目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. ドクターインタビュー
  3. どんなお産も“自信”につながる――大切にしたい妊娠・出産のサポート【大阪市平野区 れんげ会グループ 浜田病院】

どんなお産も“自信”につながる――大切にしたい妊娠・出産のサポート【大阪市平野区 れんげ会グループ 浜田病院】

 公開日:2025/07/31
どんなお産も“自信”につながる――大切にしたい妊娠・出産のサポート どんなお産も“自信”につながる――大切にしたい妊娠・出産のサポート

命の誕生に寄り添い続ける医師の視点から、妊娠・出産を「人生の自信」に変えるためのヒントが見えてくる。大阪市平野区のれんげ会グループ 浜田病院は、地域に根ざし、家族をまるごと支える出産医療を実践。同院の室谷毅院長に、近年関心が高まっている無痛分娩や、妊婦が抱える不安、そして産婦人科医として大切にしている信念についてお話を伺った。

Doctor’s Profile 室谷 毅 れんげ会グループ 浜田病院 院長
京都府立医科大学卒業後、大阪府立急性期総合医療センターに勤務。ベルランド総合病院、オーク住吉産婦人科に勤務。PL病院、聖バルナバ病院でも非常勤医師として研鑽を重ね、2019年に小川産婦人科を継承。2024年にれんげ会グループ代表就任、医療法人愛賛会浜田病院を継承。 日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医、母体保護法指定医、日本周産期・新生児医学会所属、日本生殖医学会所属、日本周産期・新生児医学会新生児蘇生法専門コースインストラクター、日本母体救命システム普及協議会(J-CIMELS)認定ベーシックコースインストラクター、日本産婦人科学会認定ヘルスケアドバイザー、厚生労働省 緩和ケア研修 修了。

痛みと不安に向き合うために。無痛分娩という選択肢

出産は大きな喜びであると同時に不安もあるかと思います。妊婦さんはどのようなことに悩まれていますか?

特に初産の方は、出産の痛みに対して漠然とした不安を抱いている方が多いです。 「何とかなる」と楽観的な方もいれば、初めから無痛分娩を希望される方もいます。当院では経産婦さんの無痛分娩が中心です。安全第一を考え、体制を整えています。 ほかには、出産後の生活に関する不安を口にされる方も多いですね。妊娠や出産はお母さんの身体に起こることですが、その後の育児生活は一人でできるものではありません。私たちは、そうした心配ごとにも寄り添いながらサポートすることを大切にしています。

痛みと不安に向き合うために。無痛分娩という選択肢

無痛分娩とは、どのようにして痛みを和らげるのですか?

無痛分娩は、腰のあたりにある「硬膜外腔(こうまくがいくう)」という部分に麻酔のカテーテル(細いチューブ)を挿入し、そこから麻酔薬を投与して痛みを和らげる方法です。お産の進行に合わせて麻酔の量を調整しながら、できるだけ身体への負担を軽くしていきます。 出産の痛みは、最初は子宮の収縮、つまり「陣痛」から始まります。その後、赤ちゃんが下がってくるにつれて、骨盤が広がる痛みや、お尻・腰のあたりの圧迫感などに変化していきます。特に赤ちゃんの「回旋異常(※)」がある場合などは、腰や背中の痛みが非常に強く出るケースもあります。 無痛分娩は、そうした一連の痛みをすべて取り除くというよりは、「緩和」する手段です。中には「まったく痛くなかった」とおっしゃる方もいますし、“和痛(わつう)”といって、痛みが和らいで無事出産できた方もいます。 ※回旋異常:赤ちゃんが骨盤の中をうまく回りながら下りてこられない状態のこと。

麻酔による妊婦さんの体への影響についてはどうでしょうか?

もちろん、麻酔を強くすればより痛みを感じにくくはなりますが、そのぶん麻酔の影響で足が動かしづらくなったり、血圧が低下したり、呼吸への影響が出たりなどのリスクも伴います。ですので、完全な無痛ではなく、お母さんの状態を見ながら「ちょうどいいバランス」で調整することがとても大切です。 痛みがあまりに強くて体力を消耗し、分娩が長引いてしまうと、気力が低下することもあるのでオンデマンドの無痛に切り替える事もあります。特に経産婦さんは、前回との違いがよくわかるようで、無痛分娩への満足度も高いですね。

痛みと不安に向き合うために。無痛分娩という選択肢

無痛分娩を避けたほうがよいケースもあるのでしょうか?

