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ICLはやめたほうがいい?不安を感じる理由と術後の過ごし方

 公開日:2025/10/17
ICLはやめたほうがいい?不安を感じる理由と術後の過ごし方

ICL手術(Implantable Contact Lens:眼内コンタクトレンズ)は、視力矯正手術の一種として近年注目を集めています。しかし、「ICL手術はやめたほうがいい」という意見や不安の声を耳にし、不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

本記事では、ICL手術を希望する方が増えている理由や懸念点、術後の適切な過ごし方やケア方法などについて正しく解説します。

ICL手術はやめたほうがいいと言われる理由


ICL手術に興味を持っていても、インターネットの情報や費用面で不安を感じるという方は少なくありません。まずは、「ICLはやめたほうがいい」といわれる背景を整理して解説します。

不安をあおる口コミや体験談による影響

最近は、SNSやブログなどでICL手術の体験談を確認することができます。
体験談はリアルな感想として参考になりますが、なかには「ICL手術はおすすめしない」「やめたほうがいい」といった否定的な意見や個人的な感情、特殊なケースが強調されている場合もあります。ごく稀なトラブル事例が取り上げられ、ICL手術自体が危険に思えてしまい、治療を検討中の方が不安に感じることもあるかもしれません。

しかし、安全に手術を受けて満足している方の体験談よりも、こうした極端な体験談が目に留まりやすくなっている可能性があるため注意しましょう。
情報の取捨選択が難しい時代ですが、不安を感じたら信頼できる医師に相談し、事実に基づく説明を受けることが大切です。

手術に対する漠然とした不安

目の手術と聞くだけで怖さを感じる方も少なくありません。眼内にレンズを入れると聞くと「失明しないだろうか?」「痛みに耐えられるだろうか?」といった漠然とした不安が湧いてくるのは自然なことです。
眼科手術は失明や痛みというネガティブなイメージを抱きやすいものですが、ICL手術は眼科領域で安全性が確立され、豊富な手術実績がある治療方法です。

正しい情報の不足が「やめたほうがいい」という声につながることもあるので、不安な点があれば事前に医師に質問し、心配を一つひとつ解消しておくとよいでしょう。

費用の高さが「やめたほうがいい」と感じさせる?

ICL手術は公的医療保険が適用されない自由診療のため、費用が高額になる点も不安感を高めると考えられます。
ICL手術の一般的な費用相場は両眼で50〜100万円程度で、ほかの視力矯正手術より費用がかかる傾向があります。
「お金がかかりすぎるならやめたほうがいいのでは」「本当にこの治療が必要なのだろうか」「失敗したらどうしよう」という不安や迷う気持ちが「やめたほうがいい」という判断につながることも考えられます。

しかし、ICL手術は一見高額に見える治療であっても、再治療や合併症のリスクが低く、結果的に生涯の医療費負担が抑えられる場合もあります。そのため、費用だけにとらわれず、手術の安全性や術後管理の充実度なども含めて総合的に判断することが大切です。

ICL手術の基本と仕組み


ICL手術とは、眼の中にやわらかい素材のレンズを挿入し、近視や遠視、乱視の矯正を可能にする視力回復手術です。レーシックのように角膜を削ることなく、虹彩と水晶体の間に薄いレンズを埋め込んで光の焦点を矯正するので、角膜が薄い方や強度近視の方にも適応できるのが特徴です。角膜を削らないので、ドライアイなどの合併症が起こりにくいといわれています。

眼内レンズを挿入する際は角膜の縁を約3mmだけ小さく切開し、折りたたんだレンズを眼内に入れます。切開創が小さいため手術後に縫合する必要もなく、眼圧によって自然に傷口が閉じて治癒します。

なお、眼内レンズは半永久的に使用可能ですが、将来的に必要が生じればレンズを取り出すことも可能です。この可逆性(元に戻せること)もICL手術の大きな特徴です。

ICL手術のリスクを正しく理解しよう!


