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自宅で安らかに最期を迎える、在宅医療という選択【広島県廿日市市 医療法人P.H.E きむら内科小児科医院】

公開日:2022/11/21

自宅で安らかに最期を迎える、在宅医療という選択
自宅で安らかに最期を迎える、在宅医療という選択

コロナ禍で露呈したことのひとつに、病院の受け入れ体制の限界があった。一方で、主に病気や障がいなどで通院が困難な人が利用している「在宅医療」という選択肢については、意外と知られていない。また、病院ではなく自宅で最期を迎えたいと望んでいる人が、実は多いことも看過されている。在宅医療を受けるためにはどうしたらいいのか、現状はどうなのか。長く在宅医療に携わる「きむら内科小児科医院」の木村理事長に話を伺った。

Doctor’s Profile
木村 真大
医療法人P.H.E 理事長

福岡のこどもクリニック、東京の内科医院での勤務を経て、2021年地元である廿日市に帰郷。医療をとおして地域貢献を目指し、この先、在宅医療が歩む未来へ向けたシステムづくりを率先して行う。
日本内科学会、日本外来小児科学会、日本消化器内視鏡学会、日本アレルギー学会、日本褥瘡学会、日本プライマリ・ケア連合学会にそれぞれ所属。資格は認定内科医、総合内科専門医、プライマリ・ケア認定医、日本在宅医療連合学会認定専門医。

目次 -INDEX-

進化を続けている在宅医療

在宅医療のニーズについて、先生は今どのように感じていらっしゃいますか?

当院が成人在宅医療を始めたのは2000年です。その後、2021年に小児在宅医療をスタートさせてから現在に至るまで、常にニーズは高まっています。開始当初こそ、地域の外来の方を対象とした往診がメインでしたが、介護保険制度が整い始めた頃からケアマネジャーからの依頼が多くなってきました。
昨年から比べると在宅医療希望者は2倍以上になっています。制度的な面から、新規開業を在宅医療でという医師も増えており、まさにニーズの増加を肌で実感しています。

進化を続けている在宅医療

終末期を自宅で迎えたいという声は、在宅医療のニーズと重なりますか?

どこで最期を迎えたいかアンケートをとった際、6割の方は「自宅」と答えています。しかし、実際に自宅で亡くなった人は統計で2割を切っていて、わずかな人しか希望が叶えられていません。
在宅医療のなかでもターミナルケア(※余命わずかな方に対して行う、医療・看護的・介護的ケア)が大きな要素を占めていたり、希望を踏まえた本来の意義を考えると、終末期の患者さんを自宅でサポートする体制づくりは今後さらに求められてくるのではないでしょうか。

昨今のコロナ禍は在宅医療にどのような影響を及ぼしたでしょうか?

深刻だったのは、病床がひっ迫したため入院期間が短くなり、家族も面会が難しい中、自宅退院するか決断しなければならない状況であったことです。患者さんは、病状に不安を抱えたまま通院もためらわれる状況で、どうしたらいいかわからない。
もちろんコロナ禍以前は、退院前のカンファレンスや家族も交えての手技の指導や確認など準備する時間が充分にあり、退院後の生活をきちんと組み立てて帰ることが当たり前でした。しかし、コロナ禍ではそうはいかず、動揺されている患者さんやご家族に在宅医療が介入するケースがよくありました。

現在、在宅医療が抱えている問題にはどんなことがありますか?

日本在宅医療連合学会でも課題としているのは、やはり医師不足ですね。ある統計では、現在、在宅医療を受けている方は全体の約5%といわれています。そのなかで、2040年問題と呼ばれる団塊世代の超高齢化に突入したとき、全体の40%が何かしらの形で在宅医療を利用すると予測されています。
これがどういう状況かというと、昨今のコロナ禍で往診がひっ迫している状態とそっくりなのです。2040年以降、10年20年というスパンで在宅患者が増えた場合、今から在宅医不足は顕著な問題であると考えられています。

進化を続けている在宅医療

長年、在宅医療に携わっている貴院の取り組みについて教えてください

当院では2000年以降、外来医療と在宅医療を軸に、デイサービスと居宅支援事業所を順次開設してきました。2020年には訪問看護ステーションミモザを新設し、グループとしてサービスの強化を図ることで、トータル的に在宅医療を支援できる体制を整えています。
当院での在宅看取り率は75%を超えていますが、この数字が全国平均と比べても高いのは、ターミナルケアを含む在宅医療に全力で取り組んできた成果でもあると考えています。

通院負担、入院費の軽減は在宅医療の大きなメリット

通院負担、入院費の軽減は在宅医療の大きなメリット

在宅医療を受けるためにはどんな条件がありますか?

