タンパク質を効率よく吸収するコツ 調理法で栄養価が変わるのをご存じですか?【専門家解説】

動物性食品は、体内で利用されやすい良質なタンパク質を多く含んでいます。肉類や魚介類、卵や乳製品には、必須アミノ酸がバランスよく含まれており、効率的に身体に吸収される特徴があります。鶏むね肉やサーモン、卵などは日常的に取り入れやすい食材といえるでしょう。ここでは、動物性食品に含まれるタンパク質の種類や含有量、効果的な摂取方法について詳しく解説します。健康的な身体づくりに役立つ知識を確認していきましょう。

監修管理栄養士:
中西 真悠(管理栄養士)
2020年3月 女子栄養大学 栄養学部 実践栄養学科 卒業
2020年4月 株式会社野口医学研究所 入社
同年よりフリーの管理栄養士として活動開始、現在に至る
・法人向け健康経営支援サービスの立ち上げと推進(新規および既存顧客への営業活動を主導)
・食と健康に関する指導プログラムの実施(延べ2000人以上を対象にセミナーや測定会を通じて個別指導を実施)
・SNSでの情報発信によるブランディング
∟ Instagramにて食と健康に関する情報を発信し、フォロワー5万人超を達成
∟ 企業のSNS商品撮影代行やレシピ開発を400件以上実施
・サプリメントや雑貨のお客様相談室にてコールセンター業務を担当
・保険調査業務の実務を担当
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タンパク質を豊富に含む動物性食品
動物性食品は、体内で利用されやすい良質なタンパク質を多く含んでおり、必須アミノ酸をバランスよく含むため、効率的に身体に吸収されることが特徴です。
肉類から摂取できるタンパク質
肉類は代表的なタンパク質源であり、種類によって含有量や栄養価が異なります。鶏むね肉は100gあたり約23gのタンパク質を含み、脂質が少ないため健康的な選択肢といえるでしょう。牛肉や豚肉も優れたタンパク質源ですが、部位によって脂質の量が変わってくるため、赤身部分を選ぶことで効率よくタンパク質を摂取できます。
鶏ささみにおいては脂質が少なく、100gあたり約24gのタンパク質を含むため、トレーニングを行う方や体重管理を意識する方に適しています。豚ヒレ肉も脂質が少なく、ビタミンB1を豊富に含むため、エネルギー代謝を高める効果も期待できるでしょう。牛もも肉には鉄分や亜鉛が豊富に含まれており、貧血予防や免疫機能の維持にも役立つ可能性があります。
調理方法によってもタンパク質の摂取効率は変わってきます。焼く、蒸す、茹でるといった調理法は余分な脂質を抑えられるため、健康的にタンパク質を摂取できる方法として推奨されています。ただし、高温で長時間加熱すると、一部のアミノ酸が変性する場合もあるため、調理時間にも配慮するとよいでしょう。
魚介類の良質なタンパク質
魚介類は動物性タンパク質でありながら、DHAやEPAといった不飽和脂肪酸(オメガ3脂肪酸)を豊富に含むため、心臓や血管の健康維持にも貢献する可能性があります。サーモンは100gあたり約22gのタンパク質を含み、同時にオメガ3脂肪酸も摂取できるため、バランスの取れた栄養源といえます。
マグロの赤身は100gあたり約26gと高いタンパク質含有量を誇ります。脂質が少なく、ビタミンB群や鉄分も豊富に含まれているため、栄養価の高い食材として知られています。サバやイワシなどの青魚も、タンパク質とともにDHAやEPAといった必須脂肪酸を摂取できるため、脳機能や血管の健康維持に有用とされています。
貝類やエビ、カニなどの甲殻類も優れたタンパク質源です。特にイカやタコは低カロリーでありながらタンパク質が豊富で、タウリンという栄養素も含まれています。タウリンは肝機能の向上や疲労回復に役立つとされており、健康維持に有用な成分として注目されています。
卵と乳製品に含まれる高品質タンパク質
卵や乳製品は、必須アミノ酸のバランスが良く、消化吸収率が高いことから、効率的なタンパク質源として広く利用されています。日常的に取り入れやすい食材でもあり、さまざまな料理に活用できるでしょう。
卵の栄養価とタンパク質含有量
卵1個(約50g)には約6gのタンパク質が含まれており、卵白と卵黄の両方にタンパク質が分散しています。卵白には主にアルブミンという高品質なタンパク質が含まれ、卵黄には脂溶性ビタミンやミネラルも豊富に含まれています。
