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地中海食とは?オリーブオイルと野菜が支える抗酸化と抗炎症のメカニズム

 公開日:2026/01/07
地中海食とは?オリーブオイルと野菜が支える抗酸化と抗炎症のメカニズム

地中海沿岸地域で伝統的に受け継がれてきた食事パターンは、単なる料理の組み合わせではなく、健康維持につながる生活習慣全体を示す概念です。オリーブオイルや新鮮な野菜、青魚を中心としたこの食生活には、身体の酸化ストレスや慢性炎症を穏やかに抑える働きがあることが研究で示されています。本記事では、地中海食を構成する食品群の特徴と、抗酸化物質がもたらす細胞レベルでの作用について解説します。

中西 真悠

監修管理栄養士
中西 真悠(管理栄養士)

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■経歴
2020年3月 女子栄養大学 栄養学部 実践栄養学科 卒業
2020年4月 株式会社野口医学研究所 入社
同年よりフリーの管理栄養士として活動開始、現在に至る

・法人向け健康経営支援サービスの立ち上げと推進(新規および既存顧客への営業活動を主導)
・食と健康に関する指導プログラムの実施(延べ2000人以上を対象にセミナーや測定会を通じて個別指導を実施)
・SNSでの情報発信によるブランディング
 ∟ Instagramにて食と健康に関する情報を発信し、フォロワー5万人超を達成
 ∟ 企業のSNS商品撮影代行やレシピ開発を400件以上実施
・サプリメントや雑貨のお客様相談室にてコールセンター業務を担当
・保険調査業務の実務を担当

地中海食の基本的な概要

地中海食とは、イタリア南部やギリシャ、スペインなど地中海沿岸地域で伝統的に食べられてきた食事パターンを指します。単一の料理や食材ではなく、特定の食品群を組み合わせた食生活全体を示す概念です。

地中海食を構成する主な食品群

地中海食の中心となるのは、新鮮な野菜と果物です。トマトやナス、ズッキーニ、ピーマンなどの色鮮やかな野菜を毎日たっぷりと摂取することが特徴といえます。これらの野菜には、ビタミンやミネラル、食物繊維が豊富に含まれており、身体の機能を整え、酸化ストレスから守る重要な役割を果たしています。
主食には全粒穀物が用いられ、精製度の低いパンやパスタ、玄米などが好まれます。これらの穀物は食物繊維を多く含み、血糖値の急激な上昇を緩やかにする効果が期待できるでしょう。豆類やナッツ類も頻繁に食卓に登場し、植物性たんぱく質や良質な脂質の供給源となっています。
魚介類は週に数回以上摂取され、赤身肉の消費は控えめです。イワシやサバなどの青魚には、オメガ3脂肪酸が豊富に含まれており、心血管疾患のリスク低減など、健康維持に貢献することが多くの研究で示唆されています。サーモンは白身魚でありながら青魚に匹敵する、あるいはそれ以上のオメガ3脂肪酸を含んでいます。乳製品は主にヨーグルトやチーズで適度に取り入れられており、発酵食品としての利点も活かされています。

オリーブオイルの重要な位置づけ

地中海食において特に重要な役割を果たすのがオリーブオイルです。調理用油としてはもちろん、サラダのドレッシングとしても日常的に使用されており、地中海食の脂質源の中心を占めています。
オリーブオイルには、一価不飽和脂肪酸(オレイン酸)が多く含まれています。これは、バターやラードなどに多い脂肪とは性質が異なり、悪玉(LDL)コレステロール値を上昇させにくい点が特徴です。
特にエクストラバージンオリーブオイルには、ポリフェノールやビタミンEといった抗酸化成分も含まれており、油としてエネルギーを補うだけでなく、体の酸化ストレスを抑える働きも期待されています。そのため、オリーブオイルは単なる調理用の油にとどまらず、健康を意識した食生活に取り入れやすい油と考えられています。
地中海食では、バターやラードなどの動物性脂肪の使用を控え、オリーブオイルを主要な脂質源とすることで、脂質の質を重視した食生活が実現されています。この脂質の選択が、地中海食の健康効果を支える重要な要素の一つとなっているでしょう。

地中海食の食事パターンと生活習慣

地中海食は単なる食品の組み合わせだけでなく、食事の摂り方や生活習慣全体を含む文化的な概念として捉えられており、食事を通じた社会的なつながりや、身体活動との関連も重視されています。

食事の摂り方と食文化

地中海地域では、食事を家族や友人とともにゆっくり楽しむことが大切にされています。会話を交えながら時間をかけて食べることで、満腹感を感じやすくなり、急激な血糖値の上昇を抑えるとともに食べ過ぎを防ぎやすいと考えられています。また、旬の食材を使った料理を取り入れることで、季節に応じた栄養を自然に摂取できる点も特徴です。
地中海食では、食事とともにワインを少量たしなむ習慣が紹介されることがありますが、これはあくまで文化的背景を踏まえたものであり、誰にでも当てはまるものではありません。特に日本人では、アルコールを分解する酵素(ALDH2)の働きが弱い体質の方が少なくなく、欧米の基準をそのまま参考にすると体への負担が大きくなる可能性があります。
厚生労働省の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」では、健康リスクが高まる飲酒量を純アルコール量で示しており、性別や体質によって適切な量は異なります。そのため、地中海食を取り入れる際も、飲酒は必須と考えず、飲む場合でも食事とともに極少量にとどめる、あるいは無理に取り入れないといった判断が重要です。
食事の準備においては、新鮮な食材をシンプルに調理することが重視されます。過度な加工や味付けを避け、食材本来の風味を活かすことで、食塩の過剰摂取を控え、栄養素の損失を抑えやすく、日常的に続けやすい食習慣につながります。

