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バセドウ病と何が違う?一時的にホルモンが漏れ出す「2つの甲状腺炎」の特徴と経過

 公開日:2026/03/05
亜急性甲状腺炎と破壊性甲状腺炎

甲状腺に炎症が生じることで組織が破壊され、蓄えられていた甲状腺ホルモンが血中に漏れ出すことで一時的な機能亢進状態を呈することがあります。バセドウ病とは異なり自然に回復することが多い病態ですが、痛みを伴う亜急性甲状腺炎と痛みを伴わない無痛性甲状腺炎について理解しておくことが大切です。

上田 洋行

監修医師
上田 洋行(医師)

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【経歴】
大阪大学医学部卒業
住友病院、大阪大学医学部附属病院にて勤務
専門は糖尿病・内分泌・代謝内科
【資格】
・日本専門医機構認定内科専門医
・日本糖尿病学会糖尿病専門医
・内分泌代謝・糖尿病内科領域専門医

亜急性甲状腺炎と破壊性甲状腺炎

甲状腺に炎症が生じることで、一時的に甲状腺ホルモンが血中に漏れ出し、機能亢進の状態を呈することがあります。これらは破壊性甲状腺炎と総称され、バセドウ病とは異なる経過をたどります。

亜急性甲状腺炎の特徴と経過

亜急性甲状腺炎は、ウイルス感染が引き金になると考えられている炎症性疾患です。上気道感染の後に発症することが多く、甲状腺の痛みと圧痛を伴うことが特徴です。首の前面に強い痛みを感じ、飲み込むときや首を動かすときに痛みが増強します。この痛みは耳の後ろや下あごに放散することもあり、歯痛や耳痛と間違えられることもあります。

発熱や全身倦怠感を伴うことも多く、風邪と間違えられることがあります。しかし、甲状腺の腫れと痛みが持続する点が風邪とは異なります。血液検査では炎症反応を示すCRPの上昇がみられ、甲状腺ホルモンが一時的に高値を示します。

症状は数週間から数ヶ月で自然に改善することが多く、甲状腺機能亢進の時期を経て、一時的な機能低下の時期を経験した後、正常に戻るパターンが典型的です。痛みに対してはステロイド薬や消炎鎮痛薬が使用されます。症状が強い時期は安静を保ち、無理をしないことが大切です。ほとんどの場合、完全に回復しますが、まれに永続的な甲状腺機能低下症に移行することもあります。

無痛性甲状腺炎の病態

無痛性甲状腺炎は、甲状腺の痛みを伴わない破壊性甲状腺炎です。出産後に発症する産後甲状腺炎もこの一種で、出産後3から6ヶ月以内に発症することが多いとされています。産後の女性では、ホルモンバランスの変化や免疫系の変動により、この病態が生じやすくなると考えられています。

症状は軽度の動悸や疲労感程度で、甲状腺機能亢進症としては比較的軽いことが特徴です。多くの場合、数ヶ月で自然に回復しますが、約20から30%の方は永続的な甲状腺機能低下症に移行することが報告されています。そのため、症状が軽くても経過観察を続けることが重要です。

診断には甲状腺の放射性ヨウ素摂取率の測定が有用です。バセドウ病では取り込みが増加しますが、破壊性甲状腺炎では取り込みが低下するため、鑑別に役立ちます。治療は対症療法が中心で、抗甲状腺薬は効果がありません。動悸などの症状が強い場合は、ベータ遮断薬を使用することもあります。

まとめ

甲状腺機能亢進症は適切な診断と治療により、多くの場合で症状の改善が期待できる疾患です。動悸や体重減少、手の震えといった症状に気づいたら、早めに内科や内分泌内科を受診することが大切です。女性や家族歴のある方は特に注意が必要であり、定期的な健康チェックを心がけることが推奨されます。食事面ではヨウ素含有食品に注意し、バランスの取れた栄養摂取を心がけましょう。症状や治療について不安がある場合は、遠慮せず専門の医師に相談することをおすすめします。

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