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我慢しているのは「痛み」だけ? 一人ひとりの頭痛に応じた治療が「あきらめない毎日」を取り戻す【奈良県奈良市 せいかクリニック】

 更新日:2023/10/11

我慢しているのは「痛み」だけ?
一人ひとりの頭痛に応じた治療が「あきらめない毎日」を取り戻す
我慢しているのは「痛み」だけ?
一人ひとりの頭痛に応じた治療が「あきらめない毎日」を取り戻す

「頭痛持ち」という言葉が一般に使われるように、頭痛は私たちにとって非常に身近な症状。痛みがありながら我慢している人もいれば、市販薬で凌ぐ人もいる。「医師に相談した方が安心」と頭でわかっていても、何となく放置してしまいがちな頭痛に、私たちはどう対応すればいいのだろうか。奈良県奈良市で頭痛治療に力を入れる「せいかクリニック」の中村聖香院長に詳しい話を伺った。

Doctor’s Profile
中村 聖香
医療法人慈友会 せいかクリニック 院長

2002年、関西医科大学医学部卒業後、関西医科大学附属病院内科研修医、住友病院総合診療科、田附興風会北野病院神経内科を経て、関西医科大学神経内科大学院博士課程入学。同大学医学研究科にて博士号取得。大阪市立総合医療センターで神経内科医長を務め、2013年に「せいかクリニック」開院。日本内科学会総合内科専門医、日本神経学会認定神経内科専門医、日本抗加齢医学会専門医、NRサプリメントアドバイザー。「診察のときには、患者さんとの対話時間を長く」を診療方針とし、頭痛治療だけでなく神経難病、一般内科疾患にも幅広く対応する。

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症状をコントロールするために必要なのは、頭痛のタイプに応じた治療

頭痛でお悩みの方は、よくご相談に来られますか?

はい。20~50代くらいの、身体が元気な働き盛りの年代の方がよくいらっしゃいます。「実はうちの子どもも……」と、お子さんの頭痛のご相談をいただくこともあります。

症状をコントロールするために必要なのは、頭痛のタイプに応じた治療

受診される方は、「どれくらいの強さの頭痛」でお悩みなのでしょうか?

ごく軽いものから、仕事や勉強に支障が出ている、あるいは寝込んでしまうほど痛むというものまで、さまざまです。患者さんのライフスタイルや性格によって、受診のタイミングには差があるようです。「市販薬が効かなくなった」という方もいらっしゃいます。

寝込んでしまうほど痛いのは心配ですね。頭痛がある場合、重大な病気も疑われるのでしょうか?

頭痛を伴う重大な病気には、くも膜下出血、頭蓋内出血、脳静脈血栓症、髄膜炎・脳炎、脳動脈解離などがあります。これら、他の原因によって引き起こされる頭痛を「二次性頭痛」といいますが、必ずしも強い頭痛とは限りません。反対に、ほかに原因がなく頭痛をくり返す「一次性頭痛」でも、寝込んでしまうほど辛いことがあります。

クリニックで行う頭痛治療となると、一次性頭痛の治療が中心となるのでしょうか?

はい。二次性頭痛が疑われる場合には、CTやMRIなどを用いた精密検査、治療が受けられる病院を紹介しています。クリニックでは、片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛といった一次性頭痛の診療が中心となりますね。

一次性頭痛にもいろいろと種類があるんですね。ではまず、「片頭痛」の特徴を教えていただけますか?

「片頭痛」は女性に多い頭痛です。多くは脈打つようにズキンズキンと痛み、頭を動かしたときにその痛みが強くなります。頭の左右どちらかが痛むケースが60%を占めますが、残りの40%は両側で痛みが出ます。片頭痛は近年になり、そのメカニズムが解明されつつあります。

片頭痛は、特に「我慢するしかない」「治りにくい頭痛」というイメージがあります。どのような仕組みで発生するのでしょうか?

何らかの刺激により三叉神経から「CGRP」「サブスタンスP」といった神経伝達物質が遊離され、神経で炎症が起こることで、痛みが発生すると考えられます。これを受けて、CGRP関連の予防薬が2021年に認可されました。月に一度の投与(内服・注射)で、片頭痛発作を高度に予防することが可能です。

それは大きな魅力ですね。頻繁な通院が必要なくなれば、患者さんのQOLも保たれます

ただ、CGRP関連予防薬は保険診療として使用できるものの、窓口での負担は小さくありません。3割負担の方で、月あたりの負担額が1万円を超えます。継続することが大切ですので、当院では従来のご負担額が月あたり数千円程度の予防薬と比較しながら、一人ひとりに合ったお薬を選択していただいています。

次に、「緊張型頭痛」はどうでしょうか?

