胃カメラを鼻から入れるのは痛い?楽に受けるコツを解説
胃カメラ検査は、私たちの健康管理において重要な役割を果たします。特に、胃や食道の病状を詳しく調べるためには、この検査が欠かせません。
その中でも、鼻から胃カメラを挿入する方法はその痛みや不快感を軽減することから、多くの患者さんに選ばれています。
しかし、どのような方法にもメリットとデメリットが存在するため注意が必要です。この記事では、鼻からの胃カメラ検査におけるメリットとデメリットについて詳しく解説します。
これらの情報を理解し、自身に適切な検査方法を選ぶ一助としていただければ幸いです。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
胃カメラを鼻から入れるのは痛い?
胃カメラ検査は、胃や食道の健康状態を詳しく調べるための重要な検査です。
その検査方法には「口からの胃カメラ」と「鼻からの胃カメラ」の2つがあり、どちらを選ぶかは患者さん自身の選択になります。
特に、「鼻からの胃カメラ」はその名の通り、鼻からカメラを挿入して検査を行いますが、その際の痛みについては多くの方が気になる点でしょう。
胃カメラ検査は一般的には不快なものとされていますが、鼻から行う方法は口から行う方法と比べて痛みが少ないとされています。
これは、鼻腔から胃までの経路が自然な曲線を描くため、カメラが体内の壁に強く当たることが少ないためです。
また、鼻からの胃カメラでは、鼻腔に麻酔ゼリーを塗布することで、挿入時の不快感を和らげられます。
しかし、人によっては鼻腔が狭いためにカメラの挿入が難しい場合や、鼻腔に違和感がある場合もあります。
そのため、「痛みがない」と一概にはいえません。検査を受ける前に、医師と十分に話し合い、自分にとって適した方法を選ぶことが重要です。
胃カメラを鼻から入れるメリット
口から胃カメラを入れるのではなく、鼻から胃カメラを入れるメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
一般的には、以下の4つのメリットがあるといわれています。
- 痛みが少ない
- 吐き気が起こりにくい
- 会話ができる
- 麻酔の負担が少ない
ここでは、この4つのメリットについてそれぞれ詳しく説明しましょう。
痛みが少ない
鼻からの胃カメラ検査は、その特性上、口からの検査と比較して痛みを感じにくいという大きなメリットがあります。
この理由は、鼻腔から胃までの経路が自然な曲線を描くため、カメラが体内の壁に強く当たることが少ないからです。
さらに、鼻腔に塗布する麻酔ゼリーにより、カメラの挿入時に感じる不快感を大幅に和らげることが可能です。
これにより、検査中のストレスを軽減し、より快適に検査を受けられます。
吐き気が起こりにくい
鼻からの胃カメラ検査のもう一つのメリットは、口からの検査に比べて吐き気を感じにくいという点です。
口からの検査では、口腔内にカメラが入ることで 咽頭反射という「オエッ」っとなる現象が起こりやすいのです。
それに対して、鼻からの検査ではこの咽頭反射が起こりにくいとされています。これは、鼻からの検査と口からの検査の場合で、胃カメラが通るルートが異なるからです。
一般的に、咽頭反射が生じるのは胃カメラが喉を通過する際に起こります。
これは、喉という部位が本来食物の通過を助けるために存在する反射で、異物が喉に接触すると自動的に咳や吐き気を引き起こすというものです。
口から胃カメラを挿入する場合、カメラは直接喉を通過するため、この反射が強く引き起こされます。これが、口からの胃カメラ検査における不快感や吐き気の主な原因です。
一方、鼻から胃カメラを挿入する場合、カメラは鼻腔と喉の後部を通過します。このルートは、喉の反射を引き起こす部位への刺激があまりありません。そのため、咽頭反射が起こりにくいとされています。
その結果、鼻からの胃カメラ検査は、一般的には口からの検査よりも吐き気を感じにくいといわれています。
会話できる
鼻からの胃カメラ検査では、口が開いているため、検査中でも医師とのコミュニケーションをとれます。
これは、検査中の不安を和らげるだけでなく、自身の感じていることや症状をリアルタイムで医師に伝えられるという大きなメリットです。
麻酔の負担が軽い
