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膀胱炎と間違えやすい性病とは?検査や治療方法の違いについて解説!

 公開日:2024/07/17
膀胱炎と間違えやすい性病とは?検査や治療方法の違いについて解説!

排尿時の下腹痛、尿が濁っている、残尿感があるなどの症状が続き、膀胱炎を疑っている方もいるのではないでしょうか。しかし、その症状は性感染症(以下、性病)が原因かもしれません。性病は膀胱(ぼうこう)炎に似ていることがあり、正しく治療しないと何度も繰り返す傾向があります。この記事では膀胱炎の症状や原因について詳しくお伝えするとともに、膀胱炎と間違えやすい性病、膀胱炎や性病の検査方法と治療方法の違いについてお伝えしていきます。

村上 知彦

監修医師
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)

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長崎大学医学部医学科 卒業 / 九州大学 泌尿器科 臨床助教を経て現在は医療法人 薬院ひ尿器科医院 勤務 / 専門は泌尿器科

膀胱炎とは

膀胱炎とは
膀胱は、やわらかい粘膜でできた袋状の臓器です。骨盤のなかにあり、一時的に尿をためたり、ある程度の量がたまると体外へ排出したりする働きをしています。そして、その膀胱に細菌が侵入し、粘膜が炎症を起こした状態を膀胱炎と言います。
膀胱炎は健康な方にも起こりうる病気で、女性の2人に1人は罹患経験があると言われている程ポピュラーなものです。まずは膀胱炎の詳しい症状や原因、どのような種類があるのかを見ていきましょう。

膀胱炎の症状

のちほど説明しますが、膀胱炎にはいくつかの種類があります。しかし、一般的に膀胱炎と呼ばれるものは急性(単純性)膀胱炎の症状を指していることが少なくないようです。
膀胱炎は、大腸菌などの細菌が膀胱へ侵入することで炎症を起こし、排尿痛や残尿感、尿の濁りなどの症状が起こります。普段に比べてトイレに行く頻度が増える方も少なくないようです。そのため、排尿時に違和感があるときは、まず膀胱炎を疑ってみるとよいかもしれません。
なお、膀胱炎を放置してしまうと細菌が増殖して腎臓へと広がり、腎盂腎炎(じんうじんえん)を引き起こす可能性があります。高熱が出たり、背中から腰にかけて強い痛みを感じたり、悪心や嘔吐などの消化器症状が見られるようになるため注意が必要です。

膀胱炎の原因

膀胱炎の原因となる細菌は、大腸や直腸にいる腸内細菌であることが少なくありません。健康な人でも肛門付近に必ず存在している菌ですが、それらの菌が尿道を伝って膀胱内に侵入すると膀胱炎を発症します。なお、男性に比べて女性の発症率が高いのは、尿道が3~4cmと短いため侵入しやすいことが理由です。
とはいえ、菌が侵入すると必ず膀胱炎になるのかというと、そういう訳でもありません。通常であれば体内に侵入した菌を排尿で排出したり、免疫力の働きで抑えたりするため、特に問題が起こらないのです。
しかし、睡眠不足が続いたり、疲労がたまっていたり、強いストレスを感じていたりすると、免疫力が低下して菌が増殖しやすくなり、膀胱炎を引き起こす可能性が高くなります。また、女性の場合、性行為後や生理中は菌が侵入および繁殖しやすいタイミングになるため、意識的に清潔を保つようにしましょう。性行為後に、排尿するのもおすすめです。

