薬の調整から点滴・自宅でのお看取りまでおこなう「在宅医療」

ひのでクリニック
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在宅医療という言葉から、「自宅で医療を受けることだろう」ということは容易に想像がつく。しかし、在宅医療の内容について改めて問われると、意外に答えに窮してしまう。そもそも在宅医療はいったいどんな医療なのか、どんな医療内容が行われるのか、また受けられるのはどのような人なのか。訪問診療専門クリニックである「ひのでクリニック」の橋本和憲院長に、在宅医療に関する詳しいお話を伺った。

Doctor’s Profile
橋本 和憲
ひのでクリニック 院長

広島大学医学部を卒業後、複数の総合病院や診療所で内科・呼吸器内科・緩和ケア科・在宅医療・小児在宅医療・精神科など、さまざまな医療分野の経験を積む。2019年4月に同院を開業。日本内科学会総合内科専門医、日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本在宅医療連合学会在宅医療専門医・指導医

病院に定期的に通えない人が利用するのが在宅医療

在宅医療とは、いったいどのような医療なのですか?

簡単に言えば、病院に定期的に通うのが難しい人が、自宅で受ける医療が「在宅医療」です。自宅を生活の場としながら、そこで困った症状があればそれを和らげたり、暮らし難い状況があれば過ごしやすいように整えていきます。

病院に定期的に通えない人が利用するのが在宅医療

在宅医療では、主にどのようなことを行いますか?

まずは患者さんの希望をお聴きします。どのように自宅で過ごしたいかを聴き、そのうえで現在困っている症状が何かを確認します。それから治療方針をたて、薬の調整などをおこないます。必要に応じて点滴や注射、胃ろうのチューブ交換、気管切開のチューブ交換、尿バルーンの交換、床ずれの処置、酸素や人工呼吸器の設定調節、酸素量の調節なども行います。家で使う医療機器の調節は、すべて在宅医療でできると思います。

自宅には医療機器の設備がありませんが、検査はどのように行っているのでしょうか?

血液検査・尿検査・エコー検査・心電図検査は在宅医療でもできます。あとは血圧を測ったり、酸素の数字を測定したり、脈拍を測ったりといったことも行います。レントゲン撮影やCT検査などは病院に行かないとできませんが、自宅でもひと通りの検査は行うことができます。

「在宅医療」と「往診」や「訪問診療」とは、何が違うのですか?

在宅医療というのはとても大きなくくりで、自宅で医師の診察を受けるのも在宅医療なら、家でリハビリをするのも在宅医療です。その大きな在宅医療の枠の中に、往診や訪問診療もあって、訪問診療は「来週の月曜日に伺って診察をしますよ」といったように、あらかじめ日程を決めて訪問します。
かたや往診は、「具合が悪くなったので来てください」というように、患者さんから依頼されて行く診察のことを指します。

病院に定期的に通えない人が利用するのが在宅医療

どんな人が在宅医療を受けられるのですか?

一人で病院に通院するのが難しい人が、在宅医療の対象になります。たとえば脳梗塞や脳出血が原因で歩行が難しくなり通院できない人や、抗がん剤治療を受け終わって「もうこれ以上の治療はやらない」という状況の人、年齢を重ねることで足腰が弱ってしまった人、神経難病のALSや筋ジストロフィーに罹患している人、寝たきりの人などが対象となります。

がんによる症状がある方や認知症で症状がある方は在宅医療の対象となるのでしょうか。

がんで強い痛みがあったり、だるくて食欲が低下している場合は痛み止めやだるさなどの症状を和らげる薬を適切に調整することで症状が軽くなり生活しやすくなることがあります。飲み薬や貼り薬、注射などの薬を適切に使うことで症状のコントロールがつきやすくなります。
また、認知症による様々な症状でご本人だけでなく、ご家族や周囲の方にも負担が大きくなっているケースもあります。こうしたケースは病院を受診することも難しい場合が多いです。在宅医療であればご自宅に伺うことができるので受診拒否がある場合も対応がしやすいです。薬や環境を調整することで症状をやわらげることができることも多くあります。

自宅で最期まで過ごしたい、死にたいという希望がある場合はどうでしょうか。

はい。そうしたご希望がある方は訪問診療を受けられた方がよいと思います。住み慣れたご自宅でできる限り安楽に過ごせるように薬の調節をし、訪問看護師やケアマネジャーと連携して環境調整もします。また、自宅で亡くなられた際は、医師が死亡診断をする必要がありますが、そういったことにも対応しています。

自宅で生活する患者さんの“困ったこと”を、医療の面から解決する

逆に、在宅医療が受けられない人というのはどんな人なのでしょうか?

