目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. ドクターインタビュー
  3. 「骨格矯正」という子供への最高のギフト【奈良県香芝市 医療法人でい歯科医院】

「骨格矯正」という子供への最高のギフト【奈良県香芝市 医療法人でい歯科医院】

 更新日:2023/03/27

「骨格矯正」という子供への最高のギフト
「骨格矯正」という子供への最高のギフト

「三つ子の魂百まで」ということわざがあるように、人は3歳頃までに人格や性格が形成され、100歳まで変わらないといわれる。同様に身体の健康に大切な口の機能を使って食べることも、この時期までに基本が育成されていく。ところが、いつも口がポカンと開いている、鼻詰まりによる口呼吸、舌が上顎についていないなど、口腔筋がうまく機能していないことで、歯並びはもちろん全身の健康に悪影響が及んでいる子どもが少なくないという。開院初期から小児矯正MFT口腔筋機能療法)を取り入れ、成果を上げてきた奈良県香芝市にある「医療法人 でい歯科医院」の出井庸喜先生に詳しいお話を伺った。

Doctor’s Profile
出井 庸喜(でい のぶよし)
医療法人 でい歯科医院 理事長

1973年生まれ、奈良県出身。1997年、大阪大学歯学部卒業後、大阪大学歯学部附属病院顎関節咬合科に勤務。全身と噛み合わせの関係を診る教授に師事。2003年、出身地である奈良県香芝市に「でい歯科医院」を開院。2018年、将来の健康に役立つ子どもの頃からの噛み合わせの育て方の重要性を広めるため、絵本「NOBODA先生」(Gaiable出版)を著す。

どうして口呼吸が歯並びを悪くすることにつながるのでしょうか?

親御さんが小児矯正の相談に来られたとき、当院ではまず呼吸のお話からさせていただくのですが、皆さんそれに驚かれます。
本来、舌は「スポット」と呼ばれる上顎の歯列内、口内の天井部分に収まっていて、舌の圧力や唇の力、頬の粘膜からの圧力がバランスを取ることで正常な位置へ歯並びを導きます。ところが、口呼吸が癖になっていると舌が下がり、上顎から離れることで口腔内のバランスが崩れ、歯並びが乱れてしまうのです。また、常に口を開けているため、下顎の成長に影響が出て出っ歯や開咬といった不正咬合、顔つきまで変わってきますから、早めの対策が必要です。

歯並びと呼吸は密接な関係にある

口呼吸の弊害はときどき耳にしますが、ほかにはどんな影響がありますか?

口呼吸が癖になっていると睡眠中も口を開けているので、下顎や舌が下がって気道がふさがりがちです。すると、子どもでも睡眠時無呼吸症候群を引き起こす場合があります。
また、口が乾燥しやすくなるため、病原菌やウイルスに対する免疫力を高める唾液の効用を十分に受けることができません。菌やウイルスは乾燥した環境を好むので、口呼吸を続けていると虫歯はもちろん、風邪もひきやすくなると考えられています。

歯並びと呼吸は密接な関係にある

「口呼吸は万病のもと」ということですね?

そうですね。鼻呼吸であれば、鼻がフィルターの役割を果たしてくれるだけでなく、加湿もしてくれます。それだけでも予防効果があるわけで、口の機能、歯並び、呼吸の密接な関係が子どもの健やかな成長はもちろん、将来にわたって大きな影響を及ぼしていることを親御さんにはぜひ知っていただければと思います。

小さなお子さんを持つ親にとっては、成長への影響が気になるところです

子どもは、生まれたときからさまざまな習慣を後天的に身につけて大きくなっていきます。口の成長に関する習慣も、当然後天的に身につけるものです。
口が正しく成長すれば、歯並びはきれいになりますし、正しい舌の位置できちんと嚥下すること、口をしっかり閉じて鼻呼吸をすることが、本来子どもが持っている力を100%引き出すことにつながります。

歯並びと呼吸は密接な関係にある

口の正しい成長は学習能力や運動能力にも影響しそうですね

鼻で呼吸することはきちんとした睡眠につながりますから、集中力アップが期待できます。また、幼い頃に「口ばかり開けて!」などネガティブな言葉を受けていると、知らず知らずのうちに人格形成に影響が出る可能性もあります。
歯科の矯正治療を行う目的は、歯並びをよくすることだけではありません。「お口ポカン」を防ぐことは、子どもの正しい成長にとって不可欠な要素のひとつといえるでしょう。

MFTをはじめ、早い時期からの小児矯正のメリットを知ってほしい

MFTをはじめ、早い時期からの小児矯正のメリットを知ってほしい

口呼吸の改善方法について教えていただけますか?

