一人ひとりに合った予防法を目指して【神戸市 おかもと歯科医院】
近年、「予防治療」への意識が高まりつつある。むし歯や歯周病の予防を通じ、自分の歯をしっかり維持していくことは、将来にわたるQOLの点でも重要なポイント。そのために推奨されているのが定期検診だが、一般的に歯科医院には、未だに「歯が痛くなったら行くところ」というイメージがある。口腔内の健康を守るため、今回は神戸市の【おかもと歯科医院】の岡本院長、小児歯科担当の村上先生に、予防治療に対する考えと、私たちはどんな意識を持つべきかをお話しいただいた。
岡本守人
おかもと歯科医院 院長
大阪大学歯学部卒業後、大阪市や神戸市内の歯科医院勤務を経て、平成24年、神戸市に「おかもと歯科医院」を開業。
村上裕朗
おかもと歯科医院 副院長
大阪大学歯学部卒業後、大阪大学歯学部小児歯科に入局。小児歯科担当の非常勤医としておかもと歯科医院に勤務。
一人ひとりに合った予防方法を見極めながら対策を
HPを拝見いたしますと、歯を大切にしてほしいとの先生の思いが伝わってまいります
【岡本先生】
いくつかの医院で勤務させていただいたのですが、医院の規模が大きい場合、どうしても一人の患者さんに対して継続的に担当することが難しい状況でもありました。そんな経験から、自費治療を含めて患者さんと一緒に治療方針をじっくり話し合える歯科医院をつくりたくて当院を開業しました。
今の子どもたちは唾液が少なくなっていると聞きますが、唾液が出ないことによる不都合は?
【岡本先生】
唾液には食べ物を洗い流し、細菌の増殖を抑制し、酸を中和し、歯の再石灰化を促します。また抗菌作用もあります。むし歯の原因になる菌の餌となる歯の汚れや、菌そのものを押し流すことでむし歯になりにくい口内環境ができるので、分泌量が少ないのはやはり不利になります。
【村上先生】
とくに乳幼児期に唾液が少ないと、むし歯の原因菌が繁殖しやすい環境ができてしまう恐れがあります。永久歯が生えてくる時点で、お口の中に菌がたくさんいる状態になるので、永久歯へのむし歯リスクも高くなるといえます。
親御さん自身が歯についての知識を身につけることも重要ですね
【村上先生】
むし歯にならないように食事、とくにおやつの食べ方には気をつけてあげてほしいところです。あまり神経質になる必要はありませんが、おやつは時間を決めて、甘いものやジュースをダラダラと食べさせないようにしてください。
【岡本先生】
お子さんだけでは、食事の管理や正しいブラッシングの実践は難しいと思います。ですから、そこは親御さんがしっかり気をつけてあげてほしいところです。歯並びや噛み方のクセなどには個人差があるので、点検と予防のためにも私たち歯科医が定期的に診ていく必要があると思います。
ブラッシングについて正しいやり方を教えてもらっても、それを継続するのはなかなか難しいのではないかと感じます
【岡本先生】
大人にも子どもにも同じことがいえますが、ブラッシングを含め、予防には一人ひとりに合った方法があります。そういったところを見極めながら予防対策を行うためにも、歯科医院には定期的に通ってもらいたいと思います。
人によってリスクはさまざま。生活習慣を把握しその人に合った予防を
予防治療に対する海外の意識はどう感じられますか?
【岡本先生】
海外では、日本のような保険制度がないので、むし歯ができると高額な医療費がかかってしまう場合があります。ですから、むし歯にならないよう予防メンテナンスに力を入れている人が多いと思います。
しかし最近では、日本においても予防治療に対する意識が高まっていると感じています。実際、当院にも定期的にメンテナンスに訪れる人は増えてきています。
歯石は「細菌の温床」といわれていますね。歯石とはそもそもどういうものでしょうか?
【岡本先生】
歯石は、唾液中のカルシウムやリン酸成分などによって、プラークが石灰化して歯に沈着したものです。きちんと歯磨きできていないと、歯と歯の間や、歯と歯茎の間に少しずつ溜まっていって、やがて固まってしまうんです。
歯石をつくらないためには、歯科医院で受けられるプロフェッショナルケアも大切ですが、やはり日常のセルフケアが重要だと考えています。具体的には患者さんの歯並びに合ったブラッシング、フロスの使用、また、歯周病などで歯茎が痩せて歯に隙間ができている場合などには、歯間ブラシを使ってケアすることも重要です。
年齢によっても歯の予防の仕方は変わってくるのでしょうか?
