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サイレント・キラーの生活習慣病を正しく知り、テーラーメイドの適切な治療を提供【大阪府枚方市 香里ヶ丘大谷ハートクリニック】

 公開日:2025/12/22

サイレント・キラーの生活習慣病を正しく知り、テーラーメイドの適切な治療を提供
サイレント・キラーの生活習慣病を正しく知り、テーラーメイドの適切な治療を提供

生活習慣病は、私たちの健康を静かに蝕む「サイレント・キラー」とも呼ばれ、社会問題にもなっている。かつては「歳を重ねたら仕方がない」とあきらめられていたが、実際は好ましくない生活習慣の積み重ねで引き起こされることが判明している。1997年、このような病気は厚生労働省によって呼び方を「生活習慣病」と改められた。大阪府枚方市の香里ヶ丘大谷ハートクリニックは、テーラーメイド治療としてその生活習慣病の原因、正しい診断方法、個々の体質に合わせた適切な治療を推進している。同クリニックの大谷肇院長に話を伺った。

Doctor’s Profile
大谷 肇(おおたに はじめ)
医療法人香里ヶ丘大谷ハートクリニック 院長・理事長

1979年に関西医科大学卒業後、同大学胸部外科へ入局。助手・講師・胸部心臓血管外科准教授、循環器内科病院教授など要職を歴任。1985年から米国Connecticut大学外科研究員、2004年より同大学心臓血管研究センター客員教授を併任。2014年に医療法人香里ヶ丘大谷ハートクリニックを開院、現在に至る。著書には『長生きしたければミトコンドリアの声を聞け』(2013年/風詠社刊)、『人はなぜがんになるのか』(2020年/同)がある。
〔学位・所属・資格〕医学博士、日本内科学会認定内科医、日本循環器学会循環器専門医、日本高血圧学会高血圧指導医・専門医、日本抗加齢医学会 専門医、日本胸部外科学会認定医、ほか。

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生活習慣病の基本と診断のポイントは?

生活習慣病とは、具体的にどんな病気を指すのでしょうか?

飽食、運動不足、喫煙といった「よくない生活習慣」に伴う肥満が原因で、糖尿病、高血圧、脂質異常症などを発症する病気をいいます。
肥満は単なる体型の問題ではなく、全身の血管や臓器が蝕まれる深刻な病気であるという認識が大事です。

生活習慣病の基本と診断のポイントは?

生活習慣病の原因は内臓脂肪にあると伺いましたが、具体的にどんなメカニズムで発症するのですか?

生活習慣病の原因は内臓脂肪の蓄積にあります。内臓脂肪は単なる脂肪組織ではなく、肥大した脂肪細胞から分泌される大量の悪玉ホルモンが血圧を上げ、糖尿病を引き起こすのです。

体型と生活習慣病には関係がありますか?

脂肪には皮下脂肪と内臓脂肪の2種類あって、女性に多い皮下脂肪型肥満(洋ナシ型)よりも、男性に多いリンゴ型の内臓脂肪型肥満の方が「悪い」肥満タイプとされています。
メタボリックシンドローム、いわゆる「メタボ」は、日本語で代謝症候群とも呼ばれ、生活習慣病に繋がる種々の代謝異常を合併しています。

高血圧や糖尿病になるときに、前兆はありますか?

初期にはまったく症状がありません。症状が出たときには、すでに相当進行しています。たとえば、糖尿病だと喉が渇いたり痩せたりする症状が出ます。これは、生命の危険を知らせる重篤な高血糖状態を示すサインです。そうなる前に、症状がない段階で治療を受けることが大切です。

健康診断の数値はどの程度信用できるものでしょうか?

