男性のためのHPV検査とは?検査条件や費用について解説
「HPV」と聞いて、何のことかすぐに思い浮かぶでしょうか。HPVとは「ヒトパピローマウイルス」のことです。子宮頸がんの原因になるウイルスのことであり、これを予防するために行う予防接種は、HPVワクチン接種などとも呼ばれます。ここまでの説明を読み、「女性に感染するウイルス」だと考えた方も多いかもしれません。しかしHPVは、男性の病気の原因にもなり得ます。この記事では、男性のためのHPV検査について、その条件や費用などを詳しくご説明します。
監修医師:
馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)
目次 -INDEX-
男性にも感染するHPVとは
HPVの感染経路や症状、潜伏期間などについて説明します。
HPVの原因と感染経路
HPVは、国内外を問わず多くの場所で見られるウイルスの一群です。100種類以上の型があるといわれており、そのうちの数種類には発がん性が確認されています。HPVワクチンで予防が推奨されている子宮頸がんの場合、その7割は16型もしくは18型のHPVが原因になっていると考えられています。感染は、主に性器接触により起こることが分かっており、ほとんどの人は性交渉体験後の間もない間にHPVに感染していると考えられています。
HPVの症状
前述したように、性交渉経験があるほとんどの人は、HPVに感染した経験があると考えられます。また、人によっては人生の中で何度も感染する場合もあります。しかし、HPVには多くの型があり、そのほとんどは何も問題を起こしません。一般的には、感染してから数カ月~2年ほどすれば、自然に治癒します。
ただし、そうではない型だった場合には、子宮頸がんや尖圭コンジローマ、肛門がんや陰茎がんなどのリスクを高めるとされています。これらに感染した場合、子宮頸がんであれば、進行すると不正出血や性交渉時の出血、おりもの異常、おなかや腰の痛みといった症状が現れます。感染直後は症状が出ないことがほとんどです。
尖圭コンジローマの場合は、性器周辺にいぼ状のしこりがいくつもできます。初期では痛みやかゆみを感じることはあまりありませんが、進行すると痛みやかゆみ、出血などを伴うことがあります。肛門がんの場合は排便時の出血や痛み、陰茎がんは亀頭や包皮に腫瘤やびらんができるといった初期症状があります。
HPVの潜伏期間
詳しくは後述しますが、HPVには高リスク型と低リスク型があり、それによって潜伏期間が異なると考えられています。高リスク型の場合は、現在の医学でははっきりとした潜伏期間は判明していません。それは、感染してすぐの段階ではほとんど症状がないことが多く、感染していることが見過ごされがちだからです。また、10年など長い時間がたってから子宮頸がんが見つかる場合もあります。そのため、一度でも性交渉の経験がある場合は、1、2年に一度など定期的に検査を受けるのが望ましいと考えられます。一方で低リスク型の場合の潜伏期間は、3週間から8カ月程度と考えられています。
HPVの種類
では、HPVにおける「高リスク型」と「低リスク型」とは、どのようなものなのでしょうか。それぞれに分類されている関連疾患や特徴について解説します。
高リスク型HPV
高リスク型HPVとは、100種類以上あるHPVの型のうち、発がん性が認められている型を指します。少なくとも13種類に発がん性があることが確認されており、子宮頸がんなどの原因になると考えられている16型や18型が有名です。また、子宮頸がんのほかには、肛門、外陰部、膣、陰茎のがんの発症にも関連しているといわれています。ただし、これら13種類の型のHPVに感染したからといって、必ずしもがんになるわけではありません。ほとんどの場合は、感染しても個人が持つ免疫力により自然に消失します。
低リスク型HPV
低リスク型HPVとは、100種類以上あるHPVのうち、高リスク型や何も身体に影響を与えない型を除いた、9種類ほどの型のことです。これらに感染すると、尖圭コンジローマの症状が出るリスクがあります。ただし、低リスク型HPVに感染したからといって必ずしも尖圭コンジローマにかかるわけではありません。高リスク型と同様に、免疫力により自然に消失することも多々あります。
男性におけるHPV感染のリスク
子宮頸がんの原因となるHPVですが、男性にもリスクがあることが分かってきています。ここからは、HPVの感染により男性がかかる可能性のある尖圭コンジローマと各種がんについて説明します。
尖圭コンジローマの発症
尖圭コンジローマは、主にHPV6型と11型であり、ときに16型の感染でも生じる病気です。男性・女性ともにかかる可能性があり、発症すると性器周辺に先のとがったいぼが複数出現します。
具体的には、男性の場合は尿道や鬼頭、陰嚢、肛門に、女性の場合は大小陰唇、子宮口、膣前庭、肛門に症状が現れ、また、オーラルセックスにより感染した場合は男女ともに唇周辺や口内、喉などにいぼができます。
