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「診てもらえない」に応えたい。小児歯科・障害者歯科の現場から伝えたいこと 【札幌市清田区 かわのデンタルクリニック】

 公開日:2026/03/10

「診てもらえない」に応えたい。小児歯科・障害者歯科の現場から伝えたいこと
「診てもらえない」に応えたい。小児歯科・障害者歯科の現場から伝えたいこと

子どもや障がい者の歯科診療は、単にむし歯を治すというだけのものではない。成長や発達の段階、生活環境、本人の理解度に応じて関わり方を変え、時間をかけて信頼関係を築いていく医療でもある。ただ現実には、発達特性や障がいがあることを理由に、「歯科診療は難しい」「診てもらえなかった」という経験を持つ人や家族も少なくない。そうした現実に向き合っている数少ない歯科クリニックのひとつが、札幌市の「かわのデンタルクリニック」だ。同クリニックの河野英司院長に、子どもの歯を守るために大切な視点と「診療をあきらめない」ための歯科医療のあり方について話を伺った。

Doctor’s Profile
河野 英司(かわの えいじ)
かわのデンタルクリニック 院長

北海道札幌市出身。1987年、東日本学園大学(現・北海道医療大学)歯学部 卒業。同年、東日本学園大学歯学部小児歯科学講座に入局し、助手として小児歯科診療および研究に従事。1993年同講座の講師に就任。2000年、社会福祉法人北翔会 医療福祉センター札幌あゆみの園にて歯科診療課長を務め、障がい者の歯科診療に本格的に携わる。2020年、かわのデンタルクリニックを開院。日本障害者歯科学会認定 障害者歯科専門医。

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子どもの歯を守るために、初めに知っておきたいこと

子どもがむし歯になる原因には、どのようなものがありますか?

むし歯の原因は、大きく4つの要素が関係しています。まず「細菌(ミュータンス菌など)」、「糖質の摂取」、そして「歯の質(抵抗力)」の3つが主な原因ですが、ここに「時間の経過」という4つ目の要素が加わることで、むし歯が発生・進行してしまいます。
お口の中を完全に無菌にすることはできませんし、糖質は成長期のお子さんにとって大切なエネルギー源でもあります。そのため、「甘いものを一切与えない」「菌を完全になくす」といった対策は、現実的とはいえません。
そこで、むし歯予防として大切になるのが、歯を強くすること、そして糖が口腔内にとどまる時間をできるだけ短くすることです。

子どもの歯を守るために、初めに知っておきたいこと

「時間の要素」とは、具体的にはどういう意味でしょうか?

食事やおやつで糖質を摂取すると、口の中ではむし歯菌が活発に働き始めます。その状態が長く続けば続くほど、むし歯のリスクは高まります。
食後できるだけ早く歯磨きをする、あるいはうがいをして糖分を洗い流すことで、口腔内に糖が残る時間を短くすることができます。
この「時間への介入」は、むし歯予防において非常に重要なポイントです。

子どもの場合、特に気をつけるべき年齢や時期はありますか?

むし歯が増えやすいのは、乳歯が生えそろう3~4歳頃です。この時期になると食生活が変化し、おやつの種類も増えてきます。
一方で、「自分で歯磨きをする」と言い始め、親の仕上げ磨きが減ってしまうことも少なくありません。さらに5~6歳頃になると、永久歯が生え始めます。生えたばかりの永久歯はまだ非常に弱く、むし歯になりやすい状態です。
年齢が上がるにつれて親の手が離れていくからこそ、定期的な歯科受診とチェックが重要になります。

「乳歯はいずれ抜けるから、むし歯になっても大丈夫」と考えている親御さんもいるようですが、それについてはどうでしょうか?

それは大きな誤解です。
乳歯がむし歯で早く失われると、奥にある歯が前に寄ってきてしまい、歯並びが乱れる原因になります。
また、むし歯が深く進行すると、これから生えてくる永久歯に影響を及ぼすこともあります。永久歯が弱い状態で生えてきてしまうこともあり、その後の口腔環境に長く影響します。

お口のトラブルといえば歯周病が思い浮かびますが、子どもにも起こりますか?

