目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 配信コンテンツ
  3. 「タンパク質」の過剰摂取が引き起こす『健康リスク』をご存じですか?【医師解説】

「タンパク質」の過剰摂取が引き起こす『健康リスク』をご存じですか?【医師解説】

 公開日:2025/12/21
「タンパク質」の過剰摂取が引き起こす『健康リスク』をご存じですか?【医師解説】

タンパク質は摂取するタイミングによって、身体への効果が変わってくる可能性があります。朝食での摂取は一日の活動に必要なエネルギーを供給し、運動前後の補給は筋肉の修復や成長をサポートする効果が期待できるでしょう。ここでは、効果的な摂取タイミングや食べ合わせの工夫、さらにタンパク質の過剰摂取が引き起こす健康リスクについて解説します。適切な量を守り、バランスの取れた食事を心がけることで、健康的にタンパク質を活用できるでしょう。自身の状態に合わせた調整が大切です。

中西 真悠

監修管理栄養士
中西 真悠(管理栄養士)

プロフィールをもっと見る
■経歴
2020年3月 女子栄養大学 栄養学部 実践栄養学科 卒業
2020年4月 株式会社野口医学研究所 入社
同年よりフリーの管理栄養士として活動開始、現在に至る

・法人向け健康経営支援サービスの立ち上げと推進(新規および既存顧客への営業活動を主導)
・食と健康に関する指導プログラムの実施(延べ2000人以上を対象にセミナーや測定会を通じて個別指導を実施)
・SNSでの情報発信によるブランディング
 ∟ Instagramにて食と健康に関する情報を発信し、フォロワー5万人超を達成
 ∟ 企業のSNS商品撮影代行やレシピ開発を400件以上実施
・サプリメントや雑貨のお客様相談室にてコールセンター業務を担当
・保険調査業務の実務を担当

効率的なタンパク質の摂取タイミング

タンパク質は摂取するタイミングによって、身体への効果が変わってきます。目的に応じた適切な摂取タイミングを理解することで、より効果的に栄養を活用できる可能性があります。

朝食でのタンパク質摂取の重要性

朝食は一日の始まりであり、睡眠中に枯渇したエネルギーやアミノ酸を補給する重要な食事です。朝食にタンパク質を含めることで、筋肉の分解を抑え、日中の活動に必要なエネルギーを供給できる可能性があります。

研究では、朝食に十分なタンパク質を摂取することで、日中の食欲をコントロールしやすくなり、間食の頻度が減少することが示されています。これは、タンパク質が満腹感を持続させる効果を持つためと考えられています。

朝食の理想的なタンパク質量は、20g〜30g程度とされています。サラダチキン(50g)と 豆乳(200ml)、納豆(1パック)に卵1個と牛乳(200ml)といった組み合わせで、この量を満たすことができます。忙しい朝でも、ヨーグルトやプロテインドリンクを活用することで、手軽にタンパク質を摂取できるでしょう。

運動前後のタンパク質補給

運動直後は、筋肉がタンパク質を取り込みやすくなる「ゴールデンタイム」と呼ばれており、特に運動後できるだけ速やかにタンパク質を摂取することが推奨されます。かつては30分以内が重要視されていましたが、現在では運動後数時間(約2〜4時間)の幅で摂取できれば問題ないとされています。この時間帯に20g〜30g程度のタンパク質を摂取することで、筋肉の修復と成長を促進できる可能性があります。

また、運動前の食事(プレミール)も非常に重要です。運動の1〜2時間前に、消化の良いタンパク質(プロテイン、ヨーグルトなど)と糖質(おにぎり、バナナなど)を摂取することで、運動中の筋肉分解の抑制が期待できます。消化不良を避けるため、大量の食事は控え適量を心がけることが大切です。

就寝前のタンパク質摂取も、睡眠中の筋肉合成をサポートするために有用とされています。特にカゼインプロテインのようにゆっくりと吸収されるタンパク質は、長時間にわたってアミノ酸を供給し続けるため、筋肉の分解を抑える効果が期待できます。ただし、摂取量が多すぎると消化器系に負担をかける場合があるため、適量を守りましょう。