これらのいぼは、治療を開始しない限りだんだんと大きくなり、数も増えていきます。また、そのように進行すると、始めは症状を伴っていなかったいぼが、だんだんと痛みやかゆみを伴うようになり、出血することもあります。治療法としては、主に塗り薬による外用療法と、冷凍凝固やレーザー蒸散、切除といった外科療法が行われます。
HPVはがんの原因となる
各種がんの原因になるということも、HPV感染のリスクとして挙げられます。HPVが発症に関連すると考えられている男性のがんとしては、肛門がんや陰茎がんなどがあります。肛門がんは肛門管と肛門周囲の皮膚組織にできるがんのことであり、陰茎がんは亀頭部や包皮などにできるがんです。陰茎がんは、がんの中では発症数はそう多くありません。
ただし、初期はもちろん、かなり進行してからも痛みなどの症状がないことが多く、発見が遅れがちになるという特徴があります。さらに進行するとリンパ節への転移などが起こることもあるため、感染予防に努めることはもちろん、陰茎周囲の腫瘤やびらんなどに気づいたら早めに泌尿器科を受診しましょう。
男性のHPV検査の必要性
ここまで説明してきたことからも分かるように、性交渉を経験したことがある方は定期的にHPV検査を受けておくことが望ましいといえます。その理由を下記で説明します。
感染を早期発見し、感染リスクを抑える
まず、当然ではありますが、定期的にHPV検査を受けておけば、低リスク型・高リスク型のHPVに感染していた場合も、早期に発見することができます。特にがんは、初期症状が出ない、もしくはあっても気づきづらい場合も多いため、早期治療をするためには検査で発見することが重要です。
また、そのようにして感染を早期発見できれば、パートナーへの感染リスクを抑えることができます。女性の場合はHPV感染は子宮頸がんのリスクにつながりますので、パートナーの健康を守るためにも定期的な検査を心がけましょう。
HPVの早期治療ができる
早期発見ができれば、早期治療が可能になります。早期治療は、健康を守るためだけでなく、治療におけるさまざまな負担を軽減することにつながります。
例えば、症状が軽いうちに治療を開始しておけば、大掛かりな外科的治療などを避けることができ、身体への負担が少なくなります。また、内服薬の服用や定期的な診察のみで治療が可能であれば、治療費も抑えられますし、通院頻度も少なくなるでしょう。
男性がHPV検査をするための条件
ではここからは、男性がHPV検査をするための条件を解説します。
男性の高リスク型HPV検査はない
男性の場合、高リスク型のHPVに感染していても、症状がないことがほとんどです。また、女性の膣拭い検査のように検体を正確に採取することが、男性の性器では行えません。そのため、男性の高リスク型HPV検査は基本的に行われていないのが現状です。
肛門がんや陰茎がんなど、関連性が確認されているがんそのものの検査を受けるようにしましょう。ただし、肛門がんの検査は基本的に大腸内視鏡検査を行う必要があり、陰茎がんの検査は視触診や血液検査、画像検査などが必要となります。症状がない場合は自由診療となり、高額となる恐れがありますので、その点は注意しておきましょう。
尖圭コンジローマの症状が出ていたら検査できる
尖圭コンジローマに関しては、先のとがったいぼが性器にできているなど、症状があれば検査が可能です。ただし、症状がない場合は、高リスク型と同様に正確な検査結果が出せないため、基本的に検査は行われていません。
男性向けHPV検査方法と費用
最後に、男性向けHPV検査の方法と費用について解説します。
拭い検査
症状が出ている尖圭コンジローマの場合、性器周辺にいぼができているため、一般的には視診で診断が可能です。検査を希望する場合は、患部を綿棒で拭い、付着物を核酸検出法で確認することでHPVの感染を確認することができます。
ただし、この検査方法は対応していないクリニックも多いため、事前にホームページで検査内容を確認したり、クリニックに問い合わせをしたりしてから受診したほうが良いでしょう。また、視診のみの場合は特別な検査費用はかかりませんが、拭い検査に関しては10000円ほどの検査費用がかかると考えておきましょう。
自宅でできる検査キット
医療機関に足を運べない、誰にも知られずに検査を受けたいという場合に、インターネットなどで販売されている検査キットを用いて、尖圭コンジローマの感染を確認しようと思うこともあるかもしれません。ただし、インターネットで販売されている検査キットの多くは女性用であり、男性用のものはほとんどありません。また、あったとしても精度などに不安な点が残ります。さらに、金額も10000円~20000円ほどと高価です。そのため、気になる症状がある場合には泌尿器科などで実際に診療を受けることをおすすめします。
まとめ
男性でもHPV感染で病気になる可能性があるということから、その感染経路や症状、検査方法などまで説明しましたが、参考になったでしょうか。HPVはありふれているウイルスであり、性交渉経験があればほとんどの方が感染しているウイルスです。多くの場合は感染しても自然に消失しますが、何か違和感などがあれば医療機関で検査を受けることをおすすめします。