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非定型うつ病とは?従来のうつ病との違いや症状・原因・治療法を解説

 公開日:2024/04/01
非定型 うつ 病

非定型うつ病という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

やる気がでない、心が晴れないなどの症状がある場合、非定型うつ病かもしれません。

これまで聞いてきたうつ病とは、どこか違う症状があるのではありませんか。

非定型うつ病とはどのような病気なのか、定型うつ病とはどう違うのか、この記事で解説していきます。

症状の特徴だけではなく、原因や治療法にも触れていきましょう。

ご自身だけではなく、家族や周囲にも当てはまる方がいらっしゃるかもしれません。ぜひ、この記事をご参考にしてください。

伊藤 有毅

監修医師
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)

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専門領域分類
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医

非定型うつ病とは

顔を覆う
非定型うつ病とは、メディアなどで新型うつ病ともよばれています。しかし、新型うつ病とは医学的な名前ではありません。
英語でAtypicl depressionを直訳して非定型うつ病と呼ぶのが医学的に正しいでしょう。
精神疾患に関しては、アメリカ精神医学学会のDSMもしくはWHOのICD-10で定義され国際的に診断基準が決まります。ICDは、疾患・傷害・状態などで区分するための整理番号です。非定型うつ病に関する明確な基準はなく、ほかのうつ病エピソードというカテゴリに分類されています。
DSMとは、精神障害の診断と統計の手引きDiagnostic and Statistical Manual ofMental Disordersの略です。
非定型うつ病は、1994年に公表されたDSM-4で定義されたことにより、認知されるようになった新しい病気といえます。
ただし、それ以前にも、従来型のうつ病に当てはまらないうつ病があることは知られていました。

従来のうつ病との違い

考える人
非定型うつ病は、うつ病の診断基準をほぼ満たすものの、従来のうつ病とは異なる症状を示します。
従来のうつ病との違いを次の3つの観点から見ていきましょう。

  • 三大欲求に対する違い
  • 感情の違い
  • 薬による治療効果の違い

睡眠・食欲・性欲を三大欲求といい、睡眠・食欲に違いが見られます。
従来のうつ病では不眠・食欲不振などの症状が見られるのに対し、非定型うつ病は過度な睡眠や過食などの特徴が現れやすいといわれています。
感情の違いで見ると、従来のうつ病はネガティブな傾向にあるのに対し、非定型うつ病は感情の起伏が激しいのが特徴です。
ほかの人の言動に過敏に反応するという点では従来のうつ病と同じといえるでしょう。しかし、非定型うつ病の場合は自分中心に考えているという特徴があります。
そのため、自分の思い通りにいかないと感情を爆発させてしまうことがあるのです。
非定型うつ病は薬が効きにくいのも、従来のうつ病と違う点です。従来のうつ病は仕事のし過ぎによるストレスや疲労が原因のことが少なくなく、薬と休養により症状の改善が見込めました。
一方、非定型うつ病は社会の規範に対してストレスを感じるため、薬の効果が出にくいようです。非定型うつ病の場合は、職場などの環境を変えることで改善することが多いといわれています。
このほかにも、従来のうつ病は何をしてもやる気が出ないのに対し、自分の好きなことをしている時は症状が出ないなどの違いもあります。

非定型うつ病の症状

女医
それでは、非定型うつ病に特徴的な5つの症状について解説していきます。

気分反応性

談笑
まず、気分反応性が挙げられます。よいことが起きたり、起こりそうになったりする時にうつ症状が改善することです。
友人との会食や好きな娯楽などで、気分が上がることがあります。
この結果、仕事や勉強をただ怠けているとみなされることもあり、患者さんもそう感じて受診が遅れることがよくあります。
一方、定型うつ病では、以前に楽しみを感じていた行動にも、興味が持てず気うつが晴れることはありません。
ここは両者で、大きく違う点なので、非定型うつ病の診断が下される際重要になってきます。

拒絶過敏性

他者との関係のなかで、非定型うつ病の患者さんが示すのが拒絶過敏性です。
この病気の患者さんは、他人から否定されることに極めて過敏になります。
他人の何気ない言葉に悪意を感じたり、自己を全否定されたように感じたりという症状です。
例えば上司や教師などから、軽く叱られただけで自分を否定されたと感じ、ケースによっては過剰に反論することもあります。
定型うつ病では、こういった場面で自分を責めるような傾向が見られるでしょう。

