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タバコで認知症リスクが1.8倍に! 脳の健康を守るための禁煙のすすめ【医師解説】

 公開日:2025/11/19
認知機能の低下と神経疾患のリスク

長年の喫煙は記憶力や判断力といった認知機能を徐々に低下させ、認知症発症のリスクも高めることが研究で示されています。脳血管への悪影響や神経細胞へのダメージが蓄積することで、加齢に伴う脳の変化が加速します。認知機能への影響メカニズムと、脳卒中後の回復過程における喫煙の悪影響について説明します。

松本 学

監修医師
松本 学(きだ呼吸器・リハビリクリニック)

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兵庫医科大学医学部卒業 。専門は呼吸器外科・内科・呼吸器リハビリテーション科。現在は「きだ呼吸器・リハビリクリニック」院長。日本外科学会専門医。日本医師会認定産業医。

認知機能の低下と神経疾患のリスク

長期的な喫煙は、認知機能の低下や神経変性疾患のリスクを高める可能性が指摘されています。加齢に伴う脳の変化を加速させる要因として注意が必要です。

記憶力・判断力への長期的影響

喫煙が認知機能に及ぼす影響については、複数の疫学研究が行われています。中年期から高齢期にかけての追跡調査では、喫煙者は非喫煙者と比べて記憶力や処理速度、実行機能などの認知能力の低下が速いことが示されています。

これは、喫煙による脳血管の動脈硬化や微小血管障害が関与していると考えられています。脳への血流が慢性的に低下することで、神経細胞への酸素や栄養供給が不足し、徐々に機能が低下します。また、喫煙による酸化ストレスの増加も、神経細胞のダメージにつながります。

認知症のリスクについては、喫煙者は約1.3〜1.8倍高いことが複数の研究で報告されています。特に血管性認知症では関連が強く、約1.5〜2倍のリスク増加が認められます。アルツハイマー型認知症についても、喫煙はリスク因子の一つと考えられていますが、その程度は血管性認知症ほど明確ではありません。

脳卒中後の回復過程への悪影響

脳卒中を発症した後も喫煙を続けると、回復過程に悪影響を及ぼします。脳卒中後の喫煙継続者は、再発リスクが約2〜3倍に増加します。これは血管の状態がさらに悪化し、新たな血栓形成や出血が起こりやすくなるためです。

また、リハビリテーションの効果も減弱します。喫煙による酸素運搬能力の低下は、損傷した脳組織の修復を妨げ、機能回復を遅らせます。運動機能や言語機能の改善度合いが、禁煙者と比べて低いことが報告されています。

さらに、喫煙は抗血小板薬や抗凝固薬といった脳卒中の再発予防薬の効果を減弱させる可能性もあります。薬物代謝への影響や血管内皮機能の障害により、薬剤の本来の効果が十分に発揮されにくくなります。

脳卒中後の禁煙は、いつ始めても遅すぎることはありません。発症後すぐに禁煙した場合、数週間から数ヶ月で血管機能が改善し始め、再発リスクも徐々に低下します。医療機関では脳卒中後の禁煙支援プログラムを提供している場合もあり、専門的なサポートを受けることで禁煙の成功率が高まります。

まとめ

タバコの影響は身体、精神、社会生活の広範囲に及び、その多くは深刻かつ不可逆的です。しかし、禁煙によって得られる健康改善効果は明確で、禁煙開始から時間経過とともに段階的にリスクが低下します。禁煙が困難に感じられる場合でも、医療機関での専門的なサポートを活用することで成功率は大きく向上します。自身の健康と生活の質の向上のため、禁煙を検討されている方は、呼吸器内科や禁煙外来への相談をおすすめします。

この記事の監修医師