食べているのに痩せるのはなぜ?甲状腺ホルモン過剰のサインと動悸・イライラの関係

甲状腺ホルモンの過剰分泌により、心臓や神経、代謝に関わる多様な症状が全身に現れます。初期段階では自覚しにくく、徐々に進行するため見過ごされがちですが、日常生活に支障をきたす前に気づくことが大切です。ここでは循環器系・神経系の症状と代謝亢進に伴う全身症状について、具体的な現れ方を詳しく見ていきましょう。

監修医師:
小坂 真琴(医師)
2022年4月~2024年3月、今村総合病院(鹿児島県鹿児島市)で初期研修を修了
2024年4月よりオレンジホームケアクリニック(福井県福井市) 非常勤医師として在宅診療を行いながら、福島県立医科大学放射線健康管理学講座大学院生として研究に従事
2025年10月よりナビタスクリニックに勤務
週1度、相馬中央病院 (福島県相馬市) 非常勤医師として内科外来を担当
甲状腺機能亢進症の代表的な症状
甲状腺機能亢進症では、過剰な甲状腺ホルモンの影響により全身の代謝が亢進(高まりすぎる)し、多彩な症状が出現します。症状の現れ方には個人差があり、徐々に進行するため初期段階では自覚しにくい場合もあります。
循環器系と神経系に現れる症状
動悸や頻脈は甲状腺機能亢進症で多くみられる症状の一つです。安静時でも心拍数が増加し、1分間に100回以上になることがあります。階段を上ったり軽い運動をしたりした際に、以前よりも息切れを感じやすくなる方も少なくありません。普段と変わらない動作でも、心臓がドキドキする感覚が続く場合は注意が必要でしょう。
手指の震えも特徴的な症状です。両手を前に伸ばした状態で細かい震えが観察されることがあり、字を書くときや箸を持つときに不便を感じる場合があります。この震えは安静時にも続くため、日常生活に支障をきたすこともあるでしょう。手を使う細かな作業が以前よりもやりにくくなったと感じたら、医療機関への相談を検討する価値があります。
神経系の症状としては、イライラ感や落ち着きのなさ、不眠といった精神症状が現れることがあります。些細なことで気分が高ぶったり、集中力が続かなくなったりする状態が続く場合は注意が必要です。夜間に眠れない日が続き、日中の疲労感が蓄積していく悪循環に陥ることもあるため、こうした症状が長引く際は専門の医師に相談することが大切といえます。
代謝亢進に伴う全身症状
体重減少は甲状腺機能亢進症の重要な症状の一つです。食欲は保たれている、あるいは増加しているにもかかわらず、体重が減少していく傾向がみられます。数ヶ月で5kg以上減少するケースも報告されており、特に意識的なダイエットをしていないのに体重が落ち続ける場合は注意が必要でしょう。
発汗の増加や暑がりになることも典型的な症状です。周囲の方が適温と感じる環境でも汗をかきやすく、夏場だけでなく冬でも薄着を好むようになる方もいます。これは基礎代謝が亢進し、体内で熱産生が増加しているためです。会議中や電車内で一人だけ汗をかいている状況が続くようであれば、甲状腺機能の評価を検討する価値があるかもしれません。
疲労感や筋力低下も見過ごせない症状といえます。特に階段の上り下りや立ち上がる動作で筋力の低下を自覚することがあり、日常動作に時間がかかるようになる場合があります。以前は問題なくできていた動作が困難になってきたと感じたら、早めに医療機関を受診することが推奨されます。
まとめ
甲状腺機能亢進症は適切な診断と治療により、多くの場合で症状の改善が期待できる疾患です。動悸や体重減少、手の震えといった症状に気づいたら、早めに内科や内分泌内科を受診することが大切です。女性や家族歴のある方は特に注意が必要であり、定期的な健康チェックを心がけることが推奨されます。食事面ではヨウ素含有食品に注意し、バランスの取れた栄養摂取を心がけましょう。症状や治療について不安がある場合は、遠慮せず専門の医師に相談することをおすすめします。



