子宮頸がんってどんな病気?初期症状から検査方法まで解説
女性特有の疾病の中でも、特に気を付けたい子宮頸がん。日本では毎年約1万人の女性が罹患し、約3000人が死亡しているという現実があります。
国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」の死亡数・罹患数の将来推計データでは、2039年までの罹患者が約1万8000人、平均死亡者数が約3600人にまで増えるという予測もあり、より注意を払うべきでしょう。
ところが、日本国内の子宮頸がん検診受診率はまだまだ低く、先進国で50%に届いていないのは日本だけです。子宮頸がんとはどのような病気なのか、その症状や検査はどういったものなのか、解説していきます。
監修医師:
阿部 一也(医師)
目次 -INDEX-
子宮頸がんとは
子宮がんは、がんが発生する場所によって2種類に分けられます。1つは子宮の入り口にできる子宮頸がん、もう1つが子宮の内部にできる子宮体がんです。この2種類を総称して子宮がんと言いますが、発症する年齢も原因も違いがあります。
子宮頸がんが20代後半から多くなり、妊娠・出産年齢に該当する若い世代で多く発症するのに対して、子宮体がんは40代以降で発症が増えると言われています。
また、子宮頸がんは「ヒトパピローマウイルス(HPV)」の感染が主な原因だとされるのに対し、子宮体がんの方はエストロゲン(女性ホルモン)による長期的な刺激から起きると見られています。
子宮頸がんは、がんの発生する場所によって大きく2つに分けられます。1つは、扁平(へんぺい)上皮がんといって、子宮頸部の入り口にある粘膜組織の扁平上皮細胞から発生するもの。
もう1つは、腺がんといって子宮体部近くにある腺組織の円柱上皮細胞から発生するものです。腺がんは検診で簡単に見つけることができず、転移しやすい特徴があるため、治りにくいがんとされています。
子宮頚部にできる「子宮頸がん」
子宮の入り口である子宮頸部にできる子宮頸がんは、子宮がんの約7割程度を占めています。
子宮頸がんの多くは、AIS(上皮内腺がん)やCIN(上皮内癌)という、がんになる前段階を経てからがんになります。がんの前段階では症状がほとんどなく、腟より奥の筒状の部分にがんができると発見が遅れる可能性があります。
HPV感染が主な原因と言われますが、このウイルスは性交経験のある女性の過半数が、一生に一度は感染の機会があると言われています。HPV感染者の1割程度が子宮頸がんに至るというデータもあります。
発症のピークは30代後半。以前は40~50歳代がピークと言われましたが、最近は20~30歳代の若い女性の罹患が増えてきています。5年相対生存率は76.5%とされていますが、2000年代以降は死亡率も増加傾向にあるので、やはり細心の注意が必要でしょう。
子宮体部にできる「子宮体がん」
子宮の袋状になっている部分を子宮体部と言い、子宮体部にできるがんを子宮体がんと言います。子宮内膜から発生するため、子宮内膜がんと呼ぶこともあります。
子宮体がんは、がん組織の状態により、類内膜がん、漿液性がん、明細胞がん…などに分類されますが、類内膜がんが最も多く、そのうち悪性度が高いと言われているのが漿液性がんと明細胞がんです。
子宮体がんの年間罹患者数は約1万8000人。発症のピークは閉経後の50~60代で、5年相対生存率は81.3%とされています。
子宮体がんに関連する疾患として、子宮内膜増殖症というものがあります。このうち、増殖した細胞が正常でない場合を子宮内膜異型増殖症と言い、すでに子宮体がんになっているケースや、子宮体がんが発生する可能性が高くなることが明らかになっています。
そういったリスクもあるため、子宮体がんの発生リスクの高い閉経後の女性は定期的な検診を受けることが大切です。
子宮頸がんは初期症状がほとんどない
子宮頸がんは初期症状がほとんど出ないため気付きにくいのが特徴です。
そのため、発見されないまま何年もかけて進行してしまう場合があります。
子宮頸がんでよく言われる症状は、不正出血や性行為後の出血、いつもと違うおりものが出るといった事例です。
ただ、「自分は不正出血や性行為後の出血がないから大丈夫」と過信してはいけません。
不正出血がなかったとしても、おりものの異常で子宮頸がんだと判明する場合もありますし、なんの症状も感じられないまま、子宮頸がんの初期や前がん状態で手術が必要になるというケースもあります。それだけ自己判断が難しい病気だということなのです。