身体活動との組み合わせ

地中海地域の伝統的な生活様式には、日常的に低〜中強度の身体活動が自然と組み込まれています。農作業や漁業など、身体を動かす職業に従事する方も多く、散歩や庭仕事なども習慣として定着しています。
現代の生活環境では、伝統的な地中海地域と同じ身体活動量を維持することは難しいかもしれません。しかし、食事パターンの改善とともに、日常的に身体を動かす習慣を取り入れることで、より大きな健康効果が期待できると考えられています。
ウォーキングやサイクリング、水泳などの有酸素運動を週に数回行うことで、地中海食の効果を最大限に引き出せる可能性があるでしょう。ストレスを適切に管理し、十分な睡眠時間を確保することも、健康的な生活習慣の一部として重要といえます。運動の種類や強度については、年齢や基礎疾患の有無によって適切な内容が異なりますので、医師や専門家の指導を受けることをおすすめします。

地中海食の抗酸化作用のメカニズム

地中海食には豊富な抗酸化物質が含まれており、身体の酸化ストレスを軽減する効果が期待されています。酸化ストレスは細胞にダメージを与え、さまざまな疾患の発症に関与するといわれています。

抗酸化物質の種類と供給源

地中海食に含まれる主な抗酸化物質には、ポリフェノール、カロテノイド、ビタミンC、ビタミンE、セレンなどがあります。これらの物質は、活性酸素の過剰な発生を抑えたり、無害化をサポートし、細胞の酸化的損傷を防ぐ働きをすると考えられています。
オリーブオイルに含まれるポリフェノールの一種であるオレオカンタールは、抗炎症作用を持つことが研究で示されています。赤ワインに含まれるレスベラトロール、トマトに豊富なリコピン、ナッツ類のビタミンEなど、地中海食の各食品群が異なる抗酸化物質を提供しています。
野菜や果物の色素成分であるカロテノイドも重要な抗酸化物質です。ベータカロテンやルテイン、ゼアキサンチンなどは、緑黄色野菜に多く含まれており、目の健康維持にも関与するといわれています。ただし、抗酸化物質の効果には個人差があり、食事からの摂取だけでなく、全体的な生活習慣にも影響することが知られています。

酸化ストレスへの影響

複数の研究により、地中海食を取り入れることで血液中の抗酸化力が高まることが報告されています。具体的には、動脈硬化に関与するとされる酸化LDL(低密度リポタンパク質)が減少したり、体の中で静かに続く炎症の指標が改善したりすることが確認されています。
ここでいう「炎症」とは、けがをしたときの腫れや痛みのように自覚できるものではなく、慢性炎症と呼ばれる血管や細胞のレベルでじわじわと続く、気づきにくい状態を指します。例えるなら、表に見えないところで少しずつ進む“体内のくすぶり”のようなもので、長期間続くと動脈硬化や生活習慣病のリスクを高める要因になると考えられています。地中海食は、このような目に見えにくい体内環境を穏やかに整える食事パターンの一つとして注目されています。
抗酸化物質は単独で作用するだけでなく、互いに協力して効果を発揮することが知られています。抗酸化ネットワークと呼ばれ、ビタミンCがビタミンEの働きを助けたり、異なるポリフェノールが相乗効果を示したりすることで、地中海食全体としての抗酸化作用が強化されると考えられています。
地中海食に含まれる食物繊維は、腸内環境を改善し、間接的に全身の炎症状態を抑制する可能性も考えられています。腸内細菌叢のバランスが整うことで、免疫機能の調整や代謝の改善にもつながるといわれています。ただし、これらの効果は継続的な実践によって得られるものであり、短期間での劇的な変化を期待することは避けるべきでしょう。

まとめ

健康的な食生活は、生活習慣病の予防だけでなく、人生の質(QOL)を高く保つことにもつながる重要な要素です。地中海食は、抗酸化作用や抗炎症作用を通じて、糖尿病、心臓病、認知症など、さまざまな疾患のリスク低減に寄与する可能性が科学的に示されています。ただし、地中海食の効果には個人差があり、年齢や基礎疾患、遺伝的要因によって効果の現れ方は異なります。
食事内容の見直しを検討される際は、かかりつけの医師や管理栄養士に相談しながら、ご自身の健康状態に適した形で実践することをおすすめします。特に、糖尿病や心臓病などの疾患で治療を受けている方は、薬物療法との適切な組み合わせについて、医療従事者の指導を受けることが重要です。
地中海食は、単なる食事法ではなく、家族や友人との食事を楽しみ、適度な身体活動を取り入れた総合的な生活習慣として捉えることで、より大きな健康効果が期待できます。まずは1日のうち1食からでも、無理のない範囲で継続できる方法を見つけ、長期的な健康維持に役立てていただければ幸いです。

この記事の監修管理栄養士

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