道感染で新生児に感染してしまった場合、肺炎になり重篤な状態になってしまう可能性もあるでしょう。
そのような場合は、産道感染を起こさないために帝王切開になることも考えられます。
メリット:保健所で誰にも会わずに検査を受けられる
保健所では、匿名で検査を受けることができるだけでなく、どこの保健所でもHIV検査を受けることができます。
また、住所も伝える必要がないので医療機関よりもプライバシーは保つことができるといえるでしょう。
検査の内容によりますが、検査結果は1~2週間程度で出ます。また、HIVのみの検査であれば検査を行った数時間後に結果が出る場合もあるでしょう。
性病を疑ったときは、一度保健所に相談するのも一つです。
メリット:精度の高い検査を受けられる
血液検査でのHIV検査の精度は100人に1人くらいが偽陽性になることがありますが、かなり精度が高い検査といえるでしょう。
たとえ偽陽性性が出たとしても、さらに詳細な検査を受けて本当に感染しているか調べることもできます。
デメリット:保健所や医療機関の検査でないとわからない
血液検査は検査キットのように自宅で簡易に行うことができません。
血液中に細菌やウイルスの抗体が存在しているかは、医療機関か保健所に直接行かないとわからないでしょう。
デメリット:検査自体を受けるまで時期を必要とする種類がある
血液検査ではクラミジア・梅毒・HIVに感染しているか調べることができますが、調べるために適切な時期があります。
これは、感染しているかどうかを血液中に抗体が産生されているかどうかで判断しているからです。
それぞれの感染症で抗体が産生される時期は以下のとおりです。
このように検査を正確に行うためには、数ヵ月単位で間隔が空いてしまいます。そのため、性行為を行った日付をどこかにメモしておくのも予防法の一つです。
性病検査を血液で行う方法は?
性病検査は血液検査で行うことができ、実施できる場所は全国の保健所や医療機関で行えます。
保健所や医療機関によって調べることができる性病の種類によって差があるので、事前に調べてから受診した方がよさそうです。
保健所で検査を受ける
保健所ではHIVの検査はどこでも受けることができますが、クラミジアや梅毒は保健所によっては対象外の場合があります。
検査を受ける保健所に事前に問い合わせを行い、まず確認してみましょう。
保健所では匿名で検査を受けることができるのが、メリットの一つです。
保健所に相談
保健所は匿名で検査を受けることができますが、病気の種類や検査の時間に限りがあるので、病院程、検査の種類は豊富ではありません。
具体的な症状がある場合は、治療を早急に開始する必要があります。そのような場合は、病院に受診することをおすすめします。
症状はないが一度調べておきたいという方は保健所に相談するのも一つです。
クリニックで受診する
クリニックも保健所同様、検査を受けることができる項目に差があります。そのため、どういった検査が受けられるのか事前に問い合わせをしておく必要があります。
特に医療機関の場合、HIVは特定の医療機関のみでしか検査は行っていません。HIV検査を受けたい場合は、まずは近くの保健所に問い合わせしてみるのがよいかもしれません。
クリニックを受診する場合、男性なら泌尿器科・女性なら婦人科を受診してみましょう。若い女性の場合、受診しやすいように女性の医師が担当になるよう調整してもらえるクリニックもあります。
キットを使って検査を受ける
市販のもので性病のための検査キットがあり、商品ごとに対象となる検査項目が異なるようです。
性病を疑った段階では、どの性病に感染しているのかわからないので、お値段は高いですが検査項目の多い商品を買った方がよいかもしれません。
市販薬は自分でできて手軽ではありますが、やり方を間違い失敗してしまい偽陰性が出てしまうと、より発見が遅れる要因になるので注意が必要です。
しかし、仕事が忙しくなかなか受診する暇がない方や誰にも知られずに検査したいという方にはおすすめです。
編集部まとめ
今回は、血液検査で確認できる性病の種類について解説させていただきました。
検査項目が保健所や医療機関によって異なるので、受診する前に電話で相談してみましょう。
性病になった場合、恥ずかしくて受診が遅れてしまうこともあるでしょう。しかし、治療しないままだとパートナーや生まれてくる赤ちゃんに影響が出てきてしまいます。
保健所では匿名で相談できるので、ぜひ一度活用してみましょう。
参考文献