一人で通院できる人は、やはり難しいですね。自分で歩いて病院に行き、普通に待合室に座って待つことができ、診察の順番がきたら歩いて診察室に行けるというような人は、在宅医療の対象にはならないと思います。

自宅で生活する患者さんの“困ったこと”を、医療の面から解決する

「付き添いがいれば病院に行ける」という人は、どうなりますか?

付き添いがいれば病院に行けるという状態の人でも、在宅医療の対象になるケースはあります。その辺の判断は、患者さんの状況や、付き添いの程度によっても異なりますね。
たとえば車いす生活の方は、在宅医療が適用になるケースが多いのですが、若い人が一時的に足を骨折して車いすに乗っているような場合は、適用になりません。

通院が困難な人は、入院するという選択肢もあると思いますが?

そうですね。確かに入院すれば専門的な治療を受けることができますが、病院は長期間入院することが難しくなっており、ずっと入院し続けるわけにはいきません。そうなると、必然的に在宅医療が必要になってきます。
在宅医療では、患者さんが自宅で普通の生活をしながら、困ったことを医療の面から解決する役割があります。

たとえばどのようなことを解決するのでしょうか?

診察をしたときに患者さんに痛みなどの症状がある場合は、その苦痛を和らげる治療を行います。苦痛の原因をあきらかにし、薬が必要な場合には処方を行い、種類や量を調整します。さらに床ずれなどがあれば治療を行います。
そうした治療を行うことで、患者さんが「その人らしい生活」を叶えられるように注力します。
患者さんの状況をみて「看護や介護が必要な状態だ」と判断した場合には、訪問看護師やケアマネジャと相談して、患者さんの状態に合わせた医療や介護が入るようにします。

自宅で生活する患者さんの“困ったこと”を、医療の面から解決する

在宅医療を受けている患者さんも、容体によっては病院に入院することがありますか?

はい。ご自宅で在宅医療を受けながら生活している患者さんでも、病院での治療が必要な場合には入院をすすめることがあります。より集中的な治療が必要な状態のときには入院で治療をしていただくことで、より細やかな治療を受けることができますし、状態が回復して、自宅で治療ができる段階になれば早めに退院して、在宅で治療を継続することで入院期間を短縮することもできます。在宅と入院で、より患者さんのご希望にあった治療の場を選んでいただけるように配慮しています。

病気や障害をもつ子どもも在宅医療を受けることができる

お子さんが在宅医療を受けられるケースはありますか?

あります。染色体異常などのように、生まれながらに障害があるお子さんや、生まれるときに仮死状態で生まれたお子さん、交通事故や病気で寝たきりになったり、医療機器をご自宅で使う必要があるお子さんなどは、在宅医療の対象になります。お子さんは体調を崩して熱を出したりすることが多いので、在宅医療においても、よりこまめな対応が必要になります。

病気や障害をもつ子どもも在宅医療を受けることができる

親御さんが介助をすれば何とか通院できるお子さんでも、在宅医療を利用する必要はありますか?

お子さんでも、酸素や人工呼吸器などを使って、生活をしている方が多くおられます。そうなると、病院に行くときにお母さんは車いすを押しながら、酸素や人工呼吸器・痰の吸引器などを車に積んで移動させなければなりません。
途中でお子さんの容体が悪化すると、いったん車を止めて痰を吸い、そしてまた移動するということもあります。そのため、病院に行く負担を少しでも減らすという意味で、在宅医療を利用する必要があると思います。

