生理痛を緩和する方法は?原因・症状・対処法をご紹介
女性の身体はちょっとしたホルモンバランスの乱れによって大きく体調を崩してしまいます。
ホルモンの分泌量の変動は生理周期に合わせて起こるので、生理中は、気持ちの揺らぎや体の不調が起こりやすくなります。
それと同時に悩めるのが生理痛です。これもホルモンバランスの乱れによる現象の1つです。
生理痛には個人差があり、まったく気にならない方もいますし、ひどい生理痛で毎回悩んでいる方もいます。
ここでは生理痛の原因・症状・対処法をご紹介します。
監修医師:
阿部 一也(医師)
目次 -INDEX-
生理痛を緩和する方法は?
生理痛は、毎月我慢しなければならないものではありません。生理痛がなぜ起こるのかを理解することで、対処できます。
血流を促進させて筋肉の緊張を和らげるために、お腹や腰の周りにカイロをあてたり、温水ボトルを使ったりするとじんわりと温まって痛みが緩和するように感じます。
ゆったりとした気分で睡眠をとるだけでも有効な手段です。少し体を動かせるようでしたら、軽い運動やストレッチで筋肉をほぐしたり、ヨガ・ウォーキング・マッサージでリラックスしたりするのもおすすめです。
我慢するのではなく、非ステロイド性抗炎症薬や鎮痛剤を利用して痛み自体を和らげることもできます。さまざまな方法で生理痛は緩和させることが可能です。
生理痛の原因
生理は、妊娠をしなかった場合に不要になった子宮内膜が血液と一緒に体外へ排出される際の出血のことです。この時、子宮の中に溜まった血液の排出を促す物質がプロスタグランジンです。
プロスタグランジンには子宮を収縮する働きがあり、これが原因で生理痛の症状がみられます。
生理痛は、人によってその強さや症状がさまざまです。ほとんど感じない方もいれば、日常生活に支障をきたすほどの生理痛である月経困難症の方もいます。
生理痛の原因となるのは、ほかにも、冷え・便秘・姿勢の悪さなどによる血行不良などです。また、生理に対する不安や憂鬱な気持ちからくる場合もあります。
プロスタグランジンによる子宮の収縮
生理痛は、子宮内膜が剥離する際の子宮の収縮によって生じる場合があります。この収縮の原因になっているのが、プロスタグランジンと呼ばれる物質です。
プロスタグランジンが生理痛時に子宮内膜から放出されて、子宮筋層の平滑筋を収縮させます。
過剰に分泌され、その結果子宮の過収縮を誘発することで痛みや痙攣を引き起こします。
血行不良
体が冷えることで血液の循環が悪くなり、プロスタグランジンが骨盤内で滞ってしまいます。子宮の収縮、痛みが強くなってしまうのが生理痛です。
生理がはじまると、平常時よりも体温は下がります。そのうえプロスタグランジンが血管を収縮させるので、生理中は血行が悪くなり体が冷えやすい状態です。
血行不良による生理痛は、下腹部や腰を冷やさないような対策を打つことで緩和できます。
子宮頸管が狭い
子宮頸管が狭いと経血が外にスムーズに流れにくくなり、痛みを感じます。
これは、出産を経験すると広がりますので、痛みが軽くなる可能性があります。若い女性や出産経験のない女性の場合に多い原因です。
ひどい場合は原因となる疾患があることも
生理痛は人によって痛み具合はさまざまです。人によっては日常生活に支障が出る程の痛みで寝込んでしまう方もいます。
通常であれば、鎮痛剤などを服用すると改善します。しかし、その痛みが長期間続いたり、鎮痛剤でもまったく改善しない場合は、器質性月経困難症が疑われるでしょう。
器質性月経困難症は、月経困難症の1つで、子宮内膜症・子宮筋腫・子宮腺筋症などの病気が疑われます。このような場合は、婦人科を受診して、原因を探る必要があります。
生理痛の症状
一般的には、生理痛の症状は下腹部や腰の痛みになります。
子宮内膜から放出されるプロスタグランジンが臓器の平滑筋を収縮させることで、下腹部や腰に痛みがあらわれるのです。
痛み以外に頭痛・胃痛・吐き気・めまい・腸蠕動痛・下痢などを伴うこともありますが、これらの症状は月経困難症の症状です。
ここからは、生理痛の症状を詳しく解説します。
