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「味噌汁」は血圧を上げる? 賢い人がやっている「塩分と相殺」する具材選びと血管ケアの新常識【管理栄養士監修】

 公開日:2025/11/13

味噌汁の摂取は消化器系や循環器系にさまざまな影響を及ぼす可能性があります。発酵食品としての整腸作用や消化酵素による補助的な働きが消化管の健康維持に寄与することが期待されています。また血圧や血管機能、代謝機能への作用についても研究が進められており、これらの関連性を理解することが重要です。

武井 香七

監修管理栄養士
武井 香七(管理栄養士)

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帝京平成大学健康メディカル学部健康栄養学科卒業 横浜未来ヘルスケアシステム、戸塚共立第一病院3年7ヶ月勤務 株式会社コノヒカラ、障がい者グループホーム半年勤務 その後フリーランスを経て株式会社Wellness leadを設立。栄養士事業と健康事業を行なっている。

保有免許・資格
管理栄養士資格

消化機能や腸内環境、循環器系などへの影響

味噌汁の摂取はさまざまな影響が考えられます。発酵食品としての整腸作用と消化酵素の働きが消化管の健康維持に寄与する可能性や、循環器系と代謝機能に与える影響については複数の観点から研究が進められています。血圧や血管機能への作用、代謝機能との関連を理解することが重要です。

発酵食品としての整腸作用

味噌は発酵食品であり、発酵過程で生成された微生物由来の成分や代謝産物が腸内環境に影響を与えます。発酵によって増えた乳酸菌や酵母の一部は腸に到達し、腸内細菌叢のバランス維持に寄与する可能性があります。ただし加熱調理される味噌汁では生きた菌の多くは死滅するため、主な効果は菌体成分や代謝産物によるものと考えられています。 味噌に含まれる食物繊維は腸内細菌の餌となり、短鎖脂肪酸の産生を促します。短鎖脂肪酸は大腸粘膜のエネルギー源となり、腸管バリア機能の維持に関わります。また大豆オリゴ糖も腸内の善玉菌を増やす働きを持ち、腸内環境の改善に寄与します。 規則的な味噌汁の摂取は排便習慣の改善につながる可能性があります。温かい汁物は胃腸を温め、腸の蠕動運動を促進する効果が期待されます。朝食時に味噌汁を摂ることで胃結腸反射が起こりやすくなり、自然な排便リズムの形成を助けることがあります。

消化酵素の補助的役割

味噌に含まれる消化酵素は、摂取した食品の分解を助ける補助的役割を果たします。プロテアーゼはタンパク質をペプチドやアミノ酸に分解し、アミラーゼは炭水化物の消化を助けます。これらの酵素は消化器官への負担を軽減し、栄養素の吸収効率を高める可能性があります。 味噌汁として摂取することで水分も同時に補給され、消化管内での食物の移動がスムーズになります。適度な水分は消化液の分泌を促し、栄養素の溶解と吸収を助けます。また温かい汁物は胃の血流を増やし、消化機能を高める効果も期待できます。

血圧と血管機能への作用

味噌汁には塩分が含まれるため血圧上昇を懸念する声がありますが、実際の影響は単純ではありません。研究によれば、味噌に含まれるペプチドやイソフラボンが血圧上昇を抑制する可能性が示唆されていますが、塩分量や個人差により結果は異なります。また具材として使用される野菜や海藻に含まれるカリウムは、ナトリウムの排出を促進し血圧調整に寄与します。 大規模疫学調査では、味噌汁の摂取頻度と血圧の関係について一定の見解が得られていない側面もあります。これは味噌汁の塩分濃度や具材の種類、個人の食塩感受性、全体の食事パターンなど多くの要因が複雑に絡み合うためです。重要なのは減塩味噌の使用や具材の工夫によって塩分摂取を適切に管理することです。 血管内皮機能の改善についても研究が行われています。イソフラボンや抗酸化物質が血管の柔軟性を保ち、動脈硬化の進行を遅らせる可能性が指摘されています。ただしこれらの効果は味噌汁単独ではなく、バランスの取れた食事全体の中で評価する必要があります。

代謝機能と体重管理

味噌汁は低カロリーでありながら満足感を得やすい食品です。食事の最初に温かい味噌汁を摂ることで、食事のペースが緩やかになり、過食を防ぐ効果が期待できます。また汁物によって胃が適度に満たされることで、その後の食事量が自然と調整される可能性があります。 大豆タンパク質は代謝を高める作用を持つとされています。タンパク質の消化吸収には他の栄養素よりも多くのエネルギーが必要であり、この食事誘発性熱産生が基礎代謝の維持に寄与します。また良質なタンパク質の摂取は筋肉量の維持にも重要で、加齢に伴う筋肉減少の予防につながります。

まとめ

味噌汁は日本の伝統的な食文化の中で受け継がれてきた栄養価の高い食品であり、適切に摂取することで多様な健康効果が期待されます。発酵によって生成される機能性成分、バランスの良いアミノ酸組成、具材による栄養素の補完は、現代の栄養学の観点からも評価される要素です。一方で塩分濃度への配慮や特定の疾患を持つ方の制限事項を理解し、個々の健康状態に応じた適切な摂取方法を選択することが重要です。気になる症状がある場合や持病がある場合は、かかりつけ医や管理栄養士に相談し、ご自身に適した食事パターンを確立してください。

この記事の監修管理栄養士