クラミジアは自然治癒する?症状から検査・治療方法まで解説
性感染症の一つである「クラミジア」。病名は聞いたことがあっても、その症状や治療法は詳しく知らない、という方は多いでしょう。「もし感染したらどうしたらいいのかわからない」「病院に行くのは恥ずかしい」そう感じるかもしれません。
しかし、クラミジア未治療の場合には深刻な健康リスクをもたらす可能性があります。この記事では、クラミジアの症状や感染経路から、検査方法や適切な治療法までを詳しく解説します。早期発見と適切な対処をするために、ぜひご参考ください。
監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)
目次 -INDEX-
クラミジアとは?
まずはクラミジアの概要について解説します。
性行為によって感染する
クラミジアとは、クラミジア・トラコマティス(Chlamydia Trachomatis)という病原菌が感染することで起こる病気です。クラミジアには、クラミジア性尿道炎、クラミジア性子宮頚管炎、咽頭クラミジアなど、感染部位によって病名が異なりますが、感染経路は共通しており、セックス・オーラルセックス・アナルセックスといった性行為によって感染します。
男女ともに若い世代に多い性感染症
クラミジアは、男女ともに若い世代に特に多く見られる性感染症の一つです。性行為によって感染が広がり、特に10代後半から30代前半の若い成人によくみられます。若い世代が感染する主な要因には、新しいパートナーとの性的な関係が増えることや、適切な予防方法の知識不足が挙げられます。
女性の8割が無症状といわれており、感染に気付きにくいことが、感染拡大、不妊、母子感染にもつながる要因となっています。そのため、クラミジア感染のリスクを理解し、適切な予防策を講じることが重要です。
ほかの性感染症との関連も
クラミジアは、単体で感染するだけでなく、他の性感染症との関連も深いことが重要なポイントです。特に、淋病や性器ヘルペスなどの性感染症との重複感染は珍しくありません。症状も類似しているため、性行為によって感染を広げる前に検査することが重要です。
また、性感染症に感染している場合、他の感染症にも感染するリスクが高まることがあります。例えば、HIVへの感染率は3〜5倍にも高まると言われています。そのため、性感染症の検査や治療を受ける際には、クラミジアだけでなく他の性感染症も疑い、検査することが推奨されます。
こんな場合は検査しよう
クラミジア感染の検査を検討すべき状況はいくつかあります。
後に解説するような症状が現れた場合だけでなく、新しいパートナーとの性的接触があった場合や、コンドームなしでの性行為があった場合、パートナーの感染があった場合には検査することが大切です。パートナーがクラミジア感染の可能性があることを告げた場合は、早急に検査を受けることが必要です。
性行為をした後に具体的な症状がなくとも、心配や不安がある場合は検査を受けるようにしておく方が安心でしょう。複数のパートナーを持つ人、過去に性感染症の歴史がある人などは、定期的な検査を受けることが推奨されます。
初期症状はない
クラミジアは症状が出るまでに1週間、場合によっては2週間以上かかる場合もあります。しかし、症状がないまま進行することが多く、そのまま放置していると、卵管炎や腹腔内感染へと発展する可能性があり、子宮付属器炎・骨盤腹膜炎・肝周囲炎といった合併症や後遺症などにつながる恐れもあります。
クラミジアの主な症状
ここからは、クラミジアに感染した場合の症状について、感染した部位ごとに分けて解説します。
クラミジア性尿道炎
クラミジア性尿道炎は、クラミジア感染症の一つであり、男性によく見られます。性行為などで尿道にクラミジアが入り込むことで感染が起こり、1~2週間の潜伏期間を経て発症します。
典型的な症状としては、尿道から粘り気のある膿が出たり、排尿時に痛みを生じることがあります。感染が進行するとクラミジア性精巣上体炎を引き起こします。精巣上体に感染した場合、睾丸の腫れや痛み、発熱などの症状が現れます。
クラミジア性子宮頚管炎
クラミジア性子宮頚管炎は、女性に見られるクラミジア感染症の一つで、子宮頚管(子宮と膣の間の部分)にクラミジアが感染して起こる病気です。ほかのクラミジア感染症と同様に、主に性行為によって感染しますが、感染しても半数以上は無症状という特徴があります。無症状のまま放置していると、卵管炎や腹腔内感染へと発展する可能性があり、子宮付属器炎・骨盤腹膜炎・肝周囲炎といった合併症や後遺症などにつながる恐れもあります。
典型的な症状としては、下腹部痛、デリケートゾーンのかゆみ、おりもののにおいや量の変化が見られます。さらに、子宮頚管の炎症によって生理周期が乱れ、不正出血が起こることがあります。これらの症状がある場合はもちろん、症状がない場合も定期的に婦人科検診を受けることで、症状を放置してしまわないように気をつけましょう。
咽頭クラミジア
咽頭クラミジアは、性行為によって主に口やのどに感染することで起こる病気です。潜伏期間は1~3週間ほどとなっており、無症状の場合もめずらしくありません。症状が現れる場合、咽頭クラミジアの主な症状には以下のようなものがあります。
まず、のどの痛みや不快感が生じることがあります。のどに違和感や痛みがあり、それが長く続く場合は、咽頭クラミジア感染の可能性が考えられます。さらに発熱や全身倦怠感などの風邪と似たような症状が生じることがあるため、性感染症だとは気づかずに市販薬で対処しようとする人もいるので注意が必要です。
咽頭クラミジアはほかのクラミジア感染症に比べて治療に時間がかかるという特徴があります。そのため、もし症状がある場合には早期に治療を開始することが大切です。
クラミジア性結膜炎
クラミジア性結膜炎は、目の結膜にクラミジアが感染することで起こる病気です。この症状は、性行為や菌が付いた手で目を触ることによって感染が広がることがありますが、一部の感染者では症状が現れないこともあります。
症状が現れる場合、充血やまぶたの腫れ、目やにの増加といった症状が生じることがあります。その他にも、目がかゆくなり、目をこすりたくなるような感覚や、目を開けるときに痛みを感じることがあります。
クラミジア性結膜炎の症状は他の結膜炎とも類似しているため、正確な診断のためには専門家の診察や検査が必要です。
病院には行きたくない…クラミジアは自然治癒が可能?