下腹部痛
生理痛のなかでも一般的な症状が下腹部の痛みです。下腹部の痛みは、子宮の収縮や子宮内膜の剥離に関連して起こることがほとんどです。
痛みの位置は、主に下腹部の中心ですが、まれに左右のどちらかに偏ることもあります。痛み方は人によって異なりますが、鋭い痛みやひきつれ感などを感じます。
痛みの程度も人によって違いがあり、なんとなくお腹が重いような軽い不快感から腰を曲げる程の激しい痛みまでさまざまです。
また、下腹部だけでなく、背中や太ももに痛みが広がり腰痛のようになる場合も見受けられます。
腰痛
腰痛も下腹部痛と同じくプロスタグランジンの働きによって起こる痛みです。プロスタグランジンが子宮や周囲の血流を悪化させ、骨盤周りを中心に痛みやだるさを感じます。
腰痛の場合は、下腹部痛が広がって腰痛になった放散痛として感じられることがあります。下腹部痛に比べ腰痛は、重だるさや不快感が特徴的です。
腰の周辺の筋肉が緊張し痛みを引き起こします。下腹部から広がった腰痛は、さらに広がり背中・お尻・太ももまで痛むこともあります。
腰痛の場合は、生理の初日から数日の間にピークになり、生理周期の終わりに軽減するのが一般的です。
生理痛の対処法
生理痛の対処方法は、通常セルフケアになります。
そのため、さまざまな方法で痛みを緩和したり、民間療法や人づてに聞いた方法を試したりなど、自分に合った方法を見つけ出すことが多いでしょう。
そのなかでも、一般的に効果の期待できる方法をご紹介します。
身体を冷やさない
生理痛の第一の敵は冷えです。体が冷えると生理痛がひどくなります。体のなかでも特に下半身を中心に温めて、血行を良くすると生理痛を緩和できます。
体を温める方法としては、入浴や半身浴がおすすめです。じっくりとお風呂に入ることで血流もよくなります。また、普段に行うこととして、使い捨てカイロ・ひざかけ・腹巻の使用も効果的です。
お腹と腰の下辺りにカイロを貼って温めると、血流がアップし、リラックス効果も期待できます。
特に女性の場合は足元が冷えてしまうので、足湯も効果があります。41度から42度のお湯に15分から20分ぐらい足をつけると効果的です。
夏場であれば、強い冷房・冷たい飲食物・薄着などは極力避けることをおすすめします。
ツボ押しをする
生理痛を緩和する方法として、ツボ押しをするのも効果的です。生理痛に効くツボを押したり温めたりすることで血行を促進します。ツボ押しは、生理が始まる1週間前から始めると効果が出やすいといわれています。
生理痛を和らげるのに効果があるといわれているツボは4つです。気海(きかい)は、頭から縦に伸びる身体の中心線上で、おへそから指約2本下にあります。気海へのツボ押しは、全身の血流を促す作用により体全体を温める効果が期待できます。
手の親指と人差し指の骨が交わる箇所より、少し人差し指よりのくぼみにあるのが合谷(ごうこく)です。自律神経の乱れを整えます。
三陰交(さんいんこう)は、足の内くるぶしの一番高いところから指4本分上で、すねの骨の後ろ側にあるくぼんだ箇所です。ホルモンバランスを整える作用があるので、生理痛の緩和だけでなく、婦人科系の症状や冷え性の改善にも利用されます。
最後のツボが照海(しょうかい)です。足の内くるぶしの一番高いところから親指1本分下のくぼみのあるツボです。生理痛の緩和や生理不順・冷え性改善に期待がされます。
ストレッチなど適度な運動をする
体全体または骨盤内の血流をよくするために、ストレッチなどの適度な運動をするのは生理痛の低減に効果的です。
また、体を動かすことで、痛みで固まっていた筋肉をほぐしリラックスできます。余計な力が体から抜けていくので、生理痛の緩和にぴったりです。ただし、生理痛がひどい時は無理に体を動かすことは避けましょう。
アロマなどでリラックスする
体や精神をリラックスさせることは、体がほぐれるだけでなくストレスの解消にもなり、生理痛が和らぎます。
リラックスさせる方法として、アロマセラピーを取り入れるのも一つです。ハーブなどの自然植物から抽出した香りの成分を利用し、心身を健康にする方法です。
