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顔が痛い! 顔の片側がぴくつく! 三叉神経痛や顔面けいれんについて、原因や治療選択肢、近年の手術法も解説

 更新日:2024/08/16

三叉神経痛を発症すると、日常生活の些細な刺激が引き金となり、顔面に激しい痛みを感じます。顔の感覚を伝える「三叉神経(さんさしんけい)」に起因するため、三叉神経痛と呼ばれます。
一方、顔を動かす「顔面神経」に起因する疾患として、片側顔面けいれんがあります。発症すると、自分の意志では止められない顔面のぴくつきにより、人前に出づらくなるなど日常生活に支障をきたすことがあります。
実は、三叉神経痛と顔面けいれんは、同じような原因により起きている病気です。本記事では、三叉神経痛と顔面けいれんの概要や治療、近年の新たな手術法などについて解説します。

岸田 悠吾

監修医師
岸田 悠吾(東京Dタワーホスピタル)

プロフィールをもっと見る
医師、医学博士。福島県立医科大学 脳神経外科講師、日赤愛知医療センター名古屋第二病院脳神経外科・神経内視鏡センター副部長を経て、現在東京Dタワーホスピタルに在籍。下垂体腫瘍や脳腫瘍を中心に脳神経外科疾患の基礎研究、教育、臨床に従事。特に神経内視鏡手術については1000例以上の経験をもち、医学誌への執筆や国内外の学会発表歴多数。脳神経外科専門医、内分泌代謝科(脳神経外科)専門医、日本神経内視鏡学会 技術認定医、日本神経内視鏡学会 評議員、日本間脳下垂体腫瘍学会 学術評議員など。

三叉神経痛とは

三叉神経痛とは

三叉神経が血管や腫瘍によって圧迫されて生じる

三叉神経痛は、顔の感覚を伝える神経である三叉神経が頭の中で圧迫・刺激され、電流が流れるような突発的で鋭い顔面痛(電撃痛)を生じる疾患です。
三叉神経は、顔全体や唇、歯茎、口の中の粘膜などの感覚を司る神経で、頭蓋骨の底付近で名前の通り三叉(3つまた)に分かれ、それぞれ下記の領域に広がっています。
東京Dタワーホスピタル
三叉神経痛は、上記の神経領域の1つ、あるいは2つの領域に限局した電撃痛が生じることが大半です。三叉神経痛全体の、38%は第2枝領域、35%は第3枝領域、そして15%は第2,3枝領域に合併して生じ、第1枝領域単独や第1,2枝領域合併はそれぞれ5%前後とされています。つまり、頬や鼻・口のまわり、歯茎などの痛みとして発症される方が多い病気です。そのため、抜歯など歯科治療を受けられる方が多くおられますが、原因が異なるため、治りません。
このような痛みが起こる原因の多くは、蛇行した血管(動脈)による、三叉神経の圧迫です。頭のなかで三叉神経が持続的に圧迫されることで神経を包む鞘(髄鞘)が壊れ、神経に誤った痛み信号が伝えられて激痛を感じると考えられています。電化製品のコードを削って、むき出しの電線に触るようなイメージです。
他にも、静脈・腫瘍・血管奇形などによる圧迫や、脳の脱髄疾患などが原因となることがあります。症状や経過についてよく問診を行い、高精細なMRI等によって、腫瘍や脳、顎の異常などがないかを検査します。
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三叉神経痛の症状

三叉神経痛の症状

顔面に、瞬間的な電撃痛がでる

さまざまな病気の中でも、三叉神経痛は「最も痛い病気の一つ」と認識されています。
瞬間的でビリッとした鋭い電撃痛は多くの場合、数秒~2分程度でおさまります。発作がないときは基本的に無症状ですが、持続的な鈍痛や異常感覚が出る場合もあります。発作が出る期間が続いた後、数か月間痛みが出ないことがありますが、しばしば、徐々に発作の頻度が高くなったり痛みが強くなったりしてきます。
通常は左右いずれかの顔面に症状が現れますが、両側に起こる三叉神経痛もあり、その場合は脱髄疾患など、脳の病気を念頭に検査を進めなければなりません。