不正出血があった場合も、単なるホルモン異常からたまたま起きたケースもあれば、かなり進行した子宮頸がんということもあり得ます。
だからこそ、定期的な検診、HPV感染前のワクチン接種による予防が重要なのです。
子宮頸がんの初期症状~自覚できる症状
前述の通り、基本的に子宮頸がんは初期症状が全くないことがほとんどです。
最初は子宮の入口にがんができ、それが子宮腟部、子宮頸部に広がっていくと、その部分の細胞に異常が表れ始めます。普段と違うおりものが出てきたり、おりものの量が増えたり、場合によっては腐ったようなにおいを感じるといったことがあると言います。
ただ、そういった異常があっても「自分が子宮頸がんかもしれない」と疑わなかったり、「まさか子宮頸がんにはかからないだろう」と見過ごしてしまったりする人も少なくありません。日常の小さな変化に敏感になることが早期発見の第一歩と言っていいでしょう。
また、生理日以外の出血(不正出血)、性交渉時の出血、下腹部の痛みなどが出る場合もあります。そういった自覚できる症状を認識したうえで、適切な対応をしていくことが大切なのです。子宮頸がんでよく見られる初期症状の詳細をここから見ていくことにします。
性交渉のときに出血する
子宮頸がんの初期症状の1つとして、性交時、または性交の後の出血というものがあります。性行為の機会がある女性で、ほんのわずかでも出血が見られた場合には「ちょっと傷がついたのかも」と軽く考えないことが大切です。症状が進行していることも考えられるので、できるだけ早く専門医を受診し、検診を受ける必要があるでしょう。
性行為の経験がない人は原則としてHPVには感染しませんから、子宮頸がんになるリスクが極めて低くなります。ただし、性行為経験がなくてもリスクはゼロとは言い切れず、ごく稀に子宮頸がんになるケースもあると言いますから、やはり注意が必要です。
生理日以外でも出血する(不正出血)
不正出血は、子宮にまつわるさまざまな病気のサインになり得ます。不正出血があった時には「病気の可能性を考える必要がある」と受け止めた方がいいでしょう。
不正出血は子宮頸がんの初期段階はもちろんのこと、子宮頸がんとは関係のない子宮腟部びらんや腟炎などの状態でも起こります。子宮体がん、性感染症、子宮内膜ポリープ、子宮頸管ポリープなどでも出血するケースがあるので、どの可能性であっても軽く考えずに対処することが大切です。
特に子宮頸がんが原因で不正出血が起きている状態というのは、比較的進行してしまっていることが多いのです。「不正出血がないから子宮頸がんではない」と考えるのはとても危険ですし、不正出血があれば、より事態を重く捉えて、専門医を訪ね、診察や検診を受けることが重要なのです。
いつもと違うおりものが増えた
おりものとは腟から出る分泌物のことで、医学的には「帯下(たいげ)」と呼ばれます。
おりもの自体は健康な人でも排卵日の数日前や妊娠中などに出ることがあり、通常は乳白色や透明の液体で、においはありません。
ですが、子宮頸がんが進行すると、おりものが水っぽくなったり、濃い茶色や膿うみのような色になったりすることがあります。また、普段とは違うにおいがするケースも見られます。月経中でないにもかかわらず、おりものに血液が混ざることも見られるので、小さな変化に敏感になることが大切です。
おりものに関しては、ナプキンや衣料用の洗剤や柔軟剤などによる刺激で変化が生じる場合もありますし、細菌やウイルス感染で腟炎にかかり、普段と違ったものが出ることもあります。
いずれにしても、おりものに変化が生じた場合、気になる症状があった場合は、躊躇せずに婦人科の受診を検討しましょう。
下腹部が痛む
子宮頸がんの症状として、下腹部痛というのも、その1つに挙げられます。
子宮頸がんが進行してしまうと、子宮の出口のところにとどまらず、子宮の周りの臓器に浸潤して下腹部痛が起こるケースがあります。さらに骨に転移すると腰痛などの症状も出てきます。骨折したかのような痛みを覚えて受診した結果、骨転移に初めて気づくという人もいますから、早い段階で小さな異変を見逃さないことが非常に重要なのです。
「実は何年も前から下腹部痛や不正出血があったけど、月経不順だと思っていた」「40~50代になってから更年期や閉経前の生理不順だと思い込んでいた」という人は、婦人科を受診しないままに深刻な状態に陥ることもあり得ます。だからこそ、下腹部痛があった場合には、子宮頸がんの可能性を考えるべきでしょう。
子宮頸がんは初期症状のないうちに進行する
