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「中咽頭がん」の治療後の副作用や後遺症はどんな症状が現れる?【医師監修】

 公開日:2025/03/12
「中咽頭がん」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

咽頭がんはのど(咽頭)に発症するがんの一つです。発症頻度はそれほど高くありませんが、重要な器官に発生するがんのため注意が必要な病気だといえます。

ものを飲み込んだときにつかえるような感じがあったり、ヒリヒリとしみるような感覚があったりなど、のどの気になる症状はありませんか。

今回は咽頭がんの一つである中咽頭がんのさまざまな疑問について詳しく解説いたします。

既に中咽頭がんの診断を受けた方はもちろん、のどのつかえや違和感が気になる方も是非ご参考になさってください。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

※この記事はMedical DOCにて『「中咽頭がん」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

中咽頭がんの治療・副作用・後遺症について

診察中の医師と患者

中咽頭がんの治療はどのように行いますか?

中咽頭がんの治療には、内視鏡治療外科治療などの手術でがんを取り除く方法と放射線治療薬物治療といった手術以外でがんにアプローチする方法があります。
中咽頭がんでは、がんの大きさ(T分類)・首のリンパ節への転移の状態(N分類)・離れた臓器への転移の有無(M分類)の3項目によるTNM分類からがんの進行具合(ステージ)を確定します。そして、ステージに合わせて手術や放射線治療などを組み合わせた治療が行われるのです。
前述したとおり、中咽頭は嚥下や構音など非常に重要な機能を司る器官であるため、これらの機能がなるべく低下しないように配慮しながら治療方法を選択する必要があります。
ステージⅠ及びⅡといった比較的早期のがんであればそれほど大きな手術は必要なく、中咽頭の機能障害も最小限に抑えることができます。しかし、ステージⅢ以降の進行がんの場合は、やむを得ず中咽頭の機能を犠牲にしなくてはならない場合もあるのです。

内視鏡治療と副作用・後遺症について詳しく教えてください。

内視鏡治療は経口的切除術といい、口から内視鏡を入れてがんを切除する治療方法です。内視鏡で直接がんを切除し、そのまま傷口をふさぐことができるため、中咽頭の機能にも影響を与えにくいことが特徴です。その他の副作用や後遺症についてもほとんどみられません。
ただし内視鏡治療はがんが小さく中咽頭の上皮内にある、いわゆる早期がんにのみ有効な治療法であるため、内視鏡治療が可能かどうかは医師との相談が必要です。

外科治療と副作用・後遺症について詳しく教えてください。

内視鏡手術では取り切れないほど大きながんの場合は、顎の下を切り開いてがんを切除する外科治療が行われます。大きながんを取り除くとなると切除範囲は大きくなり、その分治療後の後遺症も大きくなります
以下のものが主な後遺症です。

  • 口を開閉しにくくなる
  • 声が鼻に抜けて正しく発音しにくくなる
  • ものを飲み込んだ際に鼻へ逆流する
  • 誤嚥

上記の後遺症のように、外科治療で中咽頭などの機能に大きく影響が出る場合には、治療後の生活の質をなるべく落とさないよう再建手術が行われます。中咽頭切除の場合には主に腸を移植することで再建が行われますが、その際には気管切開が必須であるため、残念ながら発声機能が失われます
また中咽頭がんでは首のリンパ節への転移がよくみられるため、転移が認められた場合や高確率で転移があると考えられる場合には、首のリンパを切除する頸部郭清術も行われるのです。頸部郭清術では首のリンパ節周辺の大きな血管・筋肉・肩を動かす神経も取り除くことがあり、手術後に首のこわばり・顔のむくみ・肩の運動障害などの後遺症がみられることも少なくありません。
そのため、頸部郭清術後には生活の質への影響を最小限にするためにリハビリが行われます。

放射線治療と副作用・後遺症について詳しく教えてください。

放射線治療は、身体の外からがんに放射線をあてて細胞を破壊する治療法です。中咽頭がんでは、早期がんに薬物治療と組み合わせ根治を目指したり、進行がんの手術と併用して再発防止を図ったりする治療法として選択されています。
身体の外から放射線をあてる外部照射の場合であれば、6~7週の治療期間の間に30~35回程度行われます。外科治療と比べがん周辺の正常な組織を温存できるため、中咽頭の機能に与える影響も少なくなることがメリットです。
一方で放射線治療には副作用が多く、治療中や治療後すぐには皮膚炎・粘膜炎・唾液分泌障害・嚥下困難などの症状があらわれることがあります。また、治療後半年~数年後に歯の欠損・開口障害・放射線性骨髄炎・骨壊死など重篤な症状があらわれるケースもあるため注意が必要です。
また味覚障害や唾液分泌障害などが長期にわたり後遺症として残ることもあります。

薬物治療と副作用・後遺症について詳しく教えてください。

薬物治療には、放射線治療と併用した化学放射線療法・他の治療の前に行う導入化学療法・手術の後に行う術後補助療法があります。
中咽頭がんの場合、薬物治療はあくまで他の治療への補助的な役割として選択されており、単独で行われることはほぼありません。
化学放射線療法と術後補助療法で主に用いられるシスプラチンという抗がん剤には、貧血などの骨髄抑制・悪心嘔吐・末梢神経障害・聴力障害などの副作用が認められます。また、導入化学療法では主にシスプラチン・ドセタキセル・5-FUという3剤を組み合わせており、白血球減少による感染症など強い副作用があらわれることもあります。

編集部まとめ

喉を気にする男性
今回は中咽頭がんのさまざまな疑問について詳しく解説いたしました。

死亡率がそれほど高くないがんとはいえ、発症することでものを飲み込んだり話したりなど、日常生活で非常に重要な機能に障害が出てしまうこともあるため注意が必要です。

過度な飲酒や喫煙などが発症リスクを高めてしまうため、健康寿命を延ばすためにも普段の不摂生を見直して中咽頭がんの予防に努めたいですね。

のどの違和感が気になる場合には、早めに医療機関で受診するようにしましょう。

この記事の監修医師

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