タンパク質の吸収を高める食べ合わせ

タンパク質は単独で摂取するよりも、ビタミンB6(鶏むね肉、マグロ、卵など)と炭水化物(ごはん、パン、麺類など)を同時に摂取することで、吸収効率や利用効率が高まることがあります。バランスの取れた食事を心がけることが重要です。

ビタミンB群との組み合わせ

ビタミンB群は、タンパク質の代謝に深く関わっており、特にビタミンB6はアミノ酸の代謝に不可欠な栄養素です。ビタミンB6を豊富に含む食品には、鶏肉、サーモン、バナナ、玄米などがあります。これらの食品をタンパク質源と一緒に摂取することで、効率的な代謝をサポートできる可能性があります。

ビタミンB1は糖質の代謝を助け、エネルギー産生に関与します。豚肉や玄米、大豆製品に多く含まれているため、これらを組み合わせることで、タンパク質とエネルギーを効率よく利用できる可能性があります。

ビタミンB12は、動物性食品に多く含まれ、赤血球の生成や神経機能の維持に必要です。肉類、魚類、卵、乳製品などからタンパク質とともに摂取することで、相乗効果が期待できます。植物性の食生活を送る方は、ビタミンB12が不足しやすいため、強化食品やサプリメントの利用を検討するか、医療機関で相談することが推奨されます。

炭水化物と脂質の適切なバランス

タンパク質だけを大量に摂取しても、エネルギー源となる炭水化物が不足すると、タンパク質がエネルギーとして消費されてしまいます。筋肉の合成や身体の修復に十分なタンパク質を活用するためには、適切な量の炭水化物も必要です。

運動後の食事では、タンパク質と炭水化物を3対1程度の比率で摂取すると、筋肉の回復と糖の補給が効率よく行われるといわれています。たとえば、鶏肉とご飯、ヨーグルトとバナナ、赤身の牛肉とそばやうどん、サーモンと玄米といった組み合わせが適しています。

良質な脂質も、ビタミンの吸収や細胞膜の構成に必要です。魚の脂質やアボカド、ナッツ類などに含まれる不飽和脂肪酸は、運動で生じた炎症を穏やかに抑える作用があるため、運動後の筋肉の回復をサポートする可能性があります。ただし、脂質は高カロリーであるため、摂取量には配慮が必要です。バランスの取れた食事を心がけることが、健康的なタンパク質摂取の基本となります。

タンパク質の過剰摂取が引き起こす健康リスク

タンパク質は重要な栄養素ですが、過剰に摂取すると身体に負担をかける可能性があります。適切な量を守ることが、健康維持のために重要です。

腎臓への負担

タンパク質を代謝する過程で、窒素化合物である尿素が生成されます。この尿素を体外に排出するのは腎臓の役割であり、タンパク質の摂取量が多いほど、腎臓の負担は増大します。健康な方であれば、通常の食事範囲内でのタンパク質摂取は問題ありませんが、長期間にわたり極端に多い量を摂取し続けると、腎臓に負担がかかる可能性があります。

特に腎機能に問題がある方は、タンパク質の摂取量を制限する必要がある場合があります。研究では、慢性腎臓病の患者さんにおいて、タンパク質の制限が病気の進行を遅らせる可能性が示されています。腎臓に不安がある方や、健康診断で指摘を受けた方は、医療機関で相談し、適切な摂取量を確認することが推奨されます。

また、高タンパク質の食事を続ける場合は、十分な水分摂取を心がけることも大切です。腎臓は、尿素を水に溶かして尿として体外に排出する役割を担っており、水分を多めに摂ることで、尿量が増え尿素の排出がスムーズになります。これにより、腎臓にかかる一時的な負担を軽減する効果が期待できます。腎機能が低下している方は、水分摂取量についても摂取制限が必要なケースがあります。医療機関で指導を受けましょう。

