「尿膜管がん」の発見が遅れたときのリスクはご存知ですか?【医師監修】
尿膜管がんとは、尿膜管と呼ばれる部位にがんが発生する病気です。あまり聞き慣れない部位であるため、この病気を知らない方も多いでしょう。
非常に珍しいがんであり、症状が少ないため気づくのが遅れる可能性があります。しかし、悪化すると他のがん同様に転移などの心配があるため注意が必要です。
早期発見のためにも、尿膜管がんについて理解しておきましょう。
尿膜管がんの早期発見するためのポイント・治療方法・予防方法なども詳しく解説するので、参考にしてください。
※この記事はMedical DOCにて『「尿膜管がん」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。
監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
目次 -INDEX-
尿膜管がんの早期発見と検査について
尿膜管がんはなぜ早期発見が難しいのでしょうか。
- 初期症状がほとんどない
- 症例が少ないため疑われない
- 検査が困難
1つ目の理由は、初期症状がほとんどない点です。通常、尿膜管は出生後には閉じられておりがん化することはほとんどありません。また、膀胱外にあることから無症状のまま時間が経過してしまうのです。そのため、痛みなどの症状が出始めた時には、がんがある程度進行しています。
2つ目の理由は、症例が少ないため疑われない点です。先述した通り、尿膜管がんは膀胱がんの中でもさらに症例が少ない病気です。一般的ではないため、医師が尿膜管にできた腫瘍まで疑うケースが少なく、検査や診断が遅れる場合があります。
3つ目の理由は、検査が困難である点です。尿膜管は尿管の奥に存在しており検査が難しい場合があります。専用の医療機器による検査が必要であるため簡単にできない場合があり、発見が遅れてしまうのです。
尿膜管がんの発見が遅れたときのリスクを教えてください。
- 他臓器への転移
- 治療の困難化
発見が遅れた時のリスクの1つとして、他臓器への転移が挙げられます。発見までの期間が長ければ遠隔臓器にも手にする可能性が考えられるため非常にリスクは高いです。さらに、治療の困難化を招く可能性もリスクに挙げられます。
治療は切除が可能かどうかで別れます。遠隔転移がなく、切除が可能と考えられる範囲にがんがとどまっている場合には、第一に外科的手術を検討します。通常は、腫瘍のある部を含む膀胱壁から臍にいたる尿膜管を一塊として切除する手術が一般的です。
進行した尿膜管がんに対しては、進行膀胱がんと同様に膀胱全摘術が検討されることもあります。しかし、進行した尿膜管がんは、むしろ腹腔内に散らばることが多く、外科的手術の適応とはならない場合が少なくありません。
がんの進行している範囲に応じて、手術の術式が異なります。がんが進行して切除不能な場合やすでに他の臓器に転移がある場合には、病状の進行を抑える目的で薬物療法を行います。
尿膜管がんの検査方法が知りたいです。
- 膀胱鏡検査
- CT検査
- MRI検査
- 尿検査
検査方法の1つが、膀胱鏡検査です。径の細い専用のスコープを尿動向から挿入し、膀胱・尿道・前立腺などを観察する方法で、尿膜管の検査にも使われます。この検査を用いて腫瘍の一部が採取できれば生検が可能となり、尿膜管がんの確定診断が行えます。
次にCT検査やMRI検査などの画像検査も有効な方法です。病巣の大きさ・形状・転移状況などを画像によって確認できます。また、尿検査は尿に含まれる細胞などを検査する方法です。
編集部まとめ
尿膜管がんは、尿膜管と呼ばれる部分にがんが発生する病気です。がんの発生率は非常に稀であるため、症例が少なく効果的な治療方法も分かっていません。
また、発見が遅れる傾向がある点も大きな特徴です。症状がほとんどないため、早期発見が難しいのです。
早期発見のためには、定期的に検診などを受けてがんの発病にいち早く気づけるようにしておきましょう。
また、少しでも異変を感じた場合には専門の医療機関に相談しましょう。早期発見と早期治療が、完治の可能性を上げ、再発リスクを下げられる効果的な方法です。
参考文献