フィナステリドの効果とは?副作用や服用の注意点などついて解説
日本では、薄毛に悩む人が年々増えていることをご存知でしょうか。推定にはなりますが、薄毛に悩んでいる男性は1,200万人以上、女性では600~1,000万人以上もいるといわれています。
つまり男性であれば5人に1人、女性であれば10人に1人という非常に身近な問題であるといえるでしょう。近年では、若年層でも薄毛に悩む人が増えているとの情報もあります。
一般的に使用されている育毛剤はフィナステリド(プロペシア)ですが、薄毛で悩んでいるけれど育毛剤を使うことに抵抗があるという人も多いのではないでしょうか。
本記事では、薄毛治療において最も使用されているフィナステリドの効果・副作用・服用時の注意点について、紹介していきます。また、女性はフィナステリドの使用を避けるべきとされている理由についても、詳しくみていきましょう。
監修医師:
金 仁星(医師)
化粧品検定2級、英語発音指導士® 所有
目次 -INDEX-
フィナステリドの効果とは?
2005年10月に初めてAGA(男性型脱毛症)用の薬として承認を取得したフィナステリドには、一体どのような効果があるのでしょうか。
フィナステリドの効果を解説しながら、AGAのメカニズムについても詳しくお伝えしていきます。またAGAを基本としてお伝えしていますが、FAGA(女性びまん性脱毛症)にも通じる部分があります。
フィナステリドや脱毛症のメカニズムに興味がある人には、ぜひ参考にしてみてください。
AGAのメカニズム
そもそも毛髪には、2~6年かけて新たに生えて伸びていく成長期の後に、2週間かけて毛包の活動が低下する退行期に入ります。
退行した毛髪が抜け落ちると、3〜4か月の休止期を経て、また新たな毛髪が生える成長期へ戻るヘアサイクル(毛周期)を繰り返しています。
そのため脱毛症とは関係なく、正常な状態であっても毛髪は定期的に抜け落ちているので、ご安心ください。
しかし何らかの要因でAGAを発症した場合には、ヘアサイクルの成長期が短くなってしまいます。その結果、休止期にとどまる毛包が多くなることで、キューティクルとメラニン色素が少なくダメージを受けやすい状態である軟毛化してしまうのです。
軟毛化した毛髪は細く短くなり、ダメージに耐えられなくなると最終的には毛髪が生えてこなくなります。この生えてこなくなった状態がパターン化されていることを脱毛症と表しています。
日本人男性の場合は、20歳後半~30歳にかけて目立ちやすくなると、徐々に進行して40歳以後にAGAと診断される人が多いといえるでしょう。
その一方で女性は男性と異なり、更年期を迎えると脱毛症を発症する人が多い傾向にありますが、脱毛のメカニズムは同じであると認識しておいてください。
抜け毛が増えるのを予防する
AGAを発症する原因には男性ホルモンの影響が深く関係しているとされています。しかし、一般的には男性ホルモンが骨や筋肉の発達を促し、髭や胸毛などを濃くする方向に作用しているのです。
毛を濃くする作用があるはずの男性ホルモンがなぜ頭皮では脱毛を招いてしまうのでしょうか。
それは、前頭部や頭頂部などの男性ホルモン感受性毛包に存在する男性ホルモン受容体が影響しているからです。
男性ホルモンと男性ホルモン受容体が結合すると、全ての毛穴に存在して毛の形成と着色する働きを持つ毛母細胞の増殖が抑制されてしまいます。
毛を形成する働きが抑制されるため、近年の研究からも成長期を短縮させる要因であることが報告されました。
そこで、男性ホルモンが男性ホルモン受容体との結合を防ぐ効果のあるスピロノラクトンを使用し、抜け毛が増えるのを予防するのです。
男性ホルモンの結合を防ぐことにより、ヘアサイクルの成長期を正常な状態に戻せるため、AGAの改善に効果があると認められています。
フィナステリドの基本情報
フィナステリドの作用についてはご理解いただけましたでしょうか。
ここからはAGAに効果のあるフィナステリドが、どのような成分が入っている薬剤であるのか不安を感じている人のために、基本情報についても触れていきましょう。
用法・用量についても解説していきますので、今後フィナステリドをご使用になる際には、処方量をしっかり守って使用するよう心がけましょう。
成分
フィナステリドは、成分そのものの名称です。効果としては、AGAを発症する要因となる男性ホルモンに関わる「5αリダクターゼ」という酵素の働きを抑制します。
5αリダクターゼとは、体内で起こる消化・吸収・排泄などの化学変化における還元酵素の1つです。AGAを発症している場合には、テストステロンと呼ばれる男性ホルモンの一種が、より強力なDHTと呼ばれる男性ホルモンに変換される時に必要となる酵素になります。
