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味噌汁に含まれる塩分の胃がん発症への影響と、大豆製品による乳がん・大腸がんの予防効果【医師解説】

 公開日:2025/11/20

味噌汁の摂取頻度とがんリスクの関連について、日本を中心に複数の疫学研究が実施されてきました。特に胃がんと塩分摂取の関係は長年議論されており、また乳がんや大腸がんとの関連についても研究が進められています。ここでは現在得られている科学的根拠を整理し、バランスの取れた理解を深めていきます。

武井 香七

監修管理栄養士
武井 香七(管理栄養士)

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帝京平成大学健康メディカル学部健康栄養学科卒業 横浜未来ヘルスケアシステム、戸塚共立第一病院3年7ヶ月勤務 株式会社コノヒカラ、障がい者グループホーム半年勤務 その後フリーランスを経て株式会社Wellness leadを設立。栄養士事業と健康事業を行なっている。

保有免許・資格
管理栄養士資格

味噌汁とがんに関する研究

味噌汁の摂取頻度とがんリスクの関連について、日本を中心に複数の疫学研究が実施されています。胃がんと塩分摂取の関係、その他のがんとの関連研究について科学的根拠に基づいて整理します。

胃がんと塩分摂取の関係

胃がんのリスク因子として、高塩分食品の摂取が長年指摘されてきました。塩分は胃粘膜を傷害し、ヘリコバクター・ピロリ菌による炎症を悪化させる可能性があります。慢性的な胃粘膜の炎症と修復の繰り返しが、細胞の変異と胃がん発生につながると考えられています。 味噌汁に含まれる塩分もこの観点から注意が必要です。しかし実際の研究結果は単純ではありません。いくつかの研究では、味噌汁の摂取頻度が高い群で胃がんリスクが上昇する傾向が見られましたが、別の研究では明確な関連が認められなかったものもあります。これは塩分濃度、具材の種類、味噌の製法、個人のピロリ菌感染状態などの要因が複雑に絡み合うためです。 重要なのは、減塩味噌の使用や出汁の工夫によって塩分濃度を下げること、そして野菜を多く含む具材によって抗酸化物質を補給することです。味噌そのものに含まれる機能性成分は、塩分の有害作用を部分的に相殺する可能性も示唆されています。

その他のがんとの関連研究

乳がんについては、大豆製品の摂取が予防的に働く可能性を示す研究があります。イソフラボンのエストロゲン様作用が、乳腺組織に対して保護的に働くというメカニズムが提案されています。特に思春期からの大豆製品摂取が、成人後の乳がんリスク低減に関連する可能性が日本人を対象とした研究で報告されています。 大腸がんに関しても、大豆製品の摂取が保護的に働く可能性が示唆されています。食物繊維と発酵由来の成分が腸内環境を改善し、発がん物質の産生や吸収を抑制する可能性があります。また抗酸化物質による細胞保護作用も関与していると考えられます。 前立腺がんについては、イソフラボンの摂取がリスク低減に関連するという報告と、明確な関連が見られないという報告の両方が存在します。これは人種差、遺伝的背景、イソフラボンの代謝能力の個人差が影響している可能性があります。

まとめ

味噌汁は日本の伝統的な食文化の中で受け継がれてきた栄養価の高い食品であり、適切に摂取することで多様な健康効果が期待されます。発酵によって生成される機能性成分、バランスの良いアミノ酸組成、具材による栄養素の補完は、現代の栄養学の観点からも評価される要素です。一方で塩分濃度への配慮や特定の疾患を持つ方の制限事項を理解し、個々の健康状態に応じた適切な摂取方法を選択することが重要です。気になる症状がある場合や持病がある場合は、かかりつけ医や管理栄養士に相談し、ご自身に適した食事パターンを確立してください。

この記事の監修管理栄養士