膀胱炎の種類

一般的に知られている膀胱炎は急性膀胱炎ですが、ほかにも種類があります
・急性膀胱炎
急性膀胱炎は単純性膀胱炎とも呼ばれており、尿路に異常がない健康な人でも罹患します。主な症状は頻尿や残尿感、尿の濁りなどです。免疫力が低下したとき、便秘や尿意を我慢し過ぎたときに発症しやすい傾向があります。女性の場合は生理、妊娠、性行為なども罹患率を上げる原因となるため気をつけましょう。
・慢性膀胱炎
慢性膀胱炎は複雑性膀胱炎とも呼ばれており、ほとんど症状がないため罹患していることに気がついていなかったという方も少なくありません。前立腺肥大症、尿路結石、糖尿病などの基礎疾患がある方や、ステロイドや抗がん剤などを投与していて免疫力が低下している方に発症しやすいと言われています。自覚症状がないまま急激に悪化する可能性があるため注意が必要です。
・間質性膀胱炎
間質性膀胱炎は、膀胱の筋肉が萎縮して尿がためられなくなる病気です。一般的に膀胱は200~400ミリリットルの尿をためられますが、間質性膀胱炎に罹患すると100ミリリットル以下で尿意を感じるようになるためトイレに行く回数が増えます。また、尿がたまると下腹部が激しく痛み、排尿すると痛みが軽くなるのが特徴です。女性が罹患しやすいことはわかっていますが、その原因は明らかになっていません。
なお、大豆、かんきつ類のように酸味が強い食べ物、刺激が強い香辛料、カフェインなどを過剰に摂取すると症状を悪化させる可能性があります。
・放射線性膀胱炎
放射線性膀胱炎は、その名のとおり放射線治療の副作用として生じる膀胱炎です。ガン治療などで骨盤領域(結腸、直腸、卵巣、子宮、前立腺など)の腫瘍に照射した後に発生することがあります。軽度な症状としては目に見えないレベルの血尿、頻尿、尿意切迫感、残尿感、下腹部痛、排尿障害など、重度な症状としては尿失禁、血尿、糞尿症、水腎症などがあります。放射線の量によって罹患率が変わるため、照射腺量が80Gyを超えた場合は注意が必要です。
・出血性膀胱炎
出血性膀胱炎の主な症状は、尿が赤みを帯びる血尿です。原因はウイルスや放射線治療、抗がん剤治療など多岐にわたりますが、血尿以外の症状は原因によって異なるのが特徴。重症化すると血の塊が尿道をふさいでしまうことがあるため注意が必要です。頻尿や排尿痛、残尿感など、急性膀胱炎と同様の症状も現れます。

膀胱炎のような症状が続く際に注意すべき点

膀胱炎のような症状が続く際に注意すべき点
膀胱炎のような症状が続いているときに気をつけたほうがよい点があります。

症状だけでは膀胱炎と性病の判別は難しい

何度も膀胱炎を繰り返している、治療をしても症状が変わらないといった場合、膀胱炎ではなく性病が原因になっているかもしれません。実は膀胱炎と一部の性病の症状が似ているため、どちらか判別がしにくいのです。そのため、膀胱炎のような症状を繰り返している方は、ぜひ一度性病の検査をしてみるとよいでしょう。

性病は放置すると不妊や母子感染のリスクがある

性病を放置していると卵管閉塞、子宮頸(けい)管炎などを引き起こすため、不妊症の原因になると言われています。もちろん男性も同様で、精液の質が低下して不妊症になる可能性があります。
また、出産時にお母さんが性病に罹患していた場合、生まれてきた子が結膜炎や肺炎になる可能性があるため注意が必要です。

性病は自然治癒しない

基本的に、性病は自然治癒しません。症状が消えたように見えても、実は体内に病原菌が潜んでいるため病気が進行してしまうのです。そのため、繰り返し膀胱炎のような症状が現れる場合、性病に罹患している可能性を考えましょう。

膀胱炎と似た症状が見られる性病

膀胱炎と似た症状が見られる性病
膀胱炎に似た症状が見られる性病は4つあり、どの性病もオーラルを含む性行為によって感染します

クラミジア感染症

クラミジア感染症は若い女性が感染しやすい病気で、あまり目立った症状がないため気がつかないまま過ごす方も少なくありません。女性はおりものが少し増える、男性は尿道からのうみや軽い排尿痛が主な初期症状です。わずか1回の性行為でも、50%以上の確率で罹患する感染力の高さが特徴。そのため、パートナーとセットで検査・治療することが重要です。

淋菌感染症(淋病)

淋(りん)菌感染症は、クラミジア感染症と並んで罹患率の高い性病です。主な男性の初期症状は排尿痛と尿道からのうみですが、残尿感や頻尿の症状が続くため前立腺炎や膀胱炎を疑う方もいます。女性の場合はおりものの増加や不正出血ですが、自覚症状がない方も少なくありません。そのため、気がつかないまま卵管へと炎症が広がり、不妊症になってしまうことがあるため注意が必要です。