「緊張型頭痛」では、頭から首、背中の筋肉のコリ・張りによって神経が刺激されることで、後頭部や頭全体が締め付けられるような痛みが出ます。ストレス、不良姿勢や長時間のデスクワーク、運動不足などが誘因となります。

緊張型頭痛の治療では、どのようなことが行われますか?

非ステロイド系消炎鎮痛薬、筋弛緩薬、また場合によっては予防薬を使用します。また、ストレスの除去や生活習慣の改善も重要になります。ライフスタイルに応じて、細やかなアドバイスをさせていただきます。

では、3つめの「群発頭痛」について教えてください。こちらは聞き馴染みがないのですが…

片頭痛、緊張型頭痛と比べると稀です。男性に多く、数週間から数カ月にわたり、頭の片側の目の奥に強い痛みが決まった時間に群発します。はっきりとした原因はわかっていませんが、視床下部が何らかの刺激を受け、頭部にある三叉神経が痛むことで頭痛になると考えられています。

どのような治療が行われますか?

急性期の治療、頓挫薬としてはスマトリプタンの皮下注射や酸素吸入が行われます。群発期はそれだけでは不十分でベラパミルの内服など予防療法が必須です。

症状をコントロールするために必要なのは、頭痛のタイプに応じた治療

私たちは「頭痛」とひとまとめにしてしまいがちですが、頭痛の種類によってこんなにも治療法が違っているんですね

はい。医師による正しい診断、そして適切な治療が行われれば、頭痛を改善・解消することが可能です。もちろん、病気に起因する二次性頭痛の可能性を考慮しながらの診療となりますので、そういった意味でも医師に相談するのが安心です。

一次性頭痛の多くは問診を細やかに行うことで診断可能

一次性頭痛の多くは問診を細やかに行うことで診断可能

片頭痛などの一次性頭痛と、重大な疾患を原因とする二次性頭痛とを見分けるポイントはありますか?

これまでの頭痛と明らかに違う頭痛、経験したことのない突然の強い頭痛、嘔吐を伴う頭痛、感染症や外傷に伴う頭痛などは、重大な病気が疑われます。早急な受診、場合によっては救急外来の受診が必要です。その他、今まで繰り返されてきた頭痛の強さや頻度が増したときも、必ず受診するようにしてください。

一次性頭痛にも、片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛といった種類があります。その診断には、何か特別な検査が必要なのでしょうか?

多くは、問診のみで診断が可能です。ただその問診は、時間をかけて丁寧に行うことが大切になります。どこにどんな痛みがあるのか、いつから痛みが出たのか、繰り返される場合にはその頻度、他の症状の有無、あるいは光や音に対する過敏性など、さまざまな質問をさせていただきます。

丁寧な問診があるから、頭痛の正確な診断が可能になるのですね。診察ではほかにどのようなことを行いますか?

当院では問診に加え、神経学的検査に重きを置いています。顔や手足の動きを観察し、神経学的所見を得ることで、より細やかな診断が可能になります。ほかには必要に応じて血液検査をおすすめすることがあります。

「頭痛」の診断だからといって、いきなりCT検査やMRI検査が必要になるわけではないのですね

はい。ただそのためには、問診で患者さんの「言葉」を上手に受け止めることが不可欠です。患者さんは思ったとおりに症状をお話しいただければそれで十分なのですが、私から質問を重ねたり、「こういうことですか?」と確認したりして、“言葉の壁”を乗り越えていきます。

同じ日本語を使っていても、症状の感じ方・言語化には個人差がありますよね。医師側のそういった意識は、通院中も継続して大切になりそうです

初診で医師が「すべてわかったつもり」になるのは危険です。通院の都度、症状の変化や薬の効果を確認する中で、新たに気づいたことを教えてもらい、それが診断・治療に役立つということも往々にしてあります。

医療機関で頭痛治療を受けて、いずれ薬や通院が必要なくなるということはありますか?

個人差があるため一概には言えませんが、片頭痛などの一次性頭痛がまったくなくなる、ということもあります。ただ、基本的には“長く付き合っていく症状”と考える必要があります。その中でも、放置して悪化してしまった頭痛、頭痛薬の使い過ぎによる薬物乱用頭痛については、治療期間が長くなる傾向があります。

響きが少し怖いですが、「薬物乱用頭痛」とは、どんなものでしょうか?