ご存じの通り、子宮頸がんは初期症状がほとんどないうちに進行します。それを予防するために、定期的な検診とHPVワクチン接種が有効です。
20歳以上の女性は、2年に1回の頻度で子宮頸がん検診を受けることが推奨されています。子宮頸部の細胞を採取して、細胞に何らかの異常がないか検査する「子宮頸部細胞診」が広く一般的です。
HPVワクチンに関しては目下、世界の70カ国を越える国で接種が行われています。現行のHPVワクチンでは、子宮頸がんの60~70%を予防できると考えられており、世界保健機関(WHO)は有効性と安全性を認めています。
日本ではHPVワクチンが2009年12月に承認され、2013年4月からは定期予防接種となっています。現在、小学校6年~高校1年相当の女子は、予防接種法に基づく定期接種として公費によりHPVワクチン接種を受けられます。
改めてその詳細を以下の通り、説明していきます。
子宮頸がん検診
子宮頸がんの予防として、子宮頸がん検診を定期的に受けることが推奨されています。
子宮頸がんの場合、がんが発生する前に異形成という病変が見つかる時期がしばらく続きます。この時期に検診を受けて、がんになる前の段階で早期発見することができれば、子宮頸部の一部だけを切除したり、レーザーを照射する形の治療が受けられて、治療負担が少なくて済むのです。癌になる前の段階でレーザーや一部切除を行うのは異形成の中でも高度異形成になります。
子宮頸がんの検診は、自治体や職場の検診の場合は指定の医療機関で受けられますし、大半の自治体で費用の補助があります。
対象は20歳以上の女性。問診・視診・内診と医師が採取した細胞による細胞診が行われます。検査時間は5分程度でそれほど大きな負担はありません。月経時は避けて受診しましょう。
HPVワクチン接種の有無に関わらず、20歳以上の女性は2年に1度は子宮頸がん検診を受けましょう。それが子宮頸がんリスクを下げることにつながります。
子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)
日本では、2013年4月に定期接種の対象に指定されましたが、接種後に頭痛やけん怠感などを訴える女性が相次いだため、接種の積極的な呼びかけが中止されました。しかしながら、厚生労働省はHPVワクチンの安全性と有効性を示すデータが国内外で集められたとし、2022年4月積極的な接種の呼びかけを再開しています。
対象者は9歳以上の女性。公費負担による定期接種の対象は小学6年生~高校1年生相当の女性となっています。HPVワクチンは、HPV感染を予防するためのものですから、性交渉を経験する前に接種することが効果的です。
現在、公費で受けられるHPVワクチンは、3種類あり、一定の間隔をあけて、同じ種類のワクチンを合計2回、または3回接種します。接種するワクチンや年齢によって、接種のタイミングや回数が異なりますので、どのワクチンを接種するかは医療機関に相談してください。
接種後に副反応が生じた場合、適切な診療を受けられるように、国は各都道府県に協力医療機関を指定し、診療体制の強化を図っています。ワクチン接種後に生じた症状に対する協力医療機関の詳細は厚生労働省のホームページに掲載されています。
まとめ
子宮頸がんの初期段階での症状は全く分からないと考えた方がいいでしょう。
無症状が一番多いからこそ、何らかの自覚症状があってから専門医を受診するのではなく、定期的に検診を受けることが肝心です。
早期発見でき、早い段階で処置できれば、治癒できる可能性も高まります。子宮頸がん検診を受けるようにしましょう。
また、性交前にHPVワクチンを接種し、事前に予防しておくことも重要です。正しい情報を得て、しっかりとした対応をすることが子宮頸がん予防の大きな一歩となるのです。
参考文献
- 子宮がんの初期症状とは?子宮体がんと子宮頸がんの違いやHPVワクチンについても解説 | がん遺伝子医療専門 GENEクリニックグループ
- 子宮頸がんの症状・進行【医師監修】 | もっと知りたい子宮頸がん予防
- 子宮頸がんの症状・進行【医師監修】 | もっと知りたい子宮頸がん予防
- この症状があったら子宮頸がんかも?!初期症状とは?|渋谷文化村通りレディスクリニック
- 子宮頸がん検診ってどんな検査? | 子宮頸がん | TOKYO女子けんこう部
- HPVワクチンに関するQ&A|厚生労働省
- 子宮頸がん – 公益社団法人 日本産科婦人科学会
- 子宮頸がんで生じるおりものとは〜においや色に変化はあるの?おりもの以外の症状は?〜 | メディカルノート