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白内障手術後にぼやけて見えるのはなぜ?原因と安定するまでの期間について解説します

 公開日:2024/01/22
白内障手術後にぼやけて見えるのはなぜ?

眼の水晶体が白く濁って視力が低下する白内障は、手術を受けることにより視力や視界の改善に役立ちます。しかしながら、白内障手術を受けても、さまざまな理由でぼやけて見える場合があるでしょう。

本記事では、白内障手術後にぼやけて見えるのはなぜなのか、原因や視界が安定するまでの期間について解説します。

手術後の見え方や症状などについても紹介しますので、白内障手術を受けた後の眼の状態が気になる方は、こちらの記事を参考にしてください。

柿崎 寛子

監修医師
柿崎 寛子(医師)

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三重大学医学部卒業 / 現在はVISTA medical center shenzhen 勤務 / 専門は眼科

白内障の手術とは?

白内障の手術とは
白内障の手術は、濁った水晶体を取り除き、眼内レンズを挿入する方法で行われます。カメラでいえば、レンズ交換をすることに例えられるでしょう。
手術というと大変そうなイメージがありますが、技術や機器の進歩により短時間で手術が行われるケースが多く、日帰りで手術可能なケースも少なくありません。
ただし、高血圧や糖尿病などの持病があり、内科との連携が必要な場合には入院が必要なケースもあるでしょう。ここでは、白内障手術の手順や手術前後の注意点をご紹介します。

手術の手順

一般的な白内障手術は、次のような手順で行われます。

  • 点眼による麻酔をかける
  • 細いメスで黒眼と白眼の境目付近を小さく切開する
  • 水晶体を覆っている水晶体嚢を剥がす
  • 超音波で水晶体を吸引する
  • 眼内レンズを挿入する
  • 切開創を閉鎖する

手術は最初に点眼麻酔をかけるため、手術中はほとんど痛みを感じません。
それから2mm前後眼球の表面を切開し、水晶体を覆う水晶体嚢を剥がし、超音波で水晶体を除去します。その後、除去した後の水晶体嚢に眼内レンズを挿入する流れです。
ただし、白内障がかなり進行している場合や、水晶体嚢を支える組織が弱い場合は別の方法が選択されることもあります。手術自体は病院や症状にもよりますが、10~15分程度の短時間で終了するでしょう。
両眼とも手術が必要な場合、同時に行うことはできません。7~30日ほど期間を空けて片眼ずつ行うことになるでしょう。
眼内レンズにはさまざまな種類がありますが、生体適合性が高い、アクリル樹脂やシリコンなどやわらかい素材でできています。
単焦点レンズ・多焦点レンズ・着色レンズ・非球面レンズなど種類が多いため、医師と相談してレンズの種類を決めましょう。

手術前の注意点

手術前の注意点
手術前には手術が問題なく行えるか、またどのような眼内レンズが眼に合うかを調べるため、さまざまな検査を行います。
具体的には、視力検査・眼底検査・細隙灯顕微鏡検査・角膜内皮細胞検査・眼軸長検査などの検査内容です。
白内障の手術後は、数日洗髪や洗顔ができないため、手術前に済ませておきましょう。手術当日は眼の周りを含め化粧はできません。
女性の方はマニキュアやネイルアートをしていると、手術中血中酸素濃度を測定できない場合があるので、手術までに落としておきましょう。
病院によっては、抗生剤を点眼する必要がある場合もあります。病院の指示に従いましょう。
また日帰り手術の場合、手術後は車の運転は控えた方が良いため帰宅の手段も確認しておきましょう。入院手術の場合は、手術後の管理も含めて3~4日ほど入院するケースが多いです。

手術後の注意点

手術の後は、眼球を保護するため、眼帯を装着します。感染防止のため、眼を押さえることや擦ることは避けましょう
また、洗顔や化粧も控える必要があります。固く絞ったタオルで拭くようにしましょう。1週間ほどして洗顔の許可が出たら、眼球を強く圧迫しないように注意しながら洗顔します。
眼内炎予防のため病院から抗菌薬を処方された場合は、決められたとおりに点眼を行いましょう。
また、食事について特に制限はありませんが、眼に刺激になる場合があるので飲酒や喫煙はしばらく控えることが望ましいです。
急激に視力が低下したように感じる場合は炎症を発症した可能性があるため、病院に連絡しましょう。
仕事の復帰は早い時期に可能ですが、眼・体の状態・仕事の種類などにより変わってくるため、医師と相談する必要があります。汗をかくような運動も1週間ほどは控えましょう。
手術後は視力の回復状態を調べるため、定期的に検査を行う必要があります。必ず受診しましょう。