在宅医療対象の定義は、「ひとりで通院が困難な方」です。病気や障がいによる歩行困難、寝たきり、認知症、呼吸器やカテーテルを装着している方、神経難病の方などが含まれます。
通院はしているけれど、送り迎えはご家族にお願いしているという方でも在宅医療は適用されます。小児は近年増加傾向である医療的ケア児の方の利用率が高いです。訪問できる範囲は、当院より半径16km以内となっており、西は大竹市、東は五日市方面や原など幅広く訪問しています。小児の場合は担い手が少ないためその限りでないことがあります。

費用面についてはどうでしょうか?

費用面を心配される方が多いようですが、料金は保険診療内でおさまります。1割負担の方だと、月2回の定期診療で7,000円くらい。自費診療は基本ありません。
入院費を支払うことに比べると在宅のほうがお金はかかりませんが、ただし24時間の点滴ができなかったりなど入院との違いはもちろんあります。

在宅医療で受けられる医療についてはどんなことがありますか?

人工呼吸器を付けていたり、胃ろうや腸ろうの患者さんにも対応しています。エコーや心電図などの検査が可能で、今後はレントゲン写真まで撮れるよう準備を進めています。ですから、現時点では放射線を使った診察以外はすべて可能ということです。
また、ターミナルケアを行っている当院はオピオイドという鎮痛剤(医療用麻薬)を扱っていますし、お腹や肺に水が溜まった場合の処置である腹腔穿刺(ふくくうせんし)や胸腔穿刺(きょうくうせんし)も行います。投薬も含めたいていの医療行為を病院と同等のレベルでできると考えていただいて大丈夫です。

患者さん側が特に何か準備するものはありますか?

訪問する際に必要な器材は医師や看護師が常備しているので、特に何か必要ということはありません。当院では、初回訪問時に書類関連も一式用意してお渡ししています。
細かくいうと、在宅医療には「訪問診療」と「往診」があり、訪問診療は、月2回程度の計画を立てて定期的にご自宅や施設に伺うことをいいます。往診は、緊急時やターミナルケアをされている方に、診療が必要とされる症状の変化があれば駆けつけることで、24時間365日対応しています。
当院で在宅医療を契約されている方の中にも、ターミナルケアを行っている方がいらっしゃいます。予後がある方にとって、残された時間はほんの1秒でさえ私たちの感覚と異なります。その痛みや苦しみをいち早く止めてあげるためにも、24時間体制を維持し、患者さんにとって私たちの存在が安心材料となるよう、常に万全の準備をしています。

通院負担、入院費の軽減は在宅医療の大きなメリット

かかりつけ医を超えた頼れる存在を目指す

かかりつけ医を超えた頼れる存在を目指す

貴院が掲げる「自分らしく生きられる」医療についてご説明ください

住み慣れた環境で自分に合った療養生活を継続すること、最期は家族と一緒に過ごすこと、それらを叶える手段のひとつが「在宅医療」です。自分らしく人生を全うするため自宅に帰りたいと思っているなら、安心できる医療を届けることがかかりつけ医の役割です。
もちろん、ご家族の協力が必要であり、地域の中核病院との連携も欠かせません。地域包括ケアシステムを支える意味でも、QOLを維持する在宅医療の実現を目指すことが、「自分らしく生きられる」医療につながると思います。

「かかりつけ医」という言葉の重みを感じます

院長である私の父は、在宅医療歴が長いので、親子2代にわたって患者さんを看取った経験があります。なかには亡くなる2週間前に念願だった釣りに出かけた患者さんもいらっしゃいます。かなり工夫して痛みをコントロールしましたが、家族3人で漁船に乗り、60cmの鯛を釣り上げました。このようなサポートは、日頃から丁寧に訪問診療を行い、ご家族の声に耳を傾け、当院の場合は看護師と介護士、ケアマネジャーと連携したさまざまな面でのプランニングがあって成り立っています。
昨今のコロナ禍で患者さんの安心や安全とは何か、考えさせられる部分がたくさんありましたが、どうやったら在宅でも不安なく過ごしていただけるか、そのためにはどうしたらいいか、すべてにおいてベストを尽くせる医師でありたいと思っています。

終末期の患者さんやそのご家族との関わり方で、注意されていることは何でしょうか?