健康診断の結果を鵜呑みにしてはいけません。数値の信頼性は病気によって異なります。
糖尿病に関しては、HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)が比較的信頼できます。しかし、通常の健康診断では空腹時血糖が反映されるため、食後のみ血糖が異常に上昇する「隠れ糖尿病」はなかなか発見しづらいことが問題です。実は食後高血糖値の高い糖尿病の方が、空腹時血糖値の高い糖尿病よりも心臓や血管に対するダメージが大きく、心臓病や脳卒中になりやすいことが明らかになっています。隠れ糖尿病はメタボの方に多くみられ、これを見つけるためにはブドウ糖負荷試験が必要になります。
高血圧に関しては、私は検診時の血圧をあまり重要視していません。それは検診時の血圧がその人の日内変動の中で高いのか低いのかが判断できないためです。例えば検診時の血圧が160/100mmHgであっても、それが最大瞬間血圧であれば問題ありません。
「血圧は変動する」という認識に立てば、1回だけ測った血圧値にはあまり意味がありません。検診時の血圧はあくまで参考値ととらえてください。
血圧は1日の平均血圧が重要で、その基準は130/80mmHg以下と設定されています。血圧はどんな人でも1日に20-30mmHg、体調や生活環境の変化によっては70-80mmHg以上変動しますから、高血圧の診断には24時間の平均血圧を測定することが大切です。
実際、高血圧と診断された患者さんの中に本当は高血圧でない方が多くいて、逆に高血圧でないと信じていた方が実は高血圧だったというケースが多々みられます。
高血圧ではないのに降圧剤を服用してしまうと大きな危険を伴うことがあります。安易な薬物治療を始める前に治療の必要性について高血圧専門医によく相談してください。
脂質異常に関しても、検診でのコレステロールや中性脂肪の数値はあくまでも参考値です。コレステロールや中性脂肪の数値は、採血前にどれくらいの時間絶食したのか、前日に何を食べたのかによってデータが大きく左右されます。脂質異常症を指摘されたからといって慌てて薬を飲むのではなく、生活習慣を改めてから再度測定し、その結果をみて治療を開始しても手遅れではありません。

生活習慣病の基本と診断のポイントは?

健康診断で生活習慣病を指摘された場合、どうすればいいでしょうか?

まずは、高血圧など生活習慣病を専門に扱う医療機関を受診することが大切です。自己判断でサプリメントの内服などを始めるのは危険です。また、健康診断の結果だけで「自分は健康だ」と安心せず、少しでも不安材料があれば、正確な評価を得るためにも専門医に相談することをおすすめします。

生活習慣病の治療戦略。薬に頼らない体質改善をめざす

生活習慣病の治療戦略。薬に頼らない体質改善をめざす

先生は生活習慣病に対して、どのような治療あるいは指導をしていらっしゃいますか?

まず生活習慣の改善です。食事と運動ですね。私は患者さんの病状に合わせた生活習慣の改善方法をわかりやすく指導します。
食事に関して、よく「栄養過多」という言い方を耳にすることがありますが、その表現は誤りです。正しくは糖質の摂りすぎで、「糖質過多」と言っていいかもしれません。また、カロリー摂取量が必ずしも肥満の程度とは比例しないので、今はカロリーベースで肥満への影響を云々しない時代になっています。
同じカロリーでも脂質と糖質では役割が違います。脂質は優先的に代謝されるのに対して、糖質は代謝されにくく、脂肪に変化して貯まりやすいのです。

「血圧の薬は一度飲み始めると止めることができない」という話を聞きますが、本当ですか?

「血圧の薬は一度飲み始めるとやめることができない」という風説を信じて、高血圧の治療をためらっている患者さんがたくさんおられます。これは正しくありません。血圧を下げる薬には、睡眠薬や便秘薬と違って習慣性はありません。血圧は生活習慣の改善により自然に下がることが期待できます。そうなれば、血圧の薬に頼って血圧を下げる必要はなくなるのです。
実際、徹底した生活習慣指導を行い、体重を標準体重に近づけた結果、インスリンが必要だった糖尿病が治ったり、降圧剤が中止できたりした症例を数多く経験しています。

生活習慣病の原因である内臓脂肪は治療で落ちるものですか?

内臓脂肪は落ちやすい脂肪です。その反面、つきやすい脂肪でもあります。特に男性はもともと皮下に脂肪細胞の数が少ないため、余分な脂肪が皮下に貯まらず、内臓の周りに貯まってしまいます。これが、男性に特徴的な「リンゴ型肥満」、つまり、手足は細いのにお腹周りだけが太った内臓肥満体型です。
内臓脂肪を減らすには、糖質の摂りすぎによるカロリー過多を避け、筋肉トレーニングと速歩やジョギングなどの有酸素運動を併せて行うと効果的です。筋肉は基礎代謝の70%を占めるので、筋肉を増やすと寝ている間にもたくさんの脂肪を燃焼させてくれます。

高血圧の場合、塩分制限は必要ですか?

日本人に多い食塩感受性高血圧(塩分の摂取量が多いと血圧が上がりやすいタイプ)の方は、しっかりと塩分制限が必要です。血圧の高い方は、1日6グラム以下の食塩摂取が目安とされています。汗をかく夏場や腎蔵のナトリウム保持能が減弱して低ナトリウム血症に陥る高齢者を除いて、通常1日最大6gの塩分を取っていれば塩分不足で具合が悪くなることはないといえます。

生活習慣病の治療法はどこの医療機関でも同じなのでしょうか?