【岡本先生】
年齢というより、それぞれの生活習慣などで変わります。たとえば、お仕事で夜勤などがある場合、食事や歯磨きのタイミングはもちろん、生活リズムが不規則になりがちですよね。そうすると、どうしても些細なストレスが重なってくると思います。
また生活習慣だけでなく、日常の変化でも歯に大きな影響を与えることがあります。
例として、私がずっと診ている患者さんから、突然奥歯が痛み出したと相談を受けたんです。いろいろとお話を伺う中で、お子さんの不登校が始まった頃から徐々に歯が痛み出したことがわかりました。定期的に診ているからこそ気づける異変があるという例ですね。
【村上先生】
お子さんについては、乳歯のうちにフッ素塗布を行うなど、むし歯予防に努めてほしいと思います。乳歯のむし歯は永久歯の歯並びにも影響してきますから。また、ブラッシングの際にはフロスを使うことも習慣づけてください。
患者さんとの信頼関係、これこそが最大のメンテナンス
お口のメンテナンスには、どのくらいのペースで通うのが理想ですか?
【岡本先生】
3カ月に1回が理想的なペースです。お口の状態によってはもう少し頻繁に来てもらう場合もありますが、そのあたりの見極めのためにも、3カ月に1回、自覚症状がなくても通ってほしいと思います。
【村上先生】
お子さんの場合も同じく、3カ月に1回が理想的なペースです。
予防に対する意識を高めるために、貴院では患者さんにどのようなアプローチを行っていますか?
【岡本先生】
まずは患者さんの訴えに対してきちんと対応することを大切にしています。私たちとしてはお口の中を総合的に見て、問題があればそこをしっかりと治し、その先の予防まで考えて治療に臨めたらと思うのですが、そうしてしまうと「ここが痛いと言っているのに、違うところから治療する」と、なかには不信感を抱かれる方もいらっしゃいます。
もちろん、その理由はきちんと説明するのですが、まずは患者さんの要望を聞きながら信頼関係を築き、そのあとに予防・メンテナンスを呼びかけていくようにしています。
それではあらためて、貴院での予防・メンテナンスの流れについて教えてください
【岡本先生】
初回は患者さんの訴えに対応することを考えながら、レントゲンなどで口腔内の問題を把握し、治療を行います。
その後、むし歯予防やメンテナンスについて患者さんと話し合いながら方針を決めていきます。
特徴的な機材や機器があれば教えてください
【岡本先生】
より詳細に歯の状態を見ることができるCTを導入しています。従来のレントゲンと比べ、三次元で歯と顎の骨の立体的な形態や神経の状態などがわかるので、より精度の高い診察が可能になります。また、Surgitelという拡大鏡を使って、口腔内の小さな異変にも対応できるようにしています。
このような機材や機器も大切ですが、小児歯科の先生や経験豊富な衛生士さんが在籍していることも当院の強みだと考えています。
また、一人ひとりの患者さんへの対応として、治療内容に合わせて診療時間は長めにとるようにしています。
最後に読者へのメッセージがあればお願いします
【村上先生】
末長く健康をサポートできるよう、当院ではチームで取り組んでいます。お口のトラブルはひどくなるとその後の治療が大変なので、「ちょっとおかしいな」と感じたら、すぐに相談しにきてください。予防とともに、早期発見・早期治療もお口の健康を維持する上でとても大切なポイントです。
【岡本先生】
歯に限らず健康というものは、放っておいて維持できるものではありません。とりわけ歯は、治療も予防もダイレクトにアプローチしやすく、わかりやすく結果が出ます。歯がなくても生きていくことはできますが、自分の歯で噛める喜びや、見た目の若々しさといったQOL向上のためにも、歯を大切にしてほしいと思います。
編集部まとめ
「患者さんとの信頼関係を築きたい」と話す岡本院長。「自分の歯で噛めることの喜びを大切にしてほしい」「歯がなくなることで自信を失ってほしくない」と語ってくださいました。院長をはじめ、小児歯科を専門的に診ておられる村上先生や衛生士の皆さんから感じたのは「安心して定期的に通ってほしい」という歯科予防に対する想い。ついつい足が遠のきがちな歯科医院ですが、健康で心豊かな人生を送るためにも、ぜひ定期的に検診に通いたいと思えるお話でした。
医院名
おかもと歯科医院
診療内容
予防治療 歯科一般 小児歯科 歯周病治療 など
所在地
兵庫県神戸市灘区水道筋6-4-1
アクシスカナエI
アクセス
阪急神戸本線「王子公園」駅より徒歩3分
JR神戸線「灘」駅より徒歩6分
阪神本線「岩屋」駅より徒歩8分
阪神本線「西灘」駅より徒歩8分