子どもでも、歯周病の前段階である歯肉炎は起こります。
ケアが不十分な状態が続くと、大人になってから歯周病へと進行しやすくなるので、年齢に関わらず日常的なケアと定期的なチェックが大切です。

子どもの歯を守るために、初めに知っておきたいこと

歯医者を怖がる子どもに、貴クリニックはどのように対応していますか?

まずは、その日に何をするのかをきちんと説明することです。また、年齢や理解力に応じて、治療に入る前にトレーニングを行うこともしています。
当クリニックではお子さんにいきなり治療をするのではなく、「口を開けてみる」「器具を見てみる」といった小さなステップを重ねて慣れてもらいます。

障害者歯科診療で大切なこと──安心して相談してほしい

障害者歯科診療で大切なこと──安心して相談してほしい

先生は障害者歯科診療も行っていますが、それに取り組むようになったきっかけを教えてください。

私は大学卒業後、小児歯科学講座に在籍し、大学附属の診療体制のなかで小児歯科診療に携わっていました。
当時在籍していた講座の指導教授が、北海道における障害者歯科診療の第一人者ともいわれる方でした。その先生のもとで診療に関わるなかで、発達に特性のあるお子さんや、障がいのある患者さんを診る機会が自然と増えていったのです。そうした環境で診療経験を重ねるうちに、障害者歯科診療を専門として深めていくようになりました。
北海道では、障害者歯科診療に専門的に対応できる医療機関が非常に限られています。「診てほしいけれど、地域の歯科クリニックでは対応が難しい」といった患者さんやご家族が紹介されて来院されるケースが多かったですね。

実際に障害者歯科診療を続けるなかで、どのようなことを感じていらっしゃいますか?

多くの方が歯そのものの問題以前に、「歯医者に行けない」「どこに相談すればいいかわからない」という壁に直面していらっしゃいます。
それは、障がいがあるという理由だけで、最初から選択肢が狭められている状態でもあるのです。本来であれば歯科医療にアクセスできるはずの人が、その入り口にすら立てていないんですよ。

小児歯科での経験は、障害者歯科診療にどのように生かされたのでしょうか?

小児歯科では、年齢や理解力に応じて、「待つ」「説明する」「段階を踏む」という関わり方を大切にしています。この考え方は、障がい者の歯科診療にもそのまま生かせると感じました。
治療ができるかどうかを最初から判断するのではなく、「どうすればその人にとって無理のない形で対応できるか」を考えてみる。そうした姿勢が、結果的に対応できる選択肢を広げてくれることを、大学での診療を通じて何度も経験しました。

障害者歯科診療を専門として続けてこられた理由を教えてください

「誰かがやらなければならない」という使命感から始めたというよりも、大学での診療や、その後の専門施設での経験を重ねるなかで、自然とその役割を担うようになっていったという感覚に近いですね。

障がいのある人の診療で、特に意識していることは何でしょうか?

まず、その人の理解力や精神年齢を見極めることです。トレーニングを重ねることで対応できる人もいれば、トレーニング自体が難しい人もいます。
トレーニングが有効な場合は、時間をかけて少しずつ慣れてもらいます。
一方で難しい場合には、身体を支えたり、補助器具を使ったりしながら、安全を最優先に治療を行います。

全国的に見ると、こうした診療を行う歯科クリニックはやはり少ないのでしょうか?

