40代から脳が縮み始める?「若年性アルツハイマー」の原因の正体とは

脳内で特定の病理学的変化が起こることで発症します。アミロイドβやタウタンパクといった異常なタンパク質の蓄積が、神経細胞の機能を障害し、最終的には細胞死を引き起こします。こうした脳内の変化は、症状が現れる何年も前から始まっていることがわかっています。ここでは、発症のメカニズムを詳しく説明します。

監修医師:
鮫島 哲朗(医師)
東京逓信病院脳神経外科部長
脳腫瘍 頭蓋底外科センター長
【経歴】
平成2年3月 宮崎医科大学(現宮崎大学)卒業
平成2年6月 宮崎医科大学(現宮崎大学)脳神経外科入局
平成3年4月 九州大学救急部研修(厚生省研修プログラム)
平成14年4月 Duke University Medical Center, USA
University of Torino , Italy
平成22年2月 NTT東日本関東病院脳神経外科主任医長
平成25年4月 浜松医科大学脳神経外科准教授
令和6年10月 東京逓信病院脳神経外科部長 脳腫瘍頭蓋底外科センター長
【専門・資格】
脳腫瘍 頭蓋底腫瘍 困難な脳外科手術等
医学博士
日本脳神経外科学会 専門医・指導医
日本脳卒中学会 専門医
若年性アルツハイマーの原因となる脳の変化
若年性アルツハイマーは、脳内で特定の病理学的変化が起こることで発症します。ここでは、発症のメカニズムを詳しく解説します。
アミロイドβとタウタンパクの蓄積
若年性アルツハイマーの根本的な原因は、脳内に異常なタンパク質が蓄積することです。主な原因物質は、アミロイドβとタウタンパクの二つです。アミロイドβは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)が分解される過程で生じる断片です。通常は速やかに分解されますが、何らかの理由で蓄積すると、神経細胞の外側に老人斑と呼ばれる塊を形成します。この老人斑が脳内に広がることで、神経細胞の機能が障害されていきます。
アミロイドβの蓄積は、発症の10から20年前から始まるとされています。蓄積が進むと、神経細胞の機能が障害され、細胞間の情報伝達が妨げられます。さらに、神経細胞内ではタウタンパクが異常にリン酸化され、神経原線維変化と呼ばれる構造を作ります。この変化により、神経細胞は正常な機能を失い、最終的には死滅します。タウタンパクの異常は、アミロイドβの蓄積よりも後に起こり、症状の進行と密接に関連していると考えられています。
これらのタンパク質の蓄積がなぜ起こるのかは、まだ完全には解明されていません。遺伝的要因、加齢、生活習慣、環境因子などが複雑に関与していると考えられています。若年性アルツハイマーでは、遺伝子変異によってアミロイドβの産生が増えたり、分解が遅れたりすることが原因となる場合があります。また、炎症や酸化ストレスもタンパク質の蓄積を促進する可能性が示唆されています。
神経細胞の死滅と脳萎縮
アミロイドβやタウタンパクの蓄積により、神経細胞が損傷し、最終的には死滅していきます。神経細胞が失われると、脳全体の容積が減少し、脳萎縮が起こります。特に、記憶を司る海馬や、思考や判断を担う大脳皮質が萎縮することで、認知機能が低下します。海馬は新しい記憶の形成に重要な役割を果たしており、この部分が障害されることで、記憶障害が目立つようになります。
脳の萎縮は、MRI(磁気共鳴画像)検査などで確認できます。若年性アルツハイマーの方の脳画像を見ると、海馬の萎縮や脳溝(脳のしわ)の拡大が認められます。また、脳内の神経伝達物質であるアセチルコリンの量も減少します。アセチルコリンは、記憶や学習に重要な役割を果たす物質です。その量が減ることで、記憶障害や認知機能の低下が進行します。アルツハイマー病の治療薬の多くは、このアセチルコリンの働きを補うことを目的としています。
神経細胞の死滅は徐々に進行し、一度失われた細胞は再生しません。このため、早期に発見して進行を遅らせることが重要です。
まとめ
若年性アルツハイマーは、65歳未満で発症するアルツハイマー型認知症で、働き盛りの世代に大きな影響を及ぼします。初期には記憶障害や思考力・言語機能の低下、意欲の減退、感情コントロールの難しさが見られ、遺伝的要因や生活習慣病、脳内へのアミロイドβやタウタンパクの蓄積が発症に関与するといわれています。診断後の平均的な生存期間はおよそ10年で、病状は段階的に進行し、終末期には全面的な介護や緩和ケアが必要となります。若年性アルツハイマーは、本人だけでなく家族全体に影響を与える病気です。早期発見と適切な治療により進行を緩やかにすることが可能であり、医療や介護の専門家と連携しながら、本人と家族が納得できる時間を過ごすことが何よりも大切です。