ICL手術は安全性の高い手術とされていますが、手術である以上、いくつかのリスクがあります。リスクを正しく理解して検討できるように、ICL手術特有の合併症リスクや、術後に起こり得る見え方の変化を確認しておきましょう。

合併症のリスク

まず、ICL手術にはまれに感染症や合併症が起こるリスクがあります。
例えば、切開創から細菌が侵入して炎症を起こすと、眼内炎を発症する可能性があります。
眼内炎とは強い痛みや視力低下が急に起こる病気で、発症する確率は約0.02%(およそ1/6,000件)と報告されています。

また、ICL手術でレンズを挿入する位置はピントを合わせる役割を担っている水晶体のすぐ前で、レンズが水晶体を圧迫したり、レンズによって目の中を満たしている液体(房水)の流れが変わったりすることで白内障発症リスクが上がる可能性があります。
近年は、技術の進歩と改良によって房水の流れを妨げにくいホールICLが使われるようになり、白内障の発生率は0.49%と改善されています。

さらに、眼内にレンズを入れるため眼圧上昇や緑内障のリスクにも注意が必要です。
ほかにも、術後の炎症や角膜内皮細胞の減少、レンズの位置ずれ、黄斑浮腫など、ICL手術後に起こり得る合併症や副作用が報告されています。万が一トラブルが起きた際に適切に対処できるよう、どのようなリスクがあるのか知っておきましょう。

参照:『ICLの合併症』(JSCRS(日本白内障屈折矯正手術学会))

術後に起こり得る見え方の変化

ICL手術後、視力そのものは良好でも見え方に変化を感じる場合があります。
代表的なのがハロー・グレア現象と呼ばれるもので、夜間や暗い場所で車のライトや街灯などの光がにじんで見えたり(ハロー)、眩しく拡散して見えたり(グレア)します。

多くの場合は時間経過で視力が安定してくると解消されるので、術後に見え方が変化するかもしれない点、症状が出た場合は医師に相談して経過観察が必要である点を理解しておくことが、安心につながります。

術後の過ごし方と注意点


ICLの手術自体は短時間で終わりますが、術後の回復をスムーズにし、合併症を予防して長期的な視力の安定を得るためには、術後の過ごし方が重要です。
ここでは、手術直後から日常生活に戻るまでに知っておきたい注意点や、万が一異常を感じた場合の対処法について解説します。

術後すぐに気をつけるべきこと

術後早期は、感染症を防ぎスムーズに回復するために細心の注意を払いましょう。特に傷口が完全に塞がっていない術後直後の期間は、目をこすったり触ったりしないことが大切です。手術当日はもちろん、翌日以降もしばらくは無意識に目に触れてしまわないよう十分意識してください。就寝時には保護メガネやゴーグルを着用し、眠っている間に目をこすらないようにすることも有効です。

ほかにも、次のような点に気を付けましょう。

  • 処方された目薬をきちんと使用する
  • 洗顔や入浴の注意点を守る
  • 運転やパソコン作業の注意点を守る

点眼薬は感染予防や炎症抑制のために重要です。医師の指示に従い、頻度と回数を守って使用し、自己判断で中断しないようにしましょう。
また、術後の洗顔やシャンプーの注意点、職業や生活習慣に合わせて運転やパソコン作業の注意点なども確認し、目を清潔に保つようにしましょう。

長期的な視力安定のために必要なこと

手術後は、視力がすぐに安定するわけではありません。術後の視力を長期的に安定させ、良好な見え方を持続するには、眼科受診を継続することが推奨されます。

まず、医師が指定する定期検診は指示どおりに受診しましょう。
ICL手術後は通常、翌日検診から始まり1週間後、1ヶ月後、3ヶ月後といったスケジュールで術後検診が行われます。この間に問題がなければ術後の診察の頻度は落ち着きますが、その後も半年〜1年毎に視力や眼圧、レンズの状態、角膜の状態などを確認することで、トラブルの早期発見と対処が可能です。見え方が安定していても受診は欠かさないようにしましょう。

また、処方された点眼薬は症状が落ち着いてきても自己判断で途中でやめない、できるだけ目を強くこすらない習慣を心がける、目の乾燥を防ぐ、激しい運動やアイメイクは医師と相談のうえ再開する、といったことを意識するのもポイントです。
これらを意識することで、ICL手術後も長期的に快適な視力を維持できるでしょう。

異常を感じたときの対応

万が一、術後に何かおかしいと感じる症状が現れたら、自己判断で様子をみることはせず、速やかに眼科を受診することが大切です。
具体的には、次のような症状に気を付けましょう。

  • 強い目の痛み
  • 急激な視力低下
  • 瞼の腫れ
  • 大量の目ヤニ
  • 目の充血や異物感
  • ハロー・グレア現象の悪化

こうした異常や違和感は次回の検診日まで待たずにクリニックに連絡し、医師の診察を受けることが安心につながります。

ICL手術を希望する方が増えている理由


「やめたほうがいい」という意見がある一方で、ICL手術は視力矯正の選択肢として希望する方や実際に受ける方が増えています。これは、ICL手術にはさまざまなベネフィットがあり、信頼を得てきた結果といえます。ここでは、ICL手術が支持される主な理由を4つの観点から解説します。

