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心療内科と精神科の違いは?対象疾患や迷った場合の選び方を解説

 公開日:2024/03/01
心療内科 精神科 違い

「心の病気」は日常生活の中で誰でもなりうる、非常に身近な病気です。

一方で「心療内科と精神科はどのように違うのだろう」「自分に起きている症状の場合、どちらの診療科を受診すればよいのだろう」など、悩む方も多いのではないでしょうか。

このような方に向けて、この記事では心療内科と精神科の違いを始め、それぞれの診療科で診ている疾患や、受診すべき診療科に迷った際の選び方について解説しています。

ぜひ記事を参考にしてください。

舘野 歩

監修医師
舘野 歩(東京慈恵会医科大学附属病院)

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東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。現在は「東京慈恵会医科大学附属病院」勤務。専門は精神神経科。日本精神神経学会専門医・精神科指導医、日本森田療法学会認定医、精神保健指定医。東京慈恵会医科大学精神医学講座准教授。

心療内科と精神科の違いは?

スマホを持って考える女性
心療内科も精神科もどちらも心に現れる病気を治療する診療科ですが、やや違いがあります。
心療内科は心因的な理由から身体症状が現れる病気が対象であり、倦怠感・疲労感・動悸・手足の痺れ・めまい・耳鳴りなどの症状をきっかけに受診する場合が多いです。
心療内科で診る主な疾患は以下のとおりです。

  • 心身症
  • 消化器心身症
  • うつ病
  • 睡眠障害
  • 過換気症候群
  • 拒食症

これらの疾患は心療内科の受診が適しています。
一方で精神科は心因的理由が精神状態に影響している病気が対象であり、不安・不眠・幻覚・妄想・抑うつなどの症状をきっかけに受診する場合が多いです。
精神科で診る主な疾患は以下のとおりです。

  • うつ病
  • 依存症
  • 統合失調症
  • 解離性障害
  • 強迫性障害
  • 摂食障害
  • 双極性障害
  • 適応障害
  • PTSD
  • パーソナリティー障害
  • パニック障害

これらに当てはまる疾患の場合は、精神科の受診が適しています。
また基本的には対象疾患は分かれていますが、例えば心療内科では軽度のうつ病や不安症状を改善するための治療を行い、必要に応じて精神科の専門の医師に紹介することもあります。

心療内科の主な対象疾患

説明する看護師
心療内科で扱う代表的な疾患には次のようなものが挙げられます。

  • 心身症
  • 摂食障害
  • 過換気症候群
  • 睡眠障害

以下でそれぞれについて詳しくみていきましょう。

心身症

心身症とは、身体的な症状が精神的なストレスや不安などの心の状態によって引き起こされる病気です。具体的な症状は次のとおりです。

  • 胃痛
  • 頭痛
  • めまい
  • 息切れ
  • 動悸
  • 不眠症

症状が身体症状として現れることが多いですが、原因は心因的なもののため、内科を受診しても「異常なし」と診断される場合が多いです。

摂食障害

摂食障害とは食欲や食行動に対する異常な悩みや恐怖が原因で、食事を制限し、栄養障害や健康障害を引き起こす病気です。具体的症状として拒食症・過食症・過食嘔吐症などが挙げられます。
また原因には否定的な自己評価や低い自尊心などの心理的要因・両親の離婚や両親との接触の乏しさなどの家族環境・遺伝的要因が挙げられます。

過換気症候群

過換気症候群とは不適切な呼吸方法により、身体的な不快感や不安感を引き起こす病気です。
急激な呼吸・吐き気・めまい・手足の痺れ・顔面蒼白・動悸などの症状が現れます。これらの症状は不正確な呼吸のバランスを取り戻すか、呼吸のリズムをコントロールすることで改善できます。

睡眠障害

睡眠障害には、入眠障害・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害などの種類があり、それぞれの症状は次のとおりです。
入眠障害とはなかなか眠れない・寝つきが悪いなどの症状であり、中途覚醒とは夜中に何度か目覚めてしまう・眠りの途中で起きてしまうなどの症状を指します。
早朝覚醒とは「もっと眠りたいのに、朝早くに目覚めてしまう」などの症状であり、熟眠障害とは「ぐっすり眠れない」などの症状がみられます。

精神科の主な対象疾患

悩む女性
精神科で扱う代表的な疾患には次のようなものが挙げられます。

  • うつ病
  • 神経症
  • 統合失調症
  • 双極性障害
  • 発達障害
  • パニック障害
  • 社会不安障害

以下でそれぞれについて詳しくみていきましょう。

うつ病

悲観する女性
うつ病に陥ると、幸福感や楽しみを感じるために必要なセロトニン・ノルアドレナリン・ドーパミンなどの神経伝達物質のバランスが崩れます。
さらにうつ病発症にともない、ストレスや疲労による脳内の活性化低下・神経細胞の損傷・脳の神経回路の機能障害が起こります。
うつ病の症状は人それぞれ異なりますが、代表的な症状は以下のとおりです。