過眠

寝る人
定型うつ病では、寝付きが悪く、意図せず早起きしてしまう患者さんがほとんどです。不眠症状が出ます。
一方、非定型うつ病の患者さんは、過眠になる傾向があります。
過眠とは、従来の睡眠時間+2時間寝るような日が週に3回以上あるような状態です。
もともと8時間睡眠だった患者さんの場合、10時間寝る日が多いというようなケースがこれに相当します。
気分反応性にも関係していて、嫌なことが起こるとさらに睡眠時間が増えます。
また、過剰に眠っても熟睡感が得られず、寝起きはよくありません。昼間に眠気が出て、昼寝を必要とする場合もあります。
これらの結果、生活リズムが乱れます。

過食

定型うつ病では食欲減退がよくみられ、非定型うつ病では顕著な体重増加、または食欲の増加がよくみられます。
非定型うつ病の患者さんは、ストレスを感じると食べることで紛らわせる傾向があるので、体重増加が見られることもあるのです。
特に、甘いものを含む炭水化物を多く摂取するようになる患者さんがいます。脳は疲れると糖分を欲するのでこうなるのでしょう。
前述したように、非定型うつ病の患者さんには若い女性が多いため、太ることを気にして過食嘔吐を行うケースもあります。
摂食障害として受診された患者さんが、診察していくうちに、実は非定型うつ病であったということもよくあるケースです。

鉛管様麻痺

横たわる人
鉛管様麻痺とは、体が鉛のように重く感じられ、動けなくなることです。
定型うつ病でも、疲労感・倦怠感は観察されますが、動けなくなる程の麻痺は一般的ではありません。
この症状は、朝より夕方の方が酷くなりますが、仕事や学校に行かなければならない朝に出ることもあります。
鉛管様麻痺は嫌なことがあると、積み重なるように悪化し、自分でコントロールすることはできません。

非定型うつ病の原因

うずくまる人
では、非定型うつ病の原因は何なのでしょうか。定型うつ病もそうですが、完全に解明されているわけではありません。
しかし、いくつかの共通する原因が見られます。

本人の性格

非定型うつ病に罹りやすいとされる特徴には以下のものが挙げられます。

  • 物事に不安を感じやすい
  • 人間関係に不安が多く、人前で非常に緊張する
  • 目立つのを嫌う
  • 他者の評価を気にする
  • 周囲に過度に気を遣う
  • 事物のとらえ方に偏向性がみられる
  • 被害者意識が常にある
  • 自己愛が強い

このような傾向が、他者とのコミュニケーションを阻害し、精神が不安定化します。その結果、非定型うつ病という病気になるのです。

環境

次に、環境が挙げられます。非定型うつ病の患者さんには、生活リズムが乱れている方が多いようです。
夜更かし、朝寝坊などの習慣が脳に負担を与えていると考えられます。
朝、日光を浴びるとメラトニンという物質が関係して正しい生活リズムが整えられるので、これに逆らった生活は病気の原因になります。
また、不安定な人間関係も問題です。家族の不和や、理不尽な上司などが病気の原因となることもあります。

遺伝

非定型うつ病が遺伝するかどうかは、まだ十分にデータがありません。
しかし、非定型うつ病の患者さんの両親どちらかがうつ病の既往症とするケースは、全体の70%というデータがあります。
これが即ち遺伝とはいえません。なぜなら、家族は生活環境も似ているからです。
しかし、定型うつ病の患者さんの両親の罹患率は70%よりも低いので、非定型うつ病の方が遺伝の可能性が高いといえます。

非定型うつ病になりやすい人の特徴

悩む人
ここからは、非定型うつ病になりやすい人の特徴について解説していきます。病気の原因とも深く関わってきますので、ぜひ参考にしてください。

責任感が強い

責任感の強い方は、非定型うつ病に罹りやすいといえます。
責任感が強すぎると、自分だけでなく周囲のことにも気を配り過ぎ、ストレスを抱え込みます。
定型うつ病でも、同様のことがいえますが、責任感が強く物事を自分ひとりで解決しようとすることは病気の原因となるでしょう。
責任感が強いと、周囲から頼られがちですがストレスにならないよう、自分で気をつけることが肝要です。

