子宮頸がん検診とは?検査方法・メリットを解説
子宮頸がんは女性がかかりやすいがんの一つです。毎年約10,000人が子宮頸がんに罹患し、その30%にあたる約3,000人が命を落としています。
その子宮頸がんを初期段階で発見し、早期治療に役立てるために行われているのが子宮頸がん検診です。
20歳を過ぎると子宮頸がん検診の受診が推奨されていますが、実際どのような検診が行われるのでしょうか。
本記事では子宮頸がん検診について検査方法やメリット・デメリット、要精密検査だった場合の検査などを詳しく解説します。
これから子宮頸がん検診を初めて受診予定の方、子宮頸がん検診を受診しようか悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
監修医師:
阿部 一也(医師)
目次 -INDEX-
子宮頸がん検診とは?
子宮頸がん検診とは、子宮頸がんの早期発見と治療を目的とし、医師による問診、内診、細胞診を行う検診です。子宮頸がん検診は20歳以上の症状のない女性を対象に実施されます。
子宮頸がん検診は市区町村が行う対策型検診または職域検診として実施され、対象者には子宮頸がん検診を助成する自治体もあります。
子宮頸がんを発症しても無症状の場合が多く、ゆっくり進行するため、前がん状態から進行がんに移行するまでは2〜3年といわれており、子宮頸がん検診の受診は2年に一度が目安です。
子宮頸がん検診による子宮頸がん罹患の減少に関する効果については、30〜64歳までは根拠があり、検診の受診によって減少する効果が期待できます。
また、65〜69歳に関しても同様の根拠が認められています。20代の検診受診による子宮頸がん罹患減少について根拠が乏しいものの、効果が否定できないとされています。
子宮頸がん検診の検査方法
先程子宮頸がん検診の検査方法には、医師による問診、内診、細胞診が行われると解説しました。また、細胞診の結果がわかると、検診結果の通知も行われます。
自己で細胞診を行う方法もありますが、検査結果が正確に出ないこともあるため、産科や婦人科を受診して子宮頸がん検診を行うのが一般的です。
それぞれの検査方法の内容を詳しくみていきましょう。
問診
子宮頸がん検診のはじめとして、まずは医師による問診が行われます。
この問診で尋ねられる項目としては、妊娠か出産経験の有無や月経の状況・自覚症状・過去に子宮頸がん検診を受診したかどうかなどです。
問診の際に現状で不具合を感じていることを医師に伝えると、その後に行われる内診で詳しく検査してもらえます。
視診・内診
問診の後は診察台に座り、視診・内診が行われます。視診は腟鏡を使用して子宮の入り口付近の状態を診察します。
次に内診は指を使って子宮や卵巣を触診し、大きさを診察します。また、超音波診断装置を使って子宮内や卵巣の様子を映し出して検査が行われることもあります。
視診や内診、この後に行われる細胞診の際には診察台に座ったり、横になったりして検査が進んでいきますが、初めてだと検査時の体勢に戸惑いを感じる方も多いでしょう。
しかし、お腹から下がカーテンや大きなタオルで覆われるため、検査している様子は直に見えることはありません。
細胞診
細胞診では子宮の入り口付近(頸部)を専用の器具でこすって細胞を採取し、細胞の形などから異常がないかを顕微鏡にて検査します。
仮に細胞診の検査により子宮頸がんの疑いがあったとしても、細胞診単独では診断が確定することはありません。
ほかの検査も行った結果を総合的に踏まえて診断が確定します。
検診結果
問診、視診・内診、細胞診を総合的に診て子宮頸がん検診の結果が通知されます。
問診、視診・内診の結果はその場で医師から聞くことができますが、細胞診は採取した細胞を検査してから診断するため、後日検診結果が伝えられます。
子宮頸がん検診の結果、要精密検査になった場合はコルポスコープ診やHPV検査などほかの検査も実施してよく詳しく状態を確認し、最終的な診断が行われるでしょう。
細胞診の検診結果は自治体によって通知が届くタイミングが異なりますが、検診から約1ヵ月程度で受け取ることができます。
子宮頸がん検診のメリット
ここまで子宮頸がん検診の概要や流れについて解説しました。検査自体はそれ程時間がかからず、検査費用も自治体が助成しているケースが多いため、自己負担はほとんどありません。
子宮頸がん検診を受診することによって受けられるメリットは下記の3つが挙げられます。
