目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 医科コンテンツ
  4. 淋菌感染症とは?症状や検査方法・治療方法について詳しく解説

淋菌感染症とは?症状や検査方法・治療方法について詳しく解説

 公開日:2024/05/21
淋菌感染症とは?症状や検査方法・治療方法について詳しく解説

淋菌感染症は性感染症のひとつで、多くは性的接触により感染が広がります。感染すると多様な症状が現れ、検査と治療が必要になります。
本記事では以下の点を中心に、淋菌感染症について詳しく解説します。

・淋菌感染症の症状
・淋菌感染症の感染経路と潜伏期間
・淋菌検査の治療法

さらに、妊娠中の淋菌感染症についても解説します。
淋菌検査について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

村上 知彦

監修医師
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)

プロフィールをもっと見る
長崎大学医学部医学科 卒業 / 九州大学 泌尿器科 臨床助教を経て現在は医療法人 薬院ひ尿器科医院 勤務 / 専門は泌尿器科

淋菌感染症とは?

淋菌感染症とは?
淋菌感染症、または一般的に「淋病」と呼ばれるこの病気は、性感染症の一種です。
原因となるのは淋菌(Neisseria gonorrhoeae)で、主に性行為を通じて感染します。
淋菌は外部環境には弱く、人間の体内でのみ生存し感染を広げるため、性行為での感染リスクが高くなります。
また、淋菌は抗菌薬耐性を獲得しつつあり、治療が難しくなる可能性も指摘されています。
このため、早期の診断と適切な治療が重要です。

淋菌感染症の症状

淋菌感染症の症状
淋菌感染症になるとどんな症状が出るのでしょうか?
男女別、男女共通の症状に分けて解説します。

男性

淋菌感染症による男性への症状について解説します。
淋菌感染症は男性のほうが症状を感じやすいとされています。
初期段階では、尿道に痒みや違和感が現れ、進行すると、尿道炎による激しい痛みが伴い、排尿時は強い痛みを感じることがあります。
さらに、性器からは黄白色のドロっとした膿が排出されることもあります。
感染の進行を示す兆候の一つで、放置するとより深刻な健康問題につながる可能性があります。
例えば、精巣上体炎や前立腺炎など、生殖器周辺のほかの器官に炎症が広がることがあります。
これらの症状には、陰嚢の腫れや全身の発熱も伴うことがあります。

女性

淋菌感染症は女性にとって注意が必要な性感染症の一つです。
男性よりも症状がわかりやすく現れにくいため、気づかないうちに病状が進行することがあります。
初期の段階では、自覚症状がないことが多いようですが、感染が進むと緑黄色の濃いおりものが現れたり、尿道から膿が出たりすることがあります。
これらの症状が見られた場合、子宮頚管炎や尿道炎が発症している可能性があります。
さらに放置すると、子宮内膜炎や卵管炎といった骨盤内炎症性疾患(PID)を引き起こすことがあり、発熱や下腹部痛が伴うこともあります。
淋菌感染症は不妊症の原因となることがあるため、早期発見と適切な治療が重要とされています。

男女共通

・淋菌性咽頭炎
オーラルセックスによる咽頭への感染が増加しています。
症状としては、のどの痛みが多いとされていますが、多くの場合、明確な自覚症状がないため、気づかずに他人に感染を広げてしまうリスクがあります。
咽頭感染は、性器への感染リスクを高めるため、定期的な検査が推奨されます。

・淋菌による直腸感染
アナルセックスによって直腸に感染するケースも増えています。
直腸感染は症状が出にくいものの、重症化することがあります。
感染が確認された場合は、性器周辺も含めた広範な観察が必要です。

・播種性淋菌感染症
淋菌が血液を介して全身に広がる重い症状です。
発熱や全身のだるさ、関節痛、皮疹が出現します。
関節の炎症が激しくなると、関節が破壊される可能性もあります。
性器の症状が少ないため、予期せぬ全身症状が現れた場合には、注意が必要です。