卵のタンパク質は、アミノ酸スコアが100という評価を受けており、これは体が必要とする必須アミノ酸が過不足なく含まれていることを意味します。このため、成長期の子どもから高齢の方まで、幅広い年代で有用な栄養源となります。ただし、コレステロール値の管理が必要な方は、医療機関で相談のうえ摂取量を調整することが推奨されます。
調理方法によって消化吸収率が変わることも知られています。半熟状態の卵は消化吸収が良く、効率的にタンパク質を利用できるといわれています。生卵にはアビジンというタンパク質(熱で壊れる性質を持つ)が含まれており、これがビタミンB群の一種であるビオチンの吸収を妨げる可能性があるため、加熱して食べることが一般的に推奨されています。
乳製品から得られるタンパク質
牛乳は200mlあたり約6.6gのタンパク質を含み、カルシウムも同時に摂取できる優れた食品です。ヨーグルトも同様に良質なタンパク質源であり、腸内環境を整える乳酸菌も含まれているため、健康維持に役立つ可能性があります。
チーズはタンパク質が濃縮されており、プロセスチーズ100gあたり約22g、パルメザンチーズでは約44gものタンパク質が含まれています。カルシウムも豊富なため、骨の健康維持にも貢献する可能性があるでしょう。ただし、脂質や塩分も多く含まれるため、摂取量には注意が必要です。
カッテージチーズやギリシャヨーグルトは、脂質が少なくタンパク質が豊富なため、体重管理を意識する方に適しています。特にギリシャヨーグルトは、通常のヨーグルトよりも水分を除去しているため、タンパク質濃度が高くなっています。
植物性タンパク質を含む豆類と穀物
植物性タンパク質は、動物性タンパク質と比べて脂質が少なく、食物繊維やビタミン、ミネラルも豊富に含まれています。環境への負荷が少ないことからも、持続可能な食生活を考えるうえで注目されています。
大豆製品の優れたタンパク質含有量
大豆は「畑の肉」と呼ばれるほどタンパク質が豊富で、100gあたり約33gのタンパク質を含んでいます。大豆製品には豆腐、納豆、豆乳、味噌などがあり、日本の食文化に深く根ざした食材として親しまれています。
豆腐は水分を多く含むため、100gあたりのタンパク質量は木綿豆腐で約6.6g、絹ごし豆腐で約4.9g程度となります。消化吸収が良く、さまざまな料理に活用できるため、日常的に取り入れやすい食材といえるでしょう。
納豆は発酵により栄養価が高まっており、100gあたり約16.5gのタンパク質を含みます。ビタミンK2や食物繊維、納豆菌なども含まれており、腸内環境の改善や骨の健康維持にも役立つとされています。豆乳は200mlあたり約7.2gのタンパク質を含み、牛乳にアレルギーがある方の代替品としても利用されています。コレステロールを含まず、イソフラボンという植物性エストロゲン様物質も含まれているため、女性の健康維持にも有用とされています。
その他の豆類と穀物のタンパク質
レンズ豆やひよこ豆、黒豆などの豆類も優れたタンパク質源です。レンズ豆は100gあたり約9gのタンパク質を含み、鉄分や葉酸も豊富なため、貧血予防に役立つ食材として知られています。ひよこ豆は中東料理でよく使用され、食物繊維やビタミンB群も豊富に含まれています。
穀物では、オートミールや玄米、キヌアなどがタンパク質を含んでいます。オートミールは100gあたり約13gのタンパク質を含み、食物繊維も豊富なため、腸内環境の改善や血糖値の安定化に寄与する可能性があります。
キヌアは完全タンパク質として知られ、すべての必須アミノ酸を含んでいる珍しい穀物です。100gあたり約14gのタンパク質を含み、ミネラルも豊富なため、栄養バランスの優れた食材といえます。ただし、植物性タンパク質は動物性タンパク質と比べて、特定のアミノ酸が不足している場合もあるため、複数の植物性食品を組み合わせることで、アミノ酸バランスを補うことができます。
まとめ
タンパク質は私たちの身体を構成する基本的な栄養素であり、適切な量を効率よく摂取することが健康維持に不可欠です。動物性食品と植物性食品の両方から、バランスよくタンパク質を取り入れることで、必要なアミノ酸を満たすことができます。年齢や活動量に応じた必要量を理解し、過剰摂取による健康リスクにも注意しながら、日々の食生活に取り入れていくことが重要です。自身の健康状態や生活習慣を見直し、必要に応じて医療機関や専門家に相談しながら、適切なタンパク質摂取を心がけましょう。