「急性下肢動脈閉塞症」の診断方法や治療法はご存知ですか?医師が監修!
急性下肢動脈閉塞症は、足の痛みや感覚が無くなるといった症状が起こり、僅か数時間の間に、足の機能が回復できない程悪化してしまう病です。
主な原因は、心疾患や動脈硬化などの持病により血管が詰まって、足の血流が滞ることです。
血液が突如行き届かなくなった足は急激に悪化していくため、発症後は一刻を争う状態となり、迅速で適切な処置が回復の鍵となります。
今回は、急性下肢動脈閉塞症の治療について解説しますので、是非参考にしてください。
※この記事はMedical DOCにて『「急性下肢動脈閉塞症」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。
監修医師:
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)
急性下肢動脈閉塞症の治療
どのような検査で診断されるのでしょうか?
- 触診
- 超音波検査
- 心電図
- 造影CT検査
- 血管造影検査
触診と臨床所見では以下の様な点を確認します。
- 患部の痛み(pain)
- 知覚鈍麻(paresthesia)
- 蒼白(pallor/paleness)
- 脈拍消失(pulselessness)
- 運動麻痺(paralysis/paresis)
この5つのPが急性下肢動脈閉塞症の特徴です。運動麻痺知覚麻痺が起こっている場合は、動脈の閉塞から比較的時間が立っている場合のため、危険な状態です。
超音波検査では、パルスドプラ法という機能を使って、超音波を使って血行動態(血圧・血流速度・血流方向・脈拍数)を調べ、閉塞部位の血流を調べます。
心電図は、根本的原因となる血栓の発生源や心房細動(不整脈)の確認が可能です。
造影CT検査では、血管造影剤を血管内に注入し、立体的な血管を映し出せます。
デメリットとしては放射線検査になることと、血管造影剤を注入することによる身体への負担があることです。血管造影検査は、X線を用いて血管を撮影する検査です。
カテーテル検査とも呼ばれ、足の付け根などの太い血管から、細くてやわらかいカテーテルを入れてそこから造影剤を注入してX線撮影を行い、細かい血管が鮮明に映し出します。
狭くなっている血管や、腫瘍に栄養を送っている血管が特定できる他、リアルタイムな血流と血圧計測ができます。
治療方法を教えてください。
閉塞部と末梢動脈への更なる血栓の進展を予防します。続いて、進行度を判定して治療方法を決めます。
以下のカテゴリが進行度です。
- カテゴリ1:救肢可能(感覚消失・筋力低下なし)
- カテゴリ2:危機的
- 1a:境界型(感覚消失が軽度・筋力低下なし)
- 2b:即時型(肢と足の指以外にも安静時疼痛・筋力低下は軽度~中程度)
- カテゴリ3:不可逆性(感覚喪失と筋力低下ともに重度)
既にカテゴリ3の場合は、重篤な感覚喪失や運動麻痺を起こしている状態のため不可逆的虚血として、元の状態には回復不可能な状態です。
一方で、症状の軽度のカテゴリ1から中等度のカテゴリ2bまでの場合は、まずは血行再建のための治療を行っていきます。
血栓塞栓除去・バイパスなどの外科的治療と、カテーテル血栓溶解療法・経皮的血栓吸引療法・ステント療法などの血管内治療、そして、両方を用いたハイブリッド治療があります。
特にカテゴリ2bの場合は、虚血が進行しているため、一刻も早い血行再建が求められる状態です。カテゴリ2aの場合は、まだ時間的余裕が残されているため、下肢を失わないための最善の治療を選択します。
手術は必要でしょうか?
一方、カテゴリ2以降の場合は血行再建手術、カテゴリ3の場合には下肢が元に戻らない状態であれば、切断手術を行います。
血行再建手術では、バルーンカテーテルを使って血栓の塞栓を取り除きます。バルーンカテーテルは、カテーテルの先にバルーンがついたものを血管の閉塞部位まで入れて血管を押し広げ、血栓を除去するものです。
血栓除去が困難な場合は、バイパス手術が必要になることもあります。また、血栓溶解剤を投与して血栓を溶解させ、カテーテルで吸引するという血栓溶解療法も有効です。
重症化した場合はどうなるのでしょうか?
この状態を虚血再灌流障害(MNMS:Myonephropathic metabolic syndrome)といいます。
既に発症直後に5Pの症状である、痺れや痛みが発生していますが、カテゴリ2b(即時型)になると中等度の運動麻痺が発生しており、すなわち、重症化である下肢機能の不可逆変化を示すものなのです。
編集部まとめ
急性下肢動脈閉塞症は、急激に足が元に戻らなくなるほどの虚血状態になるうえ、一度重症化してしまうと、血栓が全身に巡り予後にも支障をきたします。
私たちの日常は足があることが当たり前であり、各々の目標へ向かって生活をして、動き回ります。
しかし、1つの歯車が無くなると時計の針は動かなくなるのと同様に、足が失われることで、当たり前だったはずの日常生活は止まってしまうのです。
大切な日常生活を守るために、健康的な食生活と運動習慣を取り入れて、日頃からの予防に取り組みましょう。