生活習慣病は治療の仕方によって10年、20年後の健康状態が大きく変わってきます。ですから、生活習慣病は、ただ単に血圧や血糖値を下げればよいという病気ではありません。高血圧や糖尿病の治療薬は何十種類とありますから、病状や体質に合わせて適切に使いこなす高度な知識と豊富な経験が必要です。
生活習慣病は長く付き合わなければいけない病気です。できれば生活習慣病を専門にするかかりつけ医に診ていただくことをおすすめします。

どのような治療が理想的でしょうか?

当院では、テーラーメイド(個別化)治療を推進しています。それは高血圧や糖尿病の原因を明らかにし、その原因に応じた治療をすることです。すなわち、安易に薬物治療を継続するのではなく、まずその人にとって適切な生活習慣とは何かを指導し、必要に応じてその人に合った薬物治療を選択します。
患者さんそれぞれ個別に適切な治療計画をつくりますから、食生活の内容、運動の種類や強度、仕事や家庭での精神的、肉体的ストレスの有無、睡眠の質など、相当踏み込んだところまでお伺いしています。

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密かに進行する沈黙の病気、メタボリックドミノの恐怖と死のリスク

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生活習慣病を放置するとどうなりますか?

生活習慣病は進行すれば脳卒中、心筋梗塞やガンなど、取り返しのつかない重篤な病気に発展します。たとえば糖尿病を放置すると、年月が経つにつれて神経、視力、腎臓や心臓が蝕まれていきます。具体的には、神経症(手足のしびれなど)、網膜症(失明につながる)、腎症(最終的に透析が必要になる)などの合併症が起こります。
また、高血圧を放置すると、心臓や腎臓に負担をかけ続け、心不全や腎不全を引き起こします。
悪玉コレステロールの増加で代表される脂質異常症では、無症状のまま動脈硬化が進展し、ある日突然、心筋梗塞や脳卒中を引き起こします。
生活習慣病はメタボリックドミノと呼ばれ、引き金となる内臓肥満の杯が倒れると、高血圧、糖尿病、脂質異常症の杯が次々と倒れ、これらは互いに連鎖しながら脳卒中や心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症の杯を倒し、最終的には認知症、半身不随、下肢切断、心不全、腎不全、そしてついには死の杯を倒すことになる「サイレント・キラー」です。

血圧を少し下げるだけでも効果があるのですか?

最も信頼できる大規模臨床試験の結果では、血圧をわずか4mmHg下げるだけで、心筋梗塞や脳卒中による死亡率が減少することがわかっています。収縮期血圧を概ね130mmHg以下、拡張期血圧を80mmHg以下に保つことは、これらの重篤な病気を予防するうえで重要です。

密かに進行する沈黙の病気、メタボリックドミノの恐怖と死のリスク

生活習慣病と長く付き合っていくためには、どのような医療機関を受診すべきでしょうか?

内科の中でも、特に生活習慣病を専門にしているクリニックをおすすめします。生活習慣病は一生付き合っていかなければならない病気であり、正しい治療が行われるか否かによって、その人の寿命や生活の質が大きく変わります。
また、生活習慣病は心臓の病気を合併することも多いので、できれば循環器疾患にも精通した医師に診てもらうのがいいでしょう。

最後にこのサイトを訪れている方にメッセージをお願いします

生活習慣病は、好ましくない生活習慣によって引き起こされ、放置すれば脳卒中や心筋梗塞といった重篤な合併症に繋がる「サイレント・キラー」です。
生活習慣病は専門医による正しい診断と個々の体質に合わせたテーラーメイド治療によって、薬に頼らない体質作りを目指すことから始まります。
生活習慣病について何かお悩みがありましたら、遠慮なくご相談いただきたいと思います。

編集部まとめ

大谷先生は、長年の経験と豊富な知識に裏打ちされた言葉の一つひとつに重みがあり、かつ平易な言葉を選んでインタビューに臨んでくださいました。特に力を込めて語ってくださったのが、血圧のこと。血圧は1日で20-30mmHg、体調によっては70-80mmHgも変動するといい、そのため健康診断で1回しか測定されない数値はほぼ信用できないのだそうです。このことは、多くの方にぜひ知っておいていただきたい情報です。そんな踏み込んだお話ができるのも、これまで多くの患者さんの回復を助けてきた実績があるからこそと感じました。

香里ヶ丘大谷ハートクリニック

医院名

香里ヶ丘大谷ハートクリニック

診療内容

生活習慣病治療 循環器内科 一般内科 など

所在地

大阪府枚方市香里ケ丘6丁目8番

アクセス

京阪本線「枚方公園」駅より車で4分
京阪バス「香里ヶ丘6丁目」バス停留所より徒歩1分

この記事の監修医師