知らずに腎臓を痛めているかもしれない食習慣―食べてはいけないものと摂るべきもの

水分の摂り方や服薬の管理は、腎機能を守るうえで見過ごされやすいテーマです。水分不足は腎臓への負担を高める一方、市販薬やサプリメントの中にも腎臓に影響を与える成分が含まれている場合があります。さらに、食事における「カリウム」や「リン」の管理も、ステージが進むにつれて重要になってきます。本記事では、日常生活で実践できる腎臓へのいたわり方をご紹介します。

監修医師:
田中 茂(医師)
専門は内科学・腎臓内科・血液透析・腹膜透析・臨床疫学・生物統計学
目次 -INDEX-
eGFR値の改善に向けた水分摂取と薬の管理
水分摂取や服薬管理は、日々の生活の中で意識しないと見過ごされがちですが、腎機能を守る上で非常に重要な要素です。正しい知識に基づいたセルフケアを実践することで、腎臓への不要な負荷を効果的に減らすことができます。
適切な水分摂取が腎臓を守る理由
体内の水分が不足すると、血液が濃縮され、腎臓は老廃物を排出するためにより多くのエネルギーを必要とします。慢性的な水分不足は、腎臓への血流を低下させ、急性腎障害のリスクを高めることもあります。一方で、心機能や腎機能が著しく低下している場合は、水分の過剰摂取がむくみ(浮腫)や心不全を悪化させる危険性もあります。適度な水分補給が推奨されますが、心臓の働きや腎機能のステージによっては厳密な水分制限が必要な場合があります。具体的な摂取目標は必ず担当医に確認してください。 喉が渇いたと感じる前に飲むのがポイントです。お茶や水を基本とし、糖分やカリウムを多く含むジュースやスポーツドリンクは避けるのが賢明です。
腎臓に負担をかける薬・サプリメントへの注意
市販の解熱鎮痛薬(特にNSAIDsと呼ばれる非ステロイド性抗炎症薬)の長期にわたる乱用は、腎血流を低下させ、腎機能を悪化させるリスクがあることが広く知られています。また、漢方薬や健康食品、プロテインなどのサプリメントの中にも、腎臓に予期せぬ負担をかける成分(カリウムや特定の生薬など)が含まれていることがあります。腎機能が低下している方は、医療機関で処方された薬以外を使用する際には、必ず事前に医師や薬剤師に相談してください。自己判断での服用が、取り返しのつかない腎機能の悪化を招く可能性があるため、最大限の注意が必要です。また、腎機能が低下している方は、CTやMRIなどで使用する「造影剤」によって急性腎障害を引き起こすリスクがあります。検査を受ける際は、必ず事前に現在服用している薬と、腎機能の状態を医師に伝えてください。
eGFR値が低い方が食べてはいけない食品の基本
腎機能が低下している場合、食事の内容が腎臓への負担に直接影響します。「食べてはいけない」というよりは、「摂取量を賢く管理すべき」栄養素を正しく理解することが、腎機能の悪化を防ぐための重要な鍵となります。
ステージ進行時にカリウムを多く含む食品に注意が必要な理由
腎機能が低下すると、体内の余分なカリウムを尿として排出する能力が衰えます。その結果、血液中のカリウム濃度が異常に高まる「高カリウム血症」をきたすことがあります。これは、致死的な不整脈や心停止を引き起こす非常に危険な状態です。しかし、初期のCKD(G3a, G3b)では、血液検査で高カリウム血症がなければ、原則としてカリウム制限は不要です。制限が必要になるのは、ステージが進行し、血液検査で高カリウム血症が確認された場合、または医師から明確な指示があったときに限定されます。初期から自己判断で制限をしないよう注意してください。
カリウムは、生の果物(特にバナナ、メロン、キウイ)、野菜(ほうれん草、かぼちゃ、いも類)、ドライフルーツ、豆類、海藻類に多く含まれます。野菜やいも類は、細かく切ってから茹でる(茹でこぼし)か、水にさらすことでカリウムの含有量を減らすことができます。調理法を工夫することが、安全に野菜を摂取するポイントです。
リンを多く含む食品が腎臓に与える影響
腎機能が低下すると、リンも体外に排泄されにくくなります。血液中のリン濃度が高い状態が続くと、骨の健康を維持するホルモンのバランスが崩れ、骨からカルシウムが溶け出して骨がもろくなる(腎性骨症)ほか、血管壁にカルシウムが沈着して動脈硬化を進行させる(血管石灰化)原因となります。リンは、乳製品(チーズ、ヨーグルト)、魚卵、レバー、ナッツ類、玄米などに多く含まれます。特に注意が必要なのは、加工食品(ハム、ソーセージ、インスタント食品、スナック菓子)や清涼飲料水に含まれる食品添加物としての「リン酸塩」です。これらは体への吸収率が非常に高いため、成分表示を確認し、できるだけ避けることが重要です。
まとめ
eGFR値の低下は、腎臓からの重要なサインです。しかし、早期に気づき、適切な対策を講じることで、その進行を大幅に遅らせることが可能です。血圧・血糖の厳格なコントロールを基本に、減塩、タンパク質・カリウム・リンの適切な管理、そして禁煙や適度な運動といった生活習慣の改善が、腎機能を守るための強力な武器となります。健康診断で数値を指摘されたり、少しでも気になることがあれば、決して放置せず、早めに腎臓内科などの専門医を受診してください。医師や管理栄養士と協力し、自分に合った治療とセルフケアを始めることが、未来の健康を守る第一歩です。