「病院には行きたくない…」このように考える人がいるのは自然なことです。中には性病の検査が不安だったり、病院が苦手な方もいらっしゃると思います。そんな時に考えてしまうのはクラミジアは自然治癒するのかということ。本パートでは、クラミジアは自然治癒するのかという疑問について解説します。
正しい治療を受けることが必須
クラミジアは、適切な治療を行わない限り自然治癒することはありません。この性感染症は、抗生物質による適切な治療が必要です。
未治療のままクラミジアを放置すると、深刻な健康リスクを伴う可能性があります。例えば、女性では子宮内膜炎や不妊症のリスクが、男性では精巣上体炎や尿道狭窄のリスクが高まります。また、妊娠中に感染が起きた場合は、新生児への感染リスクも考慮しなければなりません。
自身の健康だけでなく、正しい治療を受けることは、感染を根絶し、合併症のリスクを減らすために不可欠です。そのため、パートナーも感染を確認し、自然治癒を期待せず、必要な治療を受けることが重要です。
ほかの病気への治療による影響
クラミジアの治療には主に抗生物質が使われるため、ほかの病気の治療で処方された抗生物質を飲むうちに、クラミジアも治った、と感じる人もいるようです。しかし、実際には完治に至らず、知らないうちに進行していくものです。
また、他の性感染症も考慮する必要があります。例えば、クラミジアと淋病が同時に感染している場合、重複感染を適切に診断し、両方の感染に対して適切な治療を行うことが重要です。このため、クラミジアの疑いがある際はきちんと検査をし、感染しているのか、ほかの病気がないかも合わせて把握する必要があります。
まずは自宅でできる検査キットを
性感染症の心配があっても、医療機関を受診することに抵抗を感じる方は少なくありません。そうした方におすすめなのが、クラミジア検査キットの利用です。自宅で検査ができ、他の人の目を気にせずに済みます。好きな時間に検査が行えるため、自分の都合に合わせて行うことができるのもメリットでしょう。特に忙しい方や外出が難しい方にとっては、非常に便利です。
自宅での検査キットの価格は、一般的に3000円台からと幅広く、検査項目やキットの性能によってはそれ以上の価格になることもあります。
検査キットによっては、クラミジア以外の性感染症や他の健康状態も同時に検査できるものもあります。例えば、淋病や性器ヘルペスなどの性感染症の他に、HIVやシンフィリスなどの他の病気も検査できるキットがあります。これにより、複数の疾患や健康状態を一度にチェックすることができます。
自宅での検査キットを利用する際には、使用方法や検査結果の解釈について正確な情報を得ることが重要です。また、検査結果に不安や疑問がある場合は、医療機関での相談や再検査を受けることをおすすめします。
検査キットの精度は販売会社によって異なるため、購入前にホームページの情報を注意深く確認しましょう。
クリニックでの検査
クリニックでのクラミジアの検査は、クリニックに直接来院での検査の場合と、オンライン診療の場合があります。
来院での検査の場合、担当医が直接患者に問診し、症状を確認し、その後検査を行います。検査方法には、尿検査や生体検査、細胞診検査などがあります。
クリニックでのオンライン診療は、近年増えつつあり、一部のクリニックが対応しています。クラミジアのオンライン検査キットを送付し、患者が自宅で尿や採取物を採取し、それを郵送でクリニックに送り返します。その後、医師が検査結果を確認し、適切な診断と治療を行います。
一般的に、クラミジアの検査は保険適用が可能です。症状や感染の疑いがある場合、保険適用の範囲内での検査費用は約3,000~4,000円程度です。ただし、症状の疑いがないケースでの検査は、自由診療扱いとなり、検査費用は約6,000~10,000円程度となります。
クラミジアの治療
一般的に、クラミジア感染症の治療には抗生物質が使用されます。医師によって処方された抗生物質を1日から7日間内服して経過を観察します。適切な治療期間や投与量は、症状によって異なります。治療後、通常は2週間後に再度検査を行い、感染が完治したかどうかを確認します。
しかし、一部の患者は1度の治療で完治せず、再度治療が必要な場合もあります。再発リスクを最小限に抑えるために、定期的検査と医師の診断が重要です。治療費は、保険診療と自由診療で異なり、保険診療の場合、一般的に約1,000円程度で治療を受けることができます。一方、自由診療の場合、診療所やクリニックによって異なりますが、約9,000円から15,000円程度の費用がかかることがあります。
まとめ
クラミジアは自然治癒せず、適切な治療が必要です。無症状の場合も多いため、専門機関での検査や自宅での検査キットを利用することで、早期発見・治療に繋げましょう。
また、治療後には再発するリスクもあるため再検査も重要です。このようにクラミジアに感染してしまったら、根気強く戦っていくことが大切となります。本記事でクラミジアに関する正しい知識を身につけて、感染の予防や治療にお役立てください。