「腎細胞がん」を疑う初期症状・生存率はご存知ですか?医師が監修!
腎細胞がんという病気をご存じでしょうか。がんといえば肺がんや胃がん、女性であれば乳がんを思い浮かべる方も多いかもしれません。
腎細胞がんは日本の人口10万あたり男性が約28人、女性が約13人と比較的男性に多い病気です。また高齢になるにつれて発生頻度も高くなります。
そのため早期発見・早期治療が大切です。しかし、初期症状がほとんどなくみつけるのが困難な病気でもあります。
そこで今回は、腎細胞がんの症状・発症の原因・治療方法などについてご紹介します。
※この記事はMedical DOCにて『「腎細胞がん」を疑う初期症状・原因はご存知ですか?医師が監修!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。
監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)
目次 -INDEX-
腎細胞がんの診断と治療
受診を検討するべき腎細胞がんの初期症状はありますか?
- 発熱
- 貧血
- 疲れやすい
- 体重減少
腎細胞がんの主な症状には血尿・わき腹が痛む・わき腹にこぶができるといった症状が現れます。上記のような症状がみられる場合は腎細胞がんの進行が疑われるため泌尿器科での受診を検討してください。
どのような検査で腎細胞がんと診断されますか?
- エコー検査(超音波検査)
- CT検査(ダイナミックCT)
- MRI検査
- 骨シンチグラフィ
- PET検査
一般的には尿検査・血液検査が行われますが、初期段階では異常がほとんど出ないことから早期発見には適していません。そのため腎細胞がんの発見には、超音波検査やダイナミックCTが有効とされています。
他の臓器やリンパへの転移の確認にはCT検査が用いられます。脳転移の確認にはダイナミックCTが推奨されるケースが多いです。骨への転移の確認には骨シンチグラフィ・MRI検査・PET検査が行われます。
治療方法を教えてください。
- 外科手術(腎摘除術、腎部分切除術)
- 放射線治療
- 薬物治療(免疫療法)
- 監視療法
- 対症療法・緩和ケア
腎細胞がんの治療は主に外科手術による切除が一般的です。手術には腎摘除術・腎部分切除術の2つの術式が用いられます。
一般的にはがんがある腎臓と周囲の脂肪組織を切除する腎摘除術が行われますが、がんが小さい場合には腎部分切除術が適用されるでしょう。転移がない場合の腎細胞がんの治療としては、放射線治療は効果が少ないことから実施させるケースは少ないでしょう。
腎細胞がんが他の部位に転移している場合には腎摘除術を行った上で、薬物療法が行われます。薬物治療は免疫の働きを高めるチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)や免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を併用した免疫療法が行われます。
薬物治療には薬ごとにさまざまな副作用があるため、事前に担当医に確認しておきましょう。がんが小さく腎臓内にとどまっている場合には、定期的に画像検査を行って経過観察を行う監視療法があります。外科手術が難しいケースやがんが全身に広がっている場合には、患者の生活を優先した対症療法・緩和ケアが適用されるでしょう。
腎細胞がんの生存率を教えてください。
腎臓の周囲組織にある場合は63~77%、リンパなどへの転移がある場合は38~80%、他の部位への転移では11~30%とさまざまです。また発熱や体重減少などの症状がみられる場合の予後は不良のケースが多いでしょう。
編集部まとめ
腎細胞がんは初期段階では自覚症状がほとんどないため、日常生活の中では発見が難しい病気です。
血尿・貧血・発熱といった症状が出た際には、大きな病気を抱えていない状態でもなるべく検査を受けるようにしましょう。
肥満・喫煙・高血圧などが見込まれる方も腎細胞がんを発症するリスクが高いため、注意が必要です。
早期発見による早期治療が生存率を高めることにつながります。なるべく定期的な検診を心がけましょう。
参考文献