頭痛薬を飲む回数が増えることで、脳が痛みに対して敏感になり、悪化した頭痛を指します。頭痛が悪化するため、さらに頭痛薬を飲む回数が増えるという悪循環に陥りがちです。医師の指示や管理が受けられない、市販の頭痛薬を使用している方に起こりやすい頭痛です。

確かに、処方薬と比べると、市販薬の使い方はルーズになってしまいそうです。市販薬は、使わないほうがいいのでしょうか?

市販薬を使うのが駄目、というわけではありません。ただ、重大疾患を早期発見したり、一次性頭痛をより確実にコントロールしたい・予防したい、将来的な薬からの卒業を目指すのであれば、やはり医療機関を受診して、薬物療法をはじめとする正しい治療を受けることをおすすめします。

頭痛を我慢する、あきらめることを当たり前にしない。まずは相談を

頭痛を我慢する、あきらめることを当たり前にしない。まずは相談を

「頭痛の背景にこわい病気があるかもしれない」という認識は、以前より高まっているように感じます。しかし依然、頭痛を我慢する人、市販薬に頼り切ってしまう人がいるのはなぜでしょうか?

頭痛が非常に身近な症状であることに加え、日本人の性質も関係しているかもしれません。「まわりに迷惑をかけたくない」「医師に診てもらうほどではない」という意識が、どこかで働いているような気がします。

確かに日本では、「我慢強さ」が美徳として捉えられる面があります

頭痛を我慢している人、頻繁に市販薬を使っている人は、痛みだけが辛いわけではないはずです。頭痛の不安からやりたいことをあきらめたり、予定を変更せざるを得なかったりと、日常生活中でさまざまな“辛さ”を感じているはずです。

そういった面に目を向け、自分を労わることが、現代では特に大切になりそうです

我慢によって疲れやストレスが溜まり、頭痛を悪化させるということもあります。ですから、少しでも「我慢をしている」と思うのであれば、市販薬の使用の有無に関係なく、ご相談いただければと思います。

では、片頭痛などの一次性頭痛の治療を受けるにあたり、どのようなクリニック・病院に相談すればよいでしょうか

クリニックにせよ、大きな病院にせよ、「頭痛治療」「頭痛外来」をホームページなどに掲げている医療機関に相談されることをおすすめします。先述のとおり、問診、通院中のコミュニケーションが正確な診断と適切な治療に不可欠です。話をよく聞いてくれるか、“言葉の壁”を乗り越えようとしてくれる医師であるかどうかも、判断基準のひとつになると思います。

いきなり大きな病院に相談する、という方法もあるかと思いますが、いかがでしょうか?

CT検査やMRI検査をはじめ、さまざまな検査が受けられるので、それもひとつの方法です。ただ、頭痛治療の大半は一次性頭痛のコントロールで、一般に長く医師と、そして頭痛と付き合っていくことになります。まずは信頼できるクリニックを見つけておく方が安心かもしれません。

頭痛を我慢する、あきらめることを当たり前にしない。まずは相談を

先生は、脳神経内科専門医でいらっしゃいます。専門医ならではの診療の特徴というものはありますか?

片頭痛、脳梗塞、アルツハイマー病、パーキンソン病など、脳神経内科に関わる病気は、外見ではわからないことがあります。神経学的知見をもとに、患者さんご本人が気にも留めないような些細なことについて詳しく話を伺ったり、神経学的検査を行ったりといったことが、より正確な診断につながると考えます。

最後に読者の皆様にメッセージをお願いします

お話をする中で「頭痛によって自分はこんなに我慢していたんだ」「頭痛のせいでこれだけ損をしていたんだ」と患者さんが初めて気づくということが少なくありません。まずは頭痛を治すというよりも、頭痛との付き合い方を相談するくらいの軽い気持ちで受診していただければと思います。今まであきらめていたことが、あきらめずに済むようになるかもしれませんよ。

編集部まとめ

忙しい毎日の中で、頭痛はややもすれば後回しにしてしまいがちな症状です。しかし軽度のものであっても、小さな不安やストレスとなってQOLに影響することがあります。中村先生の「痛みだけが辛いわけではないはず」という言葉がとても印象に残りました。「頭痛で何かを我慢している」「あきらめている」と感じている人は、一度相談してみはいかがでしょうか。

せいかクリニック

医院名

せいかクリニック

診療内容

頭痛治療 脳神経内科 整形外科 一般内科 など

所在地

奈良県奈良市藤ノ木台3-2-12

アクセス

奈良交通バス「藤ノ木台1丁目」バス停留所より徒歩3分
近鉄奈良線「学園前」駅より車で5分

この記事の監修医師