FOLLOW US

目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 医科コンテンツ
  4. スマホ認知症とは?症状・対策・危険性も解説

スマホ認知症とは?症状・対策・危険性も解説

 公開日:2024/02/26
スマホ認知症

現代ではスマートフォン・タブレット・携帯ゲーム機・音楽プレーヤーなど、インターネット接続が可能な多くのデバイスが普及しており、これらへの依存が増加しています。

周りを見渡すと、誰もが自分のスマートフォンに夢中になっている光景が現代の生活スタイルではないでしょうか。

SNSプラットフォーム(TikTokやInstagramなど)を通じた情報の収集や発信・オンラインショッピング・ゲームプレイ・動画視聴など、長時間の利用が一般的となりました。

その結果、スマートフォンを頻繁に使用する人において、認知症のような症状が見受けられるようになりました。

この記事では、スマホ認知症について原因・症状・対策に焦点を当てて紹介します。

この記事を読むことで、スマホ認知症と上手く付き合えるようになるでしょう。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

プロフィールをもっと見る
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

スマホ認知症とは?

スマホを見る女性
スマホ認知症、別名「デジタル認知症」とも呼ばれ、デジタル機器の長時間使用により脳の処理機能が低下し、認知能力が影響を受ける状態をいいます。デジタル機器は多くの情報を脳に供給します。
その結果、脳の処理能力が追いつかなくなり注意力・集中力・記憶力などが低下し、認知症に似た症状が現れることがあるのです。
この症状は「認知症」という名称が付いていますが、医学的な診断ではなく一時的な記憶の問題であり、年齢に関係なく発症する可能性があります。
このような人は、デジタル機器に過度に依存することがあり、これがスマホ認知症を誘発する要因となるのです。
それでは、なぜスマホに夢中になるのでしょうか。それはドーパミンが放出されることが原因といわれています。
ドーパミンは、神経伝達物質の一つで脳内の報酬系を活性化し、快感を引き起こす際に中心的な役割を果たしています。
例えば、食事中よりも、食べ物が提供される瞬間にドーパミンが放出されるのです。ドーパミンは快楽や報酬と関連しており、食べ物が到着する瞬間により喜びをもたらします。
進化論的にいえば、人間は新しい情報を探求する本能を発展させました。これは環境を理解する能力が高まるほど、生存の確率が向上するという考えに基づいています。
この本能を支えるために、脳内でドーパミンが報酬系を活性化する役割を果たしているのです。未知の顔や新しい事物を目にすると、ドーパミンの生成が促進されることがあります。このことから、新しい情報を得る行為は脳にとって報酬的な要素があると解釈できます。
タップする行為は、スマートフォンが新たな情報への探求欲を満たす手段なのです。

スマホの脳への情報負荷が原因

眉間を触る男性
スマホ認知症の原因は、スマートフォンからの過剰な情報収集に関連しています。日常的に膨大な情報が脳に入ってくることで、脳の容量が過負荷になることが原因です。
脳の前頭前野が処理できないほどの情報が毎日入ってくることで、脳の容量がパンクします。
動画やニュースなど、何気なく見ているものでも、脳は情報を処理するために積極的に活動しているのです。
通常、人間の脳は情報を受け取り処理し適切なタイミングで放出するプロセスを経ています。
しかし、情報を「何気なく」取り入れてしまうと、それが脳内で蓄積され適切に処理されずに残ることがあります。この情報の蓄積により、脳の容量がオーバーフローする可能性が高まるのです。

ブルーライトも原因の1つ

暗がりでスマホを見る
ブルーライトが目に入ると、脳はそれを朝と解釈し目を覚まします。このため、夜間にスマートフォンを使用することで眠りが妨げられ、昼間に十分な覚醒感を維持することが困難になります。生体リズムが混乱する結果、頭痛を引き起こしたり、会社や学校を休む原因になったりすることがあります。
ブルーライトは、太陽光線に含まれ、波長が非常に短く強力なエネルギーを持つ光線です。近年多くの研究により、ブルーライトが体内リズムを調整し、健康を保つうえで重要な役割を果たすことが明らかにされています。
スマートフォン・ゲーム機・パソコンモニター・液晶テレビなど、これらのデバイスはすべてブルーライトを放射します。特にスマートフォンから放射されるブルーライトの量は非常に多い傾向があるのです。

スマホ認知症の症状は?