DHTは悪玉のホルモンで、抜け毛の直接的な原因となるものです。毛母細胞に存在する男性ホルモン受容体と結合すると、TGF-βという髪が抜けるように指令する脱毛因子を生み出します。
5αリダクターゼを抑制できれば、DHTやTGF-βといった薄毛の原因物質が増えることはありません。AGAを治療する上で、5αリダクターゼをいかに抑制できるかが重要です。
そこで活躍してくれる成分がフィナステリドになります。
用法・用量
フィナステリドを使用する際は、1日1回0.2mgおよび1mgです。
過去の研究では頭頂部に軽症から中等症の脱毛を有する、18〜40歳のAGA男性患者さん212人を対象にした結果が発表されています。
フィナステリド1日1回1mgを48週間投与のヘアサイクルに及ぼす影響を検討したところ、脱毛している部位の毛髪の投与前と治験薬投与後48週間後では平均で7.2〜18.0本も増加したのです。
この研究によりフィナステリド1mg投与で、脱毛している部位から有意に毛髪が増加したことが明らかになっています。フィナステリドを使用すると、ヘアサイクルにおける成長期への転換を促進し、短縮した成長期を回復させられます。
これらの結果を受けてフィナステリドを使用したいと感じたら、まずは病院へ受診しましょう。
フィナステリドの副作用
フィナステリドは国が認めている医療薬品ではありますが、非常に低い確率で副作用がみられる場合もあります。しかし、副作用には個人差があることを予めご了承ください。
主にみられる副作用は以下の7つになります。
- <頭皮のかゆみ/li>
- 肝機能障害
- 性機能障害
- 初期脱毛
- 気分の落ち込み
- 乳房圧痛
- ポストフィナステリドシンドローム
結果からお伝えしましたが、具体的な症状についてはこれから後述していきましょう。
頭皮のかゆみ
近年では、フィナステリドを配合した頭皮用ローションやシャンプー剤などが販売されています。薄毛に悩んでいる人なら、市販の商品を使って手早く症状を改善したいと感じる人も多いのではないでしょうか。
しかし、フィナステリドを配合した頭皮用ローションやシャンプー剤などは、直接皮膚に薬品を塗るため敏感肌な人は頭皮にかゆみが出る場合もあります。
市販を試したくなる気持ちもわかりますが、まずは病院へ受診して適切な処方箋を出してもらうのがおすすめです。
肝機能障害
過去に日本人414名のAGA男性被験者を対象とした研究結果から、フィナステリドの処方量を1日1回0.2mgから1日1回1mgに移行する実験が行われました。
その際に、1名の肝機能障害を発症したケースが報告されています。重要な副作用として肝機能障害は研究者たちに認知されていますが、発症する頻度・確率・因果関係については未知数であり、悪影響を及ぼす可能性があることは否定できません。
ほかにも、胃潰瘍や大腸ポリープなどの症状が確認されており、いずれにしても因果関係は不明となっています。
非常に低確率ではありますが、肝機能障害など重度な副作用を発症する場合もあると認識しておいてください。
性機能障害
3,927名の男性被験者を対象として行われたフィナステリドの服用実験により、性機能障害が研究により確認されています。
主にみられる性機能障害は以下の通りです。
- 性欲低下
- 勃起機能不全
- 射精障害
- 精液量の減少
- 精子濃度の減少
- 無精子症
- 血清液症(精液に血が混じる症状)
- 男性不妊症
上記のような性機能障害については相対危険度が上昇する傾向にあることが判明しています。
しかし、観察期間12~24か月以上のシステマティック・レビューにおいて予後を記録したところ、脱毛部位での硬毛数は投与6か月後と24か月後の時点で毛髪の量が増加していると確認されました。
フィナステリドの用量によっては軽度である場合もありますが、これらの症状は服用してすぐに発症するものではありません。
3か月後から徐々に副作用が出てきますので、専門の医師と相談・カウンセリング・定期的な検診を受けることが大切です。
初期脱毛
こちらもほかの副作用と同様に稀なことですが、初期脱毛がフィナステリドでも起こる可能性があります。
初期脱毛が発生すると、脱毛症を治すために使用したのにと焦ってフィナステリドの処方を中断してしまう人がみられます。毛髪が抜け落ちてしまったからといって、心配する必要はありません。
フィナステリドを処方すると一時的にヘアサイクルの乱れた状態になりますが、徐々に安定してきます。安定すると初期脱毛は起こらず、ヘアサイクルが正常な状態に戻る可能性を期待できるでしょう。
気分の落ち込み