鼻からの胃カメラ検査では、鼻腔に塗布する局所麻酔だけで検査を行えます。そのため、検査後すぐに日常生活に戻ることが可能となり、鼻からの検査では生活の中断を抑えられるでしょう。
それに対して、口からの胃カメラ検査の場合は、鎮静剤を打つことによって半ば眠ったような状態で検査が行われることがあります。
この鎮静剤をうった場合、一般的に回復室で1時間〜2時間程度休憩してからの帰宅となります。そのため、口からの胃カメラ検査は、病院内での滞在時間が長くなる検査方法です。
また、自動車や自転車の運転や高所での作業禁止などの行動の制限も課されてしまいます。
このように、鼻からの場合は麻酔の負担が軽いことによって、検査後の行動の制約も抑えられるというメリットがあります。
胃カメラを鼻から入れるデメリット
ここまで説明してきたように胃カメラを鼻から入れるメリットは多くありますが、しかしながら、どのような物事にもメリットがあれば、デメリットも存在しています。
鼻からの検査も例外ではなく、以下の4つのデメリットが存在しています。
- 鼻から出血する場合がある
- 鼻腔が狭いと検査ができない場合がある
- 鼻詰まりがある人は検査できない場合がある
- カメラの解像度が少し落ちる
ここでは、これら4つのデメリットについてそれぞれ詳しく説明しましょう。
鼻から出血する場合がある
胃カメラを鼻から挿入する際、鼻腔の粘膜を傷つけてしまうことがあり、これが原因で、検査後に鼻から出血することがあります。
出血は通常、軽度であり、自然に止まることがほとんどです。しかしながら、出血が止まらない場合や大量の出血がある場合は、医師の指示を仰ぐことが必要です。
鼻腔が狭いと検査できない場合がある
鼻腔が狭い人の場合、胃カメラの挿入が難しくなることがあります。また、鼻中隔が曲がっている場合や、鼻茸といった鼻の疾患がある人も鼻からの検査が難しい場合があります。
そのため、検査前には医師と十分に相談し、自身の鼻の状態について理解しておくことが重要です。
鼻づまりがある人は検査できない場合がある
風邪やアレルギーなどで鼻づまりがある場合、鼻からの胃カメラ検査が困難になることがあります。
鼻づまりがあると、胃カメラの挿入が難しくなるだけでなく、検査中に呼吸が苦しくなる可能性もあります。
そのため、検査日に鼻づまりがある場合は、医師に相談し、必要に応じて検査日を変更するなどの対応が必要になるかもしれません。
カメラの解像度が少し落ちる
鼻からの胃カメラは、口からのものよりも細いため、カメラの解像度が少し落ちることがあります。
これにより、微細な異常を見逃す可能性があるというデメリットがあります。
しかし、現代の胃カメラは高解像度であり、大きな問題とはなりません。また、検査の際には医師の技術や経験も重要であり、解像度の差が診断に大きな影響を及ぼすことは少ないとされています。
胃カメラを口から入れる場合との違いは?
ここまで、主に鼻からの検査について詳しく説明をしてきました。
ただし、胃カメラ検査は鼻からの検査だけでなく、口から入れる場合もあります。また、鼻からの検査を行うのか、口からの検査を行うのかは基本的には患者さん自身で選べます。
そのため、適切な検査方法を選ぶうえでも鼻からの検査だけでなく、口からの検査についても理解しておくのがよいでしょう。
そのため、ここでは鼻からの検査と口からの検査の違いについて詳しく解説をします。
口からの胃カメラ検査は、一般的にはより詳細な観察が可能になります。これは、口から挿入するカメラの太さが鼻から挿入するカメラよりも太いため、より広範囲を観察できるからです。
また、口からの検査では、検査時間が短縮されることが多いです。
しかし、口からの検査では、のどの違和感や咽頭反射を強く感じることがあります。特に 咽頭反射が強い方は、検査が難しい場合があります。
一方、鼻からの胃カメラ検査は新しい方法で、多くの患者さんにとってはより快適な選択肢です。
鼻からの検査は、のどの違和感や咽頭反射が少なく、検査中でも会話が可能で麻酔の負担も軽いというメリットがあります。
しかし鼻からの検査では、カメラの解像度が少し落ちるため、詳細な観察が難しい場合があります。また鼻腔が狭い方や、鼻炎などの症状がある方は鼻からの挿入が難しい場合がある点には注意が必要です。
これらの違いを理解したうえで自身の体調・不安要素・検査の目的などを医師と十分に相談し、適切な方法を選ぶことが大切です。
胃カメラを鼻から入れるのに向いている人は?