残念ながら多くはありません。
専門的に対応できる歯科医師は限られており、地域によっては受診先を探すこと自体が難しい現状があります。だからこそ、「断られたから仕方ない」とあきらめてほしくないと思っています。大学や専門機関だけでなく、相談できる場所があることを、少しでも知ってもらえたらうれしいですね。

障害者歯科診療で大切なこと──安心して相談してほしい

家族と一緒に考える、お口の健康と日々の暮らし

家族と一緒に考える、お口の健康と日々の暮らし

お口のケアについて、日常生活で気をつけるべきポイントを教えてください

お子さんや障がいを持つ人に限ったことではありませんが、その人に合った歯ブラシやフロスなどの清掃器具を選ぶことが大切です。
市販品は種類が多く、どれを選べばいいのか迷ってしまう人も多いと思います。クリニックで相談し、実際に口の中を見たうえで適した器具を選んでもらうのが一番確実です。特にお子さんや障がいのある人の場合は、本人ではなくご家族がケアを行うことも多いため、なおさら重要になります。
また、お子さんが完全に自分だけで十分な歯磨きができるようになるのは、中学生頃といわれています。それまでは、やはり大人による仕上げ磨きが必要です。

障がいのある方は、ご家庭でのケアが特に大変だと思います

そうですね。ご家族が一生懸命ケアしても、どうしても不十分になりがちです。日常生活のなかで歯磨きの時間を確保すること自体が難しかったり、本人が口を開けることを嫌がったりすることもあります。
そのため、歯科クリニックでの定期的な口腔ケアがより重要となります。家庭だけで抱え込まず、医療機関と一緒に支えていく視点が大切だと考えています。

通院の頻度はどのくらいが目安になりますか?

お子さんの場合は、基本的に3カ月に1回を目安にしています。トレーニングが必要な子や、セルフケアが難しい方については、月1回通っていただくこともあります。
大人の場合は、歯周病の状態やセルフケアの状況など、口腔内の状態に応じて、3カ月、6カ月、1年と頻度を調整しています。
いずれの場合も、まずは一度診察を受けていただくことが大切です。

家族と一緒に考える、お口の健康と日々の暮らし

診療を行ううえで、先生が最も大切にしていることは何でしょうか?

患者さんの希望を尊重することです。
生活背景や価値観を理解し、一方的に治療方針を押しつけるのではなく、一緒に考える。それはお子さんであっても、障がいを持つ人であっても、健常な大人であっても変わりません。歯科診療は、歯だけを見るものではなく、その人の生活に寄り添う医療だと思っています。

ありがとうございました。最後に、Medical DOCのサイトを訪れる読者の方にメッセージをお願いします

これまで「泣いてしまって診てもらえなかった」「障がいがあるから無理だと言われた」など、そうした経験から歯科受診をあきらめてしまっている人もいらっしゃると思います。
でも、最初から完璧な治療ができなくても構いません。まずは相談すること、それだけで十分です。
小さなお子さんにも、障がいのある人にも、その人なりのペースがあります。歯科診療は「我慢させる場」ではなく、「一緒に考える場」だと考えています。
「相談してみようかな」と、そう感じてもらえたら、一度声をかけていただけたらうれしいですね。

編集部まとめ

子どもの歯のトラブルは、成長過程や生活習慣と深く関わっています。また、発達特性や障がいがあることで歯科受診をあきらめてしまうご家族が少なくないことも、現場の大きな課題です。
「診てもらえないかもしれない」と感じたときこそ、相談できるクリニックを探してみてください。歯科診療は、歯だけでなく、その人の暮らしを支える医療です。不安を抱えたままにせず、一歩踏み出すことが、お口の健康を守る第一歩になるでしょう。

かわのデンタルクリニック

医院名

かわのデンタルクリニック

診療内容

障害者歯科診療 小児歯科 予防治療 など

所在地

札幌市清田区真栄1条2丁目1-6
アーバンシティ金子1F

アクセス

札幌市営地下鉄東豊線「福住」駅より車で11分
札幌市営地下鉄東西線「大谷地」駅より車で12分
札幌市営地下鉄東西線「南郷18丁目」駅より車で13分
JR千歳線「新札幌」駅より車で18分
JR函館本線「厚別」駅より車で18分

この記事の監修歯科医師