歯を失ったとき、その審美性・機能性を回復させるための治療は大きく「
インプラント」「
入れ歯」「ブリッジ」に分けられる。だが、保険診療での対応ができる
入れ歯・ブリッジと比べたとき、自費診療に限定される
インプラントは“高額”で“リスクが大きい”というイメージがある。
インプラントは本当に高いのか、またリスクが本当に大きいのか。大阪府藤井寺市の「新美歯科」の院長、新美先生に話を伺った。
Doctor’s Profile
新美 晴也
新美歯科 院長
2013年愛知学院大学歯学部卒業。愛知学院大学歯学部附属病院、小室歯科ターミナルビル診療所勤務を経て、2019年に藤井寺市にて「新美歯科」開院。20歳の頃、30年、40年の長期にわたって患者の口腔・身体の健康を守る“本当の意味での地域密着型歯科医院”の開業を10年後に設定し、年間200冊という読書量を支えに実現。地域の子どもの虫歯ゼロを現在の目標に定め、多忙な生活の中でも技術・知識の修得に余念がない。
入れ歯やブリッジについて、具体的にどんなお悩みがきかれますか?
「強く噛めない」「見た目が悪い」「ほかの歯への影響が心配」といった悩みが多いでしょうか。
入れ歯の場合は、
「ズレる・がたつく」といった悩みもよくあります。いずれも、
インプラント治療で解消できるお悩みです。
強く噛める、見た目がよい、他の歯への影響がないといったことは、インプラントのよく知られた特徴かと思います。そういった悩みが解消できるとわかっていても、なかなか踏み込めないものなのでしょうか
確かに、ためらう方も少なくありません。なかでも、安全性というところに不安をお持ちの方が多いような気がします。ただ、近年は
CTの導入率が向上したこと、
エビデンスの蓄積、メーカーの努力などによって、
インプラント治療の安全性は飛躍的に向上しています。
先生は、具体的にどのような方法で安全性の向上に努めていますか?
CT検査の実施はもちろんですが、そこから得られるデータをもとに
サージカルガイドを作製しています。
サージカルガイドとは、適切な位置・角度・深さで
インプラントを埋入するためのテンプレートです。手動での埋入と比べ、精度を大幅に向上させることができます。
たとえば、手術が必要ということは、デメリットといえませんか?
インプラント治療では必ず手術が行われるわけですから、デメリットではなく、リスクというほうが適切だと思います。それに、
どんな治療にもリスクは存在しますし、そのなかで
インプラントのリスクが特別大きいというわけではありません。当院の場合、術後の腫れや痛みも、ほぼありません。
では、術後に痛みや腫れが起こるのはどういったケースでしょうか?
多くは、口腔内の衛生状態がよくないまま手術に踏み切ったケースで起こります。当院では、
インプラントを含むすべての治療において、
口腔内の細菌を減らす前処置を行っています。
高額であることから、インプラントをためらっている方も多いようです。
“初期費用”ということであれば
インプラントは高額です。しかし、適切なメンテナンスとセルフケアを行うことで、
天然歯と同じように、長期にわたって快適に使用することが可能です。また、しっかり噛めることで、全身への好影響、全身の健康を維持するための医療費の軽減も期待できます。
しっかり噛めるということは全身の健康に好影響ですか?
はい。ただ、硬いものも軟らかいものも、細かく砕いて飲み込めることから、胃腸への負担が軽減していることに大きな意味があります。食べ物を消化しやすくなり、栄養もしっかりと吸収できるようになります。
噛める・噛めないという違いが、身体の健康においても差を生むのですね。
そうです。よく噛めるということは、脳への刺激、唾液分泌の活性化による口腔内の自浄作用の向上にもつながります。また、「味わって食べられる」「家族と同じものを食べられる」といった患者さんのお声にあるように、心の面でもよい影響をもたらします。
インプラントを長く使うためには、どうすればいいのでしょうか?