これまで鼻からの胃カメラの特徴や、口からの胃カメラとの違いについて詳しく解説をしてきました。では、どのような人が鼻からの検査に向いているのでしょうか。
結論からいえば、胃カメラを鼻から入れるのに向いている人は以下の3つのタイプの人といえます。
- 痛みに弱い人
- 検査当日に運転したい人
- 授乳中の人
ここでは鼻からの検査に向いている3つのタイプについてそれぞれ詳しく説明をします。
痛みに弱い人
胃カメラ検査は、一部の人々にとっては不快な経験となる可能性があるでしょう。特に、痛みに敏感な人々は、検査中の不快感を強く感じることがあります。
しかし、鼻からの胃カメラ検査は、口からの検査と比べて痛みが少ないとされています。
これは、鼻腔から胃までの経路が自然な曲線を描くため、カメラが体内の壁に強く当たることが少ないからです。
したがって、痛みに弱い人々にとっては、鼻からの胃カメラ検査が適しているといえます。
検査当日に運転したい人
胃カメラ検査後、一部の人々は一時的に運転することが難しい状態になることがあります。
これは、検査中に使用される麻酔や鎮静剤の影響で、一時的に意識が朦朧とすることがあるからです。
しかし、鼻からの胃カメラ検査では、鼻腔に塗布する局所麻酔のみで検査を行えます。
これにより、全身麻酔のリスクや負担を避けられます。したがって、検査当日に運転を予定している人々にとっては、鼻からの胃カメラ検査が適しているといえるでしょう。
授乳中の人
授乳中の人々は、自身の体調だけでなく、赤ちゃんの健康にも影響を与える可能性があります。そのため、授乳中の人が胃カメラの検査や治療を選択する際には特別な配慮が必要です。
鼻からの胃カメラ検査では、鼻腔に塗布する局所麻酔のみで検査を行えます。局所麻酔の場合、麻酔薬が母乳を通じて赤ちゃんに影響を与える可能性は低いです。
それに対して、鎮静剤を打って検査を行う口からの胃カメラ検査の場合は、赤ちゃんに影響を与えるリスクがあるとされています。
したがって、授乳中の人々にとっては、鼻からの胃カメラ検査が適しているといえるでしょう。
胃カメラを楽に受けるコツ
一般的に胃カメラは苦しいものと考えられていますが、どのように検査を受ければ楽になるのでしょうか。
ここでは、その胃カメラの検査を楽に受けるコツとして2つのポイントについて紹介しましょう。
体の力を抜く
胃カメラ検査中、無意識のうちに体に力が入り、緊張状態になることがあります。これは、体の抵抗反応として自然な反応ですが、実はこれが検査を難しくさせる一因となります。
体が硬くなると、カメラの挿入が困難になり、結果的に不快感を増大させる可能性があるからです。そのため、検査中は意識的に体の力を抜くことが重要です。
深呼吸によってリラックスして、体全体の力を抜くことを心がけましょう。これにより、カメラの挿入がスムーズになり、検査が楽になるでしょう。
不安なことはすぐに相談する
胃カメラ検査に対する不安や恐怖は、検査の負担を大きくする可能性があります。
そのため、不安なことや疑問点があれば、すぐに医師や看護師に相談するようにしましょう。
検査の流れや感じることがある痛み、不快感について事前に理解しておくことで、不安を軽減できます。
また、検査中に何か不快な感じがした場合も、すぐに医療スタッフに伝えることが大切です。
医療スタッフは患者さんの安心と安全を第一に考えていますので、遠慮せずに何でも相談することが重要です。
編集部まとめ
この記事では、胃カメラ検査の一つである鼻からの胃カメラ検査について詳しく解説しました。
鼻からの胃カメラ検査は、痛みや吐き気の少なさ・会話が可能であること・麻酔の負担も軽いというメリットがあります。
しかし、デメリットとして、出血の可能性・鼻の状態によっては検査ができないこと・カメラの解像度が落ちる点が挙げられることを理解しておきましょう。
また、痛みに弱い人・検査当日に運転したい人・授乳中の人などは特に鼻からの胃カメラ検査が適しています。
こうした点に注意しながら、自身の体調や症状に応じて適切な胃カメラの検査方法を選択することが重要です。
医師との十分なコミュニケーションをとりながら、安全かつ効果的な検査を受けることを心がけましょう。