淋菌感染症の感染経路と潜伏期間

淋菌感染症の感染経路と潜伏期間
淋菌感染症の感染経路と潜伏期間について解説します。

感染経路

淋菌感染症は、主に粘膜の接触を通じて伝播しますが、感染経路にはいくつかあります。

1. 性行為による感染
淋菌感染症で多いとされる感染経路は性行為です。
これには膣性交、肛門性交、オーラルセックスが含まれます。
感染は性器、直腸、咽頭の粘膜からほかの粘膜へと伝播し、感染者の粘膜や分泌物、尿に存在する淋菌が相手の体内に入ることで感染が成立します。

2. 咽頭への感染
オーラルセックスにより咽頭に感染するケースも増えています。
咽頭淋病は自覚症状が少ないため、気づかないうちにほかの性器へと病原体を伝播させることがあります。
性器から咽頭へ、またはその逆の感染も可能とされています。

3. 母子感染
妊娠中の女性が感染している場合、出産時に新生児が母親の感染した子宮頸管を通過することで、新生児の結膜などに感染するリスクがあります。
これは産道感染と呼ばれ、新生児の健康に深刻な影響を及ぼすことがあります。後ほど詳しく解説いたします。

4. その他の感染経路
淋菌は粘膜以外の環境では生存が難しいため、タオルや衣類などを介した感染はまれとされています。
しかし、感染した分泌物が直接ほかの粘膜に触れることで感染する可能性があります。
例えば、感染した手で目をこすった場合、結膜炎を引き起こすことがあります。

5. 唾液を介した感染
通常のキスや食器の共有で感染するリスクは低いとされていますが、唾液による直接的な粘膜接触がある場合、感染の可能性を排除することは難しいとされています。

このように淋菌感染症は多様な経路を通じて広がりますが、主な感染経路は性行為であり、感染を防ぐためには適切な保護措置を取ることが重要です。
主に新しいパートナーとの性行為においては、コンドームの使用を徹底し、定期的な性病検査を受けることが推奨されます。

潜伏期間

淋菌感染症(淋病)の潜伏期間について説明します。
淋病は、性感染症の一つで、淋菌によって引き起こされます。
この病気の潜伏期間は通常、2~9日程度とされていますが、これはあくまで目安とされています。

実際には、感染した人の免疫力や体質など個人差が影響するため、一概に固定の日数で表すことは難しいとされています。
また、感染してもすぐに症状が現れない場合があります。
症状が出ないからといって感染していないとは限らないため、性行為後に何らかの不安を感じた場合は、潜伏期間を待たずに医療機関での検査を受けることが推奨されます。

妊娠中の淋菌感染症は新生児へ感染する可能性も

妊娠中の淋菌感染症は新生児へ感染する可能性も
妊娠中の淋菌感染症による新生児へのリスクも解説します。

妊娠中の症状

妊娠中の女性が淋菌感染症にかかると、母体だけでなく子どもにも重大な影響を及ぼすことがあります。
淋菌は性感染症の一種で、子宮や卵管に炎症を引き起こし、それが原因で早産や破水のリスクが高まることがあります。
また、感染が重症化すると流産の危険性もあり、これは感染による直接的な影響や体内の炎症反応によるものです。
さらに、淋菌感染症は胎児の成長に影響を与え、低体重での出産につながる可能性もあります。

新生児の症状

産道感染により、新生児が淋菌感染症に罹患すると、多岐にわたる重篤な症状が現れるリスクがあります。
新生児の免疫システムは未熟であるため、感染が重症化しやすく、なかでも目や関節、血液が感染の主な対象となります。

多いとされている症状は新生児結膜炎であり、母親が感染している淋菌が分娩時に新生児の目に触れることで起こります。
感染した新生児の目は抵抗力が弱く、適切な治療が行われない場合、最悪のケースでは失明に至ることもあります。

