マンジャロ(チルゼパチド)は、肥満症治療の新しい薬剤として注目を集めています。GLP-1受容体とGIP受容体の両方に作用する二重アゴニストという独自の作用機序により、従来の治療薬とは異なるアプローチで体重減少効果をもたらします。この薬剤の特徴と適応について詳しく解説します。
監修医師:
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)
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群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。
マンジャロによる肥満症治療の詳細
マンジャロ(チルゼパチド)は、肥満症治療の新しい薬剤です。GLP-1受容体とGIP受容体の両方に作用する二重アゴニストとして、従来の治療薬とは異なる作用機序を有しています。この薬剤の登場により、肥満症治療の選択肢が大幅に拡大され、従来の治療法では効果が限定的だった患者さんにも新たな希望が提供されています。
マンジャロの作用機序と特徴
マンジャロは、インクレチンホルモンであるGLP-1とGIPの受容体に同時に作用することで、血糖降下作用と体重減少効果を発揮します。GLP-1受容体アゴニストとしての作用により、食後のインスリン分泌促進、グルカゴン分泌抑制、胃内容物の排出遅延などの効果をもたらします。
さらに、GIP受容体への作用により、より強力な血糖降下効果と体重減少効果が期待できます。この二重の作用機序により、単一の受容体に作用する薬剤と比較して、より効果的な治療成果が報告されています。週1回の皮下注射により投与されるため、患者さんの服薬負担軽減にも寄与します。
薬剤の特徴として、投与開始時は低用量から開始し、患者さんの耐性や効果を確認しながら段階的に増量していく点が挙げられます。この漸増方法により、副作用の発現を抑えながら、適切な治療効果を得ることが可能とされています。また、投与部位の回転や適切な保存方法など、注射薬特有の管理方法についても患者さんへの十分な指導が重要です。
マンジャロの適応と使用上の注意点
マンジャロの適応は、2型糖尿病の治療から始まりましたが、肥満症治療への応用も期待されています。適応となる患者さんの条件は、医学的に肥満症の診断を受けた方で、生活習慣の改善だけでは十分な効果が得られない場合です。
使用上の注意点として、糖尿病性網膜症、膵炎の既往、甲状腺髄様がんの既往または家族歴がある方は慎重な適応判断が必要です。また、妊娠中や授乳中の方への使用は推奨されておらず、妊娠の可能性がある女性では適切な避妊が必要とされています。
治療開始前には、詳細な問診と検査が実施されます。血液検査では、膵酵素、甲状腺機能、腎機能などの評価が行われ、治療中も定期的な監視が継続されます。患者さんには、低血糖症状の認識方法、注射部位の管理、副作用出現時の対応方法などについて十分な教育が提供されます。投与スケジュールの遵守と定期的な受診の重要性についても、患者さんとの十分な話し合いが必要です。
まとめ
肥満症治療は多面的なアプローチが重要であり、薬物療法、漢方治療、食事療法それぞれに特徴と適応があります。患者さん個々の状態に応じた治療法の選択と、継続可能な治療計画の策定が成功の鍵となります。今後も新しい治療選択肢の開発と制度改善により、より効果的な肥満症治療の提供が期待されます。
肥満症の治療は、単なる「ダイエット」ではなく、健康寿命を延ばすための医療的取り組みです。薬物療法、漢方、食事療法のいずれも、医師の指導のもとで正しく行うことで効果が期待できます。一人で悩まず医師に相談して、自分に合った治療法を見つけましょう。