心の不調を整える鍵は「お腹」に?自律神経やホルモンに与える腸の重要な役割を医師が解説

腸と脳は神経回路で密接に結ばれており、腸内環境の乱れは精神状態にも影響を及ぼすことが研究で明らかになっています。気分の落ち込みや不安感といったメンタル面の不調は、腸内細菌が産生する物質や腸の炎症と関連している可能性があります。腸内環境とメンタルヘルスの関係について、科学的な知見をもとに解説します。

監修管理栄養士:
中西 真悠(管理栄養士)
2020年3月 女子栄養大学 栄養学部 実践栄養学科 卒業
2020年4月 株式会社野口医学研究所 入社
同年よりフリーの管理栄養士として活動開始、現在に至る
・法人向け健康経営支援サービスの立ち上げと推進(新規および既存顧客への営業活動を主導)
・食と健康に関する指導プログラムの実施(延べ2000人以上を対象にセミナーや測定会を通じて個別指導を実施)
・SNSでの情報発信によるブランディング
∟ Instagramにて食と健康に関する情報を発信し、フォロワー5万人超を達成
∟ 企業のSNS商品撮影代行やレシピ開発を400件以上実施
・サプリメントや雑貨のお客様相談室にてコールセンター業務を担当
・保険調査業務の実務を担当
目次 -INDEX-
メンタルヘルスへの影響
近年の研究により、腸内環境とメンタルヘルスの間には密接な関係があることが明らかになっています。腸と脳は「腸脳相関」と呼ばれる神経回路で結ばれており、腸内細菌が産生する神経伝達物質の原料や代謝産物が脳の機能に影響を与えることがわかってきました。
腸内細菌と神経伝達物質の関係
幸福感や意欲、情緒の安定に関わる神経伝達物質であるセロトニンの約90%は、腸管内で産生されていることが知られています。ただし、腸で作られたセロトニンそのものが脳へ直接届くわけではありません。腸と脳の間には血液脳関門が存在し、腸由来のセロトニンはこの関門を通過できないためです。
腸内細菌は、脳内でセロトニンが合成される際に必要となるトリプトファンなどの前駆物質の代謝や供給、さらに迷走神経や免疫系を介した情報伝達を通じて、間接的に脳機能へ影響を及ぼすと考えられています。そのため、腸内環境の乱れによって腸内細菌による前駆物質の供給や情報伝達がスムーズに行われなくなると、気分の変動やストレスへの耐性に影響が出る可能性があります。
また、腸内環境の悪化は、炎症反応や自律神経の乱れを通じて、ストレス応答に関与するホルモン(コルチゾールなど)の分泌バランスに影響を与えることも指摘されています。腸内環境を整えることは、神経伝達やホルモン調節を支える土台を整える行為といえるでしょう。
ただし、精神状態は腸内環境だけで決まるものではなく、体質、生活習慣、睡眠、運動、心理的要因などが複雑に関与しています。腸内環境の改善はメンタルヘルスを支える一要素として捉え、過度な期待を抱かず、総合的なセルフケアの一環として取り入れることが大切です。
うつ症状や不安感の悪化
腸内環境の乱れが長期化すると、うつ症状や不安感が強まることが複数の研究で報告されています。腸内環境の悪化による慢性的な微小炎症が、血流や神経系を介して脳の機能に悪影響を及ぼす可能性が指摘されています。
腸内環境を改善することで、うつ症状や不安感が軽減したという報告もあり、メンタルヘルスの観点からも腸内環境のケアは重要です。ただし、精神的な不調が強い場合は、腸内環境の改善だけでなく、精神科や心療内科などの専門医療機関での適切な治療を受けることが必要です。腸内環境のケアは、あくまで補助的な取り組みとして位置づけられます。
メンタルヘルスの問題は複合的な要因で生じることが多く、腸内環境の改善だけで解決できるわけではありません。医師の指導のもと、適切な治療と並行して腸内環境のケアを行うことで、より効果的な改善が期待できます。
まとめ
腸内環境は全身の免疫細胞の約7割が集まる最大の免疫器官であり、私たちの健康を支える重要な基盤です。食べ物やサプリメント、生活習慣の改善を通じて腸内細菌のバランスを整えることで、便通の正常化だけでなく、免疫機能の適切な維持やメンタルヘルスの安定にもつながることが期待されています。本記事でご紹介した方法を参考に、まずは発酵食品を一品増やすことや一回の深呼吸など、できることから少しずつ実践し、、長期的な視点で腸内環境のケアに取り組んでみてください。ただし、効果には個人差があり、すべての方に同じ結果が得られるとは限りません。症状が改善しない場合や不安がある場合は、医療機関での相談をおすすめします。健やかな腸内環境が、あなたの健康な毎日を支える土台となることを願っています。