いくつかあります。たとえば、麻酔のチューブを挿入する際に、BMIが30を超えている方や、背中に側弯症がある方は技術的に難しくなります。不可能ではないですが、リスクが高くなるため慎重な判断が必要です。 また、血液が固まりにくい体質など特殊なケースに該当する方には無痛分娩は向かないこともあります。 もちろん、痛みがあっても自然分娩を望まれる方もいらっしゃいますし、それはそれで素晴らしい選択です。どんな出産であっても大切なのは、赤ちゃんが無事に生まれてきて、お母さんが元気でいることです。

出産を「家族ごと」支える医療を

出産を「家族ごと」支える医療を

妊娠中から産後まで、貴院ではどのような流れで診療が進んでいくのでしょうか?

妊娠がわかれば、まずは妊婦健診からスタートします。妊娠・出産に向けては「歩ける体力」と「支える筋力」がとても大切です。軽いスクワットは骨盤を開くためにも有効ですし、歩く習慣も体力づくりに役立ちます。 また、適度な運動は体重のコントロールにもつながります。やはりBMIが上がれば上がるほど、妊娠・出産のリスクは高まってしまいます。

やはり、少しはダイエットしておいたほうがよいですか?

「ダイエットしてください」という話ではなく、あくまでリスクを上げないために“適切な体重を守る”ことが重要です。 もちろん、食事も大切です。栄養バランスを意識した食生活は、妊娠・出産だけでなく、産後の回復や母乳にも大きく関わってきます。当院では栄養士による栄養指導もあり、体づくりのお手伝いをしています。 産後は母子同室で赤ちゃんとの生活に備えていきます。お世話の仕方や母乳育児の相談なども、助産師が個別に対応します。赤ちゃんとの暮らしのためにも、妊娠中からしっかり身体を整えていきましょう。

院内設備がとても充実していると伺いました

4人の医師による4診体制で外来診察を行っています。(2025年6月時点)専門の検査技師が在籍しているので、毎日エコー検査ができる体制を整えています。赤ちゃんのかわいいお顔もばっちり見ていただけますよ。 当院は小児科医が在籍しているので、予防接種や後期検診(生後9~11カ月対象)も行っております。産後ケアにも力を入れていて、大阪市内では珍しいエンゼルルーム(6室)では、赤ちゃんと一緒にご家族で宿泊することもできます。

貴院は、産後ケア実施施設でもあるのですね

大阪市、八尾市、松原市、羽曳野市、藤井寺市、東大阪市、柏原市の産後ケア実施施設です。産後2カ月までの赤ちゃんを対象に、1泊2日のショートステイ、朝から夕方までのデイケア、そして助産師による訪問ケアを行っています。 出産後は睡眠時間がなかなか取れなかったり、不安や疲れが重なったりしますので、「少しでもお母さんが休めるように」という想いで取り組んでいます。

まさに「全員で赤ちゃんを迎える場所」という印象です

そうですね。昼間はカフェとしても利用できるレストランでは、お祝いディナーをご家族と一緒に楽しんでいただくこともできます。お部屋は基本的に個室ですが、ニーズに応じて総室も選べます。現在、総室は半個室への改装を進めているところです。産後のご褒美として、アロマルームなども用意しています。 助産師外来では、母乳育児のサポートや妊娠中の生活指導を行い、必要な方には産前・産後の支援方法を一緒に考えています。さらに、月に1回精神科医も来院し、産前・産後のメンタルに関する悩みなどをフォローできる体制を整えるなど、多職種連携で産後までしっかりサポートしています。

出産を「家族ごと」支える医療を

妊娠・出産を「人生の自信」にしてほしい

妊娠・出産を「人生の自信」にしてほしい

妊娠・出産において、最も大切なことは何だとお考えですか?