マイコプラズマ・ウレアプラズマ感染症

マイコプラズマ・ウレアプラズマ感染症は原因菌が4種類あり、そのいずれかによって生じる感染症です。初期症状として、男性は排尿時の違和感、痛みやかゆみ、尿道からのうみなど、女性はおりものの色やにおいの変化、性器周辺のかゆみなどが見られます。4種類の菌のうち、どの菌が原因になっているかによって治療時に使用する薬が変わります。

トリコモナス症

トリコモナス症はトリコモナス原虫という微生物が性器に侵入することで炎症を引き起こす性病です。性行為による接触がなくても、使用した下着やタオル、トイレや浴室のように水気のある場所で感染する点がほかの性病と異なります。
なお、男性は自覚症状がないケースも少なくないようですが、排尿痛、尿道からのうみ、かゆみや痛みなどの違和感、熱を持つなどが主な症状です。女性は膀胱炎のような症状に加え、外陰部や膣(ちつ)に強いかゆみ、炎症やただれ、赤み、泡状の悪臭を伴うおりもの、性行為時の痛みなどが起こります。妊娠中に罹患すると流産や早産のリスクが高まるため注意が必要です。

膀胱炎と性病の検査方法の違い

膀胱炎と性病の検査方法の違い
膀胱炎の主な検査方法は問診と尿検査で、白血球の数が一定以上の数値であれば膀胱炎と診断されます。同時に尿中の細菌を培養して菌の種類を調べる検査を実施することがあります。なお、クラミジア膀胱炎の疑いがある場合、尿でクラミジアのDNA検査(クラミジア菌を検出する遺伝子検査)を行うケースもあります。
性病の検査方法は症状によって異なりますが、主に血液検査、視診、尿検査、膣擦過物や採取したおりものの検査などです。ほかの性病と重複感染している可能性があるため、同時に複数の検査を行うこともあります。

病院での検査

膀胱炎は、内科や泌尿器科(一部の婦人科でも可能)で検査ができます。
性病は性病科(性感染症内科)であれば、どのような種類でも検査可能です。ただし、性病科は自費診療になることが少なくないため、保険診療で受診したい場合は症状が出ている部位に合わせて病院を選びましょう。例えば、男性なら泌尿器科やメンズクリニック、女性なら産婦人科や婦人科、皮膚症状なら皮膚科、喉に症状が出ているなら耳鼻咽喉科がおすすめです。

保健所での検査

性病は、各自治体の保健所でも検査できる場合があります。匿名で検査できる反面、検査できる性病の種類が少なく、検査しかできない点がデメリットです。保健所で陽性判定が出た場合、治療のためにあらためて医療機関を受診する必要があります。

性病検査キットによる検査

性病検査キットは自分で尿や血液などの検体を採取し、指定の住所へ送り返すことで調べられる検査方法です。インターネットから申し込みするとキットが自宅に届くため、検査したことを人に知られたくない、病院に行く時間がないという方におすすめの方法。ただし、自分で検体を採取する必要があるため、やり方を間違えると正確な検査結果が得られない可能性があります。また、陽性反応が出た場合、治療のためにあらためて医療機関を受診しなければいけません。

膀胱炎と性病の治療方法の違い

膀胱炎と性病の治療方法の違い
膀胱炎は細菌感染が原因のため、主な治療法は抗菌薬の内服です。使用する抗菌薬は症状、年齢によって異なります。
性病の治療方法も同じく内服薬がメインとなり、菌の種類に合わせて抗菌薬や抗ウイルス剤などを使用します。性病の種類によっては注射や点滴を行ったり、対処療法としてかゆみを抑える薬が処方されたりすることがあります。

まとめ

この記事では膀胱炎の種類と症状、膀胱炎と間違えやすい性病の種類と特徴、膀胱炎と性病の検査方法や治療方法の違いなどについてお伝えしてきました。性病の初期症状は膀胱炎と見分けがつきにくいため、排尿痛、残尿感、尿の濁り、トイレへ行く頻度が増すといった膀胱炎のような症状が続く、膀胱炎の治療をしても繰り返し罹患する場合は性病を疑ってみるとよいかもしれません。性病は泌尿器科や婦人科などで検査できます。まずは気軽に相談してみましょう。

この記事の監修医師