  • 興味や楽しみがなくなる
  • 人付き合いが嫌になる
  • 孤独感がある
  • 食欲がわかない
  • 体重が減少する

またうつ病の原因は単一の要因ではなく、環境要因・性格要因・遺伝的要因などの多因子的な要因が関与しています。
環境要因の具体例はストレス・不安・社会的孤立・失業・貧困・家庭内の問題です。
特にストレスはうつ病の発症や再発に強く関連しており、ストレスに対する耐性が低いほど、うつ病にかかるリスクが高いとされています。
性格的要因の具体例は消極性・マイナス思考などです。また過度な完璧主義・社交的・過剰な責任感もうつ病にかかるリスクが高いとされています。
遺伝的要因とはうつ病の発症や再発に関連する遺伝子によるものです。家族歴や遺伝子の研究から、うつ病を発症しやすい遺伝子の存在が明らかとなっています。

神経症

神経症はうつ病と同様に一般的な精神疾患の1つであり、具体的な症状には次のようなものが挙げられます。

  • 強い不安
  • 緊張感
  • 恐怖感
  • 不安定な気分
  • 体の不調

神経症には過剰な不安や心配が主な症状として挙げられます。

統合失調症

統合失調症とは現実感が鈍くなり、幻覚や妄想といった精神症状が現れる病気です。主な症状として陽性症状・陰性症状・認知機能障害があります。
陽性症状には、ずっと誰かに監視されているように感じるなどの「妄想」・ないはずのものが見えるなどの「幻覚」・考え方に一貫性がなくなる「思考障害」が挙げられます。
陰性症状の代表例は、喜怒哀楽が乏しくなる「感情鈍麻」・抽象的な表現を理解できない「思考の貧困」・自発性がなくなる「意欲の欠如」・自己の世界に閉じこもる「自閉」です。
認知機能障害の代表例は、物事を覚えるのに時間がかかる「記憶力の低下」・目の前の事に集中できない「注意・集中力の低下」・物事に優先順位をつけられない「判断力の低下」です。
統合失調症は進学・就職・独立・結婚などの人生における進路転換が発症のきっかけとなる場合が多く、思考や感情が混乱して日常生活に大きく影響する可能性があります。
また発症の要因ははっきりとわかっていませんが、脳内で情報を伝える神経伝達物質のバランスが崩れることが関係していると考えられています。

双極性障害

双極性障害は、うつ病のように気分が低下する「うつ病相」と、異常な高揚感と興奮が現れる「躁病相」が繰り返し現れる疾患です。
具体的な症状には以下のようなものが挙げられます。

  • 多弁
  • 多動
  • ひとつのことに集中できない
  • 誇大妄想
  • 自身の症状を自覚できない

薬物治療や心理療法により症状の軽減につながります。

発達障害

発達障害とは発達に遅れがみられ、日常生活や社会生活でのスムーズなコミュニケーションや適切な振る舞いが困難になる病気です。
発達障害にはさまざまな種類の疾患が含まれ、代表例は以下のとおりです。

  • ADHD
  • アスペルガー症候群
  • 高次脳機能障害
  • 自閉症
  • 学習障害
  • 注意欠損多動性障害

また同じ種類でも特性やその程度は一人ひとり異なります。

パニック障害

パニックになる女性
パニック障害では不安感が急激に増加し、息切れや吐き気などの生理的症状が現れます。また3大症状にはパニック発作・予期不安・広場恐怖があり、それぞれの症状については以下のとおりです。
パニック発作とは突然の動悸・息苦しさ・めまいなどの身体症状をともなう恐怖に襲われるものです。その後、「発作がまた起こるのではないか」という心配が続く「予期不安」が起こります。
広場恐怖症とは乗り物に乗ることや、行列に並ぶことなど発作が起きたときにすぐ逃げられない場所や状況を避けることを指し、パニック障害ではほとんどの患者さんが広場恐怖症をともなっています。

社会不安障害

社会不安障害とはネガティブな思考に取り囲まれ、周囲の人との交流や労働において不安感や緊張感を抱く病気です。
具体的な症状には以下のようなものが挙げられます。

  • 人前でのスピーチで頭が真っ白になりパニック状態となる
  • 食べているところを人に見られると過度に緊張して食べられない
  • 改まった場所で文字を書く際に手が震える
  • 人混みを避けてしまう