やはり「助けてもらう力」ですね。周囲に助けを求められるかどうかで、その後の心の健康が大きく変わります。自分の中で抱え込まず、支援を素直に受け取る勇気を持ってほしいと思っています。 お母さんにとって「助けてもらうこと」「支援を受けること」は本当に大切だと思うんです。旦那さんやご実家、義実家など、人によって頼れるところはさまざまですし、ご友人でもいい。もちろん、私たち医療者でも構いません。本音が出せないと、心がしんどくなってしまいますからね。 とにかく「持っているリソースは全部使う!」くらいの気持ちでいてほしい。赤ちゃんのためにも、ご自身のためにも、それが大事だと思っています。私たちもできる限りのことはやりたいと思っているので、要望があればどんどん聞かせてほしいですね。

先生はなぜ産婦人科医を志したのでしょうか?

「育つこと」に携わりたいと思ったんです。赤ちゃんだけでなく、スタッフも患者さんも、ここで育っていける場所・自信をつけられる場所をつくりたいと。妊娠・出産を通して「自分なら大丈夫」という確信をもってもらう。それが何よりの目標です。そして、そのためには医療の技術だけでなく、信頼関係や寄り添う姿勢が欠かせません。

一人の医療者として、先生が現在心がけていることは何ですか?

私たち医療者にとって大切なのは、相手のニーズをきちんとつかめるかどうかです。なかなか本音を言えない方も多いので、ちょっとした表情の変化や言葉から「何か言いたいことがあるんじゃないかな」と気づけるようにしています。 そして「ここなら話してみようかな」と思ってもらえるような雰囲気をつくること。これは本当に大切ですね。 また、当たり前のことですが、母子2人の安全をしっかり守ること。これは産科医として最も大切にしている使命です。常にリスクを見極めながら、必要な措置を冷静に判断し、安心して出産に臨んでいただけるよう努めています。

似た質問になりますが、先生が今後目指していることがあれば教えてください

産婦人科、特に産科というのは、ほかの診療科と違って、常に目覚ましい新技術が登場するような分野ではありません。だからこそ、医療の質を高めていくのは「人」なんです。人格とスキル、両方をしっかり育てていくことが、現場にとって何より大切だと感じています。 そこで私が目指しているのは、「人が育つ場所」をつくるということ。豊かな人材が育つ、その土壌をつくることが私の役割だと思っています。患者さんにもスタッフにも、ここでの経験を通して、より豊かな人生を送ってもらいたい。そう願っています。 とくにお母さんには、自信を持って育児に臨んでいただきたいんです。どんな出産であろうが、母乳育児であろうがなかろうが、一生懸命に赤ちゃんを産み、育てているお母さんが、自分に誇りを持って人生を歩んでいけるように。そのためのお手伝いをするのが、私たちの役割だと思っています。

妊娠・出産を「人生の自信」にしてほしい

貴院で出産する際、費用はどのくらいですか?

おおよそですが、普通分娩は総室利用で50~60万円、個室の場合は60万円強、エンゼルルーム使用時で75万といったところです。無痛分娩は、普通分娩の費用に加えて13万円です。

最後に読者へのメッセージがあればお願いします

妊娠・出産・産後は、決して一人で乗り越えるものではありません。支えてくれる人に素直に頼ること。そして悩んだときは、ためらわず声をあげてください。私たちはその声に応えたいと思っています。 妊娠・出産・産後を通じて、「私ならできる」と思える体験にしていきましょう。どんな形の育児であっても、自信をもって歩んでいけるよう、私たちはこれからも寄り添い続けたいと思っています。

編集部まとめ

室谷先生のお話を通じて、「出産はゴールではなく、自信を育むスタート地点」なのだと感じました。赤ちゃんの誕生を、家族全員で支え合い、乗り越える。その過程に寄り添う病院があることは、妊婦さんにとって何よりの安心です。 「どんなお産でもいい、大切なのは母子ともに元気なこと」。このメッセージが、妊娠・出産に悩む方の背中をそっと押してくれることでしょう。

れんげ会グループ浜田病院

医院名

れんげ会グループ浜田病院

診療内容

産科 婦人科 小児科 など

所在地

大阪府大阪市平野区瓜破1-6-9

アクセス

大阪メトロ谷町線「喜連瓜破」駅より徒歩6分

この記事の監修医師