服などに垂らし匂いを嗅ぐのもよいですが、お風呂に入れるのもよいでしょう。ハーブのリラックス効果プラス入浴による血流促進にて生理痛の痛みを和らげてくれます。少しぬるめのお湯にゆっくりとつかるとよいのでしょう。
入れるアロマオイルの香りは自分好みのもので構いませんが、ラベンダーやイランイランなどリラックス効果の高いものもよいです。これらは女性ホルモン様作用もあります。
また、温かいハーブティーを飲むのもおすすめです。
市販の鎮痛剤を飲む
生理痛の原因が何かしらの病気である場合は、その症状に合わせた投薬の必要があります。
しかしそうでない場合は、痛みがひどくなる前に市販の鎮痛剤を飲むのも一つです。
痛みがひどい時に飲んでも、プロスタグランジンがすでに分泌されている状態では薬の効果は十分に発揮されるわけではありません。痛みがひどくなる前に飲むことで、痛みも少ないうえ鎮痛剤の量も少なく済むでしょう。
しかし、痛み止めが効かない場合・痛みが以前と比べひどくなってきた場合・経血量が増えてきた場合などは、子宮内膜症や子宮筋腫といった病気の可能性があるので、かかりつけの医師に相談しましょう。
特に、20代・30代の方は子宮内膜症を発症しやすく、放っておくと悪化してしまいます。
生理痛を緩和する姿勢は?
生理痛の時には、どのような姿勢を取っても痛みが緩和されないように思いがちです。しかし、いくつかの姿勢は、子宮の収縮や筋肉の緊張を緩和し、痛みを和らげるのに役立つかもしれません。
背中を丸めて膝を胸に近づけるような姿勢である胎児位は、腹部に圧力がかかりにくいので、痛みを緩和する可能性があります。また、腹ばいの姿勢も、背中が伸びて骨盤が正しい位置に戻るのでよい姿勢です。
仰向けに寝る場合は、背中にクッションなどを置いて背中をサポートすると効果的です。ほかにもいくつかの効果が期待できる姿勢があります。
これらは個人によって効果が変わるので、自分に合った心地よい姿勢を見つけましょう。
骨盤を立てて座る
生理中は、下腹部や腰に負担をかけないような座り方を意識することが重要です。これにより生理痛を緩和できることがあります。
デスクワークで座る時間が長くなる場合は、椅子に浅くかけて、骨盤をたてるイメージで座ります。
また、長時間同じ姿勢をしていると血行が悪くなるので、適度に立ち上がって体を少し動かしてほぐすようにしましょう。
横向きで寝る
生理痛の時に横になる場合は、横向きで寝ることもおすすめです。それによって腹部への圧迫がなくなります。
また、痛みが我慢できそうにない時でも横になり背中を曲げて寝ると痛みが軽くなることがあります。
生理痛の痛みを感じる場所やつらさは人によって違うので、自分に合った体勢をとることが重要です。
血流が滞らない姿勢をとることが大事
生理痛が人それぞれであると同じに、生理痛を緩和する姿勢も人によって違います。しかし、共通していえることは、血流が滞らない姿勢をとるということです。
例えば、寝ている時には、血流が全身に巡りやすくなっています。そのため、少し痛みがある時にはしばらく寝転がると生理痛は緩和されます。
セルフケアで緩和できない場合はクリニックに相談を
生理痛は人それぞれで、痛みも対処の方法も変わります。そのため、セルフケアでも生理痛の痛みを緩和できます。
しかし、セルフケアを試してみても効果がない場合や、痛みが継続する場合は、ほかの病気からくる痛みの可能性があります。
普段とは違う痛みや、おさまらない痛みが継続しているときには、クリニックに相談しましょう。
編集部まとめ
生理痛は軽い人であれば、それほど気になりません。しかし、人によっては毎月の生理が鬱陶しく感じるほどに生理痛が不快に感じることもあるでしょう。
セルフケアは、生理痛を少しでも緩和させられるケア方法です。まずは、セルフケアを試して自分に合うケア方法を探し出しましょう。
それでも痛みが我慢できなかったり、長期にわたったりする場合には、クリニックやかかりつけの医師に相談して症状を把握することが重要です。
参考文献