【バセドウ病の正体】なぜホルモンが出すぎる?自己免疫疾患としての発症原因とは

バセドウ病がどのようにして発症するのか、その仕組みを理解することは治療を進めるうえで大切です。自己免疫疾患としての特性を知ることで、なぜさまざまな症状が現れるのかが明確になります。ここでは免疫システムの異常と甲状腺ホルモンの関係について詳しく説明します。

監修医師:
久高 将太(琉球大学病院内分泌代謝内科)
目次 -INDEX-
バセドウ病の発症メカニズム
バセドウ病がなぜ発症するのか、そのメカニズムを理解することは適切な治療を受けるうえで重要です。自己免疫疾患としての特性を知ることで病態への理解が深まります。
自己免疫反応の異常
バセドウ病は自己免疫疾患の一種です。本来、免疫システムは外部から侵入した細菌やウイルスなどの異物を攻撃して身体を守る役割を担っています。しかし、何らかの原因で免疫システムが誤作動を起こし、自分自身の組織を攻撃してしまうことがあります。
バセドウ病では、甲状腺を刺激するホルモン(TSH)の受容体に対する抗体が産生されます。これをTSH受容体抗体(TRAb)と呼び、この抗体が甲状腺を刺激し続けることで甲状腺ホルモンが過剰に分泌されます。通常、脳の下垂体から分泌されるTSHによって甲状腺ホルモンの産生が調節されていますが、TRAb抗体はこの調節機構を無視して甲状腺を刺激し続けるため、ホルモンが過剰になるのです。
甲状腺ホルモンの過剰分泌
甲状腺は首の前面、のど仏の下に位置する蝶のような形をした臓器です。ここで産生される甲状腺ホルモン(サイロキシンとトリヨードサイロニン)は全身の細胞の代謝を調節する重要な役割を担っています。適正量であれば身体機能を正常に保ちますが、過剰になると代謝が異常に亢進し、さまざまな症状が現れます。
バセドウ病では、TSH受容体抗体の刺激により甲状腺が腫大し、甲状腺ホルモンが過剰に産生されます。血液中のホルモン濃度が上昇することで、心臓、消化器、神経系、筋肉など全身の臓器が過剰に刺激された状態となります。この状態を甲状腺機能亢進症と呼び、バセドウ病の本態となります。
まとめ
バセドウ病は多様な症状を引き起こす自己免疫疾患ですが、早期発見と適切な治療により症状をコントロールすることが可能です。動悸や体重減少、手の震え、目の症状など気になる変化があれば、内分泌内科や甲状腺専門外来を受診することが推奨されます。特に女性や若年者、家族歴のある方、喫煙習慣のある方はリスクが高いため注意が必要です。甲状腺機能の検査は血液検査で簡単に行えます。症状を放置すると心臓や骨に影響が出ることもあるため、早めの対処が重要です。適切な治療により多くの方が日常生活を問題なく送れるようになるでしょう。
気になる症状がある場合には、内科・内分泌内科や眼科を受診し、専門的な評価と治療を受けることをおすすめします。