小児期や10代半ばでの発症が多く、強いストレスを受けたり恥ずかしい思いをした際に突然発症することもありますが、知らないうちに徐々に症状が強くなっていく場合もあります。
社会不安障害は「学校に行けない」「家からまったく出られない」など、社会生活の場面において異常な不安を感じやすい疾患です。

心療内科と精神科どちらも標榜している病院もある

病院内
心療内科と精神科は共通する領域があり、両方の診療科を併設している病院も多いです。自身の症状がどちらの診療科にふさわしいのか、判断が難しい場合には、このような病院の受診がおすすめです。
一方、心療内科と精神科を併設している病院では、診療科目が境界線を越えることも多く、医師によっても診療内容が異なることがあります。
そのため病院や医師の専門性によっては診療内容が異なることがあり、適切な診療を受けるためには、専門的な医師の診察を受けることが大切です。

どちらがよいか迷った場合の選び方は?

相談する女性
心療内科と精神科のどちらを選べばよいか迷った際にはどちらの診療科も含んでいる病院の受診がおすすめです。症状を伝えると病院側で適切な診療科を紹介してくれます。
また、心療内科と精神科のどちらかを選ぶ際には、以下のようなポイントを参考にしてみてください。
1つ目は病院の診療科目や専門性を確認することです。その病院がどのような診療科目や専門性を持っているのかを確認し、自分の症状に適した診療科目を選択しましょう。
次に、症状や状況に合った診療科目を選ぶことが重要です。自分の症状や状況に合った診療科目を選ぶことが大切です。例えば軽度のうつ病や不安症などの場合は、心療内科が適切ですが、統合失調症や重度のうつ病などの場合は精神科が適していることがあります。
3つ目は医師の専門性や経験を重視することです。医師の専門性や経験は、適切な治療を受けるうえで非常に重要だと考えられます。
自分の症状や状況に合わせた診療科目の医師が、専門的な診療を行っている病院を選ぶのが大切です。
4つ目はカウンセリングや治療法についての疑問点を確認することです。診療科目を決めた後は、カウンセリングや治療法についての疑問点を整理し、自分に合う適切な治療内容を確認しましょう。
また治療内容の変更や調整が必要になった場合も、遠慮せずに医師に相談してください。以上のようなポイントを踏まえて自分に合った診療科目を選び、適切な治療を受けるようにしましょう。

心療内科や精神科の受診前にしておくとよいことは?

説明する医師
心療内科や精神科の受診前には、以下のようなことをしておくことがおすすめです。

  • いつから症状が出たか確認しておく
  • どのような症状があるかまとめておく
  • 思い当たる原因を考えておく

以上のようなことを受診前にしておくことで、スムーズな診察を受けられます。

いつから症状が出たか確認しておく

記録する
症状がいつから現れたかや、過去に同じような症状があったかなど「症状の期間」を確認しておくことが大切です。
そのため診察前に、自分自身で症状や状況を自己観察することや、日々の症状変化の把握が重要です。

どのような症状があるかまとめておく

自分が今の状態に対してどのように感じているかの自己評価を行い、具体的に起きている症状についてまとめておきましょう。
また日常生活・仕事状況・人間関係など自身のライフスタイルに関わる状況も客観的に把握し、「生活のなかで症状が強く現れる状況」もしくは「症状が軽度な状況」などがあれば、それについても把握するのが大切です。

思い当たる原因を考えておく

症状が現れた原因やきっかけについて、自分なりに考えておきましょう。原因は人それぞれ異なりますが、例えば以下のようなものがあります。
1つ目は症状を引き起こす出来事やストレスについてです。家族の死去・仕事上の問題・離婚などがあった場合、これが症状の引き金となっている可能性があります。
2つ目は長期間のストレス状態にあるかについてです。仕事や人間関係で長期間にわたり繰り返されるストレスが原因となっている場合があります。
3つ目は過去のトラウマの有無です。虐待・事故・災害などのトラウマ体験がある場合、現在の症状につながっていることがあります。
4つ目は生活習慣についてです。食習慣・睡眠・運動不足などが原因となっている場合があります。
このように思い当たる原因を考えておくことが、診断や今後の治療内容の選択に役立ちます。

編集部まとめ

笑顔の看護師
この記事では心療内科と精神科の違いや、受診すべき診療科の選び方について解説しました。心療内科と精神科では、共通する領域がある一方で、それぞれの対象疾患が異なります。

そのためどちらの診療科を受診すべきか迷う際には「心療内科と精神科を併設している病院」を選ぶのがおすすめです。

また精神疾患は放置すると悪化の危険があり、早期介入が重要となります。自分に起きている症状についてお悩みの方は、ためらわずに心療内科もしくは精神科を受診するようにしましょう。

この記事の監修医師