睡眠薬と睡眠導入剤の違いは?副作用も解説
睡眠薬を利用したことのある方は、夜眠れない時の睡眠薬は非常に役立ってくれた経験があることと思います。
そして睡眠薬、睡眠導入剤と聞くと同じものを指すと思われている方も多いのではないでしょうか。
睡眠薬と睡眠導入剤は確かに同じものを指す場合が多いのですが、そもそも睡眠薬とは何なのか、はたまた内服をするときには何を使うべきか悩みどころではあることでしょう。
今回はそれら、睡眠薬を使うにあたって代表的な副作用や睡眠薬の種類やその他知っておきたいことをまとめています。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
目次 -INDEX-
睡眠薬と睡眠導入剤の違いは?
端的に申しあげると両者の間に名称での本質的な違いは見られません。
まず睡眠薬と呼ばれるものは、文字通り睡眠を誘発させ持続させるもののことを指し、不眠状態や睡眠が必要な時に処方されるときが多く見られます。
睡眠導入剤は最近名称が使われる機会がありますが、睡眠薬の間でも持続時間が短いタイプの薬剤の総称として便宜的に使われているものです。
どちらも疾患と他の薬剤との服用で副作用が起こらないよう注意する必要があるので、医師の指導のもと服用するように心がけましょう。
睡眠薬・睡眠導入剤の主な副作用は?
睡眠への導入がしやすくなる睡眠薬や睡眠導入剤は、不眠症の方にとってはなくてはならないものといえるでしょう。
医師は不眠のタイプにより睡眠薬の作用や長さを考慮して内服を処方しますが、ここでは医師を信用し内服を続けることが大切です。
そして眠りへの不安がなくなってから医師の指示でやめるようにしましょう。
眠気の持ち越し
睡眠薬を使う時は、夜の間だけ効果を発揮していると良いのですが、成分によっては翌朝まで眠気が持続する可能性があります。
これが持ち越し効果と呼ばれているものです。
強い眠気で朝が起きられない、日中も眠気が続く場合がこちらに該当します。
持ち越しが認められた場合には、睡眠時間が整っているかと薬を減らす対応を取ることが可能です。
依存性
睡眠薬を使用する上で気を付けていただきたいものは依存性です。
睡眠薬を使って睡眠し次第に慣れてくると、薬なしでは眠れないと思い込んでしまう方がいらっしゃるのではないでしょうか。
これにより薬がやめられないのは反跳性不眠(医師の指示なしで内服を中断することにより、以前より強い睡眠障害が発生すること)が原因となることが確認されてます。
作用時間の短い内服薬ほど症状が現れやすいものです。
ふらつき
睡眠薬には筋弛緩作用が含まれており、それによりふらつきやすくなる副作用も出てくるでしょう。
特に高齢者になると足腰が弱い方だと転倒などのリスクが生じます。
足腰に力が入らない、または足がもつれたり転倒したりするなどがこれにあたるため注意が必要です。
対策として薬の量を減らしたり、作用時間が短く筋弛緩作用が弱い薬に変更することで防ぐことが可能ですので、気になるようであれば医師に相談し対応しましょう。
健忘
例えば内服して体内で薬効が働いている時間帯に限定して、その間十分に覚醒しないまま食事を行うとしましょう。
すると起きた出来事や自分の起こした行動を覚えていない状態になることがあり、これを前向性健忘といいます。
これは脳の障害で起こる認知症とは違い、一時的なものなので薬が体外に排出されると収まることが多いです。
また睡眠薬の量が多く効果が強いものやお酒と併用したときも発症しやすくなるので、寝る直前に内服することと、大事な仕事の前には服用しないことが対策として大切なことといえるでしょう。
睡眠薬・睡眠導入剤の種類
薬といわれると、鎮痛剤だとロキソニンやカロナールなどの薬の名前が浮かびやすい方もいらっしゃるでしょう。
睡眠薬や睡眠導入剤も同じで、名称や効能に違いが設けられています。
現在使われている睡眠薬は脳の機能を低下させるタイプと、自然な眠りを強くする睡眠薬に分かれて処方されていることが多いです。
脳の機能を低下させるタイプはベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系です。
これらは大脳辺縁系の活動を抑えることで催眠作用をもたらします。
一方、自然な眠気を強くする睡眠薬は睡眠と覚醒の周期に関する物質の働きを調節して睡眠状態に仕向ける薬になりますので、効果としては眠気を強める形といえるでしょう。
ベンゾジアゼピン系
睡眠薬の代表格としてベンゾジアゼピン系の内服がよくあげられることでしょう。
ベンゾジアゼピン系は主に抗不安薬として使われることもありますが、睡眠薬として使用される機会も見受けられます。
このベンゾジアゼピン系抗不安薬にはGABAと呼ばれる物質が関わっています。