目を抑える男性
スマホ認知症には次の症状が現れます。

  • 物事が思い出しにくい
  • 注意力散漫がみられる
  • 言葉が出てこない
  • 生活意欲がわかない

これらの症状について解説します。

物事が思い出しにくい

スマホ認知症は認知症の症状がみられるため、これまで認識していたことが失われ、知人でも特定することが難しくなることがあります例えば、顔を見ても誰なのかわからなくなるなどの失認症状が現れることがあります。
新しい出来事の記憶が特に影響を受けやすく、同じことを繰り返し尋ねたり、食事を忘れたりすることがあります。
スマホを利用しながら別のことを同時にするときは、一般的に情報は海馬ではなく線条体に記憶されることが多いので、その後の取り出しが難しくなります。海馬は事実や経験の記憶の主要な保存場所である一方、線条体は新しい技術やスキルの習得に関連しています。

注意力散漫がみられる

大量の情報が脳に入ってきて、それを効果的に処理できないために、物事をスムーズに思い出せない、または注意力が散漫になることがあります。
大学の調査でインターネット依存傾向郡とインターネット非依存郡を比較するとインターネット依存傾向群の方が不安感・抑(よく)うつ 感・イライラ感が募っているという結果がでています。

言葉が出てこない

スマホ認知症は認知症に似た症状が出ます。言葉が出てこないのもその一つです。なぜなら言葉をつかさどる前頭葉に負担がかかることから前頭葉の働きが鈍るからです。そのため、言葉が出ない・怒りっぽくなるなどの神経症状も現れることがあります。

生活意欲がわかない

前頭葉が感情を調整する機能の低下により、物事を深く考えにくくなります。また、感情の安定性が損なわれることがあり情緒が不安定になります。このような状態になると生活意欲がわかなくなります。

スマホ認知症にならない対処法は?

スマホを持つ女性
スマホ認知症にならない対処法は、スマートフォンなどデジタルデバイスとの接触時間を削減することです。スマートフォンを見る時間に気を付けましょう。
同時に、次のようにスマホ認知症の改善と予防に向けた対策をすることが重要です。

  • デジタルデバイスを使用する時間を制限する
  • 休憩時間を取る
  • 特定の目的がない場合はスマートフォンを触らないようにする
  • アプリを整理する
  • 不要なソーシャルメディアの通知を無効にする

以下はそのための対策ですので詳しく解説します。

スマホに触らない時間を作る

スマホに触らない時間を作るには下記を実践すると効果的です。

  • ベッドにスマートフォンを持ち込まない
  • スマートフォンの利用時間を厳格に制限する
  • 週末のうちの少なくとも一日はスマートフォンを使用しない生活を実践する
  • 一日の中で思考に集中せず、リラックスする時間を確保する

さらに、スマートフォンに依存しない生活様式を築くために、以下の習慣を導入することもおすすめです。

  • 電子書籍ではなく、書店に足を運んで紙の本を購入する
  • 記憶したい情報はスマートフォンのカメラではなく、手書きのメモに記録する

コミュニケーションを増やす

スマートフォンの使用が増加する原因の一つとして、対面でのコミュニケーションが不足していることが考えられます。
SNS上のつながりだけでなく、仲間との対話や一緒にスポーツを楽しむなど、スマートフォンから離れる時間の過ごし方についても検討してみることが重要です。

デジタルデトックスを行う

デジタルデトックスとは、デジタル機器との接触時間を減らすことです。これらが症状の改善につながるといわれています。日常的にスクリーンタイムに注意することが大切です。
スマホ認知症の改善と予防に向け、以下の対策を実施してみてください。

  • デジタルデバイスの使用時間を制限する
  • 休憩時間を取る
  • 目的がない場合はスマートフォンを操作しない
  • アプリを整理する
  • 不要なSNSの通知をオフにする

直ぐに調べることをやめる

気になることがあっても、すぐにインターネットで調べるのではなく、自分の頭を使って考えるようにすることが大切です。
子どもに関する研究によれば手を使う、つまり紙と鉛筆を使って文字を書く能力は、文字を読む能力と密接に関連していることが分かっています。
さらに、タブレットやスマートフォンを長時間使用している子どもに関して、算数や理論的な科目を学ぶための運動技術を習得できない可能性についての報告もあるのです。
スマホですぐ調べるのではなく、紙と鉛筆を使ったほうが良いといえます。