死別などによる遺族の深い悲しみに心を寄せ、その人が回復し、立ち直ることができるまで支援する「グリーフケア」という取り組みがあります。当院でもこれをご家族が亡くなる前から始め、亡くなるまでの心構えや覚悟を一緒になって受け入れていきます。
亡くなってすぐはたくさんの方が弔問に来てくれますが、49日を過ぎると行事がなくなり、残された方はこのタイミングでうつ病を発症しやすいといわれています。当院ではその間、訪問診療の合間をみては伺い、「よく眠れているか」「どんな気持ちで過ごしているか」など、少しでも話す時間を設けてご遺族の不安に寄り添っています。
家族様含めてきちんと診るという気持ちを大事にし、患者さんと近い位置で気持ちを共有していければと思っています。

かかりつけ医を超えた頼れる存在を目指す

先生だけでなく、携わる職員の意識統一も必要ですね

毎朝、全体集会でミーティングを行い、その後にケアマネジャーと訪問看護師と私でミニカンファレンスも行っています。患者さん一人ひとりの詳細を周知し、提案と改善を取り入れ、情報共有を大切にしています。

ところで、貴院では来年2023年2月から往診専門の新規グループを立ち上げるとお聞きしました。どのような機関になるのか教えてください

現在行っている契約型の在宅24時間365日サービスではなく、そこに往診専門の医療機関をつくる予定です。4月からは新規のドクターを迎え、往診は現在の医院と連携して行い、サービスの拡大を図ります。
土日限定で廿日市市周辺、プラス1.2kmの範囲ならば、訪問診療
に伺うことを考えています。

往診専門のサービスが必要だと考えられたきっかけは何だったのでしょうか?

ひとつには、廿日市は成人の急患センターが22時までしかやっておらず、夜間の診療がありません。高齢者の方はクルマや自転車に乗れなかったりする方も多く、辛い症状を家で我慢してしまう方も多いのです。また、子どもさんの場合は中区まで行かないと診てもらえないため、辛い中を遠くまで足を運んで、病院に行っても待たなければならない。廿日市市は住みやすく、様々な医療福祉サービスがある都市ですが、小児病院は18-19時で受付終了となるので、それ以後の医療が手薄になっているのが実情です。われわれが往診に行けば、その場で処置をしてすぐに問題を解消できるかもしれませんし、翌日かかりつけ受診までの処方やホームケアについてアドバイスができます。
もちろん入院や精査が必要であると判断した場合は病院との架け橋にもなります。
もうひとつ、廿日市市は救急車の要請が多いのですが、救急車を呼ぶ必要のなかったケースがけっこうな数を占めています。そんなとき、われわれが往診できれば救急車の利用も減るし、病院も本当に重症の人を受け入れることができる。患者さんだけでなく、往診専門のサービスは医療関係者の助けにもなると考えたわけです。

最後に、これから在宅医療の利用を検討されている方にメッセージをお願いします

私はいつも患者さんに、「こんなことで相談していいのか」「在宅医療の適用にならないのではないか」と迷われたときは、一度相談してくださいとお伝えしています。皆さん、いろんな不安を抱えています。とりあえずご連絡いただければ、電話だけで話が済んだとしても、必要なことだったと思うのです。それを積み重ねて、信頼関係も築かれていきます。
当院では、グループとしてサービスを揃えているので、医療だけでなく福祉まで、必ず何かにつながるアドバイスができます。「在宅にしてよかったね」と言っていただける医療を届ける、今後もこれを胸に、患者さんに寄り添っていきたいと思っています。

編集部まとめ

かかりつけ医とは何かを考えたとき、終末期までを診る在宅医療の果たす役割は、とても大きなことに気づきます。同時に、在宅医療は地域包括ケアシステムと切り離せないものであり、高齢化社会を迎えるこれからの時代に、さらに求められる存在となることが理解できます。今後、あらゆる課題を解消し、安心して在宅医療を選択できる環境が整ったとき、本当に必要としている人に、必要な医療が届くことになるのではないでしょうか。

医療法人P.H.E きむら内科小児科医院

医院名

医療法人P.H.E きむら内科小児科医院

診療内容

在宅医療 内科 小児科 消化器内科・内視鏡 など

所在地

広島県廿日市市阿品台四丁目17番31号

アクセス

山陽本線「阿品」駅出口2より車で4分

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