毛髪の改善効果が顕著に現れる一方で、気分が落ち込みうつ状態に悩まされるといった副作用がみられる場合もあります。
近年報告された国内副作用症例においては、フィナステリドの副作用で精神不安症状の報告例が予想値より統計学的にも高い結果でした。
さらに、うつ症状との因果関係が否定できない症例は認められていないため、副作用による悪影響であると懸念されています。
フィナステリドを使用して気分が落ち込むようであれば、速やかに医師に相談してください。
乳房圧痛
乳房圧痛とは、一般的に女性が排卵日から次の月経までの黄体期に分泌されるホルモンの作用によって、乳房に張りと圧迫感のある痛みを感じる症状です。
生理現象で日常生活に支障をきたすことは少ないですが、稀に強い痛みが続く場合は治療が必要となるケースもあります。
フィナステリドを服用すると、男性でもこの胸が圧迫されるような痛みを伴う可能性があります。一時的な症状で治まる傾向にありますが、症状が続くようであれば病院へ受診しましょう。
ポストフィナステリドシンドローム
AGAが改善されてフィナステリドの服用を中止してもなお、5αリダクターゼという酵素の働きを抑制する活動が体内で続くことをポストフィナステリドシンドロームといいます。
作用に依存性のある副作用になるため、リビドー消失・性機能障害・精神の不調が報告されています。
しかし、フィナステリドの用量として推奨されている1mgにおいては、明らかなポストフィナステリドシンドロームの報告はありません。
ポストフィナステリドシンドロームを発症しやすいとされているのは、用量が5mgであった時とされています。
フィナステリドの用量を増やしてもAGAの治療効果があがるわけではなく、むしろ副作用の確率を高めてしまうため、用法・用量はしっかりと守りましょう。
フィナステリドを服用する際の注意点
フィナステリドの副作用をご理解いただいた上で、服用する際の注意点を2つ紹介します。特に薄毛で悩んでいる女性には、この注意点をしっかり認識していただきたい内容です。
厚生労働省でも正式に発表されている内容でもありますので、本記事でも取り上げていきましょう。
女性の使用時は特に注意が必要
女性にもFAGAという薄毛の症状もありますが、フィナステリドの服用は不可とされています。
その理由としては体内のテストステロン分泌の割合をみてみると、女性は男性に比べると分泌できるのは約10%だからです。
さらに妊娠中の女性がフィナステリドを摂取すると、男児の生殖に悪影響を及ぼす可能性は否定できません。パートナーがフィナステリドを使用する際にも、細心の注意を払いましょう。ただし、日本では基本使われませんが、海外ではミノキシジルのみでは難しい症例の場合に使用されることがあります。
フィナステリドは粉砕してはいけない
一般的にフィナステリドの錠剤にはコーティングがされています。フィナステリドを配合した頭皮用ローションやシャンプーと同様に、錠剤の粉末であっても皮膚から吸収されるのです。
そのため、誤って粉砕してしまった場合には素手で触らないようにしましょう。特に女性やお子さんに対しての配慮は必要不可欠です。
フィナステリドの添付文書
フィナステリドを服用する際には、さまざまな注意すべき点があります。注意事項が多いため、フィナステリドの添付文書の内容を把握しておきましょう。
パートナーやお子さんに危害が及ぶ可能性もあると懸念されています。服用する際には、パートナーやお子様の手が届かないところに保存するなど、最悪の状況を未然に防ぐ行動を心がけましょう。
フィナステリドはヘアサイクルを正常に戻す
何度か先述してきましたが、AGAの原因となる男性ホルモンが男性ホルモン受容体と結合させる働きを持つ、5αリダクターゼという酵素を抑制する役割を担うのがフィナステリドです。
男性ホルモンを制御することで、短くなってしまったヘアサイクルの成長期を正常な状態に戻すことでAGAが改善されます。
しかし、服用する際には注意すべき点や副作用について、十分ご理解した上で医師に処方してもらいましょう。
編集部まとめ
男性であれば若年層から悩みの種にもなり得る薄毛の問題は、今や女性にとっても身近な問題となってきています。
本記事では、AGAを中心にフィナステリドの効果・副作用・服用の注意点を詳しく解説してきましたが、いかがでしょうか。
フィナステリドは正しく使用すれば安全性も効果も高い薬剤です。薄毛治療を考えている方は自分で判断せず、信頼できる医療機関を受診して適切な診断・治療を受けるようにしましょう。
見た目の問題は心と人間関係に大きな影響を及ぼします。視野が狭くなる人も多いですが、ご自身にも家族にとっても、最良の選択を取れるように心がけていきましょう。
参考文献