スマホ認知症の危険性とは

スマホを見る男性
スマートフォンの普及が進むにつれて、これまでにほとんど見られなかった年齢層で認知症に似た症状を訴える人が増加しています。そのため、スマホ認知症を発症すると私生活に危険性を及ぼすことがあるのです。
その危険性は次のようなものがあげられます。

  • どの世代でもありえる
  • 発達にも影響が出る
  • 認知症などのリスクも上がる

これらについて詳しく解説します。

どの世代でもありえる

スマホ
スマホ認知症のリスクは性別・年齢にかかわらず存在してます。スマートフォンの使用は若者に限らず、高齢者の間でも増加傾向です。
近年では、高齢者向けに使いやすいスマートフォンが増加し、スマートフォンの利用がより一般的になっています。
特に脳が成長過程にある若い人の方が依存する事で脳の発育に異常をきたす可能性が高いです。

発達にも影響が出る

小児・思春期の健康に害を及ぼす可能性が指摘されています。ブルーライトの刺激によって、夜でも目が朝だと認識し脳が覚醒状態になるのです。そのため、夜間にスマートフォンなどを使用すると、眠りが妨げられ昼間に起きることが難しくなることがあります。この体内リズムの乱れが、頭痛や不登校の原因となることがあるのです。
IT業界の巨人といわれるアップルの創業者、スティーブ・ジョブズは、自身の子どもたちがiPadを使用する際には慎重になっていました。またマイクロソフトの創業者のビル・ゲイツは、自身の子どもたちにスマートフォンを持たせることを14歳まで待ったといわれています。

認知症などのリスクも上がる

スマホ認知症には、若年性認知症を誘発するリスクが潜んでいます。
スマホの長時間使用でみられる、記憶力の低下・集中力の低下・注意散漫、言語障害のような症状は認知症と似た特徴を持っています。スマホ認知症の場合、これらの症状が若年性認知症へとつながる可能性があるため、留意する必要があるでしょう。

スマホ認知症は仕事に支障が出やすい

スマホをガン見する男性
仕事するうえで集中力や業務を覚えるための記憶力は必須です。しかしながら、スマホ認知症になると集中力が続かず、記憶力が衰えるといわれています。
情報をフォルダに保存していると思っている場合でも、実際にはそれを覚えていないことが実験で示されています。
スマートフォンの存在がわずかでもあれば、認知能力の容量が減ることが実験からわかっています。
すなわち、スマートフォンがポケットに入っているだけで、集中力の妨げになる可能性があるのです。それは、新しい情報を与えてくれるスマートフォンにドーパミンが常に働いて注意を向けているのかもしれません。
米国の実験で「無視する」ことにも集中力を割いていることがわかっています。テスト中に電話やチャットメールが届くようにした被験者は成績が伸びなかったというものです。
このように、スマートフォンの存在だけでも集中力が低下し仕事に影響を与えます。

スマホ認知症対策には運動などが効果が高い

運動
運動をすれば、ストレスや不安への効果もあるとされています。スマートフォンを手に取りたくなる衝動や今読んでいる記事から離れるのにリンクをクリックしたくなくなる衝動など、押し寄せる情報に対処するには「衝動を我慢」する必要があります。
これらをコントロールするためのテストでは、20分間運動した大人はストループテスト(神経生理学・選択的注意を測定するテスト)の結果が良かったとの報告があるのです。これは20分間の運動によって「衝動を我慢する力」が向上したといえるでしょう。
運動することにより、スマホ認知症の症状である集中力・記憶力・ストレスへの耐性力の欠如など基本的に全ての知的能力が向上するといえます。
スポーツや身体を動かす活動など、スマートフォンから離れてアナログ的に過ごす時間の使い方についても検討してみてください。

編集部まとめ

スマホを指さす女性
私たちは日常生活を始める際にスマートフォンを使用し、日が暮れるまでスマートフォンを手放さずに過ごしています。

1日に2,600回以上スマートフォンを操作し、平均して10分に1度スマートフォンを手に取っているという状況です。

スマートフォンは非常に便利ですが、一日中使用したり、何事もインターネットに依存しすぎたりするとスマホ認知症のリスクが高まります。

スマホ認知症を予防するためには、適切なタイミングでスマートフォンを離れる習慣を身につけ、自分の脳を積極的に活用することが重要です。

この記事の監修医師