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「不治の病」は古い? 『エボラ出血熱』の生存率を高める最新治療と「早期対応」の真実

 公開日:2026/02/25
「不治の病」は古い? 『エボラ出血熱』の生存率を高める最新治療と「早期対応」の真実

エボラ出血熱の治療は、症状を支える支持療法を中心に進められてきましたが、近年は抗ウイルス薬も登場しています。どのような治療が行われ、なぜ早期対応が重要なのかを理解することで、治療の全体像を把握できます。

吉野 友祐

監修医師
吉野 友祐(医師)

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広島大学医学部卒業。現在は帝京大学医学部附属病院感染症内科所属。専門は内科・感染症。日本感染症学会感染症専門医、日本内科学会総合内科専門医、日本医師会認定産業医。帝京大学医学部微生物学講座教授。

エボラ出血熱に対する治療アプローチ

エボラ出血熱の治療は、ウイルスそのものを標的とした治療と、症状を緩和し身体機能を支える支持療法の両面から行われます。近年、治療薬の開発も進んでいます。

支持療法の重要性と具体的な内容

エボラ出血熱の治療において、支持療法は患者さんの生存率を高める基盤となります。支持療法とは、身体の機能を維持し、症状を緩和することで、患者さん自身の免疫力がウイルスと闘う時間を確保する治療法です。重要なのは水分と電解質のバランスを保つことです。嘔吐や下痢により大量の水分が失われるため、経口補水や点滴による積極的な水分補給が行われます。

電解質(ナトリウム、カリウムなど)のバランスも細かく監視し、必要に応じて補正します。血圧が低下している場合は、循環を維持するための昇圧剤の投与も検討されます。栄養状態の維持も重要で、可能であれば経口摂取を促し、困難な場合は経管栄養や静脈栄養が行われます。二次的な細菌感染を予防または治療するために、抗菌薬が使用されることもあります。疼痛管理や発熱のコントロールなど、症状に応じた対症療法も並行して実施されます。

抗ウイルス薬と抗体療法の開発状況

近年、エボラウイルスを直接標的とする治療薬の開発が進展しています。2020年、アメリカ食品医薬品局(FDA)は、エボラウイルス(ザイールエボラウイルス)に対する2つのモノクローナル抗体治療薬(特定のウイルスだけを狙い撃ちして攻撃する、人工的に作られた『免疫のミサイル』のような薬)を承認しました。これらの治療薬は、ウイルス表面のタンパク質に結合してウイルスの細胞内侵入を阻害する仕組みです。

臨床試験では、早期に投与された患者さんの致死率が低下することが示されました。これらの治療薬の登場により、エボラ出血熱は治療可能な疾患としての認識が広まりつつあります。ただし、これらの治療薬は発症早期に投与することが重要であり、病状が進行してからでは効果が限定的になる場合があります。また、高度な医療環境と冷蔵保管が必要なため、流行地域の医療機関すべてで使用できるわけではないという課題も残されています。今後、より保管や投与が容易な治療薬の開発が期待されています。

まとめ

日本に住む私たちにとって、エボラ出血熱は直接的な脅威ではありませんが、グローバル化が進む現代において無関係ではありません。流行地域への渡航を予定されている方は、現地の情報を確認し、適切な予防行動を取ることが大切です。帰国後に発熱などの症状が現れた場合は、速やかに医療機関に連絡し、渡航歴を伝えましょう。正確な情報に基づいた冷静な対応が、自分自身と周囲の方々の健康を守ることにつながります。

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