病気や障害のあるお子さんを病院に連れて行くのは、本当に大変なことなのですね。

その通りです。大きな病院は待ち時間も長いので、病気や障害のあるお子さんを連れて行くのは本当に大変です。さらに兄弟姉妹も一緒に連れて行くとなると、お母さんの負担は相当なものになるでしょう。せっかく病院に連れて行き、診察を受けて帰ってきても、その夜に熱を出してしまうこともあります。
また、病院にはインフルエンザなどの感染症にかかっている患者さんもいますから、頻繁に行くと感染してしまう危険性もあります。わざわざ病院に行かなくてもできることは、なるべく家でやる方がよいのではないかと思います。
定期的な薬の処方、予防接種、胃ろうなどの交換や人工呼吸器など自宅で使っている医療機器の調節などは自宅でできます。調子を崩した際に病院を受診したほうがよいかのアドバイスや自宅でできる治療をすることでお子さんとご家族の負担を減らすお手伝いをしています。

病気や障害をもつ子どもも在宅医療を受けることができる

病院の通院を止めて、在宅医療一本にするというわけにはいかないのでしょうか?

大人の場合は、家で在宅医療を受けることになると、大きい病院を定期的に受診しなくなる人がほとんどです。でもお子さんの場合は、病院で定期的な検査などが必要なことが多いので、病院と引き離して在宅医療だけというわけにはいきません。そのため、病院の通院をやめるのではなく、病院に行く回数を極力減らすという形になります。

24時間365日、土日も含めて夜間も訪問可能な「ひのでクリニック」

24時間365日、土日も含めて夜間も訪問可能な「ひのでクリニック」

在宅医療を受けるまでの流れを教えてください。

当院の場合は、患者さんのご家族から直接連絡をいただくこともありますが、やはり多いのは病院やケアマネジャー、訪問看護を通してご相談いただくケースですね。病院を退院するタイミングで「在宅医療が必要だろう」ということでご連絡いただく場合もありますし、「通院が難しいので在宅医療はないだろうか?」と患者さんがケアマネジャーに相談して、当院を紹介していただく場合もあります。訪問看護や訪問リハビリのスタッフ経由で、当院にご相談をいただくこともあります。

先生のクリニックから訪問できるエリアはどの辺までになりますか?

当院から車で30分程度のお宅でしたら、伺うことができます。まずはご連絡をいただいて、それから個別に対応させていただければと思います。

在宅医療を受ける際に、何か準備しておくものはありますか?

特に患者さんの方で準備するものはありません。在宅医療が必要な状態であり、自宅で過ごしたいという方であれば、過ごしやすい状態でお待ちいただければ大丈夫です。

一人暮らしの方でも在宅医療は受けられますか?

はい。一人暮らしの方はご家族のサポートがないので、一人では薬を取りに行くこともできませんから、在宅医療を利用されるケースは多いですね。

急に具合が悪くなったようなときも、対応していただけるのでしょうか。

大丈夫です。当院は土日も含めて24時間365日対応していますので、必要がある場合には夜間でも訪問して診療をしています。急に具合が悪くなったようなときは、電話でご連絡いただければと思います。

在宅医療の費用は、かなりかかるのでしょうか?

在宅医療は医療保険が適用になりますので、ご高齢の方は一割負担の場合が多く、大きな負担にならずに利用できるケースは多いです。難病の手帳や重度医療の手帳を持っている人は、自己負担がかからない場合もあります。詳しくは当院までお尋ねください。

在宅医療に際して、特に先生が留意している点などがあればお聞かせいただけますか?

私が一番気を付けているのは、ご本人とご家族がどのように過ごしたいか、その思いをかなえるのにどこを調節すればよいかを、医療や生活環境・介護サービスを含めて総合的に整えていくという点です。生活を診ていくという視点を大切にし、患者さんが過ごしたいと思う生活を、医療の立場からできる限り実現させていければと思っています。

24時間365日、土日も含めて夜間も訪問可能な「ひのでクリニック」

編集部まとめ

高齢化がますます進みつつある現在、病院だけでは患者を受け入れることができないため、在宅医療の需要はますます広がっていくことでしょう。「ひのでクリニック」のように24時間365日、土日も夜間も訪問してくれる心強いクリニックもあるので、訪問診療に対応しているクリニックといい関係を築きながら、自宅で自分らしく暮らすのもひとつの選択肢かもしれません。

医院情報

ひのでクリニック

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所在地 〒732-0818
広島県広島市南区段原日出1-12-18-101
アクセス 段原山崎バス停から徒歩3分
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診療内容 在宅医療 一般内科 呼吸器内科 小児科 心療内科