手術後の見え方や症状

手術後の見え方や症状
白内障手術後の見え方や症状には、次のようなものがあります。

  • まぶしく感じる
  • 青みがかって見える
  • 飛蚊症
  • 後発白内障

それぞれの見え方や症状について詳しく解説します。

まぶしく感じる

まぶしく感じる
白内障の手術後はまぶしく感じるケースがあります。まぶしく感じる原因は、手術により水晶体の濁りがなくなって、眼内に入る光の量が多くなったためです。
水晶体が濁りが強かった方ほど、まぶしく感じる傾向があります。まぶしいこと自体は健康上とくに問題はなく、しばらくすると慣れてくるでしょう。
もし、まぶしさが気になる場合は、サングラスなどで光の量を調節できます。また、以前は無色透明の眼内レンズが用いられていたためまぶしさを強く感じましたが、最近のレンズでは色付き眼内レンズが一般的です。

青みがかって見える

白内障の手術後は、青みがかって見えるケースもあります(青視症)。
これは、加齢により黄色味を帯びていた水晶体では青色などの短波長の光が入りにくくなっていたのに対して、手術後は短波長の光も入りやすくなるためです。
両眼を手術した場合はあまり気になりませんが、片眼だけの手術の場合は気になることが多いでしょう。
時間の経過とともに気にならなくなりますが、気になる場合は薄い茶系のサングラスなどを使用できます。

飛蚊症

白内障の手術後は、「飛蚊症」と呼ばれる症状が出る場合もあります。飛蚊症は、視野の中に黒い虫のようなものが浮遊しているように見える症状です。
虫のように見えるものの正体は眼の中の硝子体にある濁りで、手術前にはかすんでいて気にならなかったものが、手術で眼に入る光量が増えたために見えやすくなります。
時間の経過とともに気にならなくなりますが、飛蚊症は網膜剥離の可能性もあるため、念のため眼底検査などを受けると良いでしょう。

後発白内障

手術後の合併症には、後発白内障と呼ばれるものもあります。手術した後に物がかすんだり、ぼやけて見えたりする症状です。
白内障が再発したと思うかもしれませんが、再発ではありません。眼内レンズを挿入した水晶体嚢には水晶体上皮細胞が残っています。
この水晶体上皮細胞が増殖して水晶体嚢の後ろ側に広がると濁りが生じ、白内障のような症状が発生することが原因です。
早い場合、手術後数週間で発生することがありますが、数年経ってから発生する場合もあります。視力に問題がなければ治療は必要ありませんが、見えにくい場合は治療が必要です。

手術後にぼやけてしまう原因

手術後にぼやけてしまう原因
手術後しばらく視界がぼやけているように感じる原因としては、手術の際に目薬で瞳孔を大きくしていることが挙げられます。
ただし、気をつけながら歩く分には問題がない程度で、術後4~5時間ほどで元に戻るため問題はありません。
ほかには、手術後しばらくは眼内レンズに慣れていないため、ピントを合わせることが難しく視界がぼやける場合があるでしょう。視界が安定するまでの期間については後ほど詳しくご紹介します。
手術後、数週間から数か月後に視界がかすんだり、ぼやけたりする場合は後発白内障の可能性があるでしょう。取り除いた水晶体の後ろ側にある後嚢の濁りが原因です。

手術後に視界がぼやけているときの対処法

手術後に視界がぼやけているときの対処法
ここまで見てきたように、白内障の手術後に視界がぼやける場合があります。もし、視界がぼやけている場合には対処が必要です。
視界がぼやけてしまう原因には後発白内障の場合や、それ以外の場合があり、対処法も異なります。
後発白内障の場合は治療が必要な場合があります。それ以外の場合は、眼鏡やサングラスを使用することで対処できる場合があるでしょう。それぞれの場合の対処法を詳しく解説します。

後発白内障の場合は治療が必要

後発白内障になって見にくい場合は、治療が必要です。後発白内障の治療は通常、レーザーを使用して行われます。
レーザーを照射して濁った水晶体嚢の後ろ側(後嚢)を除去する治療法です。ただし、まれにレーザー治療できないケースもあり、その場合は硝子体手術で濁った部分を除去します。
レーザー治療は片眼5分程度の短時間で終了し、とくに痛みもありません。治療終了後は普通に生活できますが、まれに術後炎症・眼圧上昇が生じる場合があるので、異常を感じた場合は医師に相談しましょう。
後発白内障の場合、一度治療すると、再発することはほぼありません。

