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マイコプラズマ感染症(性病)とは?症状や原因、治療方法などを解説

 公開日:2024/07/18
マイコプラズマというと、マイコプラズマ肺炎を思い浮かべることが一般的だと思います。しかし、この細菌にはさまざまな種類があり、それぞれの菌により異なる部位に感染することはあまり知られていません。 性感染症としてのマイコプラズマはどのような病気なのでしょうか。性行為によって感染するマイコプラズマについて、原因や症状、治療法など詳しく調べてみましょう。

マイコプラズマというと、マイコプラズマ肺炎を思い浮かべることが一般的だと思います。しかし、この細菌にはさまざまな種類があり、それぞれの菌により異なる部位に感染することはあまり知られていません。
性感染症としてのマイコプラズマはどのような病気なのでしょうか。性行為によって感染するマイコプラズマについて、原因や症状、治療法など詳しく調べてみましょう。

村上 知彦

監修医師
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)

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長崎大学医学部医学科 卒業 / 九州大学 泌尿器科 臨床助教を経て現在は医療法人 薬院ひ尿器科医院 勤務 / 専門は泌尿器科

マイコプラズマ感染症(性病)とは

マイコプラズマ感染症(性病)とは
マイコプラズマ感染症とはマイコプラズマ菌による感染症の総称です。一般的なマイコプラズマ肺炎と性病のマイコプラズマ感染症の病原菌は種類が異なります。感染の仕方もマイコプラズマ肺炎は飛沫感染ですが、性感染症のマイコプラズマは飛沫ではなく性行為によって感染します。
次に、マイコプラズマ性感染症について詳しく説明をしていきます。

マイコプラズマ感染症(性病)の概要

マイコプラズマという細菌には多くの種類が存在することは前述のとおりですが、そのなかでも性感染症の原因となる菌はマイコプラズマ・ジェニタリウムとマイコプラズマ・ホミニスの2種類です。男性では、尿道炎や前立腺炎、女性は子宮頸管炎や不妊症の原因となります。いずれにしても病原体は細菌ですので治療には抗生物質が使われますが、近年耐性菌が増加していることも否定できません。

クラミジアとの違い

クラミジアの病原体もマイコプラズマ同様に細菌ですが、その病原菌はクラミジア・トラコマティスです。症状も男女ともにマイコプラズマに似ていると言われていますが、治療効果に違いがあります。クラミジアは抗生剤を1回内服すれば約90%以上が消失し完治することがほとんどですが、マイコプラズマは治療効果が得にくいことも否めません。クラミジア検査で陰性反応でも症状がある場合は、マイコプラズマの検査を受けることをおすすめします。

マイコプラズマ・ウレアプラズマとの違い

クラミジアと同様にマイコプラズマ感染症によく似た病気に、ウレアプラズマ感染症があります。両者とも症状は似通っていますが、病原体は異なる細菌です。ウレアプラズマの原因菌は「ウレアプラズマ・ウレアリチカム」「ウレアプラズマ・バルバム」という細菌であり、いずれも抗原性を持っているため、抗体反応を誘発して人に炎症反応を起こすと言われています。過酸化水素を作り出して人の細胞に炎症反応を起こさせるマイコプラズマ・ジェニタリウムやマイコプラズマ・ホミニスとは異なるメカニズムを持つようです。

マイコプラズマ肺炎との違い

肺炎を発症する原因菌はマイコプラズマ・ニューモニエというマイコプラズマ性感染症とは別の細菌です。また、感染経路は感染者の咳やくしゃみから飛び出た病原菌を吸い込んでうつる飛沫感染です。性病のマイコプラズマは性行為で感染するので、感染経路の違いも顕著です。
また、マイコプラズマの肺炎は手洗いやうがいで予防できます。一方、性病のマイコプラズマの予防方法はコンドームの正しい使用です。しかし、100%の予防にはならないことも認知してください。

マイコプラズマ感染症(性病)の症状

マイコプラズマ感染症(性病)の症状
マイコプラズマ感染症の症状は男性と女性で異なりますが、先に説明したクラミジア感染症やウレアプラズマ感染症ととても似ているという特徴もあります。男性、女性の症状をそれぞれ説明します。

男性に起こる症状

感染してまず現れるのは尿道の症状です。ムズムズしたり、膿が出たり、尿が出にくいといった症状が現れます。クラミジア感染症ととてもよく似た症状ですが、クラミジアに比べて症状の出る確率は高いと言われているので自覚しやすいでしょう。
感染を放置していると、陰嚢の腫れや痛み、しこり、高熱などの症状が出る可能性があり、その場合は急性精巣上体炎が疑われます。さらには慢性前立腺炎を引き起こすこともあります。

女性に起こる症状

女性の場合は、感染しても無症状のケースが多くありますので注意が必要です。症状でわかりやすいものは、おりものの増加、外陰部の少しのかゆみ、排尿時の軽い痛みなどがありますが、見過ごすと症状は悪化します。そして卵管炎、腹膜炎や子宮外妊娠、さらには不妊症の原因となることもあります。

マイコプラズマ感染症(性病)はどのように感染する?