定期的なメンテナンスと、
適切なセルフケアは絶対に欠かせない条件です。ただ、このことを過剰に不安視する必要はありません。なぜなら、
インプラントのあるなしにかかわらず、お口を健康に保っている人は当たり前のように取り組んでいることだからです。
確かに、考えてみればメンテナンスもセルフケアも、「負担」というよりも、「本来あるべきお口のお手入れ」ですね。
おっしゃる通りです。「お口の健康を長く維持したい」という気持ちを持っている方、
インプラント治療をきっかけに持つことができる方なら心配はいりません。
インプラントの脱落の原因となる
インプラント周囲炎のリスクも、最小限に抑えられます。
では、メンテナンスとセルフケアに真面目に取り組めば、インプラントはどれくらい長持ちするのでしょうか。
インプラントの寿命は、
“天然歯と同等”とお考えください。適切にお手入れをすれば、生涯ご使用いただくことも十分に可能です。
ほかに、インプラントを長く使用するために大切なことはありますか?
メンテナンスとセルフケアは治療後のことですが、それ以前の取り組み、先程申し上げましたCTや
サージカルガイドを活用した
インプラント埋入、
患者さんの準備ももちろん大切です。
患者さんの準備というのは、具体的にどんなことでしょうか?
安全性の高い
インプラント埋入を行うための、
患者さんご自身の取り組みや協力です。たとえば、喫煙している方は禁煙を、血糖値の高い方は適切な血糖コントロールをしていただきます。ほかに虫歯や歯周病のある方はその治療を済ませてから、お口の衛生状態がよくない方はそれを改善してからでなければ治療には進みません。
患者さんの準備ができていないままインプラントを埋入するのは、そんなに危険なのでしょうか?
インプラントが駄目になるだけでなく、
残存歯や歯ぐきの健康への被害も引き起こしかねません。当院では、口腔に悪影響を及ぼすリスクがある場合には、そのリスクを
インプラントの埋入前に徹底して排除します。この線引きをきっちりせずに、「患者さんが望んでいるから」と埋入へと移行するのは、「その後のことは知りません」と言っているようなものですからね。
インプラントの再治療でご相談される患者さんもいると聞きました。
当院に多いご相談としては、上部構造、つまり
インプラントの上に被せる人工歯が割れた・欠けたといったケースです。
咬み合わせが十分に考慮されていなかったために、部分的に強い力がかかり、破損してしまうのです。
インプラントの埋入だけでなく、上部構造の設計・作製も大切なのですね。
咬み合わせが合っていない場合、余計な負荷がかかるのは歯だけではありません。歯ぐきや顎関節にも過剰な力がかかり、歯肉の炎症、顎関節症などを引き起こすことがあります。当院では、咬み合わせまでしっかりと考えた上部構造の設計・作製を行っています。
インプラントを希望する患者さんからすると、咬み合わせは見落としがちかもしれませんね。
そうですね。
埋入手術だけでなく、その前後の処置も大切です。つまり、口腔全体の健康を診てくれる歯科医院を選ばなければ、
インプラントによる“健康できれいなお口の長期維持”は難しいかもしれません。
患者さんの通いやすさ、という点で先生が気をつけていることはありますか?
色とりどりのおもちゃがある、キッズスペースを完備しています。また、保育士の資格を持ったスタッフが常駐していますので、小さなお子さんをお連れの方も安心して治療を受けていただけます。
最後に、このMedical DOC読者の方へのメッセージをお願いします。
インプラントは、
決して危険な治療ではありません。ただ、現状としてそういうイメージが今も残っており、この不安を解消するのも私たちの役目だと思っています。まずは
インプラント治療を
「正しく知る」ことを当院で始めてみませんか?どうぞお気軽にご相談ください。
どんな質問にも的確に、迷いなく回答する新美先生からは、責任感の強さと経験に基づいた自信を感じました。また、インプラント治療は、手術だけでなく、その前後のケアも大切であることがよくわかりました。歯科医院と患者さんが協力し、リスクの徹底した排除に努めれば、インプラント治療の安全性を最大限に高めることができるのです。高度な技術や設備の充実だけでなく、患者さん側にも理解と協力を求める歯科医院こそ、本気でお口と身体の健康を考えてくれているといえそうです。
医院情報
新美歯科
所在地 |
〒583-0034
大阪府藤井寺市小山藤の里町1-47
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アクセス |
近鉄南大阪線 藤井寺駅 徒歩9分 |
診療内容 |
歯科一般 小児歯科 歯科口腔外科 矯正歯科 インプラント 審美治療 他 |