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「腎細胞がん」を疑う初期症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/06/15
「腎細胞がん」を疑う初期症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

腎細胞がんという病気をご存じでしょうか。がんといえば肺がんや胃がん、女性であれば乳がんを思い浮かべる方も多いかもしれません。

腎細胞がんは日本の人口10万あたり男性が約28人、女性が約13人と比較的男性に多い病気です。また高齢になるにつれて発生頻度も高くなります。

そのため早期発見・早期治療が大切です。しかし、初期症状がほとんどなくみつけるのが困難な病気でもあります。

そこで今回は、腎細胞がんの症状・発症の原因・治療方法などについてご紹介します。

村上 知彦

監修医師
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)

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長崎大学医学部医学科 卒業 / 九州大学 泌尿器科 臨床助教を経て現在は医療法人 薬院ひ尿器科医院 勤務 / 専門は泌尿器科

腎細胞がんの症状と原因

発見する医者

腎細胞がんとはどのような病気ですか?

腎臓は尿を作る「腎実質」と、尿が集まる「腎盂」に分けられます。
腎実質にある尿細管の細胞が異常を起こし、がん化して悪性腫瘍となったものが腎細胞がんです。一口に腎細胞がんといっても種類や性質はさまざまで、中でも腎臓がんの約8割を占めているのが「淡明細胞型腎細胞がん」です。
一般的に腎細胞がんといえばこのがんといわれるほど大きな割合を占めています。同じ腎臓にできる悪性腫瘍の一つに腎盂がんがありますが、尿路上皮から発生するがんであり性質や治療法が異なることから、腎細胞がんには含まれません。
また腎細胞は初期症状がほとんどなく、他の病気の検査の際に偶然発見されることが多いです。そのため症状が進み肺や脳に転移してから、がんが見つかるというケースも少なくありません。

症状を教えてください。

腎細胞がんは初期段階では目立った症状はありません。そのため、以前までは早期発見が難しいとされるがんでした。
昨今ではエコーやCTなどの画像検査の進歩に伴い、健康診断や他の病気が疑われる検査の際に、無症状のまま発見されるケースが多くなりました。腎細胞がんも他のがんと同様に、初期段階で発見できれば再発することなく治療が可能です。
症状が進行すると血尿・発熱・貧血・腰背中痛などを引き起こします。

発症の原因を教えてください。

腎細胞がんを発症する危険因子として、肥満・喫煙・高血圧などが挙げられます。また長期にかけて腎臓の透析療法を受けていると、腎細胞がんを発症するリスクが高まるでしょう。
透析療法とは、血液のろ過が十分に行えず水分や老廃物のコントロールができなくなった末期の腎臓に対して、人工的に血液のろ過を行う処置です。また透析患者は透析でない方と比較して、腎細胞がんの発症率が数十倍にもなるといわれています。

どのような方が腎細胞がんになりやすいですか?

腎細胞がんになるリスクが高い方としては以下の要因が挙げられます。

  • 肥満
  • 喫煙者
  • 高血圧
  • 動物性脂肪の多い食事
  • 遺伝
  • 化学物質やカドミウムなどの有害物質を扱う仕事に従事している

肥満・喫煙者・高血圧の方は腎細胞がんを発症するリスクの高い危険因子として挙げましたが、動物性脂肪の多い食事を好む方も血流の悪化を招くため腎細胞がんになりやすいです。石油関連の化学物質やカドミウムなどの金属を扱う仕事に従事している方も、注意が必要です。
化学物質やカドミウムは人体に有害な重金属のため、腎機能に障害を与える発がん性物質として扱われています。中でも腎毒性である尿細管機能障害へのリスクが高いです。
また身内にフォン・ヒッペル・リンドウ病(VHL)など遺伝性の高い疾患の発症歴のある方がいる場合、高確率で腎細胞がんを発症すると考えられています。

腎細胞がんの診断と治療

病院

受診を検討するべき腎細胞がんの初期症状はありますか?

以下のような症状が出た場合には受診を検討しましょう。

  • 発熱
  • 貧血
  • 疲れやすい
  • 体重減少

腎細胞がんの主な症状には血尿・わき腹が痛む・わき腹にこぶができるといった症状が現れます。上記のような症状がみられる場合は腎細胞がんの進行が疑われるため泌尿器科での受診を検討してください。

どのような検査で腎細胞がんと診断されますか?