消化器系への影響

過剰なタンパク質摂取は、消化器系にも影響を及ぼすことがあります。タンパク質は消化に時間がかかるため、大量に摂取すると胃腸に負担がかかり、消化不良や便秘を引き起こす可能性があります。特に動物性タンパク質を多く摂取し、食物繊維の摂取が少ない場合、腸内環境が悪化することがあります。

悪玉菌が増加し、有害物質が生成されることで、腸の健康が損なわれるリスクが高まります。バランスの取れた食事を心がけ、野菜や果物、全粒穀物などの食物繊維を十分に摂取することで、腸内環境を良好に保つことができます。タンパク質の摂取量を増やす場合は、同時に食物繊維の摂取も増やすよう意識することが大切です。

また、極端に炭水化物(糖質)の摂取を制限した高タンパク・高脂質食を続けると、体調変化のサインとして、口臭や体臭が強くなるケースも報告されています。これは、エネルギー源が不足した際に体内でケトン体が多く生成されたり、タンパク質の代謝によって生じるアンモニアが排泄しきれずに体内に蓄積したりすることが原因と考えられます。バランスの取れた食事を心がけることで、これらの不快な症状を予防できる可能性があります。過剰摂取による健康リスクを避けるためにも、適切な量を守ることが重要です。

タンパク質摂取における注意点と推奨事項

健康的にタンパク質を摂取するためには、いくつかの注意点を理解し、自身の状態に合わせた調整を行うことが重要です。

個人の健康状態に合わせた調整

タンパク質の必要量は、個人の年齢、性別、体重、活動量、健康状態によって異なります。一般的な推奨量は目安であり、すべての方に当てはまるわけではありません。持病がある方や、特定の薬を服用している方は、タンパク質の摂取量について医師や管理栄養士に相談しましょう。

特に腎臓病、肝臓病、痛風などの疾患がある場合は、タンパク質の摂取を制限する必要があることがあります。腎臓病の方は、タンパク質の代謝産物が体内に蓄積しやすく、病状を悪化させる可能性があります。肝臓病の方も、タンパク質の代謝に負担がかかるため、摂取量を調整する必要があります。痛風の方は、プリン体を多く含む食品(レバー、魚卵など)の摂取を控えることが推奨されます。

妊娠中や授乳中の方は、胎児や乳児の成長のために、通常よりも多くのタンパク質を必要とします。妊娠中期から後期にかけては、1日あたり10g程度の追加摂取が推奨されています。授乳中も同様に、母乳の生成に必要なタンパク質を十分に摂取することが大切です。

多様な食品からのバランス良い摂取

特定の食品だけからタンパク質を摂取するのではなく、さまざまな食品を組み合わせることで、アミノ酸のバランスや他の栄養素も効率よく摂取できます。動物性タンパク質と植物性タンパク質を組み合わせることが推奨されます。

動物性タンパク質は必須アミノ酸をバランスよく含みますが、脂質や飽和脂肪酸も多く含まれることがあります。一方、植物性タンパク質は脂質が少なく、食物繊維やビタミン、ミネラルも豊富です。両方をバランスよく摂取することで、健康的な食生活を実現できます。たとえば、肉料理に大豆製品を加えたり、魚料理に豆類を添えたりすることで、栄養バランスを整えることができます。

加工食品やサプリメントに頼りすぎず、自然な食品からタンパク質を摂取することも大切です。プロテインパウダーなどは便利ですが、食事を補完するものとして位置づけ、基本は通常の食事からタンパク質を摂取するよう心がけましょう。

まとめ

タンパク質は私たちの身体を構成する基本的な栄養素であり、適切な量を効率よく摂取することが健康維持に不可欠です。動物性食品と植物性食品の両方から、バランスよくタンパク質を取り入れることで、必要なアミノ酸を満たすことができます。年齢や活動量に応じた必要量を理解し、過剰摂取による健康リスクにも注意しながら、日々の食生活に取り入れていくことが重要です。自身の健康状態や生活習慣を見直し、必要に応じて医療機関や専門家に相談しながら、適切なタンパク質摂取を心がけましょう。

この記事の監修管理栄養士

注目記事