この説明をするときも驚かれることが多いのですが、鼻呼吸を行い、正しい歯並びを実現するには、口の中の癖、特に舌の使い方が大切です。
いつも舌を出しっぱなしにするなど舌癖があるお子さんは、舌だけでなく唇や頬、さらにはものを飲み込むために大切な咽頭部の筋肉など、口腔内筋が正常に機能していない状態なんです。それを放置したまま矯正装置で歯を正しい位置に戻しても、「後戻り」といって、元の悪い歯並びに戻る現象が起きてしまいます。根本的な原因にアプローチしないと、親御さんにとってもお子さんにとってもマイナスでしかありません。
矯正の開始年齢にもよりますが、舌癖があるお子さんの場合、当院では矯正治療と併用してMFT口腔筋機能療法)を行っています。

MFTとは、どのような治療法なのでしょうか?

まだ認知度は低いですが、一言でいえば、自分の舌を思った通りに動かすトレーニングのことです。トレーニングには段階的なメニューがあり、舌先をスポットにあてたまま唾液を飲み込む練習を行うなど、正しい舌の位置をお子さんが覚えることで口腔筋機能の改善につなげていきます。トレーニング自体はとても簡単ですし、必要に応じて「ムーシールド」や「プレオルソ」といったマウスピース型の口腔筋機能トレーナーを用いることもあります。
正しい口腔筋機能を維持するには家でのトレーニングも大切で、そのためのバックアップは、スタッフ一同懇切丁寧にアドバイスさせていただいています。

どのような症状の場合、MFTを受ければいいでしょうか?

舌癖がつきやすくなる原因として「指しゃぶりをしている期間が長い」「軟らかいものばかりを食べてしっかり嚙む習慣がない」といったことが挙げられます。MFTで口腔筋の改善を行うだけで、歯並びや呼吸がよくなっただけでなく、「落ち着きが出てきた」「中耳炎が出なくなった」と、親御さんから喜びの声をいただくことは珍しくありません。
もちろん、MFTがすべての症状に対して万能というわけではありませんが、食べるのが早い、あるいは遅すぎるお子さんの場合、何かしら問題が起きている可能性がありますから、そのサインを見逃さないようにして、一度MFTも視野に入れてみてください。

小さい頃からMFTなどの矯正治療を行うメリットは何でしょう?

子どもの成長する力を利用できることが大きいですね。顔の骨格が完成する前にMFTトレーニングで舌や口周りの筋力を正しく鍛え、不正咬合の原因となる舌癖や口呼吸の癖を変えていくことは、顎の位置や大きさを整え適切な位置に歯を誘導します。
歯並びがよくなれば、噛み合わせもよくなり、将来の虫歯や歯周病などの予防はもちろん、大人になってから矯正する必要がなくなったり、抜歯をせずに矯正できたりする可能性が高まるなどさまざまなメリットがあります。

小児矯正を始めるタイミングについて教えてください

前歯が永久歯に生え替わったとき。小学校に入学する6歳くらいにスタートするのがよいというイメージをお持ちの親御さんも多いかと思います。口の状態や骨格などの成長には個人差があり、たとえば受け口の場合は時間経過とともに悪化していくため、通常より早い時期に矯正を行うケースも少なくありません。
大切なのは、そのお子さんの発育に適した治療法を選択することです。当院では、お子さま一人ひとりの合うタイミングで、合う治療を行っています。
その中でも、前歯が4本ぐらい出てくるまではMFTなどを活用して、基本となる口腔機能をアップさせていくことが多いですね。でも、不正咬合などの予防のためには0歳から、もっといえば妊娠中から話を聞いていただくのも有効な予防といえます。

MFTをはじめ、早い時期からの小児矯正のメリットを知ってほしい

正しい生活習慣は親から子どもへの最高の“ギフト”

正しい生活習慣は親から子どもへの最高の“ギフト”

妊娠中から予防の意識を持つことが必要なんですね

その通りです。口腔内を健康に保つことによって全身の健康も維持できるという予防の考え方は広まりましたが、子どもの予防といえばまず虫歯予防が頭に浮かぶというのが現状です。
しかし、お子さんが健康に育つ上で、産まれる前からできる準備は親御さんが思っている以上にあるものです。その一つが、歯並びに大きな影響を与える離乳食です。離乳食の時期は、赤ちゃんの発育にとって、非常に大事なトレーニングの時期といえるでしょう。

離乳食の食べさせ方が、その後の成長に関係してくるのですか?