腎細胞がんの診断には以下の画像検査が行われます。

  • エコー検査(超音波検査)
  • CT検査(ダイナミックCT)
  • MRI検査
  • 骨シンチグラフィ
  • PET検査

一般的には尿検査・血液検査が行われますが、初期段階では異常がほとんど出ないことから早期発見には適していません。そのため腎細胞がんの発見には、超音波検査やダイナミックCTが有効とされています。
他の臓器やリンパへの転移の確認にはCT検査が用いられます。脳転移の確認にはダイナミックCTが推奨されるケースが多いです。骨への転移の確認には骨シンチグラフィ・MRI検査・PET検査が行われます。

治療方法を教えてください。

腎細胞がんには進行度によって以下の治療が行われます。

  • 外科手術(腎摘除術、腎部分切除術)
  • 放射線治療
  • 薬物治療(免疫療法)
  • 監視療法
  • 対症療法・緩和ケア

腎細胞がんの治療は主に外科手術による切除が一般的です。手術には腎摘除術・腎部分切除術の2つの術式が用いられます。
一般的にはがんがある腎臓と周囲の脂肪組織を切除する腎摘除術が行われますが、がんが小さい場合には腎部分切除術が適用されるでしょう。転移がない場合の腎細胞がんの治療としては、放射線治療は効果が少ないことから実施させるケースは少ないでしょう。
腎細胞がんが他の部位に転移している場合には腎摘除術を行った上で、薬物療法が行われます。薬物治療は免疫の働きを高めるチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)や免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を併用した免疫療法が行われます。
薬物治療には薬ごとにさまざまな副作用があるため、事前に担当医に確認しておきましょう。がんが小さく腎臓内にとどまっている場合には、定期的に画像検査を行って経過観察を行う監視療法があります。外科手術が難しいケースやがんが全身に広がっている場合には、患者の生活を優先した対症療法・緩和ケアが適用されるでしょう。

腎細胞がんの生存率を教えてください。

腎細胞がんの生存率を表す指標の一つとして、5年生存率があります。腎臓にとどまっている小さながんであれば、約90%の割合で治癒が可能です。
腎臓の周囲組織にある場合は63~77%、リンパなどへの転移がある場合は38~80%、他の部位への転移では11~30%とさまざまです。また発熱や体重減少などの症状がみられる場合の予後は不良のケースが多いでしょう。

腎細胞がんの予後と余命

手を握る

腎細胞がんは治りますか?

腎細胞がんは進行度に合わせて適切な処置を行うことで治療が可能です。早期に発見するほど治癒率は高くなります。
腎細胞がんは初期症状がほとんどないため早期発見が難しい病気ですが、画像検査の進歩により発見率は向上しています。尿検査や血液検査では異常を感知できない場合が多いため、エコー検査やCT検査による画像検査を受診しましょう。定期的な検診が早期発見・早期治療につながります。

腎細胞がんは転移しやすいのでしょうか?

腎臓は血管が多い臓器であるため、脳・肺・骨・リンパ・肝臓といった組織に転移する可能性があります。特に肺・骨・リンパへの転移が多いです。
転移した組織によって治療法が異なり、主に外科手術・薬物治療を中心とした治療が行われます。また骨や脳に転移した場合には、まれに放射線治療が実施されるケースもあります。

腎細胞がんと診断された場合の余命を教えてください。

腎細胞がんの5年生存率は腎臓にとどまる早期の段階であれば、約90%と高い確率で治癒が可能です。しかし、進行が進み各組織へ転移するたびに生存率は低下していきます。
がんが脳や全身に転移した際には手術療法による手術が行えなくなるため、放射線治療や手術が危険な状態には対症療法や緩和ケアが施されるでしょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

腎細胞がんは進行が進み転移が増えるごとに生存率が低くなる病気です。そのため早期発見・早期治療が重要です。
血尿・貧血などの自覚症状が出た場合には検査を受けましょう。健康診断などでも発見される可能性があるため、定期的に検診を受けることをおすすめします。

編集部まとめ

女医
腎細胞がんは初期段階では自覚症状がほとんどないため、日常生活の中では発見が難しい病気です。

血尿・貧血・発熱といった症状が出た際には、大きな病気を抱えていない状態でもなるべく検査を受けるようにしましょう。

肥満・喫煙・高血圧などが見込まれる方も腎細胞がんを発症するリスクが高いため、注意が必要です。

早期発見による早期治療が生存率を高めることにつながります。なるべく定期的な検診を心がけましょう。

この記事の監修医師