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「物忘れ」と「食事」の意外な関係。地中海食がアルツハイマー病のリスクを下げる?

 公開日:2026/01/11
「物忘れ」と「食事」の意外な関係。地中海食がアルツハイマー病のリスクを下げる?

加齢とともに気になる認知機能の低下に対し、地中海食は脳の健康維持に寄与する可能性があることが観察研究で示唆されています。オメガ3脂肪酸による神経細胞膜の保護、ポリフェノールによる神経栄養因子の産生促進、腸内環境の改善を通じた脳への間接的な働きかけなど、多様な経路が関与すると考えられています。本記事では、認知症予防につながるメカニズムと、生活習慣全体で取り組む重要性について解説します。

中西 真悠

監修管理栄養士
中西 真悠(管理栄養士)

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■経歴
2020年3月 女子栄養大学 栄養学部 実践栄養学科 卒業
2020年4月 株式会社野口医学研究所 入社
同年よりフリーの管理栄養士として活動開始、現在に至る

・法人向け健康経営支援サービスの立ち上げと推進(新規および既存顧客への営業活動を主導)
・食と健康に関する指導プログラムの実施(延べ2000人以上を対象にセミナーや測定会を通じて個別指導を実施)
・SNSでの情報発信によるブランディング
 ∟ Instagramにて食と健康に関する情報を発信し、フォロワー5万人超を達成
 ∟ 企業のSNS商品撮影代行やレシピ開発を400件以上実施
・サプリメントや雑貨のお客様相談室にてコールセンター業務を担当
・保険調査業務の実務を担当

地中海食と認知症予防の可能性

認知症は高齢化社会における重要な健康課題であり、その予防には社会的な関心が集まっています。地中海食は、脳のエイジング(老化)を緩やかにすることで認知機能の低下を遅らせ、認知症のリスクを低減する可能性があることが、複数の観察研究で示唆されています。

認知機能への影響

地中海食を実践している方々において、認知機能テストの成績が良好であることや、認知機能の低下速度が緩やかであることが報告されています。記憶力や遂行機能、情報処理速度など、さまざまな認知領域での改善が観察されています。
脳の健康には十分な血流が不可欠であり、地中海食による血管機能の改善が、脳への血液供給を維持する効果につながると考えられています。抗酸化物質や抗炎症物質により、神経細胞の酸化的損傷や炎症が抑制される可能性も考えられています。
オメガ3脂肪酸は特に記憶を司る海馬など脳の構成成分として重要であり、神経細胞膜の流動性を維持する役割を果たしています。十分なオメガ3脂肪酸の摂取により、神経伝達が円滑に行われ、認知機能が保たれやすくなるといわれています。ただし、認知機能には加齢や遺伝的要因、教育歴、社会的活動なども関与しますので、食事だけでなく総合的な生活習慣が重要といえます。

アルツハイマー病リスクへの影響

アルツハイマー病は認知症の一般的な原因であり、脳内にアミロイドベータやタウタンパク質が蓄積することで神経細胞が障害されます。地中海食は、このアルツハイマー病の発症リスクを有意に低減する可能性が、多くの疫学研究で示唆されています。
疫学研究において、地中海食への適合度が高い方々では、アルツハイマー病の発症率が低い傾向が観察されています。この効果は、複数の保護メカニズムが組み合わさることで発揮されると考えられています。
抗酸化作用により、アミロイドベータの酸化的変性や凝集が抑制される可能性があります。抗炎症作用により、脳内の慢性的な炎症が軽減され、神経細胞の変性が遅延する可能性も考えられています。これらのメカニズムが、認知症の病理学的変化の進行を遅らせることにつながるでしょう。ただし、これらは観察研究に基づく知見が中心であり、因果関係を明確に示すためには、さらなる介入研究が必要とされています。

地中海食による脳の健康維持メカニズム

地中海食が脳の健康にもたらす効果は、血管系への作用だけでなく、神経保護作用や神経可塑性の促進など、多様なメカニズムを通じて発揮されると考えられています。

神経保護作用と神経可塑性

地中海食に含まれるポリフェノールには、神経栄養因子の産生を促進する効果があることが研究で示されています。特に脳由来神経栄養因子(BDNF)は、神経細胞の生存や成長、シナプス形成に重要な役割を果たしており、学習や記憶の基盤となる神経可塑性に関与しています。
地中海食による血糖値の安定化も、脳の健康維持に寄与すると考えられています。脳はエネルギー源としてグルコースを主に利用しており、血糖値の急激な変動は脳機能に悪影響を及ぼす可能性があります。安定したエネルギー供給により、神経細胞の活動が適切に維持されるでしょう。ただし、これらの神経保護メカニズムの多くは動物実験や培養細胞を用いた研究に基づくものであり、ヒトにおける効果の詳細については、今後の研究が待たれます。

腸脳相関と認知機能

近年の研究により、腸内環境と脳機能の間には密接な関連があることが明らかになっています。地中海食に豊富な食物繊維は、腸内細菌叢の多様性を高め、有益な代謝産物の産生を促進するといわれています。
短鎖脂肪酸などの腸内細菌代謝物は、脳の検問所ともいわれる血液脳関門を通過して脳に影響を与える可能性が報告されています。腸内環境の改善により全身の炎症状態が緩和されることで、間接的に脳の炎症も抑制される可能性があるでしょう。
地中海食の実践により、腸内細菌叢の組成が改善され、認知機能の維持に有利な環境が整うと考えられています。この腸脳相関を通じた効果も、地中海食の認知症予防効果に寄与していると推測されています。ただし、腸内環境と認知機能の関係は複雑であり、個人差も大きいため、腸内環境の改善だけで認知症を予防できるとは限りません。

まとめ

健康的な食生活は、生活習慣病の予防だけでなく、人生の質(QOL)を高く保つことにもつながる重要な要素です。地中海食は、抗酸化作用や抗炎症作用を通じて、糖尿病、心臓病、認知症など、さまざまな疾患のリスク低減に寄与する可能性が科学的に示されています。ただし、地中海食の効果には個人差があり、年齢や基礎疾患、遺伝的要因によって効果の現れ方は異なります。
食事内容の見直しを検討される際は、かかりつけの医師や管理栄養士に相談しながら、ご自身の健康状態に適した形で実践することをおすすめします。特に、糖尿病や心臓病などの疾患で治療を受けている方は、薬物療法との適切な組み合わせについて、医療従事者の指導を受けることが重要です。
地中海食は、単なる食事法ではなく、家族や友人との食事を楽しみ、適度な身体活動を取り入れた総合的な生活習慣として捉えることで、より大きな健康効果が期待できます。まずは1日のうち1食からでも、無理のない範囲で継続できる方法を見つけ、長期的な健康維持に役立てていただければ幸いです。

この記事の監修管理栄養士

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