参照:『JSCRSの調査発表』(JSCRS(日本白内障屈折矯正手術学会))

可逆性がある

第一の理由として挙げられるのが、ICL手術が可逆性を持つ手術である点です。
ICL手術では眼内に挿入したレンズを将来的に取り出したり交換したりすることが可能です。例えば、視力が大きく変化した場合や、加齢に伴う白内障など別の眼疾患で手術が必要になった場合、ICLレンズを取り出して元の状態に戻す対応ができます。

角膜を削って視力を矯正するレーシックでは、一度削った組織を元どおりにすることはできませんが、ICL手術なら状況に合わせて柔軟に対応できるという安心感があります。「もしも」のときに備えたいと考える方にとって、心強い選択肢であるといえるでしょう。

適応範囲が広い

第二に、ICL手術は適応となる屈折度数や目の状態の範囲が広いことが挙げられます。
強度近視や乱視、角膜の厚さや形状などの問題でレーシックが難しいケースでも、ICL手術なら適応できるケースがあります。例えば、レーシックでは角膜を削る量の関係で手術が難しい-10Dを超える強度近視の方でも、ICL手術なら視力矯正が可能な場合があります。

さらに近年では、老眼にも対応した多焦点レンズが登場している点も注目されており、遠くのピントだけでなく近くの見えづらさも同時に改善できる可能性があります。

このように、これまで視力矯正手術が難しかった方にとっても、ICL手術は有力な選択肢となりつつあります。

コントラスト感度が良好

第三の理由は、ICL手術後の見え方の違いです。とりわけ色の濃淡や輪郭の視認性といったコントラスト感度が良好です。

レーシックでは角膜を削る影響で、術後に光学的な歪みが生じ、暗所視力やコントラスト感度がやや低下することがあります。
一方、角膜を削らないICL手術では光学的な歪みが少なく、術後も鮮明でクリアな視界を得やすいと考えられます。レーシック後に生じやすいハロー・グレアのリスクもICL手術では軽減されやすいといわれており、特に夜間の運転や薄暗い環境での見え方が自然であることは、生活の質(QOL)向上につながるでしょう。

身体への負担が少ない

身体への負担が少ない点や眼球組織への侵襲が小さい点も特徴で、手術時間は両眼で30分前後と短く、基本的には日帰り手術(※)で術後の回復も早いといわれています。

※術前検査・術後の経過観察が必要です。

ICL手術を検討する際に大切な判断基準


さまざまなベネフィットがあるICL手術ですが、安全性と満足度を高めるにはクリニック選びと術前検査の質が重要です。適応検査を丁寧に受けることと、経験豊富なクリニックを選ぶことの重要性について解説します。

適応検査を丁寧に受けることの重要性

ICL手術では、手術の適応を慎重に見極めるために事前に適応検査が行われます。適応検査の内容は下記のとおりです。

  • 角膜の厚みや形状
  • 前房の深さ
  • 瞳孔の大きさ
  • 屈折度数の安定性
  • 白内障や緑内障など目の病気の有無

これらの検査によってICL手術が安全に行える条件を満たしているかを確認し、リスクの低減につなげています。
適応検査が不十分なまま手術を行うとレンズサイズのミスマッチや予期せぬ合併症を招く恐れがあるので、ICL手術を検討する際は信頼できるクリニックで丁寧な適応検査とカウンセリングを受けることが重要です。

経験豊富なクリニックを選ぶポイント

ICL手術は専門性の高い手術なので、経験豊富で信頼できるクリニックと医師を選ぶことが成功のカギであるといえます。
経験豊富な医師は術前の適応検査の精度が高く、トラブル発生時の対応力にも優れていると考えられます。

また、手術前のカウンセリングでベネフィットやリスクをしっかり説明してくれるかどうかも重要な判断基準です。術後の定期検診体制が整っているか、緊急時に対応できる環境があるかも確認しましょう。

まとめ


ICL手術は「やめたほうがいい」と不安視されることもありますが、多くの方が視力改善に成功している手術でもあります。重要なのは正しい知識を持って検討し、必要に応じて医師に相談して不安を解消することです。

手術である以上、術後の感染症やハロー・グレア現象などのリスクはゼロではありません。しかし、これらのリスクについてきちんと知り、心配しすぎずに術後の注意点を守って適切に過ごすことが大切です。
適応検査をしっかりしてもらえる、信頼できるクリニックで自分に合った選択をしましょう。

この記事の監修医師