また、淋菌が新生児の血流に侵入すると、敗血症や心内膜炎、髄膜炎、関節炎などさまざまな重篤な状態を引き起こすことがあります。
これらは新生児の健康に甚大な影響を与えるため、妊娠中の女性は性感染症のリスクを認識し、定期的な検査を受けることが極めて重要です。

淋菌感染症の診断・検査

淋菌感染症の診断・検査
淋菌感染症の診断方法について解説します。

男性の場合

男性における淋菌感染症の診断には、主に尿検査が用いられます。
検査では、主に尿の出始めの部分を採取することが重要です。
この尿サンプルから、尿中の白血球の数を調べることで、尿道に炎症があるかどうかを判断します。
白血球の数が増加している場合、尿道炎の典型的な兆候であり、淋菌感染の可能性が高いと診断されることがあります。

女性の場合

女性における淋菌感染症の検査は、主に子宮頸部からの粘液採取に始まります。
診断のため、専門の柔らかい綿棒を使用して子宮頸管の粘液を慎重に採取します。
この粘液サンプルに淋菌が存在するかどうかを調べることで、淋菌性子宮頸管炎の診断が行われます。

検査キット

淋菌感染症の診断や管理に役立つ自宅検査キットが注目されています。
キットを使用することで、医療施設を訪れることなく個人のプライバシーを守りながら手軽に性感染症のリスクを確認でき、感染の早期発見や治療へと繋がります。
自宅検査キットの利点は、プライバシーの保護、通院の必要がないことによる便利さ、そして症状が現れる前に感染を知るための早期発見です。

使用方法は、尿サンプルや綿棒でサンプルを採取し、同梱された説明書に従って専用の返送用封筒を通じて検査機関に送るだけです。
結果はオンラインで確認でき、必要に応じて医師の診断と治療が行えます。
ただし、検査結果が陽性の場合には専門の医療機関でのフォローアップが必要です。

自宅検査キットは、性感染症の検査を容易にすることで感染の拡大を防ぎ、公衆衛生の向上に寄与することが期待されています。

淋菌感染症の治療法

淋菌感染症の治療法
淋菌感染症の治療には、抗生物質の使用が不可欠です。
日本性感染症学会が提供する治療ガイドラインに従い、耐性を持つ菌株の問題を考慮しつつ、適した抗菌剤を選択します。
淋菌は主に薬剤耐性を発展させやすいため、治療に使用する薬剤の選択には慎重さが求められます。

治療が始まると、抗菌剤の服薬期間を経て、その後には約7日以上の休薬期間を設ける傾向にあります。
この休薬期間は、治療効果を確認し、淋菌が除菌されているかを検証するために重要です。

淋菌感染症の予防法

淋菌感染症の予防法
淋菌感染症は性行為を通じて伝播する性感染症であり、予防策が重要です。
主にコンドームの使用と多数の性パートナーとの性交を避けることが推奨されます。
コンドームは性器、肛門、口と感染部位の直接接触を防ぐ有効な手段とされ、全ての性行為において事前に使用することが望ましいとされています。
これらの措置を通じて感染リスクを低減することが可能とされています。

まとめ

まとめ
ここまで淋菌感染症について解説してきました。
内容をまとめると以下のとおりです。

・淋菌感染症の症状は男性では尿道炎、女性では子宮頚管炎などの症状が現れる
・淋菌感染症は主に性行為によって伝播し、潜伏期間は約2~9日。咽頭や母子感染も可能とされ、コンドーム使用で予防する。症状が見られなくても検査が推奨される
・淋菌感染症の診断では男性は尿検査、女性は子宮頸部の粘液採取で行われる。自宅検査キットもあり、プライバシーを保ちつつ早期発見につながる。結果確認後、必要に応じて医師の治療を受ける

これらの情報が少しでもお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事の監修医師