人の体には、大人の場合で約206個もの骨があります。骨とその周りには血管や神経が多く存在するため、骨折すると腫れや痛みでその部位を動かせなくなることもあるのです。
特に足を骨折した場合には、日常動作である歩行に支障をきたすため不便を強いられるでしょう。
そのような足の骨折の一つに、踵骨骨折(しょうこつこっせつ)というものがあります。
踵骨骨折(しょうこつこっせつ)には治りにくく後遺症が残りやすいという特徴があるため、特に注意が必要です。
今回は踵骨骨折(しょうこつこっせつ)の予後について詳しく解説いたします。
※この記事はメディカルドックにて『「踵骨骨折」は治りにくく後遺症が残ることも?予防方法など医師が監修!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。
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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。
踵骨骨折(しょうこつこっせつ)の予後について

踵骨骨折(しょうこつこっせつ)のリハビリについて教えてください
リハビリは、医師の指示のもと理学療法士が指導を行います。踵骨骨折(しょうこつこっせつ)のリハビリは、
可動域訓練・
部分荷重・
全荷重歩行の3段階で行われることが一般的です。足を固定したまま動かさないでいると、関節が固まり可動域が狭くなってしまいます。そのため、まずは関節の動きを回復するために、理学療法士が足首などの関節を少しずつ動かしながら可動域を広げます。術後6週辺りからは免荷装置で体重負荷を減らして行う部分荷重で歩行訓練に入り、10~12週で通常の歩行である全荷重歩行の訓練を行えるようになるでしょう。リハビリをしっかり行うことで、
後遺症軽減や職場への
早期復帰にも繋がります。ただし、無理は禁物です。リハビリは医師や理学療法士の指示を守り、少しずつ段階を踏んで行いましょう。
踵骨骨折(しょうこつこっせつ)の後遺症はありますか?
踵骨骨折(しょうこつこっせつ)は後遺症があらわれる
可能性が高く、特に転位があるなど重症の場合では後遺症がよくみられます。主な症状として、
疼痛・
扁平足・
歩行時痛・
坂道の歩行困難・
長時間立っていられないなどが挙げられます。踵骨を骨折すると骨が前後に分断されますが、後ろ側の骨が上手く癒合しなかった場合に、
変形性関節症・
腱鞘炎・
扁平足などからくる痛みが起こりやすいのです。痛みが強く日常に支障をきたしている場合には、矯正骨切術や距骨下関節鏡での剥離手術など、
二次的手術が行われるケースも少なくありません。踵骨骨折(しょうこつこっせつ)後に痛みなどで歩行への支障が続く場合には、医療機関で医師に相談することをおすすめします。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
踵骨骨折(しょうこつこっせつ)は治療が難しいだけでなく後遺症もあらわれやすいため、できれば避けたい骨折です。転落事故による骨折が多いとはいえ、高齢者の転倒やスポーツなどによる疲労骨折は
十分に予防できるといえるでしょう。最近では、高齢者が階段を数段踏み外しただけで踵骨骨折(しょうこつこっせつ)を起こすというケースが増えてきています。日ごろから適度な運動を心掛け転びにくい身体を作るとともに、骨密度アップに向けて食生活の見直しや骨粗鬆症の検査を受けるなど対策を取り、
骨折しにくい身体を目指しましょう。
編集部まとめ

今回は踵骨骨折(しょうこつこっせつ)について詳しくご紹介いたしました。後遺症があらわれやすく治療期間も長いため、骨折しないよう注意したいものです。
骨密度の低下は踵骨だけでなくあらゆる骨折の原因にもなります。加齢とともに骨密度は低下するため、早いうちから対策を取ることで骨粗鬆症の予防にもなるでしょう。
また、転倒も骨折の原因として非常に多いため、筋力を維持するためにも適度な運動を取り入れることをおすすめします。
健康な身体作りで、踵骨骨折(しょうこつこっせつ)を予防しましょう。