GABAは中枢神経を抑制する脳内神経伝達物質で、大脳辺縁系という脳の一部分を選択的に抑制して興奮や不安を取りのぞき睡眠に誘導してくれるのです。
ベンゾジアゼピン系の薬は種類がありますが作用時間や特性が異なり、それぞれ超短時間型・短時間型・中間型・長時間型に分類できます。
薬の半減期と呼ばれているものも合わせて知っておいていただきたいのですが、半減期も短いほど迅速に血中濃度がピークに達し、その後速やかに血中から除去されていきます。
副作用として、昼間の強い眠気や依存性に注意が必要です。
特に依存性は、時期や種類などの因果関係はありますが、毎日服用していると薬に対する身体依存が発生してくることがあるため注意が必要です。
非ベンゾジアゼピン系
ベンゾジアゼピン系は鎮静や睡眠作用が見られますが、非ベンゾジアゼピン系も同じで特徴はベンゾジアゼピン系の睡眠薬より抗不安作用、筋弛緩作用が少ない薬というメリットがあります。
身体的特徴としては立ちくらみが出にくい薬といえるのではないでしょうか。
また睡眠薬は途中で自己判断にて辞めることは避けましょう。これにより不眠が悪化したり不安症状に見舞われるおそれがあります。
そのためにまずは内服量を減らすことから始めるので、その際は医師の指示に従いましょう。
メラトニン受容体作動薬
代表的な薬はラメルテオンです。
メラトニンは脳の松果体から分泌されるホルモンのことで、睡眠までの状態と質を作り出し睡眠中枢を優位にして眠りやすくする効果が見られます。
メラトニンは昼に少なく夜に多いため光によって分泌が抑制されており、睡眠に深くかかわりがあることが確認されてます。
また既存の内服薬による学習記憶障害・依存性も見られず、睡眠も自然に近い形で誘導してくれる内服薬です。
不眠症の方が就寝前に服用すると、寝るまでの時間の短縮や睡眠時間の増加の効果が見られるのでよく処方されやすい内服となります。
オレキシン受容体拮抗薬
オレキシン受容体拮抗薬はベルソムラが代表的です。
オレキシンは視床下部から産出されるペプチド(アミノ酸が結合したもの)を指します。
睡眠や覚醒、食欲の制御系の関与をしているといわれており、平たくいうと日中や食事の時に分泌量が増加する成分です。
このオレキシンに作用して、受容体への結合を阻害することで過度な覚醒状態を緩和させ、覚醒と睡眠中枢のバランスを整えます。
ただし高齢者の方には内服するにあたり減量が必須となりますので、医師の指示のもと内服し、内服後はよく観察をしてあげてください。
睡眠薬・睡眠導入剤は減薬できる?
睡眠薬や睡眠導入剤の減薬は可能ですが、必ず医師の指導のもと行なってください。
自分自身の中で睡眠への感覚が次第に戻ってきたら、内服を一度止めたくなることがあります。
しかし、内服に関しては医師の指示が入るまで続けましょう。
なぜなら副作用の説明時に反跳性不眠について説明しましたが、特にベンゾジアゼピン系の内服薬は反跳性不眠が起こりやすくなる可能性があるからです。
そして傾向として、睡眠薬を多く使いかつ長期間服用されている方は依存症に陥っている方も見られます。
特にベンゾジアゼピン系の睡眠薬を長期にわたり使用していると薬剤耐性がついてしまうので、不眠が治っているのであれば早い段階で減薬や休薬の手段を講じるべきでしょう。
また、適切に睡眠薬を減らすことができると副作用の減弱も見込めることが可能です。
方法としては、休薬に向けて内服を少量ずつ減らす方法か、時々内服を休憩する方法が取られることもあります。
期間も4から8週かけて1~2週間ごとに内服量の25%ずつ減らしながらゆっくり時間をかけて減薬や中止を行うので急な副作用も起きにくいです。
市販されている睡眠改善薬とはどのようなもの?
結論からいうと医師から処方される睡眠薬と、市販されている睡眠改善薬は違うものであることは覚えておきたいものです。
睡眠改善薬となると、現在市販されているものは代表的なジフェンヒドラミンをはじめとした第⼀世代抗ヒスタミン薬(ドリエルなど)があります。
実のところ、これらは純粋な睡眠薬ではなくアレルギー薬の作用を利用したものとなるのです。
そのため、睡眠改善薬はあくまでも一時的な不眠における方を対象として使用するものになります。
また睡眠改善薬は不眠症に罹患している方に行なった治験においては、不眠症に対する効果はみられませんでした。
それにより不眠症の方は、市販の睡眠薬を使わないことをお勧めします。
また内服薬の箱にも注意書きがあり
- 一時的な不眠に使用すること
- 不眠症の診断を受けた方は使用しないこと
を明記してありますので、不眠症に該当する方は使用を控えてください。
長期にわたる不眠症状がみられる方は、医師に相談して睡眠薬を処方してもらいましょう。
睡眠薬・睡眠導入剤の使用以外でできる睡眠対策は?