マイコプラズマ感染症(性病)はどのように感染する?
マイコプラズマの感染力はとても弱いと言われていますが、感染経路は性行為によるものです。1回の性行為でも感染する可能性は十分にあります。次に原因と感染経路をそれぞれ説明します。

マイコプラズマ感染症(性病)の原因

マイコプラズマという細菌には多くの種類がありますが、性感染症のマイコプラズマの原因となる菌は、マイコプラズマ・ホミニスとマイコプラズマ・ジェニタリウムの2種類であることがわかっています。

マイコプラズマ感染症(性病)の感染経路

感染経路としては、感染者の粘液や体液が直接自身の粘膜に接触することにより感染します。コンドームをつけない性行為や、アナルセックス、オーラルセックス、またキスだけでも感染する可能性はあります。
近年増加しているのが、オーラルセックスによる喉のマイコプラズマです。性器に病原菌がついていれば喉にも感染します。また、反対に喉に菌がついていれば性器に感染する場合もあります。

マイコプラズマ感染症(性病)の潜伏期間

マイコプラズマ感染症の潜伏期間は3日~5週間と言われていますが、個人差があり、性交後すぐに症状が出る場合もあるようです。しかし潜伏期間が過ぎてもまったく症状が出ないこともあり、特に女性は無症状のケースが少なくないと言われています。

マイコプラズマ感染症(性病)を放置するリスク

マイコプラズマ感染症(性病)を放置するリスク
この病気を放置しても自然治癒はしません。無症状であることや、軽い自覚症状で放置しがちになりますが軽視は禁物です。
男性の場合は、尿道から病原菌が侵入し、副睾丸である精巣上体や精官、精嚢、前立腺へと感染していき炎症を広げます。放置によって炎症が慢性化すると生殖機能にも影響します。精子が減り、運動率が低下する可能性もあると言われています。
女性の場合は、膣から侵入し子宮頸管、子宮、卵管へと感染していきます。気付かないうちに炎症は慢性化し、骨盤腹膜炎まで進行すると病状は深刻になるでしょう。

不妊・流産

無症状であることが少なくない女性は、炎症が慢性化し不妊や流産になる場合も考えられます。はじめに膣や子宮頚部に感染し、その後、上行性に炎症が波及していくと子宮内膜炎、卵管炎、骨盤腹膜炎に進行し不妊症になる確率が高くなるのです。
妊娠中の感染により早産や流産のリスクは高まり、さらに出生時子宮内で母体から胎児に垂直感染することもあります。保菌している母体から胎児への垂直感染率は18~55%と決して低くはありません。
また、マイコプラズマは胎児炎症反応症候群の原因菌ともされていて、早産で生まれた赤ちゃんの脳や肺に異常が起きることも重要視されています。
なお、男性でも生殖機能への影響から精子数が減少し、運動率が下がると不妊になることも認識してほしい点です。

感染拡大

すでに説明したように、無症状や自覚症状の軽視により病気を放置することで、パートナーや性交した相手を感染させ、さらにそこから感染は広がっていきます。このようにマイコプラズマ性感染症は性行為を通じて蔓延していくのです。疑わしい場合は速やかに検査を行い、感染拡大をさせない視点を持つことも必要でしょう。

マイコプラズマ感染症(性病)の治療

マイコプラズマ感染症(性病)の治療
マイコプラズマは細菌ですので抗生物質での治療が有効です。抗生物質は市販薬ではありませんので、病院での処方箋が必要です。治療薬はマクロライド系抗生物質やニューキノロン系が推奨されています。アジスロマイシンはマクロライド系の代表的な抗菌薬です。

治療方法

基本的にはマクロライド系の内服薬を1回服用することで対応します。しかし、マイコプラズマは薬剤耐性菌が増えており、従来の抗菌薬では効果が出ないケースも多くなっています。その場合は何種類かの抗菌薬を続ける必要がありますが、処方された薬は必ず飲み切ることが大切です。そして検査を受けて完治を確認しましょう。

治療期間

治療期間には個人差がありますが、基本的には適切な抗菌薬の服用で効果を確認します。1回の治療では必ずしも治癒するとは限らないので、治療後の検査は必ず受けましょう。クリニックにもよりますが、治療後4週間以上あけてから検査をすることが少なくないです。
治癒判定をしても陽性が残る場合は、薬剤耐性菌の可能性もあります。的確な抗生剤の選択を行い、効果を見極める期間が必要となることも知っておいてください。

マイコプラズマ感染症(性病)の検査を受けられる場所

少しでも感染の疑いが生じたら、まず検査を受けるようにしましょう。マイコプラズマはほかの性感染症と症状が似ていることが少なくないため、病原菌の特定をしなければ治療ができません。検査はどこでどのように受ければいいのでしょうか。 検査を受ける場所や方法を個別に説明します。

病院

病院で検査をする場合は、女性は婦人科での受診になります。男性の場合は性病科や泌尿器科を受診してください。なお、マイコプラズマの検査はオンライン診療で受けられるクリニックもあります。その場合は自由診療となりますので保険は適用されません。なお、検査を受ける場合も料金には注意が必要です。症状があり、培養法で検査をした場合は保険適用となりますが、PCR法での検査や無症状の場合は保険適用外となります。詳しくは、受診する病院に相談してください。

保健所

保健所では特定の性病検査を受けることができますが、現時点ではマイコプラズマ性感染症は検査対象ではありません
自治体により保健所の検査項目は異なります。今後検査できる対象が広がる可能性もありますので、地域の広報などで情報を確認することをおすすめします。

性病検査キット

病気の特性上、病院に行くことを躊躇してしまう場合もあるかもしれません。そのようなときは検査キットの活用も有効的です。インターネットから注文すれば、検査キットは自宅に届きます。自分で検体を採取し返送すれば誰にも知られず手軽に検査を行うことが可能です。ただし、陽性判定が出た場合は病院での治療が必要となります。

まとめ

マイコプラズマ性感染症はあまり知られていない病気かもしれませんが、近年感染者数は増加しています。症状がなかったり、軽度であったりすることから放置されてしまうことも蔓延を広げている原因かもしれません。
しかし、早期に発見すれば、治療も基本的には服薬だけですみます。感染を拡大させないためにも早期発見、治療を心がけたいものです。

この記事の監修医師