自己主張が不得意

自己主張が不得手な方も、非定型うつ病に罹りやすいでしょう。
他者との関係で、自己主張をしないと、すべてを自分で抱え込むことになってしまいます。それがストレスとなり病気になるのです。
小さい頃から、よい子といわれて、なんでも我慢してしまう方もこのケースに当てはまります。
定型うつ病はストレスがなくても急に発症することがありますが、非定型うつ病はストレスが原因となることが多いです。

非定型うつ病の治療法

医師
次に、非定型うつ病の治療法について解説します。
かつては、定型うつ病に比べ、非定型うつ病は治療が難しいといわれてきました。しかし、現在ではいくつかの有効な治療法が知られるようになってきています。

薬物療法

薬を飲む
定型うつ病と同様に、非定型うつ病でも、第一選択肢は投薬です。
脳の神経伝達物質を整えるために、抗うつ薬を始めいろいろな薬が使われます。
かつては、抗うつ薬の種類が限られ、非定型うつ病には効かないといわれてきました。
しかし、現在では効く可能性のある薬もあります。さらに、症状に合わせて、抗不安薬や精神安定薬も処方されることもあるでしょう。ドーパミンを増やす薬剤が効くこともあります。
従前より改善されたとはいっても、非定型うつ病は定型うつ病ほど薬剤への反応がよくありません。
そのため、効果が表れにくく、副作用に苦しむケースもあります。

認知行動療法(カウンセリング)

カウンセリング
認知行動療法は自分の思考法や行動を見直して、偏りを減らし社会性を身につける方法です。カウンセリングとも呼ばれます。
カウンセラーと1対1で行うものと、グループで行うものがあります。
ただ、うつ症状が強い間は、負荷が高すぎて行えません。薬物治療などで、ある程度症状が回復してきた時の選択肢です。
また、グループで行う認知行動療法では、対人ストレスによる負荷も考えられます。

生活習慣の改善

生活習慣の見直しが大きな成果をあげるケースもあります。
非定型うつ病の患者さんは、生活リズムが乱れていることが多いのでここを改善しましょう。
決まった時間に起床し、決まった時間に就寝するようにします。睡眠と覚醒のリズムを作りましょう。
また、食事も決まった時間に摂り、深夜に過食をしないよう気をつけましょう。遅い時間に胃に食物を入れると睡眠にも影響がでます。
食事は、栄養バランスにも気をつけてください。
また、運動習慣も非定型うつ病の改善に役立ちます。適度な運動を取り入れましょう。
うつ病というと精神の病、体は関係ないのではと思われるかもしれませんが、人間は心と体のバランスが取れていないと病気になります。
運動により、脳の神経伝達物質も働きがスムーズになり、病気の改善が期待できるでしょう。
さらに、朝日光を浴びることにより、夜にメラトニンが大量に分泌されます。この物質は夜の睡眠を促進します。
朝にウォーキングを行うと、適度な疲労とともに、メラトニンの作用で睡眠のリズムが整えられるでしょう。

編集部まとめ

花と女性
非定型うつ病について解説しましたが、いかがでしたか。非定型うつ病は、近年認知されるようになった病気です。

若い女性が罹患することが多く、摂食障害や境界性パーソナリティー障害などの合併症もみられます。

従来の定義のうつ病よりも、難治性であるともいえるでしょう。

近年の生活環境の複雑化や、コミュニケーション能力の重視はストレスの原因となり、非定型うつ病の患者さんは増えてきています。

非定型うつ病の患者さんは、自分の好きなことは楽しめるので、自分がうつ病だとは思っていないかもしれません。

しかし、前述したような症状があるのなら、れっきとした病気です。辛い気持ちがあるのなら、怠け病などではありません。

また、精神科や心療内科というと怖いところのように感じることもあるでしょう。抗精神病薬も怖いかもしれません。

とはいえ、最近では受診しやすいクリニックなども増えており、薬もよいものが次々と開発されています。

信頼できる医師を受診し、診断を受けて改善に取り組んでください。

この記事の監修医師