歯磨き・洗顔・食事・化粧など、引き金になる行動で痛みが誘発される

三叉神経痛には、触れることで痛みの引き金となる誘発領域(トリガーゾーン)があることが多く、例えば、鼻の横や顎、歯茎など、一定の場所を触ったり、口にものをいれて動かしたりした瞬間に、激痛が走ります。会話や食事、歯磨き、髭剃り、化粧、洗顔など、日常的な行動の中で痛みが生じるため、患者さんは顔の一部を避けて洗ったり、軟らかいものばかりを食べたりといった、トリガーゾーンへの刺激を避ける行動をとります。
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顔面けいれんとは

顔面けいれんも、血管による脳神経の圧迫で起こる

三叉神経が顔の感覚を伝える神経であるのに対し、顔面神経は顔の動きを司る神経です。脳の運動中枢からでた、「口を開けよう」「片目をつぶろう」といった指令(電気信号)を、顔面まで伝える電線のイメージです。顔面けいれんは、顔面神経が脳から分かれて出てくる部分が圧迫を受けることで、自分では止められない、顔のぴくつきが出る病気で、三叉神経痛と同様、多くは血管による圧迫が原因です。

顔面けいれんの症状

顔面の片側がぴくつき、自分では止められない

はじめは瞼のぴくつきとして出ることが多く、進行すると頬や口角にも拡がり、顔の半分が引き攣ったようになったりします。緊張や心的ストレスで悪化しやすく、特に他人と接する機会の多い方は、生活への支障が大きくなります。
顔面けいれんの正しい病名は、「片側顔面けいれん」で、その名の通り、顔の片側だけに症状が出ます。
まぶたの筋肉の収縮をきたすほかの病気として「眼瞼(がんけん)けいれん」や「眼瞼ミオキミア」などもありますので、丹念に症状を確認することが重要です。

三叉神経痛・顔面けいれんの治療法

東京Dタワーホスピタル
三叉神経痛、顔面けいれんの治療について解説していきます。
いずれの疾患も手術の効果が高く、適切な施設で行われる限り重篤な合併症リスクも高くないため、手術はとても有用な選択肢です。一方、時間がたっても生命に直接関わる病気ではないため、どの患者さんでもすぐに手術をすべきというわけではありません。
それぞれの治療のメリット、デメリットを医師によく確認し、症状の強さやライフイベントなども考えながら、ご希望に沿った治療法を選ぶことが重要です。

薬物治療

【三叉神経痛の場合】
三叉神経痛には一般的な痛み止めは効かず、抗てんかん薬であるカルバマゼピンが治療の第一選択として用いられます。有用な薬ですが、眠気・ふらつき・めまいなどが出やすく、時に重篤なアレルギーや血球減少など重い副作用が出ることがあるので、特に飲み始めは細かめに症状確認を行います。また、長く使用していると徐々に効きづらくなって必要量が増えることがあるので、適切な用量調整が重要です。
カルバマゼピンが効かない方や服用が難しい方は、その他の抗てんかん薬などが選択肢となります。

【顔面けいれんの場合】
顔面けいれんに対しても薬物治療が試みられることがあり、抗てんかん薬のクロナゼパムが比較的よく用いられます。しかし、三叉神経痛に比べて薬の効果は低く、軽症の方の初期治療として試すことはあっても、内服薬のみで満足のいく効果が得られる方はごく少数です。

定位放射線治療 (三叉神経痛)

定位放射線治療は、ガンマナイフやサイバーナイフという放射線治療機器を用いて、三叉神経に集中的な放射線照射を行い、神経機能の調整をすることで痛みの軽減をはかる治療法です。
放射線照射後、数日から数か月の間に痛みが徐々に軽減し、1年後に十分に改善する方の割合は80-90%、5年後で50-60%程度とされています。合併症として、顔の知覚低下や異常感覚が出ることがあります。手術より長期的な痛みの制御率は低いものの、全身麻酔が必要なく体の負担が少ないのは大きなメリットです。手術リスクが高い方や、高齢者などで選択されることが多い治療法です。

神経ブロック療法 (三叉神経痛)

神経ブロック療法は、局所麻酔薬、アルコール、高周波熱などにより、三叉神経を麻痺または破壊し、痛みを感じにくくする治療法です。通常濃度の局所麻酔薬のみで行う場合は短期間で効果が切れますし、アルコールや熱凝固などは三叉神経そのものが障害されるため顔のしびれ感や異常感覚が残ることがあるので、十分にリスクを理解した上で治療を受ける必要があります。治療法としては優先度が低く、薬物・手術・放射線治療などが行えず、手だてがない場合に検討される治療法と考えます。