誰しもできることなら睡眠薬や睡眠導入剤なしで眠りにつきたいものです。
そこで、内服薬を使わないにはどのようにすればいいかを紹介させていただきます。
どちらも簡単にできるものを紹介させていただきましたので、質の高い睡眠につなげていただけると嬉しいです。
朝起きたら太陽の光を浴びる
睡眠薬や睡眠導入剤を服用した翌朝は眠気を強く感じることがありますが、なるべく窓の外にある太陽光を浴びるようにしましょう。
朝起きてすぐに太陽光を浴びると、24時間よりも長い周期となる体内時計のずれをリセットすることができます。
また、夜の照明も大切になります。
これは家の照明の光でも体内時計は遅れてしまいますので夜の照明は控えめにして頂き、朝は自然の光に当たるようにしてください。
寝る直前にパソコンやスマホなどを見ない
若い世代に限った話ではありませんが、寝る前にスマホを見てしまう方もいるでしょう。
テレビやスマホなどのディスプレイに使われるブルーライトには、メラトニンの分泌量を抑制する働きがあります。そしてディスプレイの眩しさにより、脳が昼間だと認識してしまいメラトニンの分泌が抑制されてしまうのです。
結果的に寝付きが悪い、眠りが浅いなどの睡眠障害が現れるようになります。
つまり就寝前に前に強い光を目に入れたり、脳が興奮してしまう情報に触れたりすることは睡眠の質を下げるということです。
ゲームやテレビも寝る前の刺激物として考えられます。
寝る前にスマホの画面は明るさを落とし、就寝の2時間前はスマホを控えるようにしましょう。
カフェインを控える
寝る前にカフェインを摂取して眠れなくなった、という経験をした方もいらっしゃるのではないでしょうか。
コーヒー・紅茶などカフェインを多く含む飲み物を就寝3~4時間前に飲むと眠りが浅くなったり、寝つきが悪くなる可能性があるため飲用は控えましょう。
また夜中にトイレに行きやすくなるため、質の高い睡眠を維持できなくなりますので注意してください。
意外かと思われるかもしれませんが、ココアもカフェインが含まれているので、睡眠薬を頼りにされている方は寝る前のこれらの飲食は避けた方が無難といえます。
加えて就寝前の喫煙もニコチンが刺激物となるので、なるべく控えましょう。
日中に適度な運動をする
日中に散歩や軽い運動をすると身体がスッキリすることがあるかと思います。
他にも軽いランニングなどの習慣をつけることによって寝つきが良くなり、深い睡眠にもつながります。
運動は寝る3時間前、大体夕方から夜にかけて行うと一時的に上がった脳の温度がベッドに入った際に下がり、スムーズな睡眠が得られやすくなります。
逆に寝る前の激しい運動は体が興奮してしまい眠れなくなるのでやめましょう。
寝酒をやめる
上でも睡眠薬を利用しているときはアルコールを摂取することは避けるようにお伝えしてきました。
寝酒も中途覚醒に繋がり不眠のもとになります。
そしてアルコールと睡眠薬は相互作用も見られるので寝る前の飲酒は避けてください。
また、アルコールに頼るのでなく寝室の環境、例えば温度・照明・服装も睡眠の質とかかわりがありますので良い環境で眠ることも大切といえるでしょう。
編集部まとめ
このページでは睡眠薬と睡眠導入剤の違いから、睡眠薬の副作用・種類・減薬できるかなどを紹介させていただきました。
睡眠薬を使うこと自体悪いこととはいえず、むしろ使うことにより睡眠効果が得られるのであれば医師の指導のもと自然な睡眠を取り戻す方法として必要といえるのではないでしょうか。
副作用や質の高い睡眠を行うための方法と合わせて、また睡眠障害などを乗り切るための知恵として活用していただけたら幸いです。
参考文献
- 睡眠薬|厚生労働省
- 睡眠薬を使用している方へ
- 睡眠薬の特徴と注意点
- スイッチ OTC 医薬品の候補成分の成分情報等
- オレキシン受容体拮抗薬(不眠症治療薬)について
- オレキシン受容体拮抗薬の比較について
- 質の良い睡眠と効果|公益社団法人 長寿科学振興財団
- 睡眠薬飲んでも長時間眠れない—眠る準備できてから服用を 寝酒は相互作用考慮して避けて|公益社団法人 静岡県薬剤師会
- 睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン
- 睡眠薬を長年服用していると認知症になると知人が言うが、大丈夫か?|公益社団法人 福岡県薬剤師会
- 健康づくりのための睡眠指針 2014
- メラトニン受容体作動薬ラメルテオン(ロゼレム®錠8 mg)の薬理作用と臨床試験成績
- メラトニン|厚生労働省