眼鏡やサングラスを使用する

眼鏡やサングラスを使用する
手術後に視界がぼやけている場合は、眼鏡やサングラスを使用して対処する場合もあります。
眼内レンズに単焦点レンズを選択した場合、近方か遠方のどちらかにピントが合うように作られているため、眼鏡が必要になることがあるでしょう。
たとえば遠方にピントが合う眼内レンズを選択した場合、近くはぼやけるので、老眼用の眼鏡が必要になります。
多焦点眼内レンズの場合は複数の距離にピントが合わせられるため、基本的には手術後、眼鏡なしで生活できるでしょう。ほかにも、術後にまぶしく感じる場合は、サングラスなどを使用できます。

視界が安定するまでの一般的な期間

視界が安定するまでの一般的な期間
白内障の手術を受けた場合、視界が安定するまではしばらく時間がかかります。視界が安定するまでは、後発白内障の治療をした場合と、していない場合で変わってくるでしょう。
それぞれの場合の一般的な期間を解説します。

後発白内障の治療をした場合

後発白内障の場合はレーザー治療を行う場合がほとんどですが、治療後すぐに視力が回復します。眼帯や入院の必要もないでしょう。
ただし、治療の後は眼内の炎症・眼圧上昇・網膜剥離などの合併症が起こる可能性があります。経過観察で受診する必要がある場合や、もし気になることがあれば、すぐに医師に相談しましょう。
また、白内障の手術の場合と同様、切開した際に破片が眼の中に散らばって飛蚊症が現れるケースもあります。しばらくすると改善するでしょう。

後発白内障ではない場合

後発白内障ではない場合、手術後の経過には個人差があります。
年齢・眼の状態・ほかの疾患の有無・手術方法・眼内レンズの種類などにより、視界が安定するまでの期間は異なるでしょう。
眼内レンズの焦点の合わせ方は自分の眼とは異なるので、慣れるのにも時間が必要です。術後1週間ほどで安定する方もいますが、一般的には裸眼での見え方が安定するには1~2か月ほどかかります。
そのため、単焦点レンズを入れて眼鏡を作る必要がある場合は、1~2か月は眼鏡を作るのを待った方が良いでしょう。

白内障は再発する?

白内障は再発する?
白内障の手術を受ける方の中には、白内障が再発するかどうか気になる方もいるでしょう。
基本的に白内障は再発しませんが、後発白内障のように、白内障と似た症状が出る場合もあります。そのため、治療後にもし眼に違和感があれば、すぐに医師に相談しましょう。
ここでは、白内障が再発する場合があるかどうかについて詳しく解説します。

基本的には再発しない

白内障は手術をすれば基本的には再発しません。これは、白内障の原因となる濁った水晶体を手術で吸引し、人工のレンズ(眼内レンズ)に差し替えているためです。
しかしながら、眼内レンズを眼の中に固定するため、水晶体の袋(水晶体嚢)がそのまま残っています。
手術後しばらくして、水晶体嚢の後ろ側に水晶体上皮細胞が増殖して、水晶体嚢に濁りが生じる場合があるでしょう。これは後発白内障といわれる症状ですが、あくまで白内障手術の合併症といえるもので、白内障が再発したわけではありません。

治療後に違和感があればすぐに医師に相談

白内障手術を受けたあとに白内障が再発することはありませんが、後発白内障のような合併症が発生したり、眼内の炎症・眼圧上昇・網膜剥離などが見られたりするケースもあります
そのため、治療後に違和感があればすぐに医師に相談しましょう。後発白内障の場合もレーザー治療により、すぐに視力は回復します。
通常は白内障手術後、手術翌日・1週間後・1か月後・3か月後と定期的な検診があるでしょう。検診では問題がないか、見え方が回復しているかを検査で確認するので、必ず検診を受けることが大切です。

編集部まとめ

まとめ
本記事では、白内障手術後にぼやけて見えるのはなぜなのか、原因を解説しました。

ぼやけて見える理由としては、眼内レンズに慣れるまでに時間がかかることや、後発白内障などの合併症による原因が考えられます。

視界が安定するまでの期間は個人差があり、数週間から1~2か月ほどはかかるでしょう。

基本的に白内障は再発しませんが、後発白内障が発生した場合は治療が必要です。ほかにも合併症にかかる可能性もあるため、治療後に違和感があればすぐに医師に相談しましょう。

この記事の監修医師