ボツリヌス毒素注射 (顔面けいれん)

ボトックスは、ボツリヌス菌が作る毒素を製剤化したものです。毒素による筋弛緩作用という本来はこわい現象を、逆にうまく利用して治療に転用したものと言えます。希釈したボトックスをまぶたなどに少量ずつ注射することで顔の筋肉を緩め、顔面けいれんの軽減をはかります。手術に比べて全身的負担は小さいですが、効果は3-4か月程度で切れてくるので、年に何回か繰り返し行う必要があります
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手術(三叉神経痛、顔面けいれん) ~内視鏡下微小血管減圧術について~

三叉神経痛および顔面けいれんの根本的な原因である神経の圧迫は、「微小血管減圧術」という手術で解消することができます。術後、90-95%程度の方で症状の消失や大幅な改善が期待でき、その改善率の高さと、前項までのような継続的な治療が不要になることが大きなメリットです。ただし手術でも、長期的には数%程度の方で再発が起こりえます。
手術時間は3時間程度で出血量も少ないので、比較的体の負担が少ない手術ですが、心肺機能が悪い方や基礎疾患の多い高齢者などでは他の治療を優先することが多くなります。起こりうる合併症として聴力低下、顔のしびれや麻痺、複視、脳挫傷、脳梗塞、髄液漏、感染などが挙げられますが、重篤なものは稀です。当院では、従来の顕微鏡手術に代わり「内視鏡下微小血管減圧術」によって、合併症のさらなる低下を図っています。

~内視鏡下微小血管減圧術~
全身麻酔をかけたのち、心肺に負担のかかりにくい仰向けの姿勢で頭を傾けて手術を行います。耳の後ろで頭蓋骨に2.5㎝程度の穴をあけて、頭の中の操作を行います。内視鏡下に観察しながら、神経を圧迫する血管を吊り上げるように移動させ、周囲の骨などに固定し、三叉神経や顔面神経をフリーにします。
多くの施設では顕微鏡下に手術が行われますが、深いところでは神経の裏側や脳に入る細かい血管が見えにくく、観察のために周囲の脳や神経を強く引っ張って、聴力低下など合併症の原因となることが問題でした。
そこで、当院では手術をすべて内視鏡下に行うことで、深い部分の視認性を改善し、脳・神経の牽引を軽減して、より安全性を高めています。

三叉神経痛や顔面けいれんでお悩みなら東京Dタワーホスピタルにご相談を

東京Dタワーホスピタル
長期にわたる治療や重い症状に悩み、専門的な診療を受けたい場合、どのような医療機関に相談すればよいでしょうか。今回は、三叉神経痛や顔面けいれんでお悩みの方に東京Dタワーホスピタルを紹介します。

先進的な神経内視鏡・ナビゲーションシステムなどの機器を完備

東京Dタワーホスピタルでは、手術用の機器として神経内視鏡・ナビゲーションシステム、聴覚低下の合併症を減らすために必須な神経モニタリングなどの機器を完備しています。東京Dタワーホスピタルでは微小血管減圧術をすべて内視鏡下に行うことにより、安全性や確実性のさらなる向上を図っています。

経験豊富な医師による三叉神経痛・顔面けいれんの外科治療

東京Dタワーホスピタル院長
東京Dタワーホスピタルは、院長をはじめ、脳腫瘍や微小血管減圧術・神経内視鏡治療を専門分野とする医師が在籍しており、これまでの豊富な経験により、さまざまな症状に対して専門性を生かした診察・手術を行っている医療機関です。
内視鏡下微小血管減圧術については、1000例以上(※公式HP参照)の神経内視鏡手術経験を持つ習熟した術者が手術に当たっており、患者さんにも質の高い医療を提供可能です。

東京Dタワーホスピタルの基本情報

アクセス・住所・診療時間

ゆりかもめ 市場前駅 徒歩2分、東京BRTバス:豊洲市場前 下車 徒歩3分

東京都江東区豊洲6-4-20 Dタワー豊洲 1階・3-5階

診療時間
9:00~12:00
14:00~17:00

〇:もの忘れ外来
★:通常診療、(第3土曜のみ)脊髄・脊椎外来
※予約制のため、ご希望の曜日に取れない場合もございます。
※金曜日に受診をご希望の方はご相談ください。
※上記は脳神経外科の診療時間となります。ほかの診療科についてはホームページをご確認ください。

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