- 死亡率を減少できる
- 早期発見で経済的負担を軽減できる
- 子宮周辺の病気を早期発見できる
それぞれのメリットについて詳しくみていきましょう。
死亡率を減少できる
子宮頸がん検診で行われる子宮頸部細胞診は、科学的に死亡率を減少させることができると証明された方法です。
子宮頸がんはヒトパピローマウイルスに感染することで発症しますが、がんに進行するまで5〜10年以上といわれています。
感染からがんになるまでゆっくり進行するため、定期的な検診を行うことでがんになる前の段階で発見することが可能です。
早期に発見できるため、治療を行えばほとんど治癒ができることから子宮頸がん検診の有用性は高いといえるでしょう。
早期発見で経済的負担を軽減できる
子宮頸がん検診は早期に子宮頸がんを発見できることがわかりましたが、早期に治療を行うことで経済的にも負担を軽減することが可能です。
子宮頸がんの進行ステージで治療方法は大きく異なり、初期段階においてはがん化している部分だけを切除することで治癒が可能になります。
しかし、進行ステージが上がると子宮全摘出であったり、化学放射線療法が行われるようになると治療費がかさんだりします。
そしてさらに進行が進み、ほかの臓器への転移が認められると、治療が難しく、緩和ケア治療が施され、死亡率も高い傾向にあります。
そのため、早期発見であれば治療費も最小限で済ませられるので、子宮頸がん検診を受診することが経済的負担を和らげることができます。
子宮周辺の病気を早期発見できる
子宮頸がん検診は子宮頸がんだけでなく、ほかの婦人系の病気を早期発見できる役割も果たしています。
例えば婦人系腫瘍である子宮体がんや卵巣がんなどの子宮周辺のがんも子宮頸がん検診を受診することで発見することが可能です。
また、婦人科疾患であるカンジタ腟炎なども子宮頸がん検診で採取する細胞の周辺を検査することで発見することができます。
よって、子宮頸がん検診は子宮全体の不調や病気を早期に発見できる検診といっても過言ではありません。
子宮頸がん検診のデメリット
子宮頸がん検診が子宮頸がんや子宮全体の病気の早期発見に大きく貢献していることなどがわかりましたが、反対にデメリットはどのようなことが考えられるでしょうか。
子宮頸がん検診のデメリットとしては、下記の3つが挙げられます。
- 偽陽性が出る場合がある
- 検査による負担がかかる
- 見落としがある場合も
それぞれのデメリットについて詳しくみていきましょう。
偽陽性が出る場合がある
現状では子宮頸がん検診で悪性のがんかどうかを正確に判断することは難しく、後々精密検査を受けて子宮頸がんではなかったという偽陽性の診断もあり得ます。
細胞診のほかに、子宮頸がんかどうか調べる方法としてHPV検査がありますが、細胞診と比べ、子宮頸がん患者さんの陽性数が上がり、有用性が期待できます。
しかし、偽陽性数も上がり、加えて細胞診とHPV検査を併用して検査を行った場合は、偽陽性数が大きく増えることがわかりました。
子宮頸がん患者さんを早期に発見できる反面、偽陽性が出る可能性もあることを理解しましょう。
検査による負担がかかる
子宮頸がん検診は細胞診を行う際に子宮内の細胞をこすり取るため、採取したところから出血が伴うことがあります。
そのため、おりもの用ナプキンを何枚か持参することをおすすめします。
また、子宮頸がん検診が初めての人にとっては腟の中に器具を入れられることに抵抗があったり、緊張してしまったりすることで身体的にも精神的にも負担に感じてしまうこともあるでしょう。
問診のときに子宮頸がん検診が初めてであることや器具を入れることに抵抗があることを事前に伝えておくと検査中に声をかけてもらったり、超音波での診察に切り替えてもらったりもできます。
見落としがある場合も
子宮頸がん検診によってすべての子宮頸がんを100%発見できるとはいい切れません。がん検診の精度は日々進歩していますが、見落としがあることも否めないのが現状です。
そのため、子宮頸がん検診をしているから絶対に子宮頸がんにならないというわけではありません。
子宮頸がんは進行が進むと月経以外に出血があったり、性行為のときに出血があったり、下腹部に痛みを感じるなどの症状が現れます。
これらの症状があった場合は、子宮頸がん検診の結果が陰性だとしても子宮頸がんが疑われる状況ですので、婦人科を受診しましょう。
子宮頸がん検診で引っかかる確率は?
子宮頸がん検診を受診して子宮頸がんが発見される確率は0.01%です。
日本対がん協会が2017年に調査した子宮頸がん検診の状況では、子宮頸がん検診を受診した人が10,000人とすると、要精密検査になった人は150人でした。
要精密検査になった人のうち、精密検査を受診した125人のうち、実際に子宮頸がんになっていた人は1人という割合です。
これは同じ子宮がんである子宮体がん検査と比較すると子宮体がんが発見される確率は0.16%です。
そのため、子宮頸がん検診を受診することで子宮頸がんが見つかる確率は著しく低いといえるでしょう。
子宮頸がん検診の結果が「要精密検査」だった場合は?
子宮頸がん検診を受診した結果、要精密検査の通知が届いた場合、子宮頸がんに罹患している可能性があります。
ここで注意したいのは要精密検査になったから子宮頸がんが確定しているということではありません。
さらに子宮頸がんかどうかを調べてから、診断が確定しますが、詳しく調べる検査方法として、コルポスコープ診とHPV検査が実施されます。
このコルポスコープ診とHPV検査とはどのような検査なのでしょうか。それぞれ詳しくみていきましょう。
コルポスコープ診
コルポスコープ診とは、子宮頸部の細胞を観察するための拡大鏡で、子宮頸部の粘膜表面を拡大し細かい部分を観察します。
もしコルポスコープ診で異常が見つかれば、その周辺の組織を採取して、顕微鏡にて診断を行う組織診が行われます。
つまり、コルポスコープ診は子宮頸がんの原因であるヒトパピローマウイルスに感染している疑いのある箇所を探し当てるのに有用です。
コルポスコープ診と組織診、この後解説するHPV検査を組み合わせることでより精度の高い子宮頸がん診断を行うことが可能です。
HPV検査
HPV検査とは、子宮頸部から細胞を採取して、HPV(ヒトパピローマウイルス)に感染しているかどうかを調べる検査です。
子宮頸がん検診の細胞診の結果、コルポスコープ診が必要かどうかを判断するために実施されます。
子宮頸がんかどうかを調べるにあたり、HPV検査単独で実施した場合、子宮頸がん検診で行われる細胞診とともに、子宮頸がん罹患率減少に効果的との根拠があります。
HPV検査によって陽性と判断された人を長期的に経過を診ていける管理体制下であれば検診の間隔を5年ごとに延ばすことが可能です。
ただし、細胞診に比べ、偽陽性が出やすいデメリットもあることから、HPV検査にて陽性の場合はコルポスコープ診を行い、詳しく調べる必要があります。
編集部まとめ
ここまで子宮頸がん検診について検査方法やメリット・デメリット、要精密検査だった場合の検査について詳しく解説しました。
子宮頸がん検診は高い水準で子宮頸がんを発見することができる検診です。また、子宮頸がんのみならず子宮周辺の病気の発見にも大きく貢献しています。
子宮頸がん検診を行うことで早期発見につながり、高い生存率の段階で治療ができれば不安も軽減できるうえ、子宮頸がんによる細胞の切除も最小限で済むので体への負担が少ないです。
そして子宮頸がんに罹患後も妊娠が望める状態で治癒できるのが、早期発見のメリットともいえるでしょう。
子宮頸がんは年々若年化してきており、20代〜30代の患者さんが増えてきています。自分の健康を守るためにも子宮頸がん検診を積極的に受診しましょう。
参考文献