正しい離乳食の食べさせ方を行うことで、舌の癖や間違った飲み込み方の癖がつかなくなることはもちろん、口呼吸にならず鼻呼吸を行うことにもつながります。その結果、お子さんが心身ともに健康に成長して歯並びが悪くなるのも予防することができます。
離乳食を食べさせるときの具体的なポイントとしては、まず赤ちゃんの下唇にスプーンを置いて、赤ちゃん自身が上唇で挟んで食べるまで待つこと。次に、ご飯粒のように指でつぶせるぐらいの軟らかい食物を与え、よく噛んでもらうこと。そして、唇を閉じた状態で赤ちゃんがきちんと飲み込んでから次の食物を与えること。この3点が挙げられます。

生活習慣などで注意点はありますか?

足がきちんと床に着く椅子に座って食べることが重要です。足がブラブラしている状態だと、噛む力が育ちません。これは赤ちゃんだけではなく、お年寄りの介護にもいえますね。
また、水分で飲み込むように食べるのではなく、よく噛んで唾液を出すことで飲み込む癖をつけることも大切です。きちんとした生活習慣を身につけることで、正常な口腔機能が育ち、よい睡眠をとることで成長ホルモンが多く分泌され、発育の相乗効果が期待できます。

正しい生活習慣は親から子どもへの最高の“ギフト”

治療に際して先生が大切にしていることは何でしょうか?

「ここに来てよかった」と思っていただくためには、綿密なコミュニケーションが取れる人間性と、さまざまな症例に対応できる技術力が欠かせません。人と人のつながりを大切に、スタッフ一同さらに研鑽を積んで、これからも地域の健康増進に貢献していきたいですね。
今後はLINEなどを利用して、ご家庭でのMFTトレーニングのフォローや、管理栄養士をスタッフに加え、大人から子どもまでそれぞれの生活状況に応じた栄養指導を行うことなども視野に入れています。

正しい生活習慣は親から子どもへの最高の“ギフト”

小児矯正を受けようと考えている方、Medical DOCのサイトを訪れている読者へのメッセージをお願いします

私も4人の子どもを持つ父親として、口まわりの筋肉や骨格を正しく発育させることが、歯並びだけでなく全身の健康につながることを実感してきました。
サッカーをしている息子は食事中に開咬に気づき、MFTで、末娘はいびきがひどかったのを顎顔面矯正で治すことができたのです。小児矯正の相談に来られたとき、その治療の写真をご覧いただくことでMFT小児矯正の効果を理解していただいています。
口腔内にトラブルが起きたときは、その根本的な原因を取り除かなければ、成長度合いに雲泥の差が生まれます。小児矯正を行うことで得られる正しい口の成長と呼吸法は、私たち親が子どもに贈ってあげることのできる最高の“ギフト”ではないでしょうか。

編集部まとめ

できるだけ早いうちに矯正治療を受けておくことは、歯並びをよくするだけでなく、虫歯予防にもつながり、さらには正しい呼吸を得ることができ、全身の健全な発育が期待できそうです。とはいえ、歯並びだけ整えても「お口ポカン」では、一時的な見映えはよくても長い目で見れば実を伴いません。出井先生のお話から、離乳食の食べさせ方やMFTの知識を得ておくなど、子どもが産まれる前から取り組めることはいろいろあるように感じました。

医療法人でい歯科医院

医院名

医療法人でい歯科医院

診療内容

矯正歯科 予防治療 小児歯科 一般歯科 など

所在地

奈良県香芝市真美ケ丘5-3-25
三和ビル1階

アクセス

近鉄大阪線「五位堂」駅より車で5分
バス「香芝高